80年代は


一発屋の黄金期だった


ベスト8



リアルタイムでどっぷりはまっていた僕にとって、80年代がどのような時代だったのか、それが70年代や90年代とどのような違いがあるのか、はっきりとはわからないのだけれど、こと音楽に限って言えば、装飾が多く身がないものが多い傾向があったようです。
仕事先で若いミュージシャンと一緒に80年代の曲を聴く機会があると、そういった人たちが「安っぽいなぁ」と言うのと同時に、僕は「懐かしい」と言ってしまうんですが……。たしかに音は薄っぺらで軽いんだけれど、ずっとラジオを中心に聴いてきて、それをエアチェックしていたから、気が付かなかったんです、たぶん。

音楽ジャンルの幅はいまのほうがずっと広がったはずなのに、ことチャートを見ると、ラップやヒップホップ、R&B系のアーティストに席巻されている感のある今日の音楽シーンに対し、安っぽいなりにいろんな音楽があって楽しかったし。

そんななかデビュー曲が一位、というバンドもたくさんいました。
僕の思い出に残る一発屋たちを。
★ターザン・ボーイ / バルティモラ

この曲、僕の通っているジムでアクア・エクササイズのインストラクターが使っているテープに入っていて、「さぁて、いまから泳ぐぞ」とプールに行ったときにこのイントロが流れると、涙でゴーグルが曇ります。
長いヴァージョンのほうを聴くと、80年代のポップスがいかにすかすかだったかを実感することができます。

★おしゃべり魔女 / トム・トム・クラブ

正確には一発屋ではなく、この後にちょっとしたヒット曲もありました。
でも一曲目の印象があまりに強いので。米米CLUB(おお、イッパツで変換された!)が、ここからバンド名をつけたという話を噂で聞きましたが、ほんとうなのでしょうか。
それにしてもすごい邦題だよな。恥ずかしい邦題を平気でつけたのも、80年代の特徴です。ローマン・ホリディ(彼らも基本的には一発屋に分類されています)の「オイラは張り切りボーイ」(表記は不正確です)とか。

★ミスティ・ハート / クォーターフラッシュ

80年代初頭ですね、たぶん。
このバンドにも「ミッドナイト・ラヴァー」という名曲が他にあるんですが、あまりにこっちの印象が強くていけません。パット・ベネターあたりを彷彿させる女性ボーカルと、物憂げなサックスの音色が素敵でした。

★愛に抱かれた夜 / カッティング・クルー

もしぼくが50歳くらいになって、姪にでも「ねえねえ、おじちゃん。80年代ってどんな時代だったの?」なんて聴かれたら、迷わずこの曲を聴かせましょう。
世間じゃ80年代といえば代名詞のようにa−haの「テイク・オン・ミー」を挙げますが、イントロの音、邦題、やけにドラマティックな展開、80年代的ということなら、こっちのほうが上なんじゃないかな。
もっとも、僕にとっての80年代の1曲といえば、エイジアの「ヒート・オブ・ザ・モーメント」ですけれど。

★カモン・アイリーン / 
デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ


たぶん80年代って、それまでに続いてきたロックが過渡期になっていて、他のジャンルを持ち込んでみたり、新しい楽器を取り入れたり、そういった時期だったのではないかと思います。エレクトリックが盛んになる一方、このバンドのように古くさい音楽スタイルを取り入れて、逆に新しい音楽を作り出そうとしていた人たちもたくさんいました。
この前、「ベストヒットUSA」を見ていたら、小林克也さんが「彼らのような音楽はビートルズが登場するちょっと前の主流だったのだ」というようなことを言っていました。

★エンジェル07 / ヒューバート・カー

僕の記憶が不確かなのですが、ウォークマンかなんかのCMに使われてヒットしたと思います。
米米CLUBの「浪漫飛行」みたいな感じの展開で、クールなイントロからサビになって急にドラマティックになります。すごくカッコいい曲です。いまいちばん聴き直したい曲のひとつなのですが、テープが見つかりません。

中休み『彼らは一発屋ではなかった』
(レベッカ・ブラウンの短編集のタイトルみたいだ)

メン・アット・ワークもドリーム・アカデミーもビッグ・カントリーもニック・カーショウもフロック・オブ・シーガルスもABCもアイリーン・キャラもチャーリー・セクストンもカジャ・グー・グーもソフト・セルもアレッシーもテリー・デサリオも一発屋ではなかった……と思います。少なくとも二発はあった。

★ベティ・デイヴィスの瞳 / キム・カーンズ

キム・カーンズってそれ以前にもキャリアがあって、それなりの実力派シンガーらしいのですが、じゃあ他の曲を知っているかというと知りません。こういった人たちって、いまどうしているんでしょう。
地方でディナー・ショウとかやって、この曲を歌い続けているのかな。シャーリーンの「愛はかげろうのように」とかも同じです。
「ネバダ州のクラブでキム・カーンズのディナー・ショウを見た!」とかいう貴重な情報があればぜひ。

★ドント・ドリーム・イッツ・オーバー / 
クラウディッド・ハウス


この前、若いミュージシャンを撮影する機会があって、音楽的にはクラウディッド・ハウスに似た感じだったので「知ってる?」と尋ねてみたら、まったく知らないとのこと。それで「ああ、完全に過去のものになってしまったのだな」と思いました。
メロディの美しさは天下一品です。
僕の高校時代の友人にこの曲が素晴らしいという話をしたら、「昔、上京したばかりのころにアパートの隣の人がこればかり繰り返していて、いま聴くと腹が立つ」と言われました。音楽との出会いって不思議です。