8月24日 (火)  大荒れ。雷。


 明け方、眠っていた父親を起こす。
「おとうさん、ごめんなさい、帰ります。駅まで送ってください。」

開口一番がそれだった。今日には、お母さんの灰を、家族で海に撒きに行く日だった。本当なら、本来なら、絶対に、絶対に外せない。それに、家族が待ってくれていた。だから、どうしても外せなかった。でも…

カーニャは東京へ帰らなければならない。東京へ、ヒロ君の元へ。そうじゃないと、カーニャはヒロ君を失ってしまう。単なる彼氏だったら、カーニャはその人を捨てたと思う。言い方は悪いけれど。カーニャにとって世界で一番は、お母さんだから。カーニャがお母さんを思う気持ちを分かってくれない人なんて、一緒にいられない。

でも、でも、ヒロ君は、違うのだ。わかっているのだ。わかっているからこそ、そう言ったのだ。それほどまでに、ヒロ君は傷ついていて、どうしようもなかったのだ。何度も、ヒロ君はカーニャにSOSを出していたのに、それをカーニャ無視した。

お父さんは、駅まで送ってくれた。駅に向かう途中も涙が止まらなかった。トールや、お兄ちゃんに申し訳なかった。どんなになじられても構わないと思った。たとえ、勘当されても…本当にそう思った。

その時、少しだけカーニャはヒロ君の事を憎んだ。辛い思いをさせるヒロ君を少しだけ恨んだ。でも、カーニャはヒロ君にこの辛さの何十倍も何百倍もの辛さを味あわせたかとおもうと、また涙が出てきた。電車の中でも涙が止まらずにずっとサングラスをかけていた。外は雨。

本当に、漫画のように、雨が降っていた。実家でも雨が降り続き、雷が鳴り響いていた。まるで、笑っちゃうほどクサイ演出のようだった。

東京に着いたころ、幸い雨は止んでいた。こっちでは降っていなかったのかな?もう、ずっと寝ていないし、泣きつかれてふらふらだったので、良く覚えていない。電車に乗り、家へ帰った。家には、ヒロ君がいた。

暫く記憶がない。一緒にベッドに眠った気がする。
気がつくと、外は真っ暗。そして、ヒロ君はいなかった。普通に考えればヒロ君はバイとに行っているはず。でも、不安だった。ヒロ君に会いに行かなきゃ。そう思った。連絡が取れない。アルバイト先にも電話してみるけど、休みだった。ヒロ君のうちへ行く。さっきまで豪雨だったが、ちょうど止んでいた。

空気の抜けたタイヤの自転車に乗り、思いっきりこぐ。通りなれた道を走りながら、この道を何週間、あるいは、何ヶ月通ってなかったんだろうと思う。部屋に明かりが見えた。ほっとした。

なぜか、良く覚えていない。ヒロ君と、ご飯を食べた。カレーと、キムチ焼きうどん。ずっと朝から食べてなかったから、おいしかった。二人で食べるのなんて、久しぶり…何日ぶりだろう?食べて、寝てしまった。

起きると、12時だった。テレホだ。ヒロ君が、ネットに繋いでいたので、カーニャの家に行く事にした。うちは、テレホだから。でも特に何もしなかった。カーニャは眠くて、寝てしまったから。でも、あまり良く眠れなかった。何度もうなされるようにして目が覚めた。そして、何度目かに、隣で眠っているはずのヒロ君がいない事に気がついた。

ドキッとする。暗い部屋に目を凝らすと、部屋の隅で丸まっていた。
「どうしたの?」と声をかける。「眠れない」と答える。

眠かったけど、そばに行く。暫くは眠気が取れずに沈黙していた。「どうして?」
「やっぱり許せない」当然ともいえる言葉が帰って来た。
それから、色々な話をした。

カーニャは強くなる。もっともっと強くなって、ヒロ君の助けになる。

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