1997年 2月 8日

めちゃくちゃな設定の「架空戦記」

HARIは架空戦記が好きである。
架空戦記の元祖とも言える「連合艦隊ついに勝つ」は名作なので、好きな方は一読する事をおすすめする。
「八八艦隊物語」(八八艦隊自体が完成出来たかは疑問だが)や「修羅の波涛」の横山信義氏の作品は、時代考証がしっかりしているので面白く読める。
佐藤大輔氏の「レッドサン・ブラッククロス」シリーズは、世界設定が第二次世界大戦前から緻密に行われており、その為に無理がない。

だが・・・、あまりにもむちゃくちゃな設定の「架空戦記」が多い。
知人から借りて読んだ本は、日本海軍の一部が陸軍から譲渡された(!)秘密予算で、陽炎型をベースとした特殊な駆逐艦4隻(それぞれ仕様が異なっている)密かに建造して戦いに挑む、とゆう話だった。。
それぞれ仕様が異なっている艦ばかりで艦隊を組んだら、まともに運用できるはずが無い。
しかも、この特殊な駆逐艦の仕様が笑える。
一隻は敵のレーダー/通信を妨害する為、駆逐艦のくせに大和並みの大型鉄塔を備えているのである。
そんな駆逐艦は、たちまち横転してしまうわ。
さらには、巡洋艦の主砲を装備した艦もある。
(砲艦のイメージなんだろう。)
最大戦速中に側舷にむけて正射したら、きっと笑える事がおこるに違いない。(^^;
太平洋戦争開始前なのに、レーダーを装備した防空駆逐艦もある。
作者は当時の日本海軍が、レーダーをどう思っていたのがご存じ無かったに違いないし、友鶴事件をも知らないとしか思えない。

他の架空戦記たちもすごい。
「第二赤城」(空母は漁船じゃないぞ!)が出てくるやつだの、航空戦艦(艦橋と煙突による気流の乱れで着艦は事実上不可能、やむなく航空戦艦となった伊勢や日向が積んでいたのは水上機なんだよ)が出てくるやつだの、超大和級戦艦や大型空母が戦時中の日本でどんどん完成(日本が大戦中に設計・起工し完成できた大型艦は数隻しかない)するやつに,陸軍と海軍の有志は手を結ぶ(まだ犬と猿が仲良くなる方が現実味がある)やつ等、むちゃの限りを尽くしている。

それに、当時の日本の技術に対する無理解。
佐藤大輔氏はこう指摘している。
当時のハイテク技術を、日本が全く知らなかったのではなく、知っていたが作りたくても原材料等が無く、又、量産・安定供給できる生産設備をもった工場も無いのだ、と。
だからこそ佐藤大輔氏は、大戦前からの歴史を大幅に操作する事によって説得力を持たせている。

乱造される「架空戦記」より、一昔前のスペオペの方がよっぽどまともだ。

HARIはこの分野の破綻は近いと睨んでいる。
しかし、横山信義氏と佐藤大輔氏は生き残って欲しい。だって、この二人だけだもの、まともな作品を書けるのは。


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