288   MapleClolors2(ApRicoT)
 
 転校を機に俺は変わってやるんだ! 転校デビューを狙っていた十川宗次郎(変更不可)の思惑は初手から木っ端微塵に砕け散ったはずであった。ところが、生来のお人好し体質と運の悪さが紅華学園のお荷物こと2−Bと化学反応を起こして事態は混沌としていく。果たして宗次郎は疫病神なのか、それとも救世主なのか。崖っぷちに追い込まれた2−Bの運命は。
 
 チーム名がブランド名(?)に変わったりしてせわしないApRicoTの新作は隠れた名作とも評された「MapleClolors」の続編。今度は演目が演劇のみから3種類に増えました。
 購入動機は「AYAKASHI H」の出来に感心するものがあったため。一応はチームの仕事を信頼していたと言っていいと思います。
 初回特典は特になし。
 
 修正ファイルが出ています。特定の順番でプレイすると強制終了するバグを回避するためのものだそうです。あてておいた方が無難でしょう。私の場合も武芸大会ルートで強制終了が起きましたが(再現性がありましたが強制スキップすると止まりませんでした)、詳細が書かれていないので対応されているかはわかりません。
 
 ジャンルは名称的に難しいところですが、基本はアドベンチャーにフィールドマップを練り歩くパート、要所でミニゲームが挟まります。
 ゲームは最大8話から構成されています。1話が終わると「つづく」描写が出る以外は特に話数構成を意識させる演出はありません。
 アドベンチャーパートを進めているとカードが出現。これはその話限りのもので必ず複数枚が手に入ります。本作ではこれが選択肢がわりです。時にカードの提示を迫られ、回数制限があったりなかったり、重要な局面では間違えるといきなりゲームオーバーになったりします。先述したバグの件も含めてセーブは頻繁にしておいた方がいいでしょう。
 フィールドマップによる探索も頻繁に発生。全体地図から移動可能な場所を選ぶとフィールドに移行します。この時、移動速度を「歩く」と「走る」から選べますが、「歩く」はとても遅いです。実際の移動はキャラクターがカーソルのクリックした場所を追う形になります。
 この移動時に不便なのはクリック可能な場所に対する判定がとても小さいこと。例えば出口をクリックする場合でもわずかに逸れただけで受け付けなくなってしまいます。もうちょっと当たり判定を大きくして欲しいところです。
 フィールドマップの役割は単純な会話の他に探索という重要な面があります。光っている場所をクリックするだけですが、これは情緒なく言ってしまえばフラグ立てであり、これがうまくいかないと先に進めません。とはいえ、難易度的にはそれほど難しくないので詰まることはほとんどないと思います。稀にカード選択の時のようにフィールドマップの移動でも回数制限がかかるイベントが発生することもあります。
 主にフィールドマップで条件を満たすとミニゲームが発生。これがマウスのみでプレイ可能な手軽なものばかりでゲーム進行に彩りを加えてくれます。良いアクセントとして機能しているように感じました。クリアできない場合は他の手段によって条件が緩和されたり、回避できたりすることも。
 残念なのは各ミニゲームを個別ではプレイさせてくれないこと。ちょっとルールを変えたりするだけでやり込み度も増すので実にもったいない。
 
 足回りは純粋なAVG以外にありがちなちょっと配慮に欠ける仕様です。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、基本的に次のシーンへ移る度に止まる→何らかの演出が入る→再スキップするアイコンクリックまで時間がかかる、という不便さがあります。ただし、対応策として既読文は問答無用でスキップする、ということは可能です。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻ることはできない上にシーン切り替えが起きる度にログがリセットされてしまいます。もちろん、ロード直後にも使用できません。
 スタッフロールを飛ばせないという不便な点も目につきました。
 ワイドモニター等に対するアスペクト比のフォロー機能が用意されています。ただ、当然ながら両端の黒いエリアにカーソルがいってしまうと無反応ですが。
 幸いなことに前作「AYAKASHI H」の1週間に1度の起動ディスクという無体な仕様から本作は起動ディスクなしに改善されました。まぁ、前々作に戻っただけですが継続されるよりは遥かにましです。
 
 シナリオは大きく3本のルートに分岐します。紅華祭の演目「演劇」、「牙戦」、「武芸大会」がそのままシナリオ内容に大きく反映。演目はひとつだけしか開催されないのでルートごとにかなり雰囲気の違った展開が楽しめます。
 各ヒロインのルートは途中分岐が基本です。しかし、あるルートでは継続という面白い処置を採用していて、半ば第二部のような扱いになっています。
 バラバラの2−Bのメンバーを説得してまわり少しずつ集めていく、その過程がシステムとも相まって通常のアドベンチャーにはないプレイ感や楽しさを与えてくれるように感じました。ヒロインを筆頭に20人のクラスメイトたちは賑やかし以上にキャラが立っているので団結していく様子に感情移入を誘われやすいです。気がつけばプレイヤーも2−Bの一員になって一喜一憂している、そんな感覚を与えてくれます。
 ルートごとにスポットが当たるクラスメイトが分かれているのも大きなポイント。単調さを防ぐだけでなく、見せ場の違いによる個性の主張という大きな意味も持っています。
 ただ、小さな問題として主人公が勧誘していない(プレイヤーが知らない)クラスメイトと普通に会話している時があって困惑するケースもありました(当然、周回を重ねれば解消されますが)。それが必ず必要な会話でもないだけに違和感も大きなものとして残りました。贅沢を言うならクラスメイトを揃えてから演目が決定されて、その上でルートごとに活躍するメンバーが異なった方が良かったように思います。
 同じ目的を持ったクラスメイト同士の会話は自然に盛り上がりやすく、雰囲気の醸成にも大きな役割を果たしています。また、2−Bの仇敵となる生徒会のメンバーも勝るとも劣らぬ存在感を持っています。その行動や行く末もルートによって変化があって味わいを深くしていました。私見ながら問題視された「AYAKASHI」のラスボスよりもずっと良い悪役になっていたと思います。
 一方で基本2人だけになってしまう恋愛面における描写は完全に説得力不足です。群像劇として魅力的に書かれているだけにその落差がより大きなものとして感じられてしまいます。実にもったいないです。
 また、2−B的な大団円とでもいうようなラストがなかったのはとても残念。エピローグがあっけないのも同様に損をしているように思えました。
 Hシーンはメインヒロイン2回にサブヒロイン1回。クラスメイトも1回すつ用意されています。注意点として、クラスメイトは恋人ではないのでやや無理のあるシチュエーションが多いです。エロ度はクラスメイトの分を考慮するとやはり弱いと感じてしまいます。
 
 CGは長所と短所で明暗分かれている印象です。長所は立ちCG、SDカットで短所はイベントCG、大雑把に言ってしまえばこんな感じです。
 立ちCGはどのキャラもポーズが複数用意されていて、各カットもキャラの個性がしっかり打ち出せていて、表情のバリエーションも多彩と好感がもてます。SDカットはもはやこのチームに不可欠と言っていいくらいの存在感を放っています。メイン原画家のTOMA氏と鳥取砂丘氏の名が列記されるのにも納得です。SDならではの可愛らしさは見事に世界観を広げています。ただ、ミニゲームにも割かれているせいかイベントCG扱いの枚数自体は少なめです。
 イベントCGは前作に比べると精彩を欠いています。通常のイベントCGはその用意した状況に疑問を感じることが多いです。そのため棒立ちに近いカットが散見されます。可愛さも立ちCGに比べてしまうと負けている感が強いです。
 何より気になるのはHシーンのカット。前作からは考えられないほどエロさが感じられません。立ちCGとの落差はより酷くなり同一人物に見えないものさえ複数あります。さらに本作は純愛系のはずなんですが、そこに描かれているカットの多くはどう見ても凌辱系のそれです。違和感というか繋ぎが間違っているように見えてしまいます。初めてなのに今にも白目を剥きそうな表情というのは控えめに考えても本作には不向きなのではないでしょうか。ギャグ表現の白目はたいへん可愛らしいんですけども。
 本作はデモをジェリーフィッシュが製作したせいか、イベントCGにもちょっとしたコラボレーションがありました。売りになるほどではありませんが面白い試みではないかと思います。
 
 音楽は状況に応じて緩急自在の曲が用意されているように感じました。世界観の一翼を十分に担っていたと思います。「AYAKASHI」及び「H」経験者にはアヤカシの叫び声がSEとして使われたことがギャグとしてとても大きな意味を持っていました。
 ボイスはパートボイス。モブキャラにはあったりなかったり。主人公にはありません。演技的にはサブも含めて問題なく、キャラに合致した演技が多かったです。中でも鳳結花役の三園あすかさんの演技は快活に演じている様子が伝わってくるようで耳に残りました。
 
 まとめ。AVGの閉塞感に穴を開けるような作品。これもオンリーワンといっていい作品ではないかと思います。プレイしている間はかなり楽しく遊ばせてもらいました。予想外の弱体ポイントが非常に残念。それでもきっと出るであろう「MapleClolors2H」に期待しておきます。
 お気に入り:御来屋藍、藤宮遥、鳳結花、深月汐音
 評点:75
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、睦月小梅
 はっきり言ってしまうと一番、可愛く見えたのはオープニングの池に落ちた後のカットでした。あの片側だけの髪のほどけ具合が良い感じに彼女の非日常的な姿を見せてくれましたよ。そこ以外では帽子がなくなってしまうと、まるで属性が変わってしまったかのように異なるキャラに見えて落ち着かなかったです。個人的には帽子をかぶっていてこそナンボだな、と。
 物語として仕方のないことなんですが、明らかに小梅よりも戦闘力が劣る主人公が東堂と対峙しなくてはならないどころか、勝利をもぎ取らねばならないというのは微妙に納得いかないものがありました。いや、そうしないと主人公じゃないし盛り上がらないのもわかるんですけどね。
 
2、御来屋藍
 彼女に秘められたエピソードにはちょっと感動しました。というか、志乃が従っているのは伊達ではないという事実になんか嬉しくなってしまいましたよ。小梅ルートで見せる姿だけでも十分だと思っていたのにまさかそれ以上があって、しかもあそこまで突き抜けているとはねぇ。
 全シナリオ中で心の底から東堂に同情したのはこれだけですよ。あの追い詰められた叫びはちょっと尋常じゃない。恐るべきは総帥の器と恋心。シナリオとしてはバランスも悪いし、あまり誉められたものじゃないんでしょうけど、あの有無を言わさぬ迫力は捨て難いものがありますよ。むしろ、あれぐらい荒唐無稽な方が本作には相応しい気がします。
 残念なのは主人公の好意がはっきりしないことかなぁ。自覚のないままに藍の本当の姿を見てしまうともう恋なのか強迫観念なのかわからない。
 
3、伊呂波かえで
 諸悪の根源。けして過言ではないと思います。空気を読むどころか、会話が成立せず場をひたすらに悪い方向へ運んでいく天才。控えめに見てもヒロインらしい造型ではない。
 
4、咲守志乃
 お固く見えて本当は可愛いものが大好きで照れ屋である、という武士っ娘にピッタリな良質のキャラでありながら主人公が果てしなく鈍いために効果も半減。その鈍感さにヒロインが哀れに見えるようではいき過ぎでありましょう。
 本作がドタバタ劇を目指しているせいか、「AYAKASHI」及び「H」に比べて戦闘描写が非常におざなりであったのが残念。基本は省略形なのだから、ここぞというシーンでは匹敵するレベルを用意しても良かったのでは。
 
5、藤宮遥
 地味ではありましたけど、ヒロインと人物配置が良かったおかげで最も楽しめました。菜月に意味があったというのも大きいです。他のシナリオだとホントになぜいるのかわからないからなぁ。あとなんといってもこのルートだけはヒロイン2人分を惜しみなく投入できるのが大きかったと思います。分岐よりも継続の方が効果は大きいですよ。
 なまじ演劇という題材のおかげで先が読みにくかったのも良かったです。A組の妨害もこれが一番、陰険に見えましたよ。前作は未プレイですけど葵美紅の存在もいいアクセントになっていたかと思います。東堂一辺倒でないのも良かったです。
 みんな大概ですけど、Hシーンで最も顔が変わる人。ほとんど誰ですか、レベル。明らかに立ちCGの方が可愛いというのは辛いものがあります。
 
6、鳳結花
 なんと言っても彼女の存在感なくして2−Bは語れない。本人のシナリオは当然として、他のシナリオでもけしてぶれることがないのが彼女の大きな魅力でした。藍シナリオでの東堂と向かい合った時の言動など良いものが多いです。
 遥とは二人三脚で魅力を高めていた印象がありました。行動原理を理解するほどに会話が楽しくなる稀有なお方です。
 シナリオが遥シナリオの続きであることも大きなプラス材料。そこからでしか発生しない流れというものを存分に堪能させていただきました。愛と悲しみの鳳劇場はナイスの一言。「らしさ」が凝縮された一幕でしたよ。
 
7、青葉緑
 なんというかあまりにも悲しい。どこからどう見ても結花の引き立て役でしかないのが切ない。個性的な見た目の割に出番はないしなぁ。
 
8、雨宮未央
 期待値が高くなかっただけに彼女のお役立ちぶりには恐れ入るばかりでした。クラスメイトの中では一二を争う活躍度と言って間違いないでしょう。一度見たものは何でもそつなくこなしてしまうスキルはやっぱり天才的だよなぁ。変装までしちゃうし。
 
9、エリカ・クリスティン・椿
 金髪ハーフで半端ないオタクという実においしいキャラ。それだけにあまり出番が多くないのがもったいない。造型からしてもヒロインとして十分に通用しますよ。
 
10、仁科すみれ
 オカルト研究会というけれど彼女のキャラからすると化学部といったあたりがうまく合致します。典型的なマッドサイエンティスト系キャラですし。実際のところ、ドーピング描写以外に彼女の出番はない。
 
11、深月汐音
 ある意味エリカ以上のポストヒロインキャラ。外見はちと地味ですが、それ以外はヒロインに負けないほど優遇されています。恋仲になる過程なんて、けったいではあるけれどきちんと用意されているという意味ではヒロイン以上ですよ。
 Hシーンも他のクラスメイトと比べて明らかに特別でした。
 
12、占部沙奈絵
 両刀使いである点はすごいと思いますが、あの設定で処女というのは少しばかり無理があるような。
 
13、日向麻衣
 誰にも頼まれないのにクラスメイトを親切心で売り払って平然としているヒト。自分がやったことが正しいと思っているのならなぜ黙っているかねぇ。吊るされないのがいっそ不思議です。
 
14、佐々木薫
 素晴らしい。見事なまでの存在感のなさ。ここに書くコメントにもお約束通り困ってますよ。「誰だ、お前」の結花のセリフだけが印象的です。
 
15、遠野浩志
 彼の勇姿は涙なくしては見られない。どこまでいっても前座に過ぎないかと思っていましたが結花を肩車して疾駆する姿に感動しましたよ。立ちCGの優遇っぷりが却って切ない。
 
16、方城昌
 仲間になる過程は目立っていましたが、それ以降なるとぱったりと出番なく。小梅の次席としては雨宮が光っていたし、悲しいポジションでしたな。せっかく個性的な外見なのに。
 
17、結城尚也
 ディナーショーのインパクトが強すぎて他はちょっと。
 
18、大熊勝之新
 天性のボケ役。ことお笑いという点において他の男性キャラの追随を許さない。主人公に次いで小梅が突っ込んでいた男。
 牙戦ルートで遂に真価が発揮されるのか、という展開だったが肝心のシーンはカットであったようだ。そんなところも愛しい。
 
19、佐伯了介
 一体、彼のどこを見ていれば小梅のことを好きだとわかるのか。さも当然という流れであることにたいそう驚かされました。
 武芸大会は勝っても負けても哀れな感じでありました。
 
20、白瀬優
 方城と同じく仲間になる過程が最も存在感がありました。それ以降はどのルートであっても使い道が難しいという難儀なキャラに。
 
21、東堂和輝
 なんかシナリオによって人格が違うような。「AYAKASHI」のラスボスであるあの方に比べれば個性もあって良かったと思います。ちゃんと嫌な奴していましたし、その後の運命も幾通りあったりするのも良かったです。
 
22、九条麗子
 牙戦ルートの彼女は光ってました。東堂から一人立ちする姿はヒロインなみの存在感がありましたよ。
 
23、藤宮菜月
 Before→Afterがいい感じでありました。それだけに演劇ルートでしか見られないのがもったいない。もっと結花にいじられる姿が見たかったなぁ。実はHシーンもちょっと期待していたので残念でした。
 
24、鷹山広見
 こちらも菜月と同じ。いえ、演劇ルート以外ではそもそも出番さえほとんどない。それだけに予選突破後の変わりようはいき過ぎなくらいで面白かったです。他ルートとは違って導き手が必要ですしね。


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