1997年 5月 17日

HAL遠からじ

世界チェスチャンピオンが、ついにコンピューターに負けた。
世界チェスチャンピオン ガルリ・カスパロフ氏とIBMが自らのイメージカラーを名前としたコンピューター「ディープ・ブルー」との勝負は、「ディープ・ブルー」の勝ちとなったのだ。

1997年5月13日付け毎日新聞「余録」はこの件について書かれていた。
数億手を計算する「デープ・ブルー」に、ガルリ・カスパロフ氏は「判断力を持ち始めている様な気がする」と述べている事に対して、映画「2001年宇宙への旅」に登場するHAL9000を引き合いに出している。
そして、劇中でHAL9000が始動したのが1997年1月である事を引き合いに出し、「デープ・ブルー」が勝利したのも何かの因縁か、と結んでいた。

しかし、「ディープ・ブルー」はチェスの能力だけとっても、まだHAL9000に及ばない存在である事をHARIは確信している。
世界チャンピオンすら負かしたそのロジックは高く評価する。
だが、どの様な相手と戦っても「僅差で負ける事」は出来まい。
コンピューターで「勝つ」ロジックは「最善の手」を計算すれば良いのだが、「僅差で負ける」ロジックなどHARIには想像もつかない。
やはり、「自分の作戦に夢中」になったり「相手の陽動に引っかかったり」、「うっかり見過ごす」ロジックが必要になるだろう。
どう考えても「最善の手」を求めるロジックより、遥かに難易度が高そうだ。
(計算中に、全体の制御に影響の無い範囲で暴走させれば、そんなロジックが出来るかもしれないが。)

HAL9000とボーマン船長のチェスの勝敗は、互角であった。
これからHAL9000が相手のレベルに合わせて勝負している事が推測できる。
その様な思考をもってこそ、知能・意志・判断力を持ったコンピューターと呼べるだろう。
そして、その様なコンピューターが始動した時こそ、IBMのアルファベットを左に1文字動かした、1文字先を行く名前のコンピューターが誕生した瞬間なのかもしれない。


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