1月20日(木) 晴れ 

休みの日がこんなに憂鬱だったのは、初めてだ。こんなに仕事に行きたいと思ったのも初めてだ。何かをしていれば、やらなきゃいけない事、考えなきゃいけない事をやらなくていいし、考えなくていい。仕事は「やらなきゃいけない事」だし。 でも残念ながら、今日はお休みで、どこにも行きたくない。

9時近くにヒロが出かける。ドソの芝居の稽古だ。行ってきますはなかったけど、カーニャの寝顔を見ていった。昨日の事怒ってはいないようだった。怒っているのはカーニャの方。

昨日言われた事で頭に血が上り、目の前で煙草をあてつけで吸ってやった。「どうでもいいなら、好き勝手な事しても関係ないね」と…。その後、何も言わなかったのでそういうことなんだと思った。

昼頃に帰って来ると言っていたけどなかなか帰って来ないので、少し心配になる。もし昨日何もなければ電話していたかもしれない。カーニャにはめずらしくずっと怒っている。怒っているというか、気に入らない。むこうが折れる(でも何に?)までこうしているつもりだ。

わかっている。気に入らないなら家を追い出せばいい。居候しているのは向うなのだし、ここはカーニャの家だし。でも、その力があるのが怖い。追い出して、関係を絶つ事が出来るのが怖い。私にとっては驚異的な長さの付き合いだから、ここまで築き上げた信頼(と呼んでいいのか?)…いや向うは信頼していない。私は信頼に値していない。仲良くやってはいるけど、それは生活をしていく上での事。

前はもっとヒロに依存していた。ヒロがいないと生きていけない気がした。でも、今はそんな風には思わない。だけど不安。いなくなったら不安、いなくなる事を考えたら不安。もっと打算的な事も混じっている。ヒロ以上にくつろげる相手、安心できる相手、もっと良くしてくれる相手、そして経済的に安心できる相手…を作れるかどうか不安。こんな事を考えるのは卑怯?普通?わからない。不安…というか、またそこまで相手と自分の関係を持っていくのが物凄く面倒。最近、人と関係を新しく築いていくのが億劫になっている。あるいは、逃げ腰、臆病、怖い。

そんな事すら考えるのが嫌だった。どうしてここにいるの?自分は何をしているの?なにかしなくちゃ、しなくちゃと自分がせかす。そうしているうちに、ヒロが帰って来た。

「ただいま」「おかえり」「……」「……」

いつもならカーニャが話しかけるから、会話がない。すごく気まずい空気。ヒロは普通だけどカーニャが変。 「何か怒っているの?」でも怒っていないから「別に」って答えちゃう。

本当は話たくてしょうがない。昨日の事を話したい。気に入らない事を言いたい。でも我慢する。だって…今日ヒロは仕事だから。昨日はほとんど眠っていないようだったし、朝早くにでかけたから今眠るしか時間がないから。夕方までの短い時間だけど。それを邪魔したらかわいそうだと思った。だから黙っていた。

日記を書いたりして時間をつぶす。外はよく晴れているようで、洗濯日和だ。買い物にでも行けばいいのだろうけど…。雑誌を読んでいると目覚ましが鳴る。ヒロが起きる時間だ。目覚ましじゃ起きないので、声をかける。何度か呼んでやっと起きてきた。ヒロは「眠い、眠い」と何度も言う。

出掛ける時は見送りする事ができた。今から長い夜が始まる。うんざりする。今日は出かける予定があった。でもキャンセルしようと考えている。悪いけれど、キャンセルしたい相手だった。いろんな事をもう清算したい。何もなく、ひっそりと生きていきたい。

暫くして、ヒロに電話した。休憩中なのは知っていてかけた。泣いた。疲れた。逃げ出したいんだろうな。自分の非を認められない事や、自分の認識で物事を話す癖や、相手の事を考えられない事は、昔から変わらないけれど、ヒロが変わると期待しているのに疲れた。そんなにたいして期待していないとは思うけれど、疲れた。甘えられる相手だと思っていたのに、甘えさせてくれないから。許してくれないから…かな。

電話を切ってぼんやりする。何もしたくなくてでも寂しくて怖くて。予定の相手から約束の時間に電話がなかったのでとうとう行くのを止める。相手はほとんど知らない人だから、こんなロウテンションでは、自分が疲れる。

何を思ってなのか、ゆうに電話する。そして言わなくていい事を言う。…でも今こうして書いている今は、いって良かったと思っている。少し、正直になれた。いい子ぶっていた自分がいたから、物分かりのいい自分を演じていた。でも電話だけじゃすごく感じが悪くて、後でまた話そうと言われたのだけど、カーニャは眠っちゃった。電話が何度かかかってきていたけど、取る事は出来なかった。

前のページ
次のページ