313   Ripple〜ブルーシールへようこそっ〜(戯画)
 
 本多惣一(変更不可)はとことんついていなかった。初めて就職した会社は半年で倒産。しばらくのバイト日暮らし生活を続けたのちに再就職するも、そのゲーム会社も一人また一人と社員が減っていき、ついには社長、経理の女の子、惣一の3人になってしまう。
 そんな状況でも健気に頑張っていたが、ある日ふらりと社長が出て行ったきり、そのまま戻らなかった。再びバイト生活に戻り、生活が困窮し始めたときに目に飛び込んできたのが総合型リゾート施設のブルーシール完成の報。三度目の安住の地と新しい出会いを求めて惣一は応募するのだった。
 
 記憶に間違いがなければ戯画のゲームは初めて買ったことになります。メーカーホームページで公開していたオープニングデモの映像とそのお馬鹿なボーカルに一目惚れ。虎視眈々と発売日を待っておりました。
 ホームページの内容もリゾート施設の紹介という感じで好感度高いです。店頭で配っていたミニパンフレットもちょっとそんな感じでしたし。
 
 戯画のゲームのお約束なのか、箱が普通のゲームよりも大きいです。そのぶん中身が詰まっていれば問題ないのですが、実際にはCDは1枚だし、特別なものは何も入っていないし、と悲しいほどスカスカです。マニュアルが大きくなければ本当に無意味です。個人的には箱は好きなんですけど、理由がないものはちとツライなぁ。
 
 大したことはないようですけど、修整ファイルが出ています。同社の「ぷちチェリー」をインストール済みの方はインストーラーが正常に働かないケースがあるようです。
 
 システムはタイトルから想像できる方もいるであろう、主人公育成型のアドベンチャー。スケジュール(研修場所)を決めることで各ヒロインのシナリオに分岐していくようになっています。
 某ファミレスゲームではシナリオフラグが万全でもパラメータが必要数値を満たしていなければ容赦なくサヨウナラ、でしたが今作はひたすらヒロインを追いかけるだけで問題ありません。ぶっちゃけパラメータは何の意味もない訳です。個人的には甘くない世の中を教えてくれるようで、あの学歴重視みたいなシステムは嫌いじゃないのですが、楽な方が誰でもいいでしょうってことで許可とします。あくまで個人的には。まぁ、雰囲気作りという意味合いが強いでしょうからね。
 アドベンチャーモード時の選択肢は非常に少ないです。各キャラ1〜2回というところでしょう。それだけにいずれの選択肢もクリティカルな設問となってます。間違えれば虚しいロンリーエンドにまっしぐら。慎重に選びましょう。
 足回りはどうも不足気味。メッセージスキップは既読未読を判別しない強制のみ。しかも、任意に止めにくいです。
 メッセージの巻き戻しはなし。会話が良いだけにこれはキツイというか、もったいない感じがします。
 あまりにもバリエーション豊かな立ちCGがあるのですから、立ちCGを自由に見られる鑑賞モードがないのはかなりの痛手。デモでしか見られないヒロインの姿があるというのはなにか悔しいです。
 
 シナリオはたいへんセンス良くできてます。ヒロインが9人(実質8人)もいるのにCD1枚という分量のせいか、各シナリオのボリュームは、はっきりと少なめ。にもかかわらず、不足感をあまり感じさせないのはライターの手腕でしょうか。
 要所を押さえたドラマを構成しているせいか、不思議なほどピタリと型にはまっている印象があります。
 特別な語尾や言い回し、アニメに代表されるのネタもの、キャラクターがプレイヤーに向かって語りかけるなど、これらの手法を使うことなく面白味のある会話を達成しているのは見事。実に巧みなテキストだと言えるでしょう。
 各ヒロインのルートに入ったあとも他キャラが異なる役割を持って登場するのが好印象。本人のシナリオ以外で違う側面を自然に見せてくれます。また、そうした小イベントの融合のさせ方も非常にうまいです。
 ここまで万全の要素を持っていながら残念なのは複数回Hやらぶらぶ編(端的に言えば「とらハ」のような)がないこと。そういうのがぴったりなゲームだと思うんですけどねぇ。
 
 CGは出色の出来。多彩な立ちCGは見ているだけで楽しませてくれますし、表情も自然な喜怒哀楽を表現しています。ポーズ変化が少ないのがやや残念でしょうか。
 イベントCGはただでさえ美しい立ちCGをさらに凌駕するインパクトを持っています。特に各ヒロインの表情がこれでもかというほど魅力的に描かれています。それだけに枚数が少ないのが惜しまれます(プレイ中はあまり感じにくいですが)。個人的にはキャラを2〜3人減らして他にまわした方が良かったかと。
 オープニングデモは脳天を抉るボーカルに負けない脱力な演出が用意されています。初見の人に強く訴えかける優秀なデモだと思います。世界観をアピールしながらも、繰り返し見たくなるデモに仕上がっているかと。
 
 音楽は主題歌がとんでもない破壊力を持っています。「恋愛CHU!」の主題歌が好きな人なら惚れ込むこと必至でしょう。しかし、それゆえか本編中の曲は力負けしてしまっているような印象を受けました。
 良く言えばBGMに徹している、悪く言えば記憶に残らない、というラインでしょうか。
 ボイスはヒロインのみフルボイス。個人的には雰囲気重視のゲームだと思うので男性キャラにも欲しかったです。演技はみなハイレベル。中でも日向裕羅さんの配役はこれまでにない設定で、見事に新境地を開いたと言える素晴らしい演技。いつもと同じの妹ボイスにはとても聞こえません。
 
 まとめ。(とらいあんぐるハート2+Piaキャロットへようこそ!!2)/2。まさにそんな印象。一応、補足しとくと両作品とも私は一定以上に評価しています。
 個人的には「Piaキャロットへようこそ!!3」よりもこちらの方がプレイしていて楽しかったです。
 唯一のネックはやはりボリュームのなさ。上でも書きましたが、複数回Hがあれば今年一番の作品になったかもしれないだけに惜しいです。それでも私はこの作品を推しますが。
 お気に入り:加藤あおい、飯塚カノコ
 評点:89
 
 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
 
 
 
 
 
 
 
1、河野朝奈、夕奈
 この二人だけ世界が違います。つーか、露骨に等身が違うので引いてしまいます。他のキャラが現実的な設定、シナリオであるだけにその意味でも激しく浮いてます。せめてメイン原画の両名のうち、どちらかが担当していればねぇ。
 
2、矢部真帆乃
 ブルーシールの世界観にメガネは必要ありません。とっとと帰ってください。それでも他キャラに比べてCGが少ないことに諸手を挙げたい気分。
 
3、沢村有希
 うーん。いいキャラを持っているんですが、それだけにシナリオが不足気味。他のキャラと違って要所を抜き出すだけではどうしても説得力に欠けてしまいます。ゲーム内時間も長めに欲しいですね。
 タイプとしてはやっぱり、どつき合いをする酒飲み友達という方が楽しいのではないか、そんな気がします。
 
4、穂永圭衣
 これもボリュームの少なさで損してます。地味なキャラは細かいイベントの積み重ね(さながら地道なジャブのような)が大事なだけに主人公を少しずつ惹きつける、そこまでのレベルに至っていない感じです。話自体はいいものを持っているだけにもったいないです。
 ヤキモチを妬いてくれるのは嬉しいですが、前後のイベントとうまく連結していないのがマイナス。寡黙な少女だからこそ、こういうときはキッパリと押してきて欲しいものです。
 
5、川上由里己
 フィナーレシナリオに相応しいシナリオ展開とエンディング直前までは思っていたので、ラストは残念。ああいうオチ自体は構わないのだけれど、せっかくみんなの協力が得られて一件落着したというのにブルーシールから追い出されて終了というのは、流れとしてうまくないというか、画竜点睛を欠いた気がしてなりません。
 キャラ自体はたいへん良くできていると思います。決められた設定を過不足なく表現していたのではないかと。
 個人的な唯一の難は勝利者である自分のシナリオであおいを苛めていること。これがあおいのシナリオなら最終的にはそちらが主人公を得る訳ですから全然問題ないんですけど、これではあおいの方がやられっぱなしになってしまいます。下手すると由里己に悪印象を抱く恐れさえあるので、ここだけはうまくなかったかと(結ばれなかったヒロインをかわいそうと思わせるゲームではないはずですし)。
 
6、森本奈海
 まずはなんといっても序盤のスカートまくりのイベントCGがおかしいのは気になります。ここはツッコミ多数かと。個人的にはパッケージイラストの制服の方が好みなだけに尚更です。そういや、この制服はどこで着るものなんでしょうね。
 「偽りの笑顔」の表現は実にうまかったと思います。しかも、それが生きていくために必須であったが、必ずしもいいことばかりではなく、最終的に本人を駄目にしてしまう、というあたりが良かったです。あおいあたりに向けていた、ひたすらな笑顔が地味な伏線にもなっているあたりもうまいと感じました。食堂のイベントとか。
 病院で幼児退行を起こして泣きだすシーンはまさに主人公にしか何が起こったかわからない、どこか異常な事態という感じでGood。伏線がうまく生きてます。圭衣シナリオにはここまで繋がりとうまさがなかったですからね。
 一緒にお風呂に入るCGは事前に目にしてたんですけど、あれはどう見ても初めてのシーン用とは思えないよなぁ。どう見ても恋人同士のものじゃないデスカ(涙)。
 
7、飯塚カノコ
 こういうキャラに弱いです。イライラする限界手前の頭の弱さとでも言いましょうか。ぎりぎり目が離せないという感じで。静の穂永、動の飯塚というニックネームがなんとも素敵です。
 占い通りに行動する破天荒なキャラという設定でありながら、それを裏切るシナリオ展開はナイス。こういうのも誤読を誘うというのでしょうか。久しぶりに裏をかかれて気持ちよかったです。思わぬ形で芯の強さが表現されている、というのも効きました。
 CGは胸に主人公を抱くカットがどうにもラブリーで仕方ありません。ゲーム全体を見てもいい笑顔をしているカットが多いように思いました。
 和風レストランの制服が異様に似合っているのが怖いものさえ感じさせます。でも頭の双葉は妖怪アンテナみたいでちょっと痛いものが。
 双子に絡んだイベント、「主人公はつるぺたが好き」と信じ込んだカノコの態度が最高です。これ以上ないほど、一目惚れの説得力になっていますよ。
 
8、加藤あおい
 もう駄目です。なにもかもがツボです。その微妙な笑顔、やや軽蔑した視線、すました顔。どれも最高です。
 「やましいことしてやる」
 「惣一、えっちしよ」
 (いや水着姿見たことなかったし、を受けて)「その下なら何度も見たじゃない」
 「めでたくフリーになりました」
 「惣一のサイズは体で覚えてるから」
 などなど一度聞いたら忘れられない、強烈なセリフが目白押しです。まさに最強。
 普段、抑揚に欠けた素っ気ない態度をしているだけに笑ったときの威力は尋常ではありません。
 自らのキャラを規定のものとしてしまって、少なくとも人前ではそれ以外の行動に出れないもどかしさが痛いほど伝わってきました。あおいが怒ったりするのは実は惣一に対してだけ、と知ったときますます愛しさ倍増。本当は他人に強く怒る(感情をぶつける)ことも自分のキャラではないと、冷静なときは感じていることが容易に想像できるだけに……。
 由里己をも上回る情熱的なHシーンにはちと感動。なかなかここまで激しい感情の発露を見せてくれないだけに新鮮な感じさえありました。
 イベントCGの笑顔がカノコに勝るとも劣らぬほど可愛いです。主人公が幸せを感じるのもわかります。
 由里己シナリオの最終日、主人公が目の前からいなくなってから「ちぇっ」と短く言うあたりがいかにもあおいらしく、プレイヤーとしては大変でした。あの場面からでもあおいに突き進みたくなりましたから。
 
 文章量でお分かりかもしれませんが、下に行くほどお気に入りになってます。


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