淀調 華麗なる坊主めくり 

はい、こんばんは。いるいるサンの部屋専属学芸員の淀調でございます。

今日はね、メトの「薔薇の騎士」観に行きました。ヴァルガスが公爵歌った「リゴレ

ット」はゴミでしたね。舞台装置もBAホリディパック10日間900ポンド南欧貸し

別荘いう感じでほんとにがっかりしたのね。今日も止めとこうか、思たくらい、

でも行って良かったですね。女性陣3人だけでなくてオックス男爵が良かったのね。

まあ、この人カウボーイかしらんいう振る舞いで洒脱さに欠けるところはあったけ

れど、まあ、あんた、田舎で「本物の」狩に明け暮れてるからウィーンいう嫌らし

い街があんたには合わんのよねえ、言うてあげたかったのね。

それで元帥夫人歌ったのがルネ・フレミング、その彼女の最新CDがマスネの「タ

イース」、ノーベル賞作家アナトール・フランスの原作でアレクサンドリアの都に

に名高い遊女タイスと彼女を改心させようとする修道僧の話なの。坊さんがタイス

にそんな生活改めんと魂の救いは無いぞ、言うのね。あたしはタイス、今の生活続け

るのよ、言うて幕が下りたところで流れてくるのがあの有名な「タイスの瞑想曲」

ですね。その後結局タイスは悔い改めて病死してしまう、これで終われば椿姫なんで

すが、そうは行かないところがフランス人。改心させたはいいがこの坊さんまだ

若かったんですね、修行中にタイスの面影が浮かんできて消えてくれないのね。瞑想

してても彼女が浮かんでくる、この苦しみを描いたのがあの瞑想曲なんですね。遂

には病気の彼女を抱いてかき口説くんですが女は一度思い定めたらもう神様一直線

で、熱にうなされつつ若い男に抱かれつつ目の前には神様の姿しか浮かんでこない、

振られっぱなしで終わる可哀想な修道僧のお話でした。フランス人は若い修道僧が

もだえ苦しむ話が好きだったんですね、マスネは「マノン」も書いてます。今度

新国立劇場に来る演目、主役ふたりとも同じ配役で観たコヴェント・ガーデン、

ヴァドウヴァはこれでローレンス・オリヴィエ賞とってます。贅沢好きで

なびきやすいマノンを思い切ろうとデ・グリューは修道院に入るのね。それでマノ

ンは僧院にまで追いかけてくるの。いろいろいろいろ言われて言われてすがられて

デ・グリュー苦しいのね。いかん、いかん、思うて邪険に扱って耐えてるのね。自

分はもう神に仕えてるんだから、言うて気の無い返事して、どこで折れるか、さあさ

あさあ思うて観ているとサヴァティーニ、いきなり押し倒しなのね。それも教会の

中ですよ、あのお行儀のいいイギリス人が前横後ろで皆揃って息を詰めて観てる

のね。マノンはもう勝った! あたしは神に勝った!  思うて勝ち誇って高笑いして

抱かれてるのね。オリヴィエ賞は伊達じゃないのね。吉田の秀ちゃんにボロクソ

言われてるマスネですけど、これは役者で観ないとわからんものやなあ、とつくづ

く思ったものでした。

ここはイギリスものBBSやのになんでフランス、というとですね、同じ坊さんの

話でもどうもイギリスはしょぼい、同じコヴェントガーデンで大当たりしたのが

カレーラスが演ったヴェルディ「ステッフェリオ」これは完全な(当時の)

現代もので英雄も悪党も出てこない。プロテスタントの坊さんが伝道中に奥さん

がよろめいちゃう、離婚しよう! と思って最後は許しちゃう、まあ地味な地味な

オペラで「リゴレット」の陰に隠れて全く陽の目を見なかった。それがカレーラス

が歌ってまあニンが合ってたんやろうけれども 急遽生中継は入るわ 公演延長は

するわの大騒ぎになったんです。同じ女で苦悩する言うてもこれじゃずいぶん

じゃないですか。「高慢と偏見」時代だって隣のフランスにはナポレオンを手玉

に取ったタレランがいて、彼の遠い親戚には枢機卿リシュリューがいて、昔の

「三銃士」ではチャールトン・へストンが演ってました。それがコリンズさんと

きたら棚がどうの、とかやってる。これはね、やっぱりあのヘンリー8世がいかん

かったんやと思いますね。まあ、あんまり他所の国の坊さん追っかけでもいけま

せんから次回は「闇夜を照らすランタン」と称えられた英国の坊さん達の零落の

道筋を辿ってみようと思います。

それでは皆様、ごきげんよろしゅう。

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