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その2


○月□日
 1ヶ月ぶりの休暇。1ヶ月分の衣服を洗濯する。小さいながら我が家。縁側で茶の一杯でも飲みながら日にあたっていると平和というもののありがたさに心底感謝する。庭をナワバリにしているらしい猫がやってきて、初めて人をみたという様な驚きを見せる。が、まったく恐れた様子もなく一番日当たりの良い所で寝転がる。しみじみ平和。
 午後、久々の休暇を聞いて嫁にいった娘が孫娘を連れてやってくる。見れば娘も母親そっくりに、孫には娘が小さい頃の面影がある。きっとこの子も美人に育つに違いない。感慨ひとしお。さらに孫かハキハキと自分の名前をいうのに感動。しばらく孫と戯れる。
「おじいちゃんの事、大スキ!」
 もう死んでもいい。


○月×日
 休み明け1日目。執務室に入ると未決済の書類が異様にすくない。おかしい。午後すぐに判明。ワシの休みの間に来たプリンスが『ヨー筆頭補佐官がいない間、俺が代わりを努める』と勝手に代理になりポンポンとサインをしたらしい。しかも、
「部下の要求に応えるのも上にたつものの役目だ。」
 とばかりに全部決定として。近衛戦闘員Aが気を利かせて回収に回ったのが今日の朝。頑張ってくれたな、と今度おごりで飲みに行く事を約束。改めて書類に目を通して愕然とする。壁の修繕、都指定ゴミ袋の経費申請、そういったものはまぁ、決定で良かったとしても、だ。
給湯室の備品でバンホーテンのココアなぞ贅沢だ。認めるな。
接待費20万っていうのはなんだ。素直に認めるな。
親戚の子の入学祝い金の経費申請まで認めるな。
 あのバカボン。
 午後10時書類の修正がおわって帰宅。昨日娘が作っておいてくれた煮物の味に再び感激。


○月○日
 午前中、中途採用候補者の検討。履歴書を見る限り優秀。この役職についた時はかなり喜んだものだが、期待の新人として採用したダークマターはあーだったし、これまた10年に一度来るか来ないかと言われたシスターQもあーだったし。これだけで判断していいのかかなり不安。書類審査と面接・筆記試験だけではなく、実地試験も組み込むべきではなかろうか。今度の人事部の会議で提案する事にしよう。
 午後、ドクターが新怪人を連れてくる。しかも2人。『エヌジバー』と『エスジバー』という名で2人1組の磁力攻撃が得意だそうだ。話に聞く限りではかなりまともな気がする。『電子機器発狂地獄』作戦として閣下に奏上。承諾を得る。今回はダークマターとシスターQそれぞれに多方面から攻撃をかけさせる事にする。
 午後4時。エスジバーと一緒に出たハズのシスターQが1人で帰還。エスジバーはどーしたのかと聞くと『砂鉄がくっ付いてザビザビでヤだったからダークマターに押しつけてきた』との事。仕事というものはどういうものか説教。
 午後6時。ダークマターより電話。2人一緒に行動させたらくっついてしまって離れない。との事。
 N極とS極じゃぁ、そりゃまぁ、そうか。と納得していると、更にダークマター。後は若い2人に任せて年寄りは退散したいが、それで良いか、との事。
 珍しくダークマターが冗談を言うな、と思ったがどうも『くっついた』の意味が私の考えているのと違うらしい。聞きたくはないのだが、ドクターに確認。そう言えば、改造するまえは、若いのの言葉で言えばラブラブじゃったの、との事。思わず受話器が机に落ちる。せめて人選位は・・・いや、世界征服機構の意義さえ忘れれば人選は正解と言えるかもしれない。とりあえず、ダークマターに適当に帰ってこい、と指示。まぁ、愛する二人を祝福する事で良しとしよう。


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