3.デマンド故障率の算出

 デマンド故障率は、時間故障率と同様、34プラントにおける10年間の運転経験をもとに算出する。  対象機器は、デマンドデ-タの収集が可能な非常用ディーゼル発電機、遮断器等の15機種(表 3.1.1) とした。
 デマンドデータは、調査開始した時点(1993年時点)で、過去の1982年度からの全てのデータを調査することが困難であるため、実プラントでの調査は、至近の運転サイクルのデータを収集し、過去10ヵ年のデマンド回数を推定する方法をとった。
 また、調査作業の効率化をはかるため、プラントの機器構成が同じで、機器のサーベランス方法が同じプラント間では、代表1プラントを選定し、調査を実施した。
 その他のプラントは、代表プラントのデマンドから推定することとした。

3.1 データ収集方法

 デマンド故障率算出のための機器員数、デマンド、故障データの収集方法を記す。

3.1.1 対象機器
 デマンド故障率整備機器は、表 3.1.1に示す15機種とする。

3.1.2 対象プラント
 対象プラントは、時間故障率と同じく表 2.1.2-1に示す34プラントとした。

3.1.3 対象系統
 サ-ベランス試験によるデマンド回数を把握することのできる表 3.1.3に示す安全系を対象系統とする。

3.1.4 機器の選定
 時間故障率と同じく対象系統に付属する主要な機器を対象とする。
 ただし、空気作動弁、油圧作動弁、安全弁については、デマンドデータを得るために、表 3.1.4に示す機器も対象とした。
 また、遮断器、電磁弁のデマンドについては、表 3.1.4に示す関連機器のデマンドと同数として推定を行った。

3.1.5 機器故障データ
 機器故障データは、時間故障率と同じNICSに登録された1982年度から1991年度の故障トラブル情報とした。

3.1.6 デマンドデータの調査
 機器構成および定例試験の運用が同じと考えられるプラントグループ毎にデマンドデータの調査を実施する代表プラントを選定した。選定した代表プラントについて、至近の1サイクル(運転と定期検査期間を含めて)におけるサーベランス、機能検査での機器のデマンド回数(起動(作動)回数)を調査した。代表プラントとプラントグループの関係及び調査期間を表3.1.6-1に示す。
 調査対象としたデマンドの定義を表 3.1.6-2に示す。

3.2 機器故障データの分析方法

 デマンド故障率算出のための機器故障データの分析方法を記す。

3.2.1 評価期間
 時間故障率と同じ原子炉運転中を原則とするが、プラントの運転中と同じ機器状態にある機能検査中も対象とする。

3.2.2 機器バウンダリ
 時間故障率に同じ。(-> バウンダリメニューへ)

3.2.3 機器故障モード
 対象機種の故障モードの定義を表 3.2.3に示す。

3.2.4 故障の判定基準
 時間故障率に同じ。

3.3 デマンド故障率の算出方法

 デマンド故障率算出のためのデマンド回数推定方法、故障率算出方法を記す。

(1)デマンド回数推定方法
   評価期間(10ヵ年)の代表プラントにおける機器Aの故障モードiに対応するデマンド回数は次式により算出する。


        T
D_Ai = D_OAi * --- + (D_mAi + D_fAi) * N   (3.3-1)
        t

D_Ai  :  機器Aの故障モードi に対応する10年間の推定デマンド回数
D_OAi  :  機器Aの故障モードi に対応する代表プラントの調査期間における運転中サーベランスデマンド回数
D_mAi  :  機器Aの故障モードi に対応する代表プラントの調査期間のその他サーベランスデマンド回数
D_fAi  :  機器Aの故障モードi に対応する代表プラントの調査期間の機能検査デマンド回数
t  :  代表プラントの調査期間の原子炉運転時間
T  :  代表プラントの10年間の原子炉運転時間
N  :  代表プラントの10年間の定検回数

   また、代表プラント以外のデマンド回数は、代表プラントのデータを用いて次式により算出する。

        D_OAi
D_Ai = ------- * Tj + (D_mAi + D_fAi) * Nj    (3.3-2)
          t
Tj  :  当該プラントの10年間の原子炉運転時間
Nj  :  当該プラントの10年間の定検回数

(2)デマンド故障率の算出方法
   機種Aの故障モード別デマンド故障率λAdは次式により求める。

        rAd  
λAd = ----- [1/D]                           (3.3-3)
        DAd         
rAd  :  対象期間内の機種Aの故障モード別故障件数
DAd  :  対象期間内の機種Aの故障モード別総デマンド回数

r>0の時の信頼区間(両側検定)

              χ2 (2r , 1-α/2)
下限値λdL = ---------------------           (3.3-4)
                  2D

              χ2 (2r + 2 , α/2)
上限値λdU = ---------------------           (3.3-5)
                  2D
            2D                      

r=0の時の上限値(片側検定)

              χ2 (2 , α)
上限値λdU = --------------                  (3.3-6)
                  2D

  χ2 (2r,α)  :  自由度2rのχ2 分布の上側累積確率100α%を与える点
  (1-α)  :  信頼性係数(本評価では90%の信頼性区間とするため、α=0.1)

3.4 収集データ

 データ収集方法に基づき収集した機器のデマンド、故障データの調査、分析結果を記す。

3.4.1 機器のデマンド
 代表プラントでのデマンド調査結果を表 3.4.1-1に示す。
 また、プラント毎のデマンド集計結果を表3.4.1-2 に示す。

3.4.2 機器の故障データ
 各プラントの機器故障モード毎の故障件数を表 3.4.2に示す。

3.5 デマンド故障率の算出結果

 機器のデマンド、故障データからデマンド故障率を算出した結果を表 3.5に示す。