●社会主義 socialism 1. 生産手段の私有を認めず社会全体で共有させる 2. 階級対立のない社会を実現しようとする思想 3. マルクス主義で、共産主義社会の前段階 ○社会主義市場経済 社会構造を中心に経済などにもマクロ的な調整を行う。 市場経済に資源分配の基礎的な役割を担わせる。 ●共産主義 communism 1. 私有財産制を否定する 2. マルクス主義では人類史の最後の段階で、階級は消滅し、 生産力は高度に発達して、各人が能力に応じて働き、 必要に応じて消費できるような社会 ●民主主義 democracy 民が権力を所有するとともに、権力をみずから行使する政治形態。 ●自由主義 liberalism 1. 市民的・経済的自由、民主的諸制度を要求する 2. 個人の自由な発展を追求する一つの精神的態度 3. 宗教的・政治的・身分的束縛と圧迫を排除する原理 4. 人間個人の人格の尊厳を認め、個性を自発的に 発展させようとする → cf. 個人主義 ●資本主義 capitalism 1. 封建制に次いで現れる経済体制。 生産手段を資本として所有する資本家が、利潤獲得を目的として、 自己の労働力しか売るものをもたない労働者から 労働力を商品として買いとり、商品生産を行う経済体制。 ●全体主義 totalitarianism 国家や民族全体の利益は個人の利益に優先するという考え方。 個人主義・民主主義・自由主義に反対する。 市民的自由を抹殺するファシズムの政治原理。 〇全体主義国家 a totalitarian state ●国家主義 nationalism 国家をあらゆるものに優先するもっとも価値のあるものとする思想 国家を人間社会最高の組織体と考え、国家権力が社会生活の全領域に わたって統制力を発揮することを認める立場。 国家主義者の姿勢は、アイデンティティのよりどころを国家に求め、 他者に対して自己正当化・自己合理化を図るものである。 ●国粋主義 nationalism 自らの国家および民族の伝統文化を純化した上で 社会生活において実践すべきとする価値観・思想。 国民が国外からの圧迫を感じたときに支持されることが多い。 排外主義と一体となることが多いが、 必ずしも対外拡張志向に結びつくものではない。 ●帝国主義 imperialism (1)一つの民族または国家が、政治的経済的に他民族または国家を支配して 強大な国家をつくろうとする運動。 (2)一九世紀の末から二〇世紀のはじめにかけて独占的な段階に達した 資本主義をいう、レーニンの用語。 ●軍国主義 militarism 国家目的のほとんどを軍事力に依存して達成・解決しようとする思想。 (1)軍事力増強にもっぱら頼った対外的影響力の伸張を目指す。 (2)軍事的伸張に向けて国内のあらゆる領域を再編しようとする。 ●絶対主義 absolutism 絶対的な権力を振るう体制。独裁政治や、ファシズムなどがあり、 立憲主義とは対立概念にあたる。狭義では絶対王政、絶対君主制を指す。 ●議会主義 parliamentarism 国政の最高政策を議会において決定する政治方式。 大統領制に対して、特に議院内閣制をいう場合もある。 ●国際主義 internationalism (1)国家相互の協調を本位とする立場。 (2)労働者階級の国際的提携・団結を主張する社会主義の立場。 ●平和主義 peaceism 侵略戦争に反対し、平和の実現を目指す主義のこと。 ●革新主義 progressivism [歴史] 19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカ合衆国の経済が 独占化の傾向を強めているときに生じた独占批判の社会改革運動。 ●改良主義 reformism 急激な革命によらず、漸進的に社会を改良しようとする立場。 資本主義の枠の中で労働運動を積み重ねることによって 労働者の地位の改善をはかろうとする立場。 ●進歩主義 progressivism 社会の矛盾を変革しようとする前進的思想。 ●歴史主義 historicism 一切を歴史的見地に立って理解しようとする立場。 ●啓蒙主義 enlightenmentism 理性による思考の普遍性と不変性を主張する思想。 超自然的な偏見を取り払い、人間本来の理性の自立を促す。 18世紀のヨーロッパにおいて主流となり、フランス革命に影響を与えた。 ●蒙昧主義 obscurantism 権威と結び付いた既存の非合理的思想を擁護し、自由で合理的な思想に 反対する態度。もと、啓蒙主義者が、自分たちの闘争相手の態度を称した語。 ●マルクス主義 Marxism マルクス・エンゲルスによって確立された思想体系・ ・哲学的基礎としての弁証法的唯物論 ・社会を物質的土台から歴史的に把握する史的唯物論 ・階級社会の場での階級闘争の理論 ・資本主義社会の運動法則を解明する経済学説 ・国家を支配階級の道具と見る国家論 ・労働者階級の革命運動の戦略・戦術 ・植民地・従属国の被圧迫民族解放の理論 ・社会主義・共産主義建設の理論 など。 ○修正主義的マルクス主義 ○革命的マルクス主義 ●フェビアン主義 Fabianism フェビアン社会主義とも呼ばれる。「聖典なき社会主義」折衷的で統一性に欠く。 共通項として以下のようなものがある。 (1)民主主義性−民主国家化、立憲的・平和的改革を重ねての社会主義の達成 (2)漸進主義性−既成制度から連続して徐々に計画的に拡張 (3)不労所得(地代・利潤・利子)の漸次公有化と再分配 (4)ナショナル・ミニマムの確保−余暇,教育,慈善の国家的規制または援助 (5)行政国家化の強化−専門家的地方、中央官僚行政による改革の推進 ●マルサス主義 Malthusianism 人工は幾何級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加せず、 従って貧困は一種の自然現象であり、社会制度の欠陥ではないと見て、 禁欲、早婚の禁止を説いた。 ●成果主義 企業の人事管理において、賃金・昇進などの決定基準を 個人の仕事の成果(主として一定期間内の目標達成度) におこうとする考え方。 ●能力主義 企業の人事管理において、賃金・昇進などの決定基準を 個人の職務遂行能力におこうとする考え方。 ●重商主義 [経済] mercantilism 国家の産業として商業を特に重要視した経済思想および経済政策の総称。 ●重産主義 [経済] collectivism 重要な生産手段(土地・工場・鉄道・鉱山など)を国有として 政府の管理下に集中・統制することを重要視する政策。 ●重農主義 [経済] physiocracy 富の唯一の源泉は農業であるとの立場から、農業生産を重視する。 ●農本主義 農業をもって立国の基本とし、従って農村をもって社会組織の 基礎としようとする立場。 ●自由放任主義 [経済] laissez-faire、 政府が企業や個人の経済活動に干渉せず市場のはたらきに任せること。 レッセ・フェールはフランス語で「なすに任せよ」の意。 重農主義者が用いた用語。無干渉主義。 ●保護主義 [経済] protectionism 国家が輸入の制限や関税などにより対外貿易に干渉し、 自国の特定の産業を保護・育成しようとすること。 保護貿易主義。 ●責任主義 [法] 行為者に対する責任非難ができない場合には 刑罰を科すべきではないとする原則。 罪刑法定主義と並ぶ近代刑法の重大な原則の一つ。 以下の理論的根拠から、責任非難が出来ない場合に処罰することは無意味とする。 (1) 一般予防論:近代刑法にあって、刑罰は復讐ではなく、 社会一般に対する警告である。 (2) 特別予防論:当該犯罪者の再犯の防止を主たる目的とする。 この原則により、結果が生ずれば例えそれが極めて偶然的に発生した場合で あってもそれだけで刑罰を科すような結果責任や、 一部の者の行為についてその者の所属する団体の構成員全員に刑罰を科す という団体非難が禁止される。 ●過失責任主義 [法] 他人に損害を与えても、故意か過失がない限り、賠償責任を負わないとする立場。 ●教育刑主義 刑罰の目的は、応報ではなく、犯罪者を改善し教育することにあるとする立場。 ●起訴状一本主義 [法] 刑事訴訟法にあり、「公訴提起に際しては起訴状のみを提出し、 起訴状と共に訴因を立証する証拠を提出してはならない」とする原則。 「公平な裁判所」の理念を実現するために、裁判所が第一回公判期日まで 白紙である(有罪の予断を持たない)ようにする。 これにより、以下のような効果が実現された。 (1)捜査機関の嫌疑は予め裁判所には引き継がれず、検察官は当事者的地位に立つ。 (2)被告人には無罪の推定が制度上保障される。 (3)当事者の公判廷における攻撃防禦によってのみ裁判所の心証は形成される。 公判中心主義・弁論主義・当事者主義を象徴する制度である。 ●旗国主義 [法] principle of flag state jurisdiction 公海・公空での船舶・航空機は、乗員・乗客も含めて、 旗国の排他的管轄に服するという原則。 各国は、自国の旗を掲げる船舶を公海において航行させる権利を有し、 船舶はその所属する国(旗国)の旗国の法令が適用され、 旗国の裁判権に服するものとする。 ●軍事目標主義 武力紛争に際し、砲爆撃は軍事的に利用される目標のみに限らなければ ならないとする立場。但し、地上兵力による占領に抵抗する軍隊が 存在する都市または地域には、一般に無差別砲爆撃が認められる。
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●個人主義 individualism 個人の権利や自由を尊重する。 共同体・国家・民族・家族などよりも個人の尊厳を重要視し、 その権利と義務の発生原理を第一に考える。例えば、個人の自由競争が 経済を発展させるとし、国家の干渉や統制などを否定する 1. 個人の意義と価値を重視し、個人の権利や自由を尊重する考え方。 * ルネサンスの宗教改革→個人の価値 * 資本主義の発達→個人の自由競争→個人の価値 2. [教育] 各人の個性をのばすことを主眼とする教え方。 3. [経済] 個人の自由競争の有効性を重視。 国家の干渉や統制などを否定する。 4. [生活] 他人のことを考えないで、自分個人のことだけのために 行動する考え方。利己主義。 ●進歩主義 progressivism (1) 人間の精神や文明・歴史などは、時を追って、 より完全な状態に進歩するとする合理主義的信念。 (2) 国家・社会などの矛盾を変革し、より前進しようとする、 保守主義の対極にある思想。 ●伝播主義 diffusionism 異文化の差異や類似を、進化の段階の異同によってではなく、 異文化間の歴史的な接触と伝播によって説明する立場。 ●生命至上主義・生命尊重主義 生命を最も価値有るものと考える立場。 ●人間至上主義・人間中心主義 人間が全ての価値の中心にあるとする立場。 ●芸術至上主義・芸術絶対主義 芸術の価値を絶対とし、芸術のための芸術を原理とする立場。 ●人文主義 humanism 認識および真理は、全てそれ自体では妥当性を持たず、 人間の抱く欲望や理想に依存し規定される、とする立場。 ●人格主義 personalism 自覚的・自律的な人格に絶対的な価値をおき、これと関連させて 他のもろもろの価値の意義と序列とを定めようとする倫理的立場。 ●人種主義 人種間に優劣の差異があるとする偏見に基づく主張・態度・政策。 ●人物主義 家柄や財産などを問題にしないで、その人の人柄を中心とする考え方。 ●環境主義 environmentalism 自然は自然そのもののために保存されるべきものであり、 人間の利益が目的ではないとする考え方。 ●自然主義 naturalism すべてを自然に帰し、事前に任せる立場。 (1)[哲学]自然を唯一絶対の根本原理とみなし、精神現象も自然の所産とする。 (2)[倫理]善・正などの価値を、快や自己保存などの自然的事実で定義する。 (3)[文学]理想化を行わず、醜悪・瑣末なものも忌まずに描写する立場。 (4)[芸術]瑣末的事実の忠実な描写にこだわり、本質を見失うような創作方法。 ●写実主義 realism 現実を美化あるいは理想化せず、あるがままに描写しようとする文学・芸術上の立場。 19世紀中葉、浪漫主義に対立して興った思潮。 ●耽美主義 aestheticism 美に最上の価値を認め、それを唯一の目的とする、芸術や生活上の立場。 一九世紀後半、フランス・イギリスを中心に興ったもの。 ●悪魔主義 diabolism 一九世紀末にヨーロッパで起こった、悪魔的なものの中に美を求める 文芸上の主張。耽美主義が極端に進んだもの。 ボードレールやオスカー=ワイルドなど。 ●印象主義 impressionism 先入観を捨てて、自然の中で自然を観察し、その印象・感覚を素早く 画面に留め、生き生きとした効果を出すことを重視する技法や価値観。 ※主な主題としては、戸外の光、自然観察、田園などがあるが、 モネの印象主義においては、都市生活や郊外の行楽地も好まれた。 ●象徴主義 symbolism 写実主義に対する反発として、人間の内面や夢、神秘性などを 象徴的に表現しようとする傾向。 ●浪漫主義 romanticism ヨーロッパでの、主に18世紀末から19世紀にかけての精神運動のひとつ。 古典主義の対概念としてとらえられるもので、自由主義、内面性の重視、 感情の尊重、想像性の開放といった特性がある。 ※主な主題としては、異国的、未知、隠れたもの、 はるかなるもの(特に、自分たちの文化の精神的な故郷、古代文化)、 神秘的なもの(言葉で語れないもの)、 夢と現実の混交、憂鬱、不安、動揺、苦悩、自然愛など。 ●超現実主義 surrealisme 日常的・社会的な現実に対して、より直観的・直接的で強烈な“現実”の 実感に価値を置く文芸の指向。創作に於いては、意識や理性の介在を排して 偶然性の中から剥き出しの現実を抽出するような非合理的な手法も用いられ、 普段気付かない「上位の現実」に直面することを試みている。 ●表現主義 expressionismus 20世紀初頭から第一次世界大戦後まで、ドイツの社会矛盾を反映した 文学・芸術思潮。自然主義・印象主義に対する反動から、作者個人の 強烈な主観や感情を通して、対象を極度に変形・歪曲する。 特に不安や葛藤などをあらわしたものを指すことが多い。 ●古典主義 classicism ヨーロッパでギリシャ・ローマの古典古代の時代を理想と考え、 その時代の学芸・文化を模範として仰ぐ傾向のこと。 均整・調和などがその理想とされる。 ●近代主義 modernism (1)[社会] 自由主義、個人主義の開花を要求し、資本主義を肯定する立場。 (2)[芸術] 旧習固守のアカデミズムに反対し、主観の印象や理念を拠りどころにする 印象主義、抽象主義、シュールレアリスムなど。 (3)[宗教] 真宗教はもっぱら人間の内心生活に発し、外面から(たとえば天啓や教理 宣言などで)伝達される物でないとし、時代と経験を考慮に入れる立場。 ●擬古主義 過去の特定の時代の形式を崇拝し模倣しようとする懐古的な立場。
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●還元主義 reductionism システム全体を要素に分解し、要素間の関係を全て知れば、 それらの総合により全体についての完全な知識が得られるとする立場。 ●全体主義 wholism (anti-reductionism) 全体とは部分の総和以上の何者かであるとする立場。 複雑な系は個々の要素の性質を積み上げても捉えることは出来ず、 複雑性そのものに着目して把握する必要がある、とする。 ●構造主義 structuralism 「構造」を重視する立場。対象を構成要素に分解して、その要素間の 関係を整理統合することで対象を理解しようとする。 数学、言語学、精神分析学、文芸批評、生物学、文化人類学などで 用いられており、分野を越えて共通性・非共通性が論じられる。 ●構成主義 constructivism (1)[教育]:子どもの一人一人が独自に理解を組み立てることを目指す教育論。 教師は、子どもが対象範囲の事実や概念を発見し発展させるのを 支援する立場に回る。 (2)[政治学・国際関係論]:国家利益は、個々の国家のアイデンティティーを 踏まえた国際的規範から生まれるとする主張。国際関係において標準的な 見方である現実主義と自由主義と対極的な考え方。、 (3)[芸術]:ロシア構成主義のこと。抽象性(非対象性・幾何学的形態)、 革新性、象徴性等を特徴とし、平面作品にとどまらず、立体的な作品も多い。 1917年のロシア革命のもと、新しい社会主義国家の建設への動きと連動して 大きく展開した。 (4)[数学]:選択公理を認めない立場。 ●機能主義 functionalism ものを何らかの実体として静的・固定的にとらえず、 ただその機能において動的・相関的・過程的にとらえる、 認識論上・方法論上の立場。 ●合理主義 rationalism (1) 一般に、理性を重んじ、思想、生活に合理性を貫こうとする態度。 (2) すべての認識が経験に由来すると説く経験論に対し、 生得的な理性に認識の根拠を求める認識論的立場。 ※合理論。理性主義。理性論。唯理論とも。 ●非合理主義 irrationalism (1) 理性・悟性によって把握し得ないもの、論理的には規定しつくされない ものを究極のものとみる立場。特に、生命・心理過程・歴史などについて これが主張されることが多く、また直観や体験が重視される。 (2) 理性的・悟性的なものに対して感情的なものを重んじる考え方。 ●主知主義 [哲] intellectualism 知性的・合理的・論理的なものを重んずる立場。 ●主意主義 [哲] voluntarism 意志的なものを知性的なものよりも上位におく立場。 あるいは意志的なものを世界の本質とみる形而上学説。 ●経験主義 empiricism (1)[哲学]:経験し得るものだけが認識を構成し、 また、経験だけが真理であると考える思想。経験論。 (2) 物事を主として経験に基づいて考えようとする立場。 ●懐疑主義 skepticism 基本的原理・認識に対して、その普遍性・客観性を吟味し、 根拠のないあらゆる独断を排除しようとする主義。 ●道具主義・実用主義 pragmatism 経験不可能な事柄の真理を考えることはできないとし、 物事の真理を実際の経験の結果により判断し、効果のあるものを真理とする。 (1)[心理学] 行動主義 behaviorism (2)[記号論] 科学的経験主義 scientific Empiricism (3)[物理学] 操作主義 operationalism ●相対主義 relativism 認識や評価は人間や対象の諸条件に依存しており、 条件ごとに変化する相対的なものであるとする立場。 ●絶対主義 absolutism (1) [一般] 普遍的・絶対的な価値の基準が存在することを認める立場。 (2) [認識論] 絶対的な真理の可能性を認める学説。 (3) [哲学] 絶対的観念論の形而上学。ヘーゲルなど。 (4) [政治学] 君主が無制限の支配権を持つこと ●折衷主義 eclecticism 種々の体系から相互に妥協できる考えだけを選び取って、 まとまった形に作り上げる態度。 ●マッハ主義 [哲] Machism 直接に経験される感覚要素だけが実在的であるとし、 事物は全て感覚の複合・連関であり、 物と心の区別も要素の結び付け方の相違に過ぎないとする。 ●実証主義 [哲] positivisme 所与の事実だけから出発し、それらの間の恒常的な関係・法則性を 明らかにする厳密な記述を目的とし、一切の超越的・形而上学的思弁を 排する立場。現象の根底にある実在を認める。 ●実証主義 positivism (1) 知識は神学的・形而上的・実証的と三段階に進化し、 実証科学を知識の最高形態とする。 (2) 認識を経験的事実に限る考え方。超越的な思弁やアプリオリな 認識を認めず、客観的実在を問題にしない現象論的な立場。 ●メタ主義 metaism (1) ある理論・体系の全体を、より高次の理論・体系を構築して その中で表現し、もともとの理論・体系の性質をより明確化したり、 正当性の根拠を確立させようとする考え方。 (2) 自然界に内在するパターンや関係の認識を通して、 自然界そのものを理解・表現しようとするシステム的な考え方。 ●客観主義 objectivism 真理の基礎を主観から独立した実在のうちに置く立場。 真理は人間の活動や認識とは独立して存在するとする立場。 ●主観主義 [哲] subjectivism 一切の認識・思惟・実践・価値判断は客観的対象に基づいて 成立するのでなく、対象に関わる主観の働きを現し、従って 心理とは主観的なものである、とする立場。 その場合、規準を個人の主観におくか、 普遍的な人間主観におくかの別がある。 後者の例としてはカントの先験的観念論がある。 ●実在主義 realism 意識と独立した客観的存在、万人にとって同一となる認識の対象が 存在し、これを事物の真の姿と考える立場。 一般的には物質を客観的な実在として認めている。 ●実存主義 existentialism 神と虚無の中間者として、不安・孤独・絶望により規定される 人間存在の限界状況に着目し、意識と人間の存在のありようの 条件付けや分析を行おうとする立場。 ●個体主義 [哲] Individualismus 個物すなわち個別的存在を真に実体的なものとして第一義的に考え、 普遍あるいは全体を非本質的・第二義的と見る立場。 ●現象主義 [哲] phenomenalism 物の本質は認識できないと考え、知覚された現象のみで満足するか、 または現象の背後の本体という考えすら否定し、意識に与えられて いるものだけを実在と認める立場。唯現象論。 ●超越主義 [哲] transcendentalism (1)先験的・超越論的哲学。カント、フェヒテ・シェリングなど。 (2)有限な存在のうちに神的なものの内在を認め、 理想主義・個人主義の立場から社会の改良を訴えたもの。 19世紀前半にアメリカで起こった哲学・宗教運動。 ●官能主義 sensualism ・肉欲、酒色にふけることにを良しとする立場 ・肉感的な表現を重視する美術的立場 ●快楽主義 hedonism 幸福を感覚的な快楽と捉え、これを産出する行為を 正しい・善いとみなす立場。 (1) 心理的快楽主義 人間は自分が快いと思うように行動する (2) 倫理的快楽主義 人間は快楽を産出する行為をなすべきである → 利己主義:自分自身のためだけの快楽 → 功利主義:当該行為に関わる全ての人のための快楽 ●幸福主義 eudemonism 幸福が人生の目的であり、善であるとする倫理説。 快楽主義が感覚的な快楽を求めるのに対し、 持続的・精神的な喜びを求める。 ●禁欲主義 stoicism 感性的欲望を悪の源泉、またそれ自体が悪であると考え、 それを出来る限り抑圧し、徳に進み、魂の平安を得ようとする。 ●厳粛主義 rigorism 法則を厳格に守る態度。義務を至上として欲望をおさえる。 カントの倫理学では、道徳的意志の動機として幸福や快楽を認めない。 ●虚無主義 nihilism 真実や伝統的価値観(例:道徳的善悪)を基礎づける 超越的な存在や権威(例:神)を否定する思想的立場。 ニーチェの哲学やカミュ、ツルゲーネフの文学がその代表。 〇受動的虚無主義 旧来の価値が崩壊し、無意味のままに生きる逃避的形態。 ○能動的虚無主義 将来の価値を創造し得ずに、既成のものに反抗する破壊的形態。 ●論理主義 Logismus 認識論上、心理主義に対する語。 心理主義が認識および認識上の価値の心理的な発生を 説明しようとするのに対して、認識上の価値の成立する 論理的根拠を明らかにしようとする立場。 ●理想主義 idealism 人生の意義を、理想を実現するための努力に置く思想。 現実に妥協せず、自身の不利と犠牲とを顧みない高潔な態度のこと。 他方、実現可能性を無視する空想的あるいは狂信的態度を意味することもある。 ●新理想主義 neo-idealism 理想主義的な観念論哲学の崩壊後に発展した自然科学主義・唯物論に 対抗するものとして、19世紀末から20世紀に掛けて現われた、 観念論哲学の総称。芸術上でもリアリズムの反動として現われた 理想主義的傾向をこう呼ぶことがある。 ●原理主義 fundamentalism 宗教上の原典を絶対視する主張・態度。 信仰上の原点回帰の信仰復興運動の面もある。 元来はキリスト教根本主義の事だが、あらゆる宗教において成立し得る。 一神教、特にアブラハムの宗教は原理主義を生み出しやすく、 現代のテロリズムや国際紛争の一因にもなっている。 ●神秘主義 mysticism 新の実在(神、絶対者など)は、独自の直接的な内的体験によって のみ把握されるとする説。エクスタシス ecstasy は、その例であり、 魂が離脱し、人間が神と合一した忘我・恍惚の神秘的状態を指す。 ●静寂主義 quietisme キリスト教徒としての完成は、一切の外的活動を捨てて、 神に対する愛と魂の受動的観想とに徹することにあるとする教理。 ●敬虔主義 pietism (devoutism) 教義と形式に堕すことなく、聖書を中心とした体験と実践を強調する立場。 ●グノーシス主義 Gnosticism 1〜3世紀の古代神秘思想の。物質と霊の二元論に特徴がある。 「グノーシス」は認識、知識を意味するギリシア語に由来し、 認識によって真の神に到達できるとしている。 ●福音主義 evangelism 聖書の福音を忠実に受容・継承し、それを熱烈に宣べ伝える信仰の立場。 ●儀式主義 ritualism 特に宗教において、常に同じやり方で一連の行動を行うことを重視する立場。 ●現世主義 現世の生活を第一義とし、前世や来世の存否に無関心な生活態度。
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●楽観主義 optimism 基本的に物事をすべてよいように考える傾向。 将来の成り行きについて、明るい見通しを持とうとする態度。 大局的に物事を捉え、大胆・積極的な行動に結びつくことが多い。 ●悲観主義 pessimism 基本的に悪い結果を予想する傾向。 将来の成り行きについて、暗い見通しを持とうとする態度。 綿密に物事を捉え、着実・消極的な行動に結びつくことが多い。 cf. 中東には「悲観主義者というのは経験を積んだ楽観主義者だ」 という諺があるらしい。 ●利己主義 egoism 自分の利益だけを追求し、他人の迷惑など考えないで、 わがまま勝手にふるまう態度。身勝手。 ●利他主義 altruism 他人の幸福・利益を第一の目的として行為する考え方 (愛他主義) ●博愛主義 humanitarianism 個人的利己心、人種的偏見、国家的利益、宗教的またはイデオロギー的 党派性を捨てて、人類全体の福祉増進のために、全人類はすべて平等に 相愛すべきものであるとする立場。 ●汎愛主義 Philanthropismus 18世紀のドイツで、人類愛に基づいて児童を博く愛護しようとして 起こった教育運動の主張。 ●保守主義 conservatism 現状の維持または漸進的な改革をよしとする態度や考え方。 ●権威主義 authoritarianism 充分な説明や討議を経ることなく、何らかの権威を背景にして、 ある一定の見方・考え方を相手に押しつけようとする態度や考え方。 ●教条主義 dogmatism ・直面する具体的な状況を吟味せずに、理論や教説を絶対視し、 機械的に適用する態度。 ・ [宗教] 原典や教義を字義通りに受け取り、例外を許さず実行する立場。 原理主義。 ●公式主義 万事を現実に即して行うのではなく、いたずらに公式・原理に拘泥して、 事態に対する適切な判断や行動をなし得ないやり方。 ●事大主義 toadism 自主性を欠き、勢力の強大な者につき従って 自分の存在を維持するやりかた ●官僚主義 bureaucracy 官僚政治や大規模な組織に伴う態度や気風。 ・専制的(独断かつ恣意的に事を決する) ・秘密主義(情報を隠蔽する) ・煩瑣(手続きがこまごまとわずらわしい) ・形式的(内容よりも体面や儀礼を重んじる) ・画一的(新しい試みへの挑戦や創造性が無い) ●伝統主義 traditionalism 因襲に執着する考え方。 ●異端主義 heresy * 選択における自由の源泉は自己自身にある * [正統派に対する] heresy [キリスト教に対する] paganism ●理知主義 intellect principle 感情や本能に左右されず、論理的に物事の道理を判断する能力を重視する態度。 ●営利主義 金銭的利益を得ることを事業の唯一絶対の目的とする考え方。 商業主義。金もうけ主義。 ●温情主義 目下の者に温情をもって接する態度。 特に、経営者が温情による労働条件の改善などによって 労使間の円満を図ろうとする態度。 ●家族主義 (1) 家族をすべてに優先して考える態度。 (2) 組織における支配と服従の関係を、 家父長の恩情と子の家父長への奉仕の関係とみなす思想。 ●放任主義 (1) 各自の自由にまかせて干渉しない主義。 (2) 教育や道徳などの面で、個人の自由を規制したり干渉したりしない立場。 ●放縦主義 勝手気ままに振る舞おうとする態度、思想。 ●三無主義 「無気力・無関心・無責任」という、極めて意欲の無い状態のまま 惰性で生きていくことを特に省みない立場。「無感動」を加えて 四無主義と言うこともある。 ●敗北主義 勝利・成功の方途を考えず、はじめから敗北・失敗を予測しつつ 事に当たる考え方や態度。 ●事勿れ主義 ひたすら何事も起こらず無事ばかりを望む消極的なやり方。 ●日和見主義 物事の成り行きを見てから、有利な方につこうとする態度。 ●刹那主義 過去や将来を考えず、ただこの瞬間を充実すれば足りるとする考え方。 ●御都合主義 一定の方針や定見を持たず、その場その場の状況に合わせて 行動する無節操なやり方をさげすんでいう。 ●独善主義 他人の利害や立場を顧みず、自分一人だけが正しいとする考え方。 ●熟柿主義 柿が熟して自然に落ちるのを待つように、 時機の到来を気長に待つ考え方。 ●超然主義 ある物事に関係せず、その外にいて行う主義。 ●重点主義 特に大切だと思う所に努力や資材を集中しようとするやり方。 ●一点豪華主義 特定の興味・嗜好の対象にのみお金を使い、他は質素に保つ生活スタイル。 ●生涯一穴主義 男性が、生涯ただ一人の女性とのみ性交渉を行うことを決意しているさま。 ●菜食主義 vegetarianism 食生活を菜食で貫こうとする生き方。
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●公理主義 axiomatism 自明な命題から多くの定理を証明していく、という考え方を更に進め、 『人間が意味的に全く自明であると考える』ものを公理とするのでなく、 そこから「意味」の観点を抜き取り、単に『理論の前提としての仮定』 と考えて理論を展開する立場。 理論の出発点となる仮定である公理の集まりを公理系 system of axioms といい、そこに現われる基本用語・概念は定義されずに使われることから 無定義述語 undefined term、無定義概念 undefined concept と呼ばれる。 ●論理主義 logicism 数学を論理学の一分科と見做す説。主にラッセル Russell により提唱された。 数学の厳密性を確保するために曖昧な概念を廃して論理記号化を目指した。 「ある対象」と「ある対象の集まった全体」は「型 type」が異なるとし、 これを同一視することで生じる様々な逆理 paradox を避けようとしたが、 これを厳密に遂行しようとすると論理展開が非常に煩雑になるという欠点がある。 ●直観主義 intuitionism 数学的な真理や対象は、数学を考える精神と独立に存在するのではなく、 精神活動によって直接に捉えられるとする立場。ブロウウェル Brouwer は、 排中律 law of the excluded middle の無制限の使用を不当としている。 これによると「Pの否定が否定されれば、Pである」という背理法も無制限には 使えなくなる。「ある条件を満たすxが存在しない事が否定されたとしても、 直ちにそのようなxが存在することを保証は出来ない。具体的にそのxを 構成する方法を示せなければならない」というわけである。これを厳密に 遂行しようとすると証明可能な命題が著しく減ってしまうという欠点がある。 ●形式主義 formalism 数学基礎論に対するヒルベルト Hilbert の方針で、公理主義における形式化を 推し進め、論理や集合論的方法も含め数学全体を公理化し、徹底的に形式化 された数学の公理系の無矛盾性を証明することで逆理を解決しようとするもの。 有限回の操作で実行可能な事実だけを対象とする有限の立場 finitary standpoint、 数学の証明それ自体を研究対象とする超数学 metamathematics を基礎とする。 残念ながら、これを厳密に遂行しても、不完全性定理によって 数学全体の無矛盾性を証明できないことが分かっている。 ●構成主義 constructivism 選択公理を認めない立場。 選択公理 axion of choice とは論理的集合論における公理のひとつ。 『どれも空でないような集合を元とする集合(すなわち、集合の集合)が あったときに、それぞれの集合から一つずつ元を選び出して 新しい集合を作ることができる。』 一見非常に当たり前のことを言っているように見えるが、この公理を認めると、 一つの球を有限個に分割してそれぞれを集めて元の球と同じ体積の球を二つ 作ることができてしまう。(バナッハ=タルスキーのパラドックス)。 選択公理は多くの数学的命題を証明するのに重要な役割を持つが、 このように直観に反する結果を与え得るものでもある。
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