Re: 魏誌韓伝の国名

投稿者[ 游惟 ] 発言日時 [7月28日(日)13時08分40秒]

元の発言 [ Re: 魏誌韓伝の国名 ] お名前 [ ピクポポデミ ] 日付 [ 7月27日(土)11時25分10秒 ]

>>音韻的な中期朝鮮語との違いは他にもあって、森博達氏は日本の古代1の倭人伝の地名と人名のなかで、韓伝の地名には次清音字回避の傾向があるとされています。
>>これは倭人伝の特徴と同じで、当時の三韓の言語には有気音がなかった可能性が高いとされています。
しかし中期朝鮮語にも現代語にも、激音と呼ばれる有気音があります。
>>これは訓民正音でも中国音での次清にあたるとされる音で、これが無かったとしたら後代の朝鮮語との明らかな差と思われます。

私は逆に、中国語の方に朝鮮語の「激音」にあたる音がなかったのだと考えています。朝鮮語の「激音」は本当に激しい音であり、「h」音などは「かー、ぺっ!」と痰を吐く時のような激しい音を出します。
私の聞いたことのある北京語・広東語・ビンナン語・客家語・福建語など中国のどの方言にもでそんな激しい発音がされるのを聞いたことがなく、「次清音」の字母の発音も聞けばそんなに激しい音とは思えません。
「訓民清音」で次清音に激音を当てたのは朝鮮人であり、朝鮮人の方が激音が次清音に該当すると判断しただけであって、中国人の方はそうは思っていなかったでしょう。

日本漢字音にしてもそうで、日本人は中国語の「金」/jin/、「民」/min/など/n/で終る文字は「きん」「みん」と「ん」を対応させ、「京」/jing/、「明」/ming/など/ng/でおわるものは「きょう」「みょう」と「う(長音)」に対応させて覚えましたが、中国人が聞けば「きん」「きょう」、「みん」「みょう」が/n/、/ng/の違いに対応しているなどとは想像もつかないはずです。

>>ところが一方で馬韓の国名に良く出てくる、卑離は地名比定などから考えて(下記)、百済の夫里でると思われ、これは新羅地名の火、中期朝鮮語のpOr(原)と関係がありそうだとされています。
(日本語のpara(原)と同根かもしれませんが)

>>韓伝には馬韓と弁韓、辰韓の言語が異なるとされていますが、字種を広韻などで調べて分類してみると、それほどの差は無いように見えます。
これを倭人伝中の音訳文字と比較してみるとその差がはっきりします。

それは方言差でしょう。現代でも慶尚道(辰韓)と全羅道(馬韓)の方言はかなり異なります。

>>もっとも明らかな差はあって、馬韓には前述の卑離国など離で終わる国が十カ国もあるのに(内卑離国七カ国)、弁辰にはありません。
>>馬韓で七カ国ある廬で終わる国が弁辰にはなく、代わりに盧で終わる国が二カ国あります。
弁辰で三カ国ある彌凍で終わる国が馬韓には無く、馬韓には四カ国ある臣で始まる国が弁辰にはありません。

>>ただし馬韓で三カ国以上ある、古で始まる国、不で始まる国、狗で始まる国は弁辰にもあり、弁辰で三カ国以上ある路で終わる国は馬韓にもあります。

>>一方で倭人条中の国名と比較すると、韓に多い不で始まる国、狗で始まる国があり、倭人条中に極めて多い奴で終わる国が弁辰に一カ国ありますが、三韓の場合と比べるとやはり偶発的な類似の印象が強いです。

>>はてさてこの時代の東夷の言語はどうなっていたのでしょう。

細かいことは調べてみなければわかりませんが(といっても私は他のことに忙しいので自分で調べる気はありません)、南朝鮮三韓の言語差は古朝鮮語の方言差に過ぎないと思われるのに対し、小白山脈以北の北朝鮮地域には系統の異なるツングース系言語を話す人々がいたかもしれません。
系統の異なる別言語か、同系統言語の方言差かは外国人には区別が付きにくく、ときには母語話者でさえ区別できないこともあります。実際現代日本人のかなりの部分が朝鮮語と中国語の区別が付いていないし、北京語しか出来ない中国人が広東語を聞いたら別言語だと思うはずです。
この魏志韓伝をインフォーマントが中国語のどの方言を話す人物であり、朝鮮語その他の異言語についてどのくらい知っていたかによって、読み方は変わってくるでしょう。



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