公文書公開審査会の答申(第1号)









                               市公審答申第1号

市川市議会
議長 杉沢順一 様


                        市川市公文書公開審査会
                        会長 飯沼光夫



         異議申し立てに対する決定について(答申)



 平成10年5月8日付け市議第68号で諮問のあった書きに事案について、審議
した結果、別紙のとおり答申します。


                  記


 諮問第1号 「平成9年8月20日から22日に行った北見市ほかへ視察した
       旅行日程表の詳細を示す書類」の請求拒否(文書不存在)決定








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                                別紙
諮問第1号


               答     申


第1 審査会の結論

   不服申立人の異議申立てを却下すべきである。
   ただし、今後は、審査会の意見を踏まえて、公文書の公開に備えるべきである。


第2 事実

 1 異議申立てに至る経過

 (1)公開請求
     異議申立人は、平成10年3月9日、市川市公文書公開条例(平成9年条例
    第2号)第6条の規定に基づき、「平成9年8月20日から22日に行った
    北見市ほかへ視察した旅行日程表の詳細を示す書類」の公開を求めた。

 (2)実施機関の決定
     実施機関は、平成10年3月23日市議第528号で「本件請求の文書は
    視察する議員のため、資料として作成しているが、視察終了後は処分し
    保有していないのが現状である。」として公文書公開請求拒否(文書不存在)
    の決定をし、異議申立人へ通知した。

 (3)異議申立て
     これに対し異議申立人は、平成10年4月24日、行政不服審査法第6条の
    規定により、実施機関に対し異議申立てを行った。

 2 異議申立ての趣旨

    異議申立人の平成10年3月9日付「平成9年8月20日から22日に行った
    北見市ほかへ視察した旅行日程表の詳細を示す書類」の公開請求に対し、
    市川市議会議長杉沢順一が平成10年3月23日市議第528号の決定通知書
    で行った、請求拒否決定処分を取り消し、公開するとの決定を求める。

 3 異議申立ての主張

    異議申立人は、要旨次のように主張している。

    本件公開請求拒否決定通知書によると、当該公文書は不存在であり、
    その理由は「視察する議員のため、資料として作成していますが、視察終了後
    は処分して保有していないのが現状であります。」と説明している。

   (1)しかしながら、公金を使用し、市民のための視察をするのであるから、
     実施機関としては、どのような視察をどのくらい時間をかけて、どのように
     実施するといった内容の公文書が保存されるべき文書としてあって然るべき
     であり、どこか探せばあるとしか考えられない。
      上記の公文書は視察する議員の便宜で渡される資料とは別個のものである。

   (2)仮に、上記のような文書が不存在だったとしても、
     視察する議員の便宜資料が作成されていれば、手書きでなく、
     フロッピーディスク中のファイルとして残っているはずである。
      このファイルは、組織として作成された上記の公文書に変わる重要な意味
     を持つ保存しておくべき公開対象資料であり、消去されることなく、今なお
     存在するに違いないと考える。

   (3)議会事務局職員は、実施機関からの命令を受けて本件視察に随行したもの
     であるから、道職員から実施機関に復命書が作成・提出されて然るべき
     である。

     以上のとおり、当該請求対象文書は存在していることが十分に考えられ、
    不存在を理由とする公開請求拒否決定は不当であり、公開すべきである。


 4 実施機関の主張

    実施機関は、要旨次のように主張している。

   (1)本件公開請求にかかる北見市ほかへ視察した旅行日程表の詳細を示す書類
     に付いては、「視察日程表」として便宜上作成しているメモ程度のものしか
     なく、視察報告書(既公開)は作成するが、同報告書には日程の詳細を示す
     記載は無く、別途日程の詳細を示す公文書は作成していない。

   (2)議員視察の便宜のために、集合時間・視察先等が記載されたメモ程度の
     「視察日程表」は随行職員が作成している。

      従来、議員の行政視察に関する日程表は、その視察を順調に行うための
     補助的なものとして随行する職員が独自に作成し配布してきたものであって
     慣例に基づき、その取扱いについては職員メモとし、作成、配布、廃棄に
     当たっては職員個人の判断に委ねてきたものである。

      随行職員及び実施機関は、以上の慣行に加え、この日程表が、連絡などの
     ための簡単な書面であること、配布先が視察議員と議会事務局の直属の上司
    (議会事務局長、同次長、庶務課長、同係長、議事課長、同係長、調査係長)
          という限られたものであること、また随行職員の付かない視察では
     そのようなメモも作成しないことから、公文書として認識していない。

      このような事情から、随行職員は自らの判断で、本件視察終了後に
     その作成にかかる本件「視察日程表」を廃棄したものであり、また配布先の
     上司にもその旨の確認したが現存していない。

   (3)本件「視察日程表」は、随行職員の一人が自費購入のワードプロセッサー
     により作成したものであり、当該随行職員が平成9年10月中旬に富士市へ
     の視察に随行するに際し、本件「視察日程表」を書式として呼び出して
     富士市の「視察日程表」を作成した上、上書き保存したため、
     本件「視察日程表」は消去されてしまった。その際上書き保存された富士市
    「視察日程表」も同年12月にフロッピーディスクの文書整理を行った際、
     不要文書として文書抹消してしまったため、現在フロッピーディスクの
     ファイルにも文書保存されていない。

     以上のとおり、本件対象文書はどのような形でも存在していない。

     なお、実施機関は、本件異議申し立てに対する上記の主張とは別に、
    視察に関し、次の改善策を執ることとする。
     ア 今後は、視察日時、説明者、視察場所、視察者、調査事項を記載した
      「所管事務調査結果報告書」を作成する。
     イ 「視察日程表」については、公文書として位置づけ、上記報告書に
      添付し保存する。


第3 審査会の判断

  1 当審査会は、平成10年5月8日市川市議会議長杉沢順一から、市川市公文書
   公開条例第18条に基づく、本件公文書公開等決定不服申し立て塩案について
   試問を受け、異議申立人の平成10年4月24日付異議申立書、実施機関の請求
   拒否理由説明書等関係書類を精査し、さらに平成10年5月19日及び同年6月
   9日に実施機関の関係者から事情聴取する等して調査した。

  2 当審査会は、上記のとおり調査したが、異議申立人が前記第2の3で主張する
   本件視察の日程表の詳細を示す文書及び文書に代わるべきものの存在を確認
   できなかった。

  3 よって当審査会は、前記第1に記載のとおり答申する。


第4 審査会の意見

    本件諮問に対する答申に付加して、当審査会は、次のとおり意見を申述する。

  1 市川市公文書公開条例では、その第1条で、市民の知る権利を保障すること
   により、行政運営の公開性の向上と公正の確保を図り、行政活動を市民に説明
   する責務が全うされるようにするとともに、市民の行政への参画の促進と
   開かれた市政の実現に資することを、目的とすると規定されている。
    このことは、市政を信託した主権者に対し、市政への参画のために的確な
   判断のもとになる正確なあらゆる行政情報を提供する義務が市川市に存すること
   を宣言したものであると解せられる。

  (1)詳細を記載した公文書の作成・保存
      このような視点から考えると、本件異議申立人が指摘するように、
     市の公金を使用してなされる市川市議会議員の視察については、視察日時、
     視察内容、視察場所等の詳細を記載した公文書が作成・保存されて然るべき
     とすることは常識の範囲内であると考えられる。
     「視察日程表」についても、単に連絡メモではなく、視察議員がどのような
     日程でどのような視察をなす予定であるかは、市民にとって市政参加のため
     重要な行政情報であると考えられる。

  (2)連絡用メモの公文書性
      実施機関において、「視察日程表」が公文書として取り扱われて
     こなかった点については、視察日程の行政情報としての認識不足を指摘
     せざるを得ないものである。

      当審査会に提出された当該随行職員の記憶に基づき復元された
    「視察日程表」には、集合時間・場所、航空便名・航空発着時間、視察市の
     概要・電話番号、宿泊先の名称・電話番号が記載されただけの簡略なもので
     あることが明らかである(参考資料として提出された他市に対する「視察
     日程表」と比較して、その内容が概ね復元されていると推測できる。)。

      しかしながら、同「視察日程表」が、7名以上の上司に組織的に配布され
     ており、それらの上司は職務上の連絡の必要が生じた場合には、専ら本件
    「視察日程表」記載事項のみを頼っていたことが明らかである。

      このようなことを考慮すると、本件「視察日程表」は視察日程の詳細が
     記載されているか否かに拘わらず、また従前の慣行に拘わらず公文書として
     取り扱われるべき文書であることは疑いのないところである。

    当審査会は、実施機関において、従前慣例として、その作成、配布、廃棄が
   随行職員の個人的判断に委ねられた連絡用のメモとしての「視察日程表」しか
   作成しなかったこと、及びこのメモを公文書として取り扱っていなかったこと
   は、実施機関が有している説明責任を十分に果たしていなかった、と言わざる
   を得ない。


  2 上記の点について、実施機関は、前記第2の4の主張の中で、
  (1)今後は、視察日時、説明者、視察場所、視察者、調査事項を記載した
    「所管事務調査結果報告書」を作成する。
  (2)「視察日程表」については、公文書として位置づけ、上記報告書に添付し
    保存する。
   ことを改善策としている。

   従って、当審査会においては、同改善策について、内容に充実した
   「所管事務調査結果報告書」の作成・保存と「視察日程表」の公文書としての
   保存を可及的速やかに実施することを期待する。


第5 審査会の処理経過

    当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

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                                  別紙
             審査会の処理経過

   年 月 日                 処 理 内 容


  平成10年

    5月 8日(金)    諮問書の受付

    5月11日(月)    請求拒否理由書の受領

    5月18日(月)    諮問案件に関連して公開した文書の写しの受領

    5月19日(火)    請求拒否理由の説明及び質疑(第1回審査会)

    6月 9日(火)    審議(第2回審査会)

    7月14日(火)    審議(第3回審査会)

    7月29日(水)    答申







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