3月18日(土) 曇り 【二人の時間】

ずいぶんと、機嫌の悪い目覚めだった。隣でヒロはまだ眠っていて、私は何だか憎たらしくなる。自分だけが目覚めてしまった事に。起きて、片付けをしたり、洗濯をし、パンを食べたりコーヒーを飲みながらもそのイライラは消えずに、やる事がなくなってしまうとヒロへと向けられた。

きっと、「可愛さ余ってにくさ100倍」(というんだったっけ?)みたいのものだ、といつも思う。安らかに眠っている顔にイタズラをする。つねったり、たたいたり名前を呼んだりキスしたり、文句を言ったり。そうするとヒロは必ず起きる。これが私だったら怒り布団へ潜って絶対に起きることはない。もちろんそんな事ヒロがするわけないのだけど。

そうして起こしてしまったヒロを見てああ、と後悔する。ヒロはいつものように可愛く拗ねたりして見せないで、ぶーぶーと文句を言う。当然の文句で、正当なのだけど私はそれも可愛いと思う。謝りの言葉を何度も呟きながらさらにイタズラをさりげなく続ける。とうとうヒロは布団の中に潜ってしまったので、手を出せなくなった私はつまらなくなり、自分もベッドへ潜り込む。

本当は横になんか全然なりたくない。眠りたくないのに眠ってしまうのはとても不覚だ。でもヒロがキスをしてくれたので眠る事はなかった。すっかり起きて不機嫌になったヒロは私に用事を言いつける。あれを取って、ジュースが飲みたい。でも横になった私は根が生えたようにいつも動けない。そしてヒロはさらに不機嫌になる。

そのままベッドにいるうちにうとうととしてしまったらしい。不覚だ。ヒロが電話する音で目が覚める。デッキ君と話している。練習が月曜日になるかもしれないという話をしているので、むかむかした。だって、月曜日はお休みなのに、二人の。

デッキ君も、クッシーも、なんでもヒロにやらせ、我侭ばかり言う(ように見える)ので、みんな勝手な事言うんだから、月曜日は練習できないってヒロがちょっとくらい勝手な事言ったって別にいいじゃないと、叫んだ。

ヒロが苦笑しながら「聞こえた?」と言っている。多分聞こえた(はず)。いいもん、聞こえるように言ったんだから。でもなんだか叫んでしまうと別に月曜日が独りぼっちで何もしないでお家にずっといたとしても良いような気がしてきた。だからお布団に潜りこんで後は聞こえないようにした。

この間見た映画の感想文を書いていたらヒロは電話が終わったらしくそばに来た。機嫌は直っているらしい。優しい声を出して、ゴメンねといった。なんだかそんなヒロが可愛そうで涙が出てくる。カーニャは勝手な事を言ってヒロを困らせてばかりいるのに、そんなに優しい声を出されたら、とても申し訳がない。

でもヒロはカーニャの涙を勘違いしたらしくご免ね、と何度も言いながら優しく抱っこしてキスをくれた。カーニャは意地っ張りだからゴメンネと言えないで首を振るばっかりだった。

ヒロはシャワーを浴びて、出かける。バイトに行く時間まではまだあったので二人の時間がぽっかりなくなって調子が狂って拍子が抜けた。いつまでも玄関先でくっついていたい。ぼんやりしているとカーニャもバイトの時間になっていた。出かける前にちゃんと片付ける事が出来た。

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