正直、びっくりしました。昨今では邦画に対して期待して見に行く、ということはほとんどなかっただけに。想像以上の完成度に本当に驚きました。オダギリジョー目当てに見に行っただけだったのになぁ。

　アクションを含めた見せ場作りが実に巧かったです。見ている側の気を引いたところでしっかり見せ場を用意する、基本ですがこれがよく出来ていたと思います。ＣＧとの合成も違和感なくひとつの映像として楽しめました。選ばれし忍同士の決戦は全てとは言いませんがかなり熱いです。

　ストーリーが意外にシンプルなことにも驚き。海外輸出を最初から視野に入れているとはいえ、邦画にしては珍しいです。ただ、それだけに不足を感じるシーンもままあったのですが。

　シンプルさの理由として、事実を見せて観客にそうであることを理解させる、という手法があります。例えば冒頭で朧と弦之介の出会いを描いた直後、抱き合っている二人を描くことですでに恋人同士になっていて、それほどの時間が過ぎていることを提示している。これはわかりやすいというか、納得できなくとも理解するしかないという感じの手法だけに、細かな描写不足が伴いやすいのが欠点です。実際、本作はモノローグ表現がほとんどないので、ラストで２人が退くこと叶わず戦うしかなくなった、そのあたりの感情表現が足りていません。

　セリフ回しにも微妙な点は見られます。中でも薬師寺天膳が語る事の真相。内容は同じでも見ている側や相手に対してもっと衝撃を与えるような言い回しはいくらでもあったはず。無念を感じにくいセリフであったことには返す返すも残念。

　細かな不満はありますが、それでも充分な良作ではないかと。