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その1


×月×日
 今日から手記を残す事にした。というより愚痴帳と言った方が良いかもしれぬ。今までは近衛戦闘員Aにくだまいてここまでやってこれたが、最近とみにもまして鬱憤が募るばかりでどこかに捌け口でもないとワシの体がまいってしまいそうだからだ。医者からも『これ以上ストレスは貯めないほうが良い』と注意されたし。

 午前中、次の作戦会議を開くことにする。議題は東京都民抹殺。どういうつてをたどってかソレを聞きつけたプリンスも参加。あれほどアイツには言うなと言ったのに誰かが金につられて情報を売ったらしい。アイツが参加するというだけで参加者全員のやる気が失せる。案の定『俺とダークマターで一人一殺すれば良い』とほざく。じゃぁ何か。東京都民は二人しかいないという事か。恐らく『ひとりいっさつ』という言葉の格好良さだけで履いたのだろう。流石に誰も二の句が継げずに昼。仕出し弁当を頼む。今日はお好みフライ弁当。胃潰瘍気味のワシには少しばかり重いが、閣下のポケットマネーで出してくれた以上、食べないワケにはいかぬ。隠れて胃腸薬を飲んで飲み込むことにする。
 午後、結局バカボンの一言が尾を引いて会議まとまらず、解散。午後4時まで執務室で書類の確認。どうやらペットボトルは所定の場所に集めて捨てなければならなくなるらしい。面倒くさい事この上ないが、町内の付き合いもあるし、何より会長の古田さんトコが口うるさいので出来る限り協力しておこうと思う。部下にコピーさせ組織内の各部署に張り出す事にする。総務にペットボトル専用のゴミ箱部署分購入するように指示。

 午後6時帰宅。夕食は駅の立ち食いそばでざるそば。今月は苦しい。午後9時就寝。


×月○日
 執務室で事務をしていると、突然、ドクターが顔を出す。なんでも新しい怪人を作ったとか。『センヌキバズーカ』というその怪人、得意技は時速2kmで打ち出すセンヌキだとか。胃がキリキリ痛む。一体何の役に立つのか分からぬ。こんな怪人、一体どうやって作戦に使えというのだろうか。
 午後、閣下に拝謁。センヌキバズーカを紹介する。作戦名『歌舞伎町混乱地獄』。さりげなくセンヌキバズーカを飲み屋に潜入させ、地元ヤクザにセンヌキを射出、それを酔っぱらいの仕業にして混乱させようという作戦だ。死亡者が出れば勿怪の幸いだが、そもそもがしてこんな怪人他にどう使えというのか。
 午後6時帰宅。ビールを片手にテレビ閲覧。午後11時ダークマターより電話。作戦の結果報告との事。1件目では見事ボコにして酔っぱらい一人救急車で運ばれていったらしい。が、2件目でイキナリ正体がばれセンヌキバズーカがボコにされたとの事。今、救急車を呼んだが自分も付き添った方がいいか、保険が効くのか質問される。そんなの知るか。適当にやっとけと言って電話を叩ききる。


×月△日
 午前10時出社。執務室に行くとダークマターが待っていた。センヌキバズーカは骨折2カ所で、とりあえず自分の保険証を出しておいたから立て替えて欲しいとの事。疲れ果てて何も言う気がしないので必要経費申請書にサインして叩き返す。
 午後4時。いつものように休暇中のシスターQが『復職願』を携えて執務室を尋ねてくる。今度の原因はなんだと聞くと『私の前で屁をこいた。結婚前にはしなかったのに。』とかなりの憤慨気味。いい加減疲れ果ててきたが、儀式的に結婚するとはどういう事か家庭を持つとはどういう事か改めてコンコンと説教する。
 午後6時帰宅。新聞のテレビ欄に目を通すも見たいものがないので、芽が伸び始めたジャガイモを煮っ転がしにして時間を潰す。我ながら良い味具合で満足。


×月◎日
 昼飯。近衛戦闘員Aと会食。孫の写真を見せて貰う。なかなか聡明そうなお子さんだった。彼の様な人材がいてくれればと思わず声を漏らす。近衛戦闘員A、一瞬聞かなかったフリをするものの『・・・まだ、これからじゃないですか。頑張ってくださいよ。』と励ましてくれる。ありがたい。
 午後ドクターが顔を出す。今度の怪人は『ツメキリニンジャ』。どうも最近彼は家庭用品シリーズに凝っているらしい。仕方がないので『バカOL泥沼地獄』作戦という我ながらバカげた作戦を閣下に奏上。『いいんでないの?』と通ってしまった。仕方がないので作戦指揮官に指示、『夜、一人暮らしのOLの所に忍び込んでクソ長い爪を全部深爪にして精神的なダメージを与えて来い。』言っていて自分が情けなくなる。胃がすこぶる痛いので早退。
 深夜三時、作戦指揮官から電話。『1件目の部屋に忍び込もうとした所、下着ドロと間違えられ警察に尋問を受けているのだが、自分はどうしたらよいのだろうか、そして、ツメキリニンジャはどうさせるべきか。』との事。『初犯で許して貰えば?』と投げやる。


×月■日
 ダークマターから結果報告。現行犯ではあるものの初犯であるし、何より忍び込もうとした先の女性が起訴しないでくれたので、助かったが、ツメキリニンジャは『親に申し訳が立たない』と故郷にに帰ったとの報告を受ける。頭が痛い。
 閣下と会食。聞いているだけでワクワクしてくるような壮大な夢を語ってくれるが、やっぱり現実というものが見えてない。そこへたどり着くプロセスを少しは考えて頂きたいものだ。

1999/02/10更新分
×月◇日
 大手犯罪組織であるショッカーさん所の部長から電話。
『世界征服機構さんトコロのプリンス・ゴーショさんという方がウチにいらっしゃいまして、ウチと共同戦線を張れば世界征服が早まるとおっしゃっているのですが、身分を証明なさるものをもっていらっしゃいませんので、ご確認いたしますがそちらにプリンス・ゴーショさんという方はおられますか?』
 との事。口調は丁寧であるがまだ組織が数人の構成員しかいなかった頃何度か下請けをっやった事もあるのでウチの存在を知らないはずもなく、要するに『早く迎えに来い』という意味に解釈。慌てて文明堂のカステラを手みやげにショッカー本部に向かう。どうも、あのバカボン誰にことわる事なく勝手に話を持っていったらしい。ウチとショッカーさんでは規模が違いすぎる。万が一にも話がまとまればまた下請け結社か孫請け結社に逆戻りする事になる。本部にで尋ねると受付嬢になんとも言えない顔をされるがあのバカボンが何をしたか大凡見当が付くのでひたすら恐縮する。電話をかけてきた部長と改めて名刺交換しひたすら謝ってバカボンを連れ戻す。別れ際部長さんに『ライバルとしてお互い頑張りましょう』と肩を叩かれる。『ライバルと言えるようになったら来てくださいね』と解釈。帰りの車中で説教。バカボンかなり不機嫌。


×月▲日
 執務室にてかねてより問題であった人材不足について解消策を考えていると、突然組織の構成員が大挙して陳情にくる。
「辞めないでください!」
「もし辞めるのでしたら私たちも連れていってください。」
「俺は閣下と筆頭補佐官という二人がいてこその世界征服機構だと思うんです!」
 等々。話の筋がまったく見えず、しばらく話し合う。どうも、ワシが人材不足解消の為、ウチも広告をだそうかと転職雑誌を見ていたのを勘違いしたらしい。きちんと説明して騒ぎを納める。みんなワシをそこまで慕ってくれるのかと感謝の意を表してこれからも力を貸して欲しい、と構成員達に頭を下げるも、内心ワシを慕っているよりワシのいない組織に未来が見えないからだろうが、と毒づく。


×月Z日
 午後2時。研究所を尋ねドクターと会見。毒ガスを散布する様な怪人を作ってくれと頼み込むも、今ひとつ気乗りしない様子。なおも説得を続け『まぁ考えておこう』と了解を得る。これで少しは世界征服の足がかりにはなるだろう。
 帰宅すると定年退職後、田舎に土地を買って農家を営んでいる実兄より小包あり。中には米と手紙。文章は『頑張っているか?』のみ。無口で誠実な兄らしい手紙。思わず目頭が熱くなる。電話にて義姉にお礼。


×月あ日
 午前中、ドクター新怪人を連れてやってくる。『ドクガスラー』という非常に投げやりなネーミングであるが役立つなら文句はない。ドクター大仰にドクガスラーの自慢。『毒ガスを吸い、毒ガスを吐く』らしい。なんか一抹の不安を感じるのは神経がすり減っているせいだろうか。
 案の定。ダークマターより電話。ドクガスラーがガスマスクを外した途端倒れてしまった。どういう事か、との事。慌ててドクターに内線。『ドクガスラーは毒ガスを吸い、毒ガスを吐く。つまり、普通の人間が空気を吸って空気を吐く様なもの。いつもは毒ガスが充満したガスマスクを装着しているから生きているが、まぁ、ガスマスク外したら酸欠状態になるわな。いや、この場合は毒ガス欠か?はっはっは。』との解答。胃がギシギシと軋む。ダークマターに帰還命令を出す。ダークマター、事情を聞いて曰く、帰りたいのはヤマヤマだが、ドクガスラーが重すぎて一人じゃ帰れない。迎えをよこして欲しい、との事。適当にタクシーを拾って来いと答える。ダークマター食らいついて曰く、タクシー代は請求して良いか?深くため息。領収書を貰って来いよと答える。さらにダークマター。上様で良いか、それとも自分の名前の方が良いか?好きにしろと答えて電話を切る。

×月E日
 午前中、アメリカ支部の手助けとして派遣、国防総省を内偵していたはずのシスターQが訪ねてくる。
『この度、結婚する事に致しましたので退職させていただきたい。』
 との事。今度はどんな男かと訪ねると何でも国防省の内偵中に知り合った別の組織の凄腕のスパイらしい。とりあえず、シスターQの残り有給休暇日数を計算。一応受け取っておくことにする。今度こそ幸せになれよとお決まりの文句。
 午後、作戦会議。やっぱりバカボン参加。誰が教えたのかという目で参加者全員を見渡す。が、誰もがウンザリとした表情をしていることろ見ると恐らく犯人はここにはいないであろうと察する。仕方なく会議を進める。今日の議題は人類洗脳計画について。長期計画になるがここは一つエスカレータ式の小、中、大学校を乗っ取り、時間をかけて我らが理想を刷り込ませるのはどうかと話が珍しく進むも、バカボンの『その作戦は非常に有効だと思うが、どうせなら女子校がいい。俺理事長で。』という下心丸出しの一言で全員が会議を投げる。


×月α日
 新怪人『アサガオ男』。体に咲かせた朝顔の花から催眠香を放ち、その匂いを嗅いだ人間の思考能力を奪い意のままに操れるという。久々にまとも。早速閣下に奏上『いいネェ。』とのお言葉を頂く。ダークマターに指示。
 しばらく執務室で休息。と、電話が鳴り出す。嫌な予感。受話器を取ればやはりダークマター。花が咲かないのだがどうすれば良いか、との事。ドクターに内線にて詰問。
「朝顔は夏咲くもんだからな、後3ヶ月待て。」
 との事。作戦の一時中断を指示。午後6時。ダークマターとアサガオ男帰還。ダークマターにアサガオ男の管理を指示。以下ダークマターとの会話。
「観察日記はつけるか?」
「いらん。」
 お前は小学生か。

×月※日
 出社と同時にダークマターが訪ねてくる。始末書を提出にきたとの事。理由を尋ねた所、アサガオ男を早く育てようとしたら、根が腐って死んでしまったらしい。水をやりすぎたのかも、とうなだれている。育てているウチに愛着が湧いたのか。雰囲気的に怒るに怒れなくなり、何事も急いだらいかんよ、今度はちゃんと世話しなさいね。と努めて優しく慰める。どちらにせよ、ドクターには新しい怪人の製造を頼んでおくことにする。
 午後。暦を見てそろそろかなと思っていた通り、シスターQが復職願を持って訪ねてくる。こんどは何が原因かと訪ねると『なんか新聞が臭い気がするからやめてと言ったのに、トイレに新聞を持ち込んで長居する。私の事を全然大事にしてくれない。』との事。何度繰り返したかわらかないが、結婚するとはどういう事か家庭をもつとはどういう事かを説教。胃がシクシクと痛むので早々に帰宅。みそ汁の出汁の取り方、最高。


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