2003年 7月17日
HARIの妄想設定

リックドム秘話



 わずか1年という期間にもかかわらず数多くのMSが開発された1年戦争。
 その中で重MSとして戦争中期から活躍したジオン宇宙軍のリックドム。
 開戦時の主力MS・ザクと終戦間際に配備された傑作MS・ゲルググの間を埋めるMSとしてしか評価される事が少なくない重MS・リックドムについての秘話の数々を紹介しよう。

・リックドムはMS-R09かMS-09Rか
 
 リックドムの形式番号はMS-09Rとされているが、ツイマッド社作成の各種ドキュメントや軍のドキュメントではMS-R09と表記されている物が少なからずある。
 特にリックドムの開発段階、及び配備直後のドキュメントには「MS-R09」と記載されている物がほとんどであり「MS-09R」と記載した物は稀である。
 逆に、リックドムが実戦投入されはじめると「MS-09R」の表記のみとなり「MS-R09」の表記は無くなって行く。
 今日では、配備当初に「MS-09Rの表記だと(地球圏向け陸戦用)ドムのバリエーションの一種との間違える」事を懸念し、あえてMS-R09と表記したが、リックドムの正式配備・知名度の向上により本来の表記であるMS-09Rに戻したとの説が一般的である。
 だが、軍が「そんな紛らわしい事」をしたりするだろうか?
 ドム及びリックドムの開発に携わったブライト・T・ハリー氏はインタビューの中でこの真相について答えてくれた。
 また、宇宙戦用のドムの愛称が「リックドム」なのかも言及している。
 
 以下は、ブライト・T・ハリー氏のインタビュー内容に基づいた真相である。
 
 リックドムのリック(Rick)とは、「Re-desIgns as a Cosmic King(宇宙の王としての再設計)」の略と言われているが、この略称はこじつけでしかなく、実はリックドムの開発責任者であるリチャード・クラーク氏の愛称「リック」からきている。
 リチャード・クラーク氏はツイマッド社のMS開発プロジェクトの主任基本設計者としてドム/リックドム系MSの開発の実質的な中心と言える存在であった。
 彼はドムの仕様が政治的理由により宇宙向けから地球圏向けに変わった時、「ドムは必ず宇宙で使用する事になる、宇宙でこそがドムの能力を十二分に発揮できる場所である」(元々、ドムは宇宙で使用する「MS-06ザク」の後継機たる重MSとして開発が始まった事は、拙作「ツイマッド社の光と影」で記載のとおり)との考えから「地球圏向けに特化した独自の部分」を極力少なくするように尽力した。
 この事は、当初ドムを地球圏向けの局地戦用重MSとして運用する事を考えていたジオン軍MS開発局との衝突を生み、関係を悪化させる事になる。
 すなわち「ドムは宇宙での運用など考えずに地球圏での運用のみ考えて設計すれば良い」とツイマッド社に対して強力に圧力をかけていた。
 ジオン軍MS開発局の言い分ももっともであった。
 すなわち、宇宙での運用を意識した両用型MSとすると、地球圏向けの局地戦用重MSとしては無駄・無意味な部分やオーバースペック等が発生し、コストや生産性・保守性が悪化するからである。
 (汎用性を重視して設計されたMS-06ザクですら、地球圏でその性能を発揮する為に機体を再設計しなければならなかった事がジオン軍MS開発局の頭にあった。)
 それでなくても、ツイマッド社初のMSであったドムの開発スケジュールは大幅に遅れていたのだ。
 そんな「決してよくない」関係になっていたジオン軍MS開発局は、ドムのプロトタイプが完成直後に強権を発動する。
 (「プロトタイプが完成したのを待っていた」との見方もある。)
 すなわち、ドム開発スケジュールの遅れを理由にから「責任者リチャード・クラークを更迭せよ」との命令が出たのである。
 (これには、ドムの基本アーキテクチャーを押さえているリチャード・クラーク氏を、プロトタイプ完成迄は外せる訳が無い事を理解していたジオン軍MS開発局が、ドム
 実用化の目処がついた段階で報復的な意味合いで行ったらしい。)
 しかしここで逆転劇が発生する。
 プロトタイプを観て「ドムが気に入った」ドズル・ザビ中将は、極めて短期間で宇宙戦向けに転用が可能である事を知り、即座に宇宙戦用ドム開発を指示したのだ。
 この時、ジオン軍MS開発局は今までの「地球圏向けの仕様に固執していた」事を忘れたかのように「(ツイマッド社には)宇宙でも使えるように設計させた」とツイマッド社に対して自らの指示したかのように報告し、ドズル・ザビ中将に「先見の明あり」と賞賛されたのだ。
 (同席していたツイマッド社幹部は、ジオン軍MS開発局の変わり身の早さに唖然としていたらしい。)
 しかし、ジオン軍MS開発局はメンツから「リチャード・クラークを更迭せよ」との命令を取り消す訳にもいかなくなっていた。
 これに対してツイマッド社は「命令に従う形で」リチャード・クラーク氏を(開発の目処がついた)ドムのプロジェクトから外し、新たに立ち上げた宇宙戦用ドムの開発プロジェクトのリーダーとしたのであった。
 (開発体制の実態は何も変わらないが。)
 この時から、ツイマッド社内で宇宙戦用ドムは「リチャード・クラーク氏が(ジオン軍MS開発局の指示に背いてまで)守り育てたドム」として「リックのドム」の意味を込め「リックドム」と呼ばれるようになる。 (ジオン軍MS開発局には、リックとは前出の「Re-desIgns as a Cosmic King(宇宙の王としての再設計)」と説明していたが。)
 また、ツイマッド社内での開発コードネームも「R09」とされた。
 これには、この時点で軍からドムにはMS-09の形式番号が割り当てられていたが、リックドムの正式な形式番号は割り当てられておらず、又ドムの開発計画で「ドムのバリェーション」が真剣に具体的に検討されていた時期でもあり、バリェーション用に確保された形式番号に「MS-09S」「MS-09C」「MS-09R」等々、主要番号があった事も影響している。
 (余談であるが、ドムのバリェーションの開発が中止されるのは、この時「あまりにも多くのバリェーションを要求された」事も一因である。)
 この時のツイマッド社内の開発コードネーム「R09」がいつの間にかジオン軍MS開発局にも普及してしまう。
 そしてリックドムの正式採用に伴い「正式に」形式番号を採番する際、あまりにも「R」の開発コードが浸透していた為にリックドムに「MS-09R」が割り当てられる事になる。
 (この時点では、前出のドムのバリェーション開発は中止され、確保されていた形式番号は開放されていた。)
 
 これが当初のツイマッド社内開発コードネーム「R09」ごっちゃになり、初期の資料で宇宙戦用ドムの正式な形式番号として(ジオン軍の正式資料にまで誤って)記載される原因となったのであった。
 
・リックドムのバリエーション
 
 ツイマッド社内のみではあるが、MS-09R(リックドムの正式配備に伴い、MS-R09から開発コードネームが変更された)には以下のバリエーションが開発された事がツイマッド社が公開している資料から確認されている。
 
 MS-R09 「先行量産型」リックドム。
 
 機種転換部隊を中心に配備された。機体にMS-R09と刻印されている部分もあるが、メンテナンス時にMS-09R「量産型」リックドムのパーツと交換され、事実上MS-09Rと差が無くなった機体も多い。
 ジオン軍での本タイプの正式な呼称はMS-09Rとされている。
 
 MS-09R 「量産型」リックドム。
 
 MS-R09で指摘された改修事項のうち、容易に対応可能な物が反映されている。(本格改修した機体が、後述のMS-09RRとして計画されていた。)
 
 MS-09RR 「性能向上型」リックドム。
 
 「先行量産型」リックドム及び「量産型」リックドムで指摘された欠点・改善指摘事項に対応し、また各部のチューニング及び再設計を行った機体。
 本機は設計・試作段階でMS統合整備計画に開発が移管されMS-09R2 リックドム・ツバイとして完成した。
 ツイマッド社での愛称は「ダブル・アール」。
 
 MS-09R2 リックドム・ツバイ。
 
 設計・試作段階だったMS-09RRをベースとしてMS統合整備計画に基づいて他のMSと共通化を図った機体。
 皮肉な事に、後述する「ツイマッド社が開発したバリエーション・モデル」を押さえて量産される事になる。
 
 MS-09RS 「エース、指揮官向け」リックドム。
 
 エースパイロット向けにチューニングした機体。
 MS-09Rをベースとして指揮官用に通信及び索的能力の向上が図られ、エンジンもチューニングされている。
 しかしエンジンをチューニングした結果、出力は2割増となった反面、ピーキーな出力特性となり熟練パイロットでないと乗りこなせない機体となった。
 ツイマッド社での愛称は「ゼッツー」。(由来は不明、同僚のカワサキ氏が命名。<ブライト・T・ハリー氏談>)
 
 MS-09RZ 「ヤクト・リックドム」。
 
 リックドムの最強バージョンとして試作された機体。
 ゲルググ正式採用によってギャンの量産計画が頓挫したツイマッド社が、リックドムの生産打ち切りを回避すべく試作した機体。
 (ツイマッド社としては、対MS戦用のゲルググ、対艦攻撃用のリックドムとする事による住み分けを狙っていた。)
 重装甲による防御力はゲルググを上回り、加速性能はMAに匹敵する性能を出した、とされている。
 ツイマッド社は(連邦にMAは存在していないにも関わらず)、MSより1ランク上の性能を持つMAに対応できるMSとして「MAキラー」と呼称している。
 しかしながら製造コストがゲルググを上回り、又政治的な判断により正式採用を見送られた。
 ツイマッド社での愛称は「MAキラー」。
 
 MS-09RSS 「シュツルム・リックドム」
 
 リックドムの特殊バージョンとして試作された機体。
 MS-09RSをベースに対艦攻撃用任務をメインに考え一撃離脱能力、特に加速力・最高速の大幅向上をメインに再設計した機体。
 (MS-09RSをベースとしたのは、その高い通信・索的能力を必要とした為。)
 連邦軍の前衛艦隊を、その加速力と最高速(そしてリックドムの重装甲)で突破し、旗艦や「ソーラ・レイ システム」指揮統制艦を撃破する事を目標とした。
 (ソロモンが攻略された直後でもあり、ジオン軍は連邦のソーラ・レイシステムによりサイド3本国やア・バオア・クー、グラナダが「焼かれる」事に重大な危機感をもっていた。)
 テストでは当時のジオン軍で最高の加速力・最高速を誇っていた量産型MA「ビグロ」を上回る加速性能を出した。
 しかしながら、その強力なエンジンは機体後方に「白い残光」(MS-09RSSをテストしたパイロットは、「宇宙空間であるのに、まるで白煙を吐いているかのような」、と表現している)を残す為に発見・追跡されやすく、また機動力が極めて悪い(前出のパイロットは「加速性能はすごいが、曲がらないし止まれない」と表現している)点が問題視され、量産されなかった。
 ツイマッド社での愛称は「マッハ3」。((由来は不明、同僚のカワサキ氏が命名。<ブライト・T・ハリー氏談>))
 
 
・赤いリックドム
 
 最近発見された資料に、興味深い記述と画像が発見された。
 ビームバズーカ(この兵器は存在した事自体が最高機密であり、こういった画像が流出した事自体が奇跡に近い)の試射試験を行っているリックドムの画像の片隅に、「赤く塗装されたリックドム」が写っているのだ。
 「赤」を機体色としているエース・パイロットはシャア・アズナブル少佐とジョニーライデン大尉が有名であるが、「赤」の色合いからシャア・アズナブル少佐に提供される予定の機体だと推測される。
 ツイマッド社はこの当時、「自社の機体を駆るエースパイロット」を探しており、実際にジオン宇宙軍を経由して数名に打診している事が確認されている。
 この画像は、その撮影日時からガルマ・ザビ大佐戦死前の物であり、当時ドズル・ザビ中将の配下だったシャア・アズナブル少佐に与えられる予定であった機体である可能性が高い。
 この時点で、シャア・アズナブル少佐は地球圏でガルマ・ザビ大佐の指揮下に入り、連邦軍の伝説的MS「ガンダム」との戦闘に明け暮れていた。
 今となっては推測でしかないが、ドズル・ザビ中将はガンダム/ホワイトベース撃破の褒賞としてシャア・アズナブル少佐にリックドムを与える予定であったと思われる。
 (これは、ドズル・ザビ中将が溺愛していた弟・ガルマ・ザビ大佐に功を立てさせた褒賞の意味合いも強いと思われる。)
 しかし、シャア・アズナブル少佐はガルマ・ザビ大佐戦死の責任を問われ、またドズル・ザビ中将の怒りを買い、軍法会議で死刑こそ免れたものの、事実上軍籍を剥奪されかけていた。
 そんなとき、キシリア・ザビ少将に「拾われた」シャア・アズナブル少佐に、ドズル・ザビ中将が用意した「赤いリックドム」が渡る事は無かった。
 「赤いリックドム」のその後どうなったかは、不明である。
 一部の連邦軍パイロットは戦場で「通常の3倍の速度で機動する赤いリックドムに遭遇した。」と報告しているが。
 
 
 



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