1
空前の……なんて形容は前にも使われたような気がするんですが、空前のお笑いブームだそうで、ずいぶんとお笑い芸人たちをテレビで目にします。若手がネタを披露する機会が多いのが特徴でしょうか。笑い飯とか、アンガールズとか、ぼくもかなり好きです。
ダウンタウンの松本さんによれば、確実に笑いのレベルは昔よりも上がっていて、極端に面白くない人ってのはいなくなったし、ある種の「笑いの方程式」みたいなものは確立されたようだ、と。ただ、渋谷あたりを歩いている女の子が化粧が上手くなって一様に可愛く見えるけれど、ほんとうにきれいな子ってのはなかなかいないのと一緒で、ほんとうに面白い人ってのはなかなかいないんだそうです。
ぼくは笑いの専門家じゃないので、そんな分析をしたことがないですから、とりあえず笑えれば満足です。笑い声を聞いていると安心できるし、そんなに悪いことも考えずにすむので。基本的に根暗で心配性ですからね。

ただ、これを写真の世界に置き換えて考えると、やはりある種の「よい写真ふうにまとめる方法」みたいな方程式が確立されたように思います。ちょっとこの辺の隙間を空けるとそれっぽいとか、ストロボ一発で意味ありげに撮るとよいとか。モチーフに関しても、こういうのは好まれるとか、そういうのがはっきりしてきました。
でも、ガツーンと頬を平手で叩かれるようにして心を掴み取り、そのまま離してくれない――なんて写真は逆に減っているように思います。こういうのってけっこういいような感じもしないこともないような気がする、といったところが多くなっただけで。


2
知人に誘われてジャズ・ギタリストのライブを見に行きました。ジャズ系のライブを観る機会も少ないし、席に座って食事などしながら音楽を聴く機会も少ないので、観る前は「どんなふうに盛り上がればいいんだろう」とか「立ち上がらなくてもいいのかな」などと余計なことを考えて緊張しましたが、新鮮で楽しかったです。
そのギタリストはロックの影響を受けているそうで、ギターのフレーズにそれが感じられる瞬間もよかったし、「ジャンゴ・ラインハルトに捧げて作りました」とか「韓国を旅したときにインスパイアされて作った曲です」なんてふうなスタンスもよかったです。

マティス展を見に行ったときに作品の紹介に書いてあったのだけれど、芸術ってのは写実に始まり抽象に向かうのが正しい成熟だとされています。音楽で言えば、ロックよりはジャズのほうが成熟した音楽だってところでしょうか。そういう人たちの言いたいことはわかるものの、写実にも、ロックにも、それなりのよさはあるわけです。彼はそれを信じて頑張っているんですね。それも、どちらかといえば了見の狭い愛好家が多いジャンルのなかで。大変だと思うけれど、今後に期待しています。
帰り際に本人に会えて、ちょっとだけそういった話をしたら、すごく嬉しそうに力強い握手をしてくれて、「そういった人も見に来てくれていたんですね」と笑みを浮かべ、「これからも楽しみにしていてください」と話していたので、また嬉しくなりました。


3
「映画館に足を運ぶ暇はないのでビデオを観ようと思うが、ハリウッド大作やら『24』なんて観たくない」という人たちにとって、絶好とも言える作品が3本――「エレファント」、「ブラウン・バニー」、「ロスト・イン・トランスレーション」――出ました。
それぞれ、ちょっとずつ(いや、ちょっとじゃないかも)粗のある作品ですし、封切り当時に話題になりすぎたために今になってみると陳腐に感じる部分もあるかもしれませんが、ほかに観るものがなかったらぜひ。

このなかの一本に、暗室作業の場面があります。それだけなら珍しくなくて、「欲望」をはじめとしてたくさんの映画に暗室作業の場面はありますが、その映画ではフィルム現像をするんです。ふつうは暗室の中でプリントしている姿ですよね。フィルム現像って、知らない人が見たら地味な作業だし、華がないですから。細かいことを言えば手順に間違いはあるけれど、それでも相当にリアルで、その「彼」に自分を重ねることができる分だけ、ただの映画として観られないところがありました。
この場面だけをクローズ・アップしてしまうと映画本来の内容と離れてしまうため、どの映画とは書かないことにします。できれば3本とも観てみてください。それぞれ粗があると書きましたが、それぞれにしかない良さもあります。


4
携帯電話を変えました。
もうずいぶんと前からN210という機種を使っていて、機能に関しての不満はなかったんですが、バッテリーの減りが早くなってきて一泊くらいの取材でもアダプターを持たないと不安でした。
仕事先の若い人に、「あ、それ懐かしいですねぇ。ぼくが大学のときに使っていたやつですよ」と言われたのがとどめとなり、ようやく買い換えることにしました。

あらためてショップで携帯電話を較べてみましたが、もう小型化の流れはひとまず終わったようで、最先端の機種は「電話もかけられるデジカメ」といった大きさなんですね。知らないうちにすごく進化して「え、これが携帯電話!」なんて驚くんじゃないか……という期待は、あっさりと裏切られてしまいました。メモリ数なども増えていません。
オサイフケータイや着メロなんて使う気がないし、カメラも必要ないので、その分だけ基本性能がしっかりしていて小さいものが希望でした。でもdocomoの携帯電話でカメラの付いていないものって少ないんです。そもそも買い換えに踏み切れなかったのは、それがいちばんの理由でした。
新発売のprosolidという機種を見たときには、「よし、これだ!」と思いましたよ。でもこれ薄い代わりにでかいんです。ぼくはマナーモードにしていることが多く、ヒップポケットに入れると振動が伝わってこないから、ここのところジーンズの場合はコインポケットに入れているんですが、あの大きさじゃ入りません。寝ぼけていたらipodと間違いそうなくらいでかいです(*)。あれってどこに入れる人にとって都合のよい大きさなんでしょう? ならば基本性能がすごいかっていうと、電池の保ちは並で、画面はあんまりきれいじゃないらしいんです。ということで、ボツ。
ほかにpreminiという小さいだけが取り柄みたいな機種もあるんですが、あまりに小さすぎてぼくの手の大きさだと扱いにくいので、これもボツ。
ほかはすべてカメラ付きですから、仕方ないのでそのなかから選びました。ということで、ついにぼくもデジカメ所有(^_^;)。あまりに微妙な心境なので、絵文字なんて使ってしまいました。

携帯電話で画像を送ること――もしくは送ってもらうことが多い人たちに聞きたいのですが、今までに届いたいちばん嬉しかった画像と、今までに送っていちばん喜ばれた画像を、差し支えのない範囲で教えてもらえると嬉しいです。
でもこういうの、docomoやらauやらで公募してそうな気がするな。

*)グウェンのPVのなかでmotorolaの端末を使う場面があって、それがすごくカッコイイよかったので欲しかったんですが、残念ながらdocomoにはありませんでした。
たぶんprosolidに負けないくらいでかいです。ipodと並べて置かれている場面で見ると、ほとんど大きさが変わりません。
なお、docomoとmotorolaは共同で端末を開発するというニュースが発表されたので、次に買い換える頃が楽しみです。


5
「日記を読んでもほとんど仕事のことを書いていないから、写真家のサイトだって確信が持てなかった」なんて言われることがあります。でも、ふつうネット上の日記に仕事のことなんて書かないですよね? 
「営業の担当者と得意先を回ってみたら、××建設から二千万円の発注。部長に誉められたのでボーナスの査定が楽しみだ」とか、「新しいランチメニューに親子丼を加えてみたら、OLからの反応もよくて28杯ほど注文あり。しばらく続けていこうと思うが、玉子の仕入れ先には一考の余地あり」とか、そんな日記を書いている人いないんじゃないのかな。
「××を○○で撮影。アスティアを12本ほど使うが手応えはまぁまぁ。メインのペンタックス645から異音がしたのでO.H.に出す。週明けは海外だから早く納品をしなくては」なんて日記を読みたいって人はいるのかな? まぁ、ぼくの音楽ネタも「いい加減にしろ」という声はあるんでしょうけれど。

今日は仕事が早めに終わったので、晩ご飯にソースカツ丼を作って食べました。石川県とか新潟県では、煮込みカツ丼(ふつうの衣がしっとりして玉子で閉じてあるカツ丼です)よりもポピュラーなくらいどこにでもあるんですが、東京では店が少ないので自分で作ります。
正しいレシピは知らないので、ぼくのレシピを。
とんかつソースとウスターソースとケチャップを混ぜて(それぞれ味が似ているので、分量は雑でも大丈夫です)、そこにお酒(ワインでもいい)と醤油をすこし入れて(香り付けなので、多く入れすぎないように)、好みで昆布のだしと胡椒を加え、軽く煮立てます。甘めが好きな人はハチミツか黒砂糖を入れてもいいですが、ちょっと辛めなくらいのほうが美味しいと思います。
とんかつを揚げたらそのタレに浸けて、食べやすい大きさに切り(細めに切ったほうがタレの味は強く、太めに切ると肉の味が強いです)、炊きたてのご飯に千キャベツを盛った上に載せます。これはかなり美味しいのでおすすめです。


6
テレビで「ストラトキャスター生誕50周年」という特集番組をやっていました(*)。それで気付いたんですが、ストラトキャスターとライカM3は同級生なんですね。それぞれが54年生まれだということは知っていたのに、なぜか重ならなかったです。

番組のなかで、ストラトキャスターから連想するギタリストは誰かという話になって、ジミ・ヘンドリックスをいちばんに挙げていました。これは異存ないですね。ジミヘンはフライングVだって使っていたけれど、やっぱりトレードマークはストラトだから。
ライカだとブレッソンになるんでしょうか。でも、ジミヘンの場合はそれまでカントリー系など一部のギタリストしか使っていなくて軟弱な印象のあったストラトをロックに持ち込んだという「革命」を起こしたことからすると、ブレッソンとはちょっと違うかもしれません。何より、ブレッソンは長生きでしたしね。M3に出会ったことで本人の作風が決定づけられ、逆にその作品がM3の使い方を定義づけた、なんて人がいたら理想ですが、いないですね、そんな人。敢えて無理に選ぶなら、ロバート・フランクが近いのかな。
じゃあ逆から考えて、ブレッソンはギタリストでいうと誰か。エリック・クラプトン? いや、長く続けているという点では近いけれど、初期はギブソンを使っていたし、オールドもあまり使わなくて思い入れを感じないのでダメです。ロリー・ギャラガー、ジェフ・ベック、レイ・ボーン、ジョニー・サンダース、デイブ・ギルモア、みんな素晴らしいギタリストですが……。ストラトも使うというギタリストは多いけれど、ストラトしか使わないギタリストって、じつはそう多くないんですね。あのイングヴェイでさえ、初期の頃にアリアのストラト・モデルを使ったり、レコーディングでフライングVを使ったりしています。
そんなわけで結局のところ、ストラト生誕記念アルバムで一曲目に選ばれていたリッチー・ブラックモアが近いのかなぁ、と。初期はギブソンでしたが、ほぼフェンダーのストラトを使い続けていますから。

ぼくはイングヴェイ・マルムスティーンというギタリストが好きで、彼は(当時の)若い世代にしては珍しくオールドのストラトキャスター(72年製)を使い、あまりエフェクターも使っていませんでした。テクニックは新しい時代の幕開けを感じさせる超絶的なものだったんですけれど。
ストラトキャスターは年代ごとにちょっとずつ違いがあり、57年製がいいとか、72年製が好きだとか、いろいろ意見があります。M3はともかく、M型ライカということならたくさん種類があるから、そこは似ています。
ただ、悲しいかな、どっちもぼくの生まれた年にはあまり傑作がないんですね。リーバイスの501なら、かなりいいものがあるみたいですけれど。

*)パリでたまたまテレビをつけたら、「ハッセルブラッドの使い方とその歴史」みたいな番組をやっていて、あれもすごかったです。


7
仕事で青山に行くとき、いつも二軒の靴屋さんの前を通ります。どっちも憧れはあるものの、けっこう高いので手が出ません。昨日、ちょっと早く部屋を出すぎたせいで時間が余り、安いほうの店に入って靴を見ていたら、親切な店員さんが「履き込むとこんな感じになるんです」と言って7年履いたという靴を見せてくれました。「うちのお客さんで、最長だと25年という人もいらっしゃいます」なんて。
その靴は茶色のUチップブーツで、手入れのときにワインレッドの靴クリームを使ってほんのり赤みを加えてあって、シワの形などもほんとうに美しかったです。そこの店の靴は、新品のときは艶がなくて形もずんぐりして見え、正直に言うとあんまり格好いいと思えなかったんだけれど、ほとんど別ものに見えました。
革製品が好きな人は、よく「使い手のことを記憶する」と言うんですが、新品のときより使い込んだときの方が格好いいって素敵です。くらくらしちゃって、あやうく衝動買いしそうになったのですが、残念ながらぼくのサイズはありませんでした。

知っている人も多いでしょうが、今年でぼくは写真家になってちょうど10年。10年前の今ごろ、勤めていた会社に辞表を出しました。
ライカは別として、退職金で買い揃えたEOS−5はとっくに動かなくなってしまったし、テンバのカメラバッグも修復不可能に壊れてしまい、その10年を一緒に歩んできたと思えるもの――この傷は××を撮りに行ったときのもので、ここが削れているのは○○で……なんてふうに10年を記憶してきてくれているものってありません。強いて言えばファイロファクスのシステム手帳ですけれど、部屋で使っていたことが多いせいでそこまでの思い入れがないです。
会社勤めから写真家への転職って、生活様式も変わるし、考え方そのものも変わります――いや、ほんとうは働いて生きるっていうことに違いはないんですけれど、当時は「俺は写真家になるんだから、すべてを変えなくちゃいけないんだぞ」というような気負いもありました。だからそれまで使っていたもののほとんどは捨ててしまったし、そのときに慌てて買い揃えたものって(お金がなかったために)間に合わせで、長く使い続けられるようなものではなかったです。それを少し残念に思います。もちろん、「撮ってきたネガがすべてさ」と言ってしまえばそれまでなんですけれど。
いまから10年後、どんな気持ちでこれからの10年を振り返るのかわかりませんが、何か一緒に歩んでいけるようなものを買おうかなと思います。

それはそれとして、ふだん履いているブーツの手入れをしてみたら、すごくきれいになって嬉しかったです。ブーツなんて少しくらい汚いほうがいいんだ、と思っていたけれど、最低限の手入れは必要ですね。
カメラだって使って傷が付いているのは気にならないけれど、ジュースをこぼした跡とか、薄く積もった埃とか、やっぱりいいものじゃないから。


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