機材について


僕はあまり機材にはこだわらないように思われていますが、わりに撮影の時には冷静さを欠くタイプなので、機材に足を引っ張られることを恐れます。だからそれなりのこだわりのようなものはあります。
モノクロのプリントが好きだから、レンズの描写に自分なりの価値基準を持っているつもりで、気持ちの良い写りをしてくれないレンズは、自然と使用回数が減っていきます。シャープネスだとか周辺光量だとか歪曲収差だとかそんなことじゃなくて、自分の写真としっくり馴染むかを感覚として捉えます。ポジやカラープリントだと、状況や雰囲気によっては許せても、モノクロのプリントだとはっきりと違いが認識できるんです。現像液から浮かび上がってくる画像を見ていると、「これは良いレンズだな」ってわかります。良いレンズというより、好きなレンズと言ったほうがいいかもしれませんね。

「それを履いたら死ぬまで踊り続けることになるバレーシューズ」みたいに、写真を撮るのが楽しくなって、やがては中毒のように次の写真が撮りたくなるカメラってないものかな、と思う。


LEICA
ライカというカメラは勇気を与えてくれます。写真を撮るのって戦場に一人でいるような不安と孤独を感じることがあるのだけれど、巻き上げる時の感触は銃に弾を込めるような気持ちに似ているんじゃないでしょうか。これで何があっても大丈夫、といった感じですね。
レンズに関しては線が細くてキレがあります。僕のようなスナップでも、わずかな質感の違いは全体の印象を左右するし、そのときの気温や風の匂いを伝えてくれるような描写が好きです。古いレンズの何本かは滲むようにぼけていくので、それが優しさを加味してくれることもあります。悪条件も強くて、シャドーはなかなか潰れないし、ハイライトは飛びません。コントラストが低いってワケではないのに不思議です。
デザインも好きで、何を着ていてもそれなりに似合うのが嬉しいです。



MINOLTA
α−9

このカメラが出たことで、メインで使っていたニコンF4をミノルタのセットに換えてしまおうかと迷っているくらいです。ファンダーの見え方は素晴らしいし、撮り手が撮影に集中できるようにという心配りは助かります。机の上での意見ではなく、現場の声がきちんと反映したカメラなんでしょうね。F5とかEOS−1とかが「プロのマシン」って感じなのに対して、こっちは「名匠の道具」って感じで人の優しさが感じられる気がします。35mm一眼レフの現行機種を買おうと思ったのは久し振りです。
ニコンとはヘリコイドの回転方向が逆で、中判ではペンタックス67を使うことが多いからそれとも逆なので、慣れるのに時間はかかるかなとためらっています。
プロビアが新しいシリーズに変わって、相性が良かったレンズが色々と変化しているんだけれど、ミノルタのレンズはプロビアとの相性も良いですね。特に85ミリF1.4などは素晴らしいです。


HASSELBLAD
503CXi

僕とハッセルの組み合わせって意外な気がするのかな?
アントン・コービンというミュージシャンを撮るカメラマンが好きなのでホームページを覗いてみたら、撮影には一台のハッセルと二本のレンズをカバンにいれていくんだ、というようなことが書いてあって欲しくなったので、知人のカメラマンから安く売ってもらいました。その後、500C/Mも買い足して、ボディ2台とレンズ3本という、とりあえず使い物になる最低限のセットを揃えました。
僕らプロだって、好きな写真家が使っているカメラは気になります。特 にハッセルはノッチがあるのでベタを見るとすぐにわかるから、「この人もハッセルかあ……、あっ、こっちもハッセルだ」って感じになるんです。
まだあまり撮っていないし、多くを語れないけれど、三脚を立てて静かに撮りたいカメラです。おかげでメイプルソープに心惹かれつつあります。正方形のフォーマットは、それだけで絵になり易いから、甘えができるのが怖いんだよなあ。
プラナー80ミリもいいけれど、ディスタゴン50ミリがかなりいいです。フィルムの性能をギリギリのところで活かせる気がします。


LPL
VC7700プロ

モノクロ用の引き伸ばし機です。
カメラと違って場所をとるし、寿命が長いから、何台もの引き伸ばし機を使っているわけではないですが、なかなか気に入っております。これからの時代に真剣にモノクロのプリントを始めたいという人がいて、白紙の状態から機材を揃えていくなら、少し高価に感じてもこの引き伸ばし機を薦めたいです。
ネガキャリアなんかも歪みがなくてピシッとネガを挟み込んでくれる感じがして、精度の高さを感じられて安心できる。でも、次に買うならベセラーだろうなあ・・・。


Billingham
ジュージアーロだのルイジ・コラーニだの、カメラは有名デザイナーがデザインしているのに、ストラップとかバッグとかはデザインが悪すぎる。カッコイイものを、なんて高望みしないから、カッコ悪くないものをと願います。
その点、ビリンガムのバッグは悪くないなと思います。ちょっとした散歩撮影ではハドレーという小さなバッグにライカを2台入れて出掛けることが多いです。カメラバッグにはファスナーを使って欲しくないと思うから、そういう点でもハドレーはいいです。ただ荷物をギリギリの重さまで入れると、肩に掛けていても外に開くような形になってしまうのはやや残念。

→初代ハドレーが壊れて、新しいものに買い換えようかと考えたのですが、すごく使っている人が多いことに気づいたので、いまはホワイトハウスコックスという革製品で有名なメーカーのハドレーによく似た形のものを使っています。


PEAK
僕もアマチュアの頃には安いルーペを使っていたし、それで特に問題はなかったんだけれど、長い目で見れば高いものではないし、使っているルーペをすべてPEAKのものに統一しました。収差がどうとか、そういったことももちろんですが、使っていて非常に気分がよいです。材質とか、重量バランスとか、きちんと考えられているんでしょうね。派手さはないですが、プロの道具ってこういうものだよなって思います。


SEKONIC
L−408

「メーター何を?」って訊かれることは少なくないです。
この世界の標準機といえば、ミノルタのオートメーターV(ほんとうは5)Fでしょうね。圧倒的に使っている人が多い。僕のセコニックをスタジオマンに渡したら、「これはわかんないッスねえ〜」なんて言われたこともあります。いまセコニックを使っている人はとても少ないみたいです。
でもこれ入射光と反射光を一台で使い分けられるとか、かなり便利な露出計だと思います。ただアマチュアで使っている人が多くて、仕事先なんかで編集者とかに「あっ、僕と同じ露出計ですね」とか言われると素直に喜べないんですよね(笑)。こういうものが驚くほど高かったりすると「プロってすげえなあ」って思ってもらえるんでしょうけれど。
余談ですが、ミノルタのメーターと比べると、セコニックってわずかにアンダーに表示する傾向があるような気がします。この上位機種やミノルタのメーターも持っているのだけれど、なぜか出番が多くなってしまいます。露出計って慣れているものが安心なんです。

→いろいろな事情で、完全に出番がなくなりました。


MINOLTA
AUTO−CORD

ローライのような形をした二眼レフです。ひとつひとつのパーツなどの作りを見ていくと、圧倒的にローライに劣る感じがするのですが、レンズの描写は素晴らしいんです。一度オーバーホールをしたら動きもスムーズになりました。もうちょっと寄れると良いんだけれど、っていうのはライカと共通する悩みですが、それを受け入れることがこういったカメラで写真を撮る楽しみだと思います。
ただ、写真を積み重ねていったとき、どうしても6×6って写真世界が少し小さくまとまってしまう気がするんです。

→壊れちゃいました。シャッターが3回に1回くらいしか落ちません。簡単に直る箇所のような気もしますが、もうよく頑張ったと引退させることにしました。


SUMMICRON 
50ミリF2

(M 初期固定鏡胴)
レンズの味なんて言い方をしますけれど、写真に対する隠し味としてレンズの描写がプラスに働くことはあると思います。
「このレンズのおかげで」というようなレンズって幾つもないですけれど、このズミクロンは本当に僕の良き相棒です。
古いタイプは1メートルまでしか近寄れなくて、新しいズミクロンは70センチまで寄ることができるために新しいものも手放すことはできませんが、圧倒的に描写はこっちが好みです。


SUMMICRON 
50ミリF2

(L 沈胴)
上に書いたズミクロンの前のモデルです。レンズ設計などは同じだといわれているのですが、写りは似てて異なるものですね。あるいはレンズの辿ってきた人生が違って、それが影響しているのかもしれないけれど。人間だって40歳くらいになれば、身体のどっかに不調があったりしても不思議ないですから。
固定鏡胴のものに較べると周辺が甘いのと、絞り開放付近では明らかな滲みがあります。特に前ボケは、あのズミルックス35/1.4を彷彿させるくらい、というのは言い過ぎかな。
ピントが合っている部分のキレやモノクロの階調は、やっぱりズミクロンといった感じです。


FUJI 
NEOPAN ACROS

−MAXが発表されたときには僕はまだ写真をやっていなかったので、どれくらいユーザーにショックを与えたのか、業界の反応はどうだったのかを知りませんが、このアクロスは素晴らしいですね。久しぶりに「価値観がちょっと揺らぐ」くらい驚きました。粒子が細かいのも良いのですが、現像がノーマルでもきちんとトーンを作れるのを評価したいです。低感度・微粒子のフィルムは処理が難しくて、なかなか性能をフルに発揮できないことも多いですから。

→使い込んでいくうちに、このフィルムのじゃじゃ馬ぶりに気づいていきました。付き合いきれなくなって一度やめて、また戻って常用にしています。ただ、ふた絞り分の被写界深度が作品を左右することは多いので、アクロス400があればと思います。


BRONICA
RF645

中判の画質がどうしても必要と自分で思うことって実はそう多くありません。それよりも、少ない枚数で集中できるとか、浅い被写界深度を利用してポートレートを撮りたいとか、そういった場合に中判を使うことが多いです。
でも「ちゅらさん」のポスター撮影の時に、レンジファインダーの中判があったらいいのになと思っていて、このカメラを買いました。
カメラのコンセプトと機能が合っていないカメラってよくあるけど(スナップ用なのにシャッター音がデカイとか)、そういう意味でのバランスがすごく良いです。カメラのことをわかっている人たち、写真をたくさん撮っている人たち、そういう意見をきちんと採り入れたんでしょうね。


ROLLEIFLEX 
2.8F
フレアが出やすいレンズなのですが、それを怖れずにちょっとだけ逆光気味で撮ったときの滲むような写りが好きです。階調は非常に整っているので、プリントで苦労することはありません。 スナップよりも今は人物で使うことが多いです。
もし好きな女の子がいて、その子が「私の一生の思い出になる写真を撮って」と言ってきたら、ライカじゃなくてローライを使うかもしれないですね。ライカは、あまりに僕に近すぎて。


FUJI 
KLASSE

できることなら、ライカはモノクロだけ撮っていたい気持ちがあります。カラーが嫌いと言うことではなく、自分の作品として過去のものと並列していくためとか、ネガをきちんと自分で管理できるとか、理由はいろいろありますけれど。ライカがカラーに向いていない、なんてわけじゃないです。
じゃあカラーを何で撮ろうかと考えて、前はHEXAR(初代の)を使っていたんだけど、壊れちゃったからKLASSEを買いました。
露出補正が使いづらい他は、わりに気に入っています。僕を次の場所に運んでいってくれないかな。