159   それは舞い散る桜のように(BasiL)
 
 桜井舞人(変更不可)は長き時を置いて帰ってきた。この桜舞う丘のある街に。再会と新しい出会いは舞人に何をもたらすのか。
 
 BasiLの第3弾。個人的にはブランド初買いになります。もともと興味はあったので、前作までと比較して一般的になったことを機に購入に踏み切りました。
 初回特典は絵本を思わせる装丁のゲスト、キャラデザ本。なんか微妙なメンツが揃っているように思えます。まぁ、豪華というにはちと語弊があるような気がしないでもありません。
 
 システムは地平線の果てまでアドベンチャー。他に表現のしようもなし。ヒロインの居場所選択などはなく、純粋な文章中の選択肢によってシナリオ分岐していきます。
 足回りは申し分なし。メッセージスキップはなかなか高速ですが、選択肢と選択肢の間がわりと長いので相対的にはやや遅く感じるかもしれません。
 メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ホイールマウスにも対応してますし、ボイスの再生も可能になってます。しかし、どういう訳か、行間が広く開いているので表示される行数は少なめです。まるで行間を読めと言っているかのような大胆な開け方です(意味が違います)。
 
 シナリオはなかなかレベル高いです。文章の読みやすさはかなりのものがあるのではないかと。
 主人公が饒舌でやや特殊なタイプなので人によっては好き嫌いが分かれるかもしれません。有体に言えば口数の多さはギャグの多さなので。そのスタイルも質より量なので寒いこともままあります。
 キャラの個性に則した日常会話がたいへん充実しています。テキストに関しては最高レベルにあるといっても過言ではないかと。それだけにシナリオのないサブヒロインは逆にもったいないなー、と感じてしまうのですが。
 難点はイベントとイベントの接合のさせ方でしょうか。個別ルートに入ってからも節操なく共通イベントが挿入されるのでプレイヤー側は気持ちが切れやすいです。ヒロインとの距離が少し縮まったと思ったら、その後に3回連続でヒロインに無関係のイベントが発生するなど珍しくもありません。序盤と中盤でイベント比率が異なることで、より浮き彫りになってしまっています。
 (ややネタバレのため、以下伏せ字)
 多くのアドベンチャーがそうであるように今作にも別れと再会の演出、その原因があります。言うまでもなく、そこはクライマックスであり、そこが作品の印象を大きく左右します。残念ながらそのあたりがもう一歩のように感じます。
 別れは悲劇であり、悲しみをどう表現するかにかかっています。そこに至る伏線は問題ないと思うのですが、致命的なまでに「溜め」が足りません。幸せを実感するよりも早く不幸が訪れるので悲しいという感情が今ひとつ刺激されません。
 再会は別れを乗り越えた先にあるもので、つまらない言い方をすれば感動する、しなければいけないところです。ところが主人公のつらさがあまり伝わってこない上、本人はなんら苦労することなくヒロインが帰ってくるので感動できません。感慨にふけるほど再会後の会話がないのも厳しいです。
 原因は説得力であり、唐突な展開をすんなり受け止めさせ、進めるために必要不可欠です。1周目から思わせぶりなイベントが数回にわたって起きるのですが、肝心なことがわからないまま、全てのシナリオは終了してしまいます。想像で補完するにはわからないことが多すぎます。
 また説明が足りてないゆえに、これに関するイベントによって全体のテンポが悪くなっています(よって2度目以降は驚くほど快適に)。個人的にはメッセージスキップが使用できない1度目はあまり気に入っていないヒロインから進めることを推奨します。
 今作には珍しく多くの少年少女が登場します。いかにも意味ありげなのですが、困ったことに存在意義はほぼゼロです。主人公で充分に代役が務まるように思うのですが。恐らくは次回作などに繋がると考えられますが、それだけにしてはずいぶんと出番が多いような気がします。
 
 CGはややバランスが悪いように思えます。西又葵氏は苦手な構図とそうでないものの間にかなりの差があるのではないでしょうか。
 立ちCGにも似たようなことが言えます。肘から先が見えるように描かれているカットにはかなりの違和感が。キャラ重視のゲームだけにちと厳しいです。
 各種デモは驚くほど普通。ただ、妙にテキストを多用しているのが気になります。厳選してコレって感じで使った方が効果的だと思うのですが。
 
 音楽は正直、もう一歩。あまり印象に残りません。音使いもあまりうまくないように思います。反面、ボーカル曲は高レベル。この差はどこから来るのでしょうね。
 ボイスはこの作品の最大の売りかもしれません、というくらいの出来。テキストの魅力を何倍にも増幅しています。特に雪村小町のガトリングトークは必聴ものの素晴らしさ。このような演技に出会うたび、ボイスの大事さを痛感します。
 
 まとめ。西又葵氏が原画の「秋桜の空に」。色々な意味でそんな感じです。細かいことは気にしない、キャラが魅力的なら八割方オッケー。そんな人なら文句なくお薦めいたします。やはりバランスが悪いゲームですかね。
 お気に入り:雪村小町
 評点:78 
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、星崎希望
 やっぱり「プリンセス」という大前提がうまく表現されていないと思います。だからプリンセスにしては意外と気さくとかいうのがすんなり納得できないんですよね。全然、意外ではないですよって感じで。文章上ではオーラがどうとかいうぐらいしか書かれていませんしねぇ。
 キャラはもう一歩だし、立ちCGもイマイチ(特に目つき)なんですがイベントのアイデアと希望のリアクションがかなりポイント高いです。わかっていても笑ってしまうというやつでしょうか。
 小町とは違って過去CGの具体的なシーンがないのはもったいない気がします。せっかく2枚もあるのに。希望のおばあちゃんの話もてっきりあるかと思ったんですが。
 
2、八重樫つばさ
 うーん。もったいないですね。キャラは良く、立ちCGもなかなか良いけれどもイベントは似たようなものばかりで寂しい。希望とは反対ですね。
 設定以上の魅力が感じられないと言いますか。会話もあんまり記憶に残らないものが多いような気がしますし。微妙な距離の表現がイマイチかと。これ以上、近づけないとか主人公が思うシーンがあればだいぶ違うと思うんですけど。
 終盤で郁奈の出番が全くないってのはイカンですね。いっそ主人公を叱咤する役でも良かったと思うんですけど。つーか、それが最も主人公とつばさの間に起きている状態を表現できると思うのですが。
 
3、里見こだま
 やはりなんと言ってもねこリュックに限るでしょう。これに関連するイベントは何度見ても笑ってしまいますよ。苦手なメガネもサブキャラだというせいもあってか気にならなかったです。むしろあのツッコミの才能は今作では貴重デスヨ。
 他のヒロインと違って結ばれるまでの過程がちと弱いかなぁ。主人公が好きなのは充分すぎるほど伝わってきますが、先輩のほうはどうもね。あの場で即座に言い返されるほど好かれていたとはとても思えませんよ。
 Hシーンはいきなり頭身が増えていてかなりびっくりです。もしかして西又葵氏は子供が描けないんでしょうか(色々な意味で問題発言)。
 
4、森青葉
 お隣の妹。それだけで全てが語り尽くせそうなほど目立った特徴なし。個性的なメンツに囲まれるとちょっと苦しいですね。
 なによりどう見てもかぐらちゃんの方が魅力的なのが致命的。っていうか、どうして彼女はヒロインじゃないんですか。小町に迫る勢いを持っているいいキャラなのに。納得いきません。
 
5、雪村小町
 いやもう、このゲームは彼女に尽きるでしょう。どんな不利な状況でも諦めることなくネタとして昇華させる絶妙のトーク。そして、明らかにどこかで聞いたことのあるボイス。それは「みずいろ」でポンコツと呼ばれていたとは思えない、進藤さつきを上回るガトリングトーク。もう最高です。彼女がいなければこの作品は凡作になったと言い切っても過言ではありません。それほどの存在感。
 それだけに彼女とあんまりイチャイチャ出来ないのは強く不満。待つのが長かったというのに至福は一瞬という感じでしたよ。


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