新十二生肖 
 
(燃えよテンテン戦え!十二支の大冒険) 

 1990年

 リュウ・ツーイー
チェン・トンツン
リン・シャオロウ 他

 日本では公開されなかった幻の映画。古代中国を舞台に、魔王と十二支達の戦いを描いたSFアクション作品。
 この作品の中でのテンテンの役どころは貝瑪(ベイマ)という生き仏の生まれ変わりなのだが、これが「キョンシーシリーズのテンテン」にも匹敵するほどのハマリ役。活発でおちゃめな美少女道士テンテンに対し、ベイマは優雅で幻想的な魅力がある。例えばキョンシーシリーズでは男勝りのアクションで最前線で戦っていたテンテンだが、この作品ではベイマ自身が戦うというシーンは基本的にはない。それでもその存在感は圧倒的。ストーリーも実に練り込まれており、道中で仲間に加わっていく十二支たちの絶妙な登場方法、喧嘩ばかりしていてもいざという時に仲間のために自らの身を投げうって行く十二支たちの姿、二重・三重に張られた魔王のワナ、そして感動のエンディング…。この映画、一言で言って面白い!まったく芸のない感想で申し訳ないが、本当に傑作。監督は完成度の高さで定評のある幽幻1と同じ趙中興だから、そりゃあ面白いはずだ。幽幻1でも見られた抜群の演出センスがこの作品でも冴えわたっている。作品のスケールも大きいし、アクションの質も高い。どこを取ってもキョンシー作品にヒケを取らない、いやそれ以上の出来映えだ。日本・香港合作でヒットした映画『孔雀王』(ユン・ピョウ、三上博史主演:同名コミックの実写化)の影響を多分に受けている事は一目瞭然なのだが(ラストなんかモロ)、それでもこの監督が作れば幽幻1同様、単なるパクリではなくなってしまうのは、それだけ1つの作品としての完成度が高いからだろう。これほどの傑作が日本で公開されなかったとは……つくづく残念としか言いようがない。
 なお、この作品の入手経路については特集コーナー『幻の新十二生肖を追え!』を参照されたし。

* * *以下追記* * *
【ストーリー】
 古代中国。長い眠りから覚めた魔王が悪の限りを尽くし、世界は絶望と混乱に陥っていた。その頃、チベットのラマ寺院では生き仏の生まれかわりである女児・ベイマが誕生した。ベイマの使命は各地に点在する十二支を集め、魔王を倒すことであった。9年後、ベイマと十二支の仲間たちは運命に導かれるように出会うのだが、蛇姫だけは姿を現さなかった。蛇姫は魔王に操られ手先にされていたのだ。ベイマと十一支は、魔王の城へと乗り込むが、そこには二重、三重に仕掛けられた魔王のワナが待ち受けていた。