246   Princess Holiday〜転がるりんご亭千夜一夜〜(オーガスト)
 
 吟遊詩人を続けながら諸国を回っていた主人公、クリフ・クラウド(変更不可)。3年ぶりに帰ってきた故郷でクリフはちょっとした偶然から一人の少女を助けることになる。ところが、その少女は王国の姫であった。おてんばな姫は社会勉強のために出てきたのだという。面倒を見る羽目になったクリフを待っているものは。
 
 「バイナリィ・ポット」でデビューしたオーガストの第2弾。比較的好評であった証か、封入特典が豪華になってます。特に70ぺージにもわたるラフ設定付きマニュアルは好印象。普通はペラペラですからね。
 
 購入動機は前作がそこそこ以上に気に入ったから。更なる進化を期待して。
 
 素晴らしいことに10月6日現在、目立つバグは出ていないようです。デバッグを強化したのでしょうか。次回作もこの調子でよろしくお願いしたいです。
 
 感想は「バイナリィ・ポット」のページを参照。以上。
 
 と、これは以前もやったネタですが、今回はまさにそんな感じ。これを書くに当たって当該ページを読み直したのですが、書いた本人が驚くほど書こうとしていた内容と似ています。いくら同じブランドとは言え……。
 
 パッケージによると「ファンタジックお姫様ADV」とのこと。相変わらずの唯一無二のジャンル分けを好んでいるようです。
 システム的には移動場所選択型。ヒロインの居場所も分かるので難易度的にはかなり低いです。ただ、ある程度クリアする順番が設定されている模様。
 足回りはキーボードにも対応してかなり進歩してくれたようなのですが、個人的に重要なポイントはあまり変わっておらず。
 メッセージスキップは既読未読を判別してくれた上でスピードは充分。しかし、選択肢を挟むと止まってしまいますし、日付が変わっても同様です。次はなんとか考慮してもらいたいです。
 メッセージの巻き戻しも前作譲り。別画面で行いますが戻れる分量が40クリックと少なめ。ボイスを再生できるのは嬉しいですけど、シナリオを逆上って読むにはちと少ないかと。
 
 シナリオは残念なことにかなり薄くなってます。何と言うかこだわりがいっさい感じられず、物語全体において説得力が皆無。プロット段階で敗北確定という感じです。前作では部分的にライターのこだわりを感じていただけに悲しいです。なにか嫌な見切りをされたような。
 日常会話の寂しさは相変わらずですが、舞台がファンタジー世界であるだけに説明不足の感が否めません。どうもファンタジーのイメージに頼り過ぎであるように思います。
 細かいところでも「文字」の不整合が上げられます。あるイベントCGではアルファベットが書かれているのに別の背景ではオリジナルの文字が用意されていたりと。こういうのはかなりいい加減というイメージを感じてしまうのですが。
 男女の惹かれ合う様子は今回もまるで表現されておらず。特にレイチェルシナリオでは唖然とするほどの唐突さでした。ホントにこれでいいとスタッフは思ったんでしょうか。
 また前作と比べても明らかにボリュームが少ないです。すでに長編というより中編あるいは短編シナリオ集といった感じを受けました。
 ヒロイン5人を終えるとトゥルーエンドへのルートが開けます。この内容がまた賛否両論を呼びそうというか、「否」の方が明らかに多そうというか。ネタバレなので詳しくは書きませんが、なによりこれを用意した意図が全く分からないのが痛いところ。
 さらにトゥルーエンド後、おまけシナリオが出現します。このあたりも前作と同じですね。おまけの面白さも同程度。
 
 CGは採光を意識した塗りが全編に貫かれていて、たとえ夜でも明るい仕上がり。原画、CG共に前作に比べてかなりレベルアップしているかと。明らかに見栄えと言うものが向上しています。
 Hシーンもかなりエロくなっているかと。回数も各キャラ3回以上と、ここだけはハッキリと良くなっていると断言できます。
 立ちCGは各キャラほぼ2種類。それがある程度、表情変化します。これだけだと全然足りません。そこでフェイスウインドウが用意されています。
 立ちCGと同じ大きさでなぜこれが用意されたのか。恐らくはSD的なギャグカットと立ちCGを用意するのが面倒くさいモブキャラのためかと思われます。また、状況によってフェイスウインドウ内の服装がしっかり変わってくれるのは嬉しいところ。
 オープニングデモは今回はメディアプレイヤー再生ではありません。進歩しているなぁ、と思ったら製作は神月社でした。内容は無難なキャラ紹介というところ。
 
 音楽は前作に比べるとやや個性に欠けるように感じました。レベルとしては今回の方が高そうなんですけど、記憶には残らないような気がします。
 主題歌はレティシア姫が歌っているという設定。声優は鳥居花音さん。雰囲気は充分ですが、あの歌声が王国一というのはちとツライような。いえ、駄目とは言いませんが。
 ボイスは前作に引き続いての有名どころが揃っているので何の不安もありません。中でもラピスは個性がしっかりと出ていていい感じかと。
 
 まとめ。完全なる名前負け作品。千夜どころか……。目に見えるところだけ進歩して見えにくいところが退化しているというのは痛すぎます。終盤のレティシアのセリフ「クリフさん、本当にえっちのことしか考えていないんですね…ふう」に集約されている気がします。このまま小さくまとまるような方向に行かないことを望みます。シナリオの奮起を。
 お気に入り:ラピス・メルクリウス・フレイア
 評点:65
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、レティシア・ラ・ミュウ・シンフォニア
 お姫さまVer.の出番が少ないのがあまりにも悲しいです。いえ、格好はいいとしても髪は下ろしたほうが絶対に可愛いと思うんですけどねぇ。
 立ちCGはパジャマが良い感じですけど、世界観は思い切り破壊されているような。まさかチキュウ時代の残りですか?
 しかし、トゥルーエンドその他には不満たらたらですよ。つーか、そもそもあれでは何のために用意したオチなのかがわからない。まさか学生服Hを描きたいからではないでしょうし(もし仮にそうだとしたらデザインはかなりイマイチだと思います)。おまけなんてのがあるんだからそちらで設定無視でやればいいことですから。
 あれならばシンフォニアの世界が前作「バイナリィ・ポット」のゲーム内ゲーム「ワールド」であった、とかいう真相の方がまだましな気がします。っていうか、私は最初のレティシナリオで城の地下の使い回し背景を見た時にそうかと思ってました。
 レティが船に乗れた理由もわからないし、状況からしてラピスが手助けしたってことなんでしょうか。他にもチキュウについてからのやり取りがおかしいような。何も調べないまま動く主人公の行動はまるで理に適っていないのですが。さらにレティが半年遅れで現れた(目覚めた?)理由も不明。もうなにがなにやら。
 おまけと言えばその中でも最後のは完全に蛇足。「レティシアの休日」に混ぜてしまえば済むことですし、なにより悲しいのはCGの使い回し。せっかくリクエストしてのお姫さまHなのに。
 
2、シルフィ・クラウド
 血がつながっているかいないか、という問題がどうでもいい組み合わせというのはどうしても気になってしまいます。やっぱり激しい葛藤こそが面白いと思うので。
 一番、笑ったのはこのシナリオでしか屋根の修理をしない主人公。かなりひどい奴ですなぁ。
 普段着の姿の方が可愛いのにそちらのイベント(CG)がぜーんぜんないのがかなり不満です。
 
3、エレノア・フォートワース
 やっぱり、このシナリオが一番気になるかなぁ。主人公の剣の腕前ってのは明らかにおかしいいよ。ついでにエルが決勝まで勝ち進む当たりにもさっぱり説得力を感じないし。
 進む道を探して悩むってーのはシナリオの牽引力として悪くないと思うのだけれど、その答えの一歩さえ見出さずに逃げるだけのオチというのは論外。最近は他ゲームでもよく見受けられるけど、責任を放棄することが幸せというゲームが多すぎるような。しかも、その後にろくすっぽ困難がないというのがまたなんとも……。
 主人公に特別したいことはない訳だし、エルを王妃にすればもっと丸く治まると思うんですけどねぇ。何も書いていませんけど、エルはどうしても王宮騎士になりたかったようだし。それならレティを見捨てることもないし。というか、レティを放っておいて逃げ出せるというのがなんとも嫌な感じですよ。
 後はHシーンですか。いくらエロゲーと言っても剣術大会前日にするってのはどうかと思うデスヨ。大会当日、がに股になったりしないかハラハラしてましたよ(嘘)。
 
4、レイチェル・ハーベスト
 正体がバレバレなのは仕様ですか。まぁ、他のシナリオに限らず説得力は皆無ですけれども。まぁ、そこらへんはいいとしてもデザイン的に格好悪いというのは由々しきことです。だってこの設定って明らかに「コスチューム別の複数回H」を果たすためのものじゃないですか。それがデザイン的に……というのは多いなる失敗じゃあないですかね。
 にしても他のシナリオもひどいけど、このシナリオの結ばれる過程というのは最悪ですな。見た瞬間に我が目を疑い、次いで笑い出してしまいましたからね。どう見てもやる気がないとしか考えられませんでしたよ。まるで人気投票最下位を見越していたかのような、ってこれは言い過ぎですか。
 なんにしろキャラ的に最も弱いのは否めないところかと。
 
5、ラピス・メルクリウス・フレイア
 ロリであってロリでないあたりがたいへん気に入っております。200歳以上だからこそ、あの騙しているようなHシーンがいいのかも。まー、ホントは年齢なんて関係ない存在なんでしょうが。
 で、結局のところ呪いというのはなんなんでしょうか。トゥルーエンドと何か話が繋がらないような気がするのですが。呪いを解くとひょっとして電池切れで止まったりするのでしょうか。
 肖像画を見ると明らかに現在の彼女は縮まっているように見えるのですが、ここには何か理由があるのでしょうか。あとバリバリの科学時代からあの格好というのはどうかと。もしかして移民団の奴らはリアルなファンタジーサバゲーがやりたかっただけなんじゃないか、とか邪推してしまいますよ。


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