Quick Access to the music of Reich





スティーヴ・ライヒ (Steve Reich)
1936年、ニューヨーク生まれの作曲家。

ある音素材を繰り返し演奏させるためにテープ・ループ(長いテー
プ)を制作している過程で、同じ素材の2本のテープを同時再生さ
せた際に生じる両チャンネル間の微妙なズレの面白さに偶然気付く
ことを原点として、現在までに至るいわゆる「ミニマル・ミュージッ
ク」と呼ばれるカテゴリの周辺に位置する作品を発表してきた。
なお、自身がこのミニマルという言葉に否定的であることと、微妙
で徐々に生じるズレはライヒの音楽の一側面に過ぎないことはライ
ヒのトップページ(前ページ)「ライヒの音楽語法」でも扱って
います。


▼ スタイルの変遷

ごくおおまかにライヒの音楽のスタイルとその変遷を10年単位で
見ると、次のようになる。

1960年代〜 
・2本のテープ・ループに生じるズレの効果
 (「フェイズ・シフティング」)
・上記と同様の音響効果を楽器と演奏者によって得る作品
1970年代〜
・徐々に生じるズレから音符単位の明確なズレへの変化
・アンサンブルの大型化
・「ABCDCBA」といった、アーチ型の構造
1980年代〜
・テクスト(歌詞)の導入
・室内楽からオーケストラへの一層拡大された編成
・多楽章化
・緩やかなテンポ(緩徐楽章)
1990年代〜
・言葉の断片とその抑揚・リズムと楽器の融合
・映像とのコラボレーション、ミクスト・メディア
・これまでの手法の再現・融合


▼ ライヒと「ズレ」

前述のふたつのテープループがズレるプロセスというものをものす
ごく卑近な例で視覚的にイメージするなら、下のようなレースのカー
テンを2枚重ねてずらしていく過程を眺めるという感じに近いだろ
うか。


phase shifting

 ↓

phase shifting



こういう連続的なズレをテープ作品で実現したのが "It's Gonna
Rain" や "Come Out"(アルバム『ライヒ・リミックス』でケン・
イシイがリミクスを担当した作品)で、それを生身の演奏家が再現
したのが "Piano Phase" や "Violin Phase" 。 前述のカーテンの
たとえでも分かるように、微妙な連続的変化の各瞬間の内に無限の
ヴァリエイションが生じることになる。


▼ 原理としての「ミニマリズム」

ライヒの音楽がこうして微細な音の表情の変化の追及からスタート
したことが、以後の方向を決定づけた要因となっている。扱われる
音楽素材の単位の小ささ・時間的短さというものが確かに最小限の
ものでありながら、そこから豊かな響き引き出す音楽を数多く書い
てきたのである。つまり、素材の小ささと音楽の結果に相関関係が
ないということはぜひ知っておくべきで、ミニマル・ミュージック
とは作品の限界を意図的に設定した控えめな音楽という意味ではな
い。ミニマルという言葉は、「音楽を走らせる原理を指すことには
一定の有効性はあるかもしれない」、くらいに考えておくと俄然面
白くなってくるだろう。


■トップページへ戻る
 詳細へジャンプするには、
■ スティーヴ・ライヒの音楽語法
■ 作品リスト/ディスクガイド






・h o m e・ ・minimal・