かまきり通信

山陰からの便り     ぴぃーすうぉーく松江・事務局長 吉田 英夫

いかなる企みも東アジアの
       緊張緩和への流れを
               妨げることは出来ない  
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“脅し”とは通常強い方が弱い方に対して行うもので、それでこそ効き目があるといえる。逆に弱い方が強い方に向かって、同じようなことをやったらどうなるか。何のプラスにもならないのは勿論、相手の怒りを掻き立ててとんでもない結果をもたらすことになるのは必定である。しかも今度の場合は「挑戦状」を突きつけられたのが、力も悪知恵も世界に冠たる超大国と言うわけだから、この成り行き波乱なしでは済まぬようだ。
 さて、御大ブッシュ大統領は、大方の予想に反してそれほど多くをしゃべらない。悠然と構えている節さえある。それにひきかえ彼につき従う日本政府は、早速経済制裁だ、安保理決議だと待ちかねたようにはしゃぎ始めた。
 五日払暁、緊急記者会見の席に現れた安倍官房長官は、その深刻な表情にもかかわらず、何か内心の喜びを隠し切れず、笑いが顔に出るのを懸命に押さえているようにも見えたが、実のところいったいどうなのか。
 彼としてはこれで更なる緊張激化の火種が見つかった、ネオ・ファシズムへの道が清められた、九条取っ払いの大義名分にも大いに役立つ等々…とでも踏んでいるのだろう。
                ※   ※   ※

 だが、ピョンヤンの考えもさっぱり分からぬ。相手を困らせてこそ作戦は生きてくるのだが、喜ばせてしまったのではぶちこわしではないか。
 まァそれはともかく、人間というのは恐ろしいものだとつくづく思う。日米の支配層が、北朝鮮をいかに信用できない国家だと決めつけているとしても、それが主権国家であることは紛れもない事実、その相手を最新技術の粋を尽くしたスパイ衛星で上空から監視したりして手を取るように把握している。
 これで相手の冷静になれと言うのが、無茶な注文であることぐらい百も承知のはず、怒らせて動転させてチョンボを仕出かすように追い詰めようと言う魂胆なのは明々白々。
 うまく罠に嵌ってくれたと舌を出しているのだろう。いや剣呑剣呑われわれ善良な市民には世界の出来事すべてを疑ってかかるぐらいの慎重な判断が、今求められていると言えそうだ。ご用心ご用心…。
                ※   ※   ※

 話題を変える。七月に入って日本列島の中央部でちょっとした政治的異変が起こった。滋賀県と東大阪市の首長選挙で前者は、政権与党に民主党までが加わって支持した三期目を目指す現職に対し、主要政党の中では一番非力とされる社民党だけが応援した無名の女性候補が、予想を覆して勝利を勝ち得たもの。後者は政治地図の中では最も左に位置し、中間層の取り込みにはどこよりも苦労するとされる共産党が見事に返り咲いたという選挙戦である。
 滋賀の場合、原動力は市民運動で、新幹線新駅の建設の凍結を訴えたのが奏功したと聞く。争点を一つに絞った戦術と言えば昨夏の総選挙時の小泉流を連想するけれど郵政民営化一本のワンフレーズポリティックスが大事な論点を故意にぼかし巨大マスメディアを篭絡して詐欺師的手法の「勝利」だったのに引き換え今回の“シングルイッシュー”は無駄な税金投入、県民の生活と環境破壊につながる政策の中止を求める広範な市民の声に応えるものだったのであり、その意味は決定的に異なるのではないか。
 東大阪市長選はもともと地力を持つ共産党の元職候補が遮二無二襲いかかる金持ち優遇、福祉切捨ての悪政にノーを唱えて多くの市民の結集をすすめ見事市政奪還に成功したのだと思う。
 これらから得られる教訓は何か。小泉→小泉亜流の流れがこの国の進路を無条件で決めていくものではないと言うことなのである。

                                2006・7・9
変革の主導権を国民の手に
   小泉
小泉亜流への圧力を強めよう    25

 小泉首相がイラクからの陸自撤退を決めた。もっとも航空自衛隊の活動範囲は逆にいっそう拡大され、トルコ国境にまで及ぶというのだから、ことは単純ではない。
 しかし、ともかく二年半以上にわたった地上部隊の駐屯に終止符が打たれ、このまま推移すれば一人の犠牲者も出さずに全隊員の帰還がかなうと言うわけだから、アメリカ追随の小泉政権がこれまでやってきた政策に対する論議は論議として、この事実は虚心に受け入れなければならないと思う。
 さて、多くの人びとが当初から自衛隊の派兵に疑問の声をあげていた。世論調査を見ても、派兵の継続に肯定的な意見は政府筋の期待に反してほとんど増えず、国民の支持共感を取り付けることに、明らかに失敗していたといえるだろう。
 だがそれにもかかわらず、今度の陸自撤兵の方針は、国民の反対の意思に押された結果だとはとても言えず、もっぱらアメリカ主導による世界戦略の組み替え作業の一端として策定されたものだということも明らかな現実ではないか。
 日本国民は、そして世界の諸国民は、いまだに自らの将来を決定するカを獲得していない。あちら側の支配権はまだまだゆらいではいないのである。

                  ※    ※    ※


 われわれの非力振りと言うか、もてる力を効果的に発揮できていないことが、本来もっと追いつめられていてもおかしくない相手方の安泰を保障し、太平楽を並べさせている原因の一つだ。
 小泉氏の後釜をめぐって、あれだけ余裕たっぶりの内部抗争を彼らがやれると言うことは、野党だけでなく国民全体の屈辱ととらえなければならぬ。
 日米軍事協力の新展開、教育基本法や憲法の改悪等国の進路を危うくするたくらみは無論のこと、身近な問題をとってみても、医療費負担の急上昇、住民税の大幅増といった悪政が、容赦なく市民生活を破壊し統けている。
 なのに、それらへの不満、怒りを結集して政府与党を追いつめるカが存在しない。いらいらが募るばかりである。こういう状況は、一面では権力の側に立つ人間、権力にぶら下がって、うまく立ち回る人間もしくは立ち回ろうとした人間をして、ますます世の人をくみしやすしと侮らせることになっていく。
 堀江氏に続く村上氏、その彼とひょんなつながりを持つ福井日銀総裁、彼らのしやべっている言葉から得る感想は、ひと口で言えば「世間を舐めてかかっている」ということになろうが、つきつめるとこんな発言を許している民衆自身が、無邪気すぎるという結論にもなりかねない。
 それにしてもこの福井と言うお人、童顔に似合わずふてぶてしいことをしやあしやあと云ってのける方ですねェ。皆さんのお考えは…?

                  ※    ※    ※


 くどくどと愚痴めいたことを並べてきたが、あとふた月あまりしかない自民党総裁選(事実上この国の支配者を決める選挙)までの残された期間、これをどのように活かすべきか。
 このままダラダラと空費してはならぬこと言うまでもない。福井総裁の辞任を求めることで、野党四党が共同歩調を取ることを決めたと言う。結構なことである。だがこれは、小泉→ポスト小泉政権と対決する統一行動への第一歩とすることではじめて意味があるのだから、くれぐれもこの問題だけで終わらせてはならない。

                                2006.06.25

幅広い連合こそが
      小泉
ポスト小泉に打ち勝つ道    24

 
小泉首相は今国会の会期を延長しないことに決めたらしい。だとすると、教育基本法の改悪や共謀罪新設などは継続審議、次の国会に先送りということになる。
 率直に言って、これは野党や広範な国民の反対の声にたじろいだ結果ではなく、政府与党側の内部事情、すなわち今秋の自民党総裁選を前にしての党内調整に力を注ぎたいと言う意向が、強く働いたためであろう。
 その意味で、情勢を変えてゆくのには、諸野党も国民もまだまだ力不足という他はなく、これからの頑張りによって、早急に立ち遅れを取り返さなければならない。
 教育基本法破壊、共謀罪、国民投票法等々…いずれも次期国会では、更に陰険な装いを凝らした姿で、現れてくることだろう。並々ならぬ気構えで迎え撃つ覚悟が必要となる。
             
※    ※    ※

 さて、硬軟両様の策略で、沖縄、岩国等の懐柔に当たってきた在日米軍再編問題は、日米両政府間の最終報告を軸にその「的確迅速な実行」を明記した実施方針を閣議決定し、さきに無理やり「基本的合意」に追い込んだ稲嶺知事に無条件受け入れを迫っている。
 しかし彼らの強引なやり口は、沖縄でも岩国でもその他の自治体でも、更なる反発を招き、アメリカのために火中の栗を喜んで捨いかねない小泉自公政権の危険な政策に対する国民の怒りの声も、いっそう高まってきた。
 こうした中、自民党は彼らの次のトップを決める総裁選を数ヵ月後に控え、各グループそれぞれの思惑が入り乱れて、百鬼夜行の有様となりつつある。
 彼らの総裁選は即、この国の政治の最高権力者を決めることになるという見通し(現状では口借しいけれどその通り)から、ここしばらくは世人の目もメディアの報道も、あげて彼らの内部抗争に注がれるであろう。
 それにしても、彼らにこれほどの余裕を与えているものは何か。昨年の総選挙の結果たる与野党議席の圧倒的大差だけによるのではあるまい。
 小泉政権のもたらした破綻…その極端なアメリカ追随、市場原理万能主義、弱者切捨て、格差拡大…こうした政策が生み出したどうしようもない行き詰まり。それにもかかわらず、小泉氏と彼の仲間たちを追い詰めきれぬわれわれの非力さ加減。いったいどう説明すればいいのか。これこそが深刻に問われなけれぱならない。

             
※    ※    ※

 克服すべき弱点は、いろいろあるだろう。だが一番大きな問題は、小泉→ポスト小泉路線に対抗する広範な連合(これは何も厳密な意味での統一戦線でなくてもよい)が出来上がっていないことである。
 その点で去る4月9、10両日のイタリア総選挙の結果は示唆に富む。金持ち優遇、アメリカベったりのベルルスコー二という小泉氏の双子の兄弟みたいな人物の政権を終わらせるため、それに反対する全勢力が、小異を捨てて(それどころかある程度大異をもしばらく不問に付して)団結し、勝利を掴んだのだ。そしてその後行われた地方選挙で、着実に前進を遂げている。
 イタリアで出来ることが、わが国で出来ないはずはない。従来のしがらみに囚われず、あたらしい一歩を踏み出そう。少しでも早い方がよい。
 遅れれば遅れるだけ、国民の不幸は加重する。

                                              2006.06.01
国民の総ロボット化を狙う
     教育基本法改悪の企てを葬ろう     
23

“アメリカのためなら、エーヤコーラ”というわけか、しゃかりきになって大奮闘の小泉首相と額賀長官。稲嶺知事にぴったり張り付いて「説得」を続け、どうにか「基本的合意」にまでこぎつけた。
 さてもご苦労なことであるが、沖縄県民にも全日本国民にも災厄以外のなにものでもない日米新軍事協力体制が、このままスンナリとできあがるわけもなく、また絶対にそうさせてはならない。まさにこれからがわれわれの闘いの正念場なのである。
 さて正念場といえば、教育基本法や組織犯罪処罰法の改悪(共謀罪新設)をもくろむ政府与党の攻勢も、終盤国会に入ってますます常軌を逸したものになってきた。
 とりわけ希代の悪だくみたる共謀罪導入のごり押しには目にあまるものがあり、これには自民党出身の河野衆院議長でさえ、見逃すわけにはゆかなくなって、法務委員会での強行採決に”待った”をかける事態となっている。だがまァよくもこれだけ、恥ずる気色も無く、悪乗りができたものだ。
「行革推進法案」「医療制度改革関連法案」「国民投票法案」「防衛庁(省)昇格法案」等々

                 
※    ※    ※

 もともと悪法(乃至現行法の改悪)というのは、支配する側の必要から突きつけてくるものであるが、彼らもバカではない。それどころか非常に悪賢いので、これに提出するに際しては、民衆の側の何がしかの弱点、盲点を狙って、揺さぶりを掛けてくるということも随分見受けられる。
 だからこれに反対するわれわれは、相手方の意図を抜かりなく見抜いて、有効な反撃を加えることが不可欠になってくるのだ。
 さて、教育基本法の改悪の目的は何か。支配者のたくらみに何の疑問も持たず、忠実につき従う人間の集団を作り出すことである。その後ろめたさとか、本質の隠蔽とかあれこれの理由で、何をこの改悪の大義名分に掲げればよいかを考えた末、これぞ絶好のキャッチフレーズだと決めたのが「愛国心の涵養」なる殺し文句だったのだろう。
 与党内部のいろんな事情を反映して、その文言が度々改変された経過は、噴飯ものといえそうだが、それにしてもこの問題をためらいも無くしょっぱなに持ってきたのは、彼らなりの知恵を搾り出した結果なのだといえなくもない。
 なにせ「ナショナリズム」の思想とは思惑微妙で、簡単に規定・断定できかねるものだからだ。もちろん政府与党の「愛国心」、彼らの言うところの「祖国」の正体は、すぐ化けの皮の剥げる空虚な誤魔化し以外の何者でもない。

                 
※    ※    ※

 現行憲法は、占領者に押し付けられたものだから、自主憲法に変えねばならぬと言う連中の主張は、いま改憲を誰よりも強く求めているのが、他ならぬかっての占領者アメリカだという冷酷な現実の前に、その誤魔化しが音を立てて崩れ始めてきた。かかる、漫画みたいな滑稽さは、ご主人様にぴったり寄り添って、犬馬の労をとる小泉、額賀両氏の惨めな姿に象徴的に表れているといえるだろう。
 ところで真の愛国心とは何か。これはまじめな検討に値するテーマだと思うが、少なくとも政府与党筋のすぐ底の割れるチャチな論理には、お引取りいただいても、差し支えないのではなかろうか。

                          
2006.5.24
たそがれ小泉政治の悪あがきに
                容赦ない懲罰を   
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 グアムへの引越し費用をちょっぴり負けてもらったことを、さも大手柄のように吹聴する額賀長官は、帰国早々アメリカの世界戦略再編の片棒を担いでいる自己の姿を、はずる気色もなく国民の前に現した。
 テレビは現行の日米ガイドラインが、今日の国際情勢下で見直しが必要となったとする彼の談話を伝えている。この露骨な発言には、自民党後継総裁レースに名乗りを上げている麻生外相がさすがに慌てて、時期尚早だという否定的コメントを出すなど、権力側の内部事情の複雑さも窺えるが、とにかく油断も隙もあったものではない。
 そして、悪だくみの終着点、憲法破壊の前哨戦と与党が意気込む教育基本法改悪をめぐる攻防、国会の多数を頼んで有無を言わさず強行しようとする共謀罪制定の策動への対決等など、われわれは連休に入った今重大な関頭に立たされている。
 ここに来てようやく黄昏てきた小泉政治のこと、なりふりかまわぬ中央突破作戦に打って出てくる可能性が大きい。掛け値なしの正念場である。

                  ※    ※   ※

 ところで小泉与党は、でかい態度をよそおってはいるものの、内実は結構苦しいのだと思う。せっかくグアム移転の出費がいくらか減ったと自慢できると喜んだのも束の間、長期負担額ということでは更に7000億円以上も増える話が無常にもアメリカ筋から伝えられるなど、これまさに子の心親知らずではないか。
 もっとも超大国アメリカがカネに汚いのは、今に始まったことではない。湾岸戦争(不正な戦争だった)のときにも、日本政府は「多国籍軍」(実態はアメリカ軍)のために1兆円を超えるカネを貢いだのだが、事前の予想よりもはるかに早く終わった戦争であったにもかかわらず、当然余ったであろう金を返還したという話はついぞ聞かぬ。
 まァ何かにつけ滅私奉公に徹している歴代日本政府の献身ぶりに対して、アメリカの態度のなんと冷たいことか(特に現小泉内閣に)。
 国連常任理事国入りの問題にしたってそうである。小泉政府の外務官僚が、これまで一緒にやってきたドイツ、インド、ブラジルとの連携も打ち切るという義理を欠いたことまでやって、ひたすらアメリカに縋ろうとしているのに、取り付くしまも無いようなつれないあしらいで、迎えられたというではないか。
 あれほど大声で常任理事国入りのオダを上げてきた手前、いまさら引っ込むわけにもゆかず国連大票田のアフリカ諸国の支持を取りつけようと、首相自らエチオピア、ガーナなどの訪問に乗り出す構えだという。
 だが経済援助をちらつかせて、発展途上国の歓心を買おうとするような浅ましい振る舞いはやめてもらいたい。
 小泉氏個人のことでは済まず、日本国民全体の恥になるからである。

                  ※   ※   ※

 小泉氏の任期もあと4ヶ月あまり。どのような政治情勢の展開になるにせよ、彼がアメリカ追随と市場万能主義、弱肉強食と格差拡大を遮二無二強行してきた人物として、歴史に悪名を刻まれることは、最早確定的になったといってよいだろう。

                                2006.4.30
おごる自民に痛烈なトリプルパンチ
        全国民の力で悪政にとどめを   
21

 4月23日は久しぶりに嬉しい日となった。衆院千葉7区補選で、自民党公認候補が敗れた。あえて云う。民主党が勝ったことよりも、自民党が負けたことが一層重要なのである。今はなにはともあれ、小泉自民党に痛棒を食らわすことこそが、求められているからだ。民主党以外の野党は、この点をよく考えてほしいと思う。
 それにしてもこの日は、岩国、沖縄など各地の新市長選挙でも、次々に朗報が伝えられた。あの『ガセネタメール事件』で自公両党は“労せず”優位に立ち、大船に乗った気持ちでわが世の春を謳歌していたが、一転足元が怪しくなってきた感じである。
                 ※    ※    ※

 さあ、小泉政権に立ち直りの機会を与えてはならない。
 これまで摩訶不思議ともいうべきカリスマ性の力で、人気を持続させてきた小泉純一郎氏であるが、任期満了直前の今度こそ、エセ構造改革に引導を渡さなければならぬ。
 考えてみれば、小泉政治の5年間は、従来のどの自民党政権にもまして、ウソとごまかしで塗り固めた国民不在の政策が、まかり通ってきた。
 そしてこの間の“ブッシュのポチ”と呼ばれるアメリカべったりの姿勢には全く目にあまるものがあり、アメリカから舐められ続けてきた結果が、有害食肉の輸入というトラブルであり、総額の75パーセントを要求されているグアムへの米軍移転費の問題である。さすがに泡を食った小泉氏は、額賀防衛庁長官をワシントンに派遣して、何とか局面を打開しようとしているが、はてさて如何なことに相成るか。ラムズフェルドの前に額(ぬか)づいてひたすら減額を乞うという、みっともない姿を晒しているのではないか。彼にそれを求めるのは所詮無いものねだりということだろうが、毅然とした態度で交渉に臨めといいたい。(今入ったニュースでは59パーセントで合意したとのこと、何たる破廉恥!)

                 ※    ※    ※


 話題は前後するが、竹島をめぐって展開された日韓両国政府間の争い、そしてあわただしい一時的幕引き…これをどうみるべきだろう。愚かしい揉め事だと一笑に付してよいものか。
 今回の出来事の底に、脈打っている不気味な排外的ナショナリズムの鼓動。決して打っちゃっては置けぬ深刻な問題だと思えてならない。この不健康な思想が小泉首相とその後継者たらんとする人々によって意図的に自らの支持基盤強化のために利用されているのは、紛れもない事実なのだから…。
 アメリカにペコペコする卑屈さと近隣諸国への尊大な態度がくっついて醜を晒しているのである。

 機は熟した。時を移さず、追撃を開始しよう。彼らの破綻は誰の目にも明らかである。今まで誤魔化しおおせてきたのが、不思議なくらいだ。自信を持って前へ進もう。
                        
2006.4.24

うんざりだ 永田議員をめぐる茶番劇
   小泉
ポスト小泉の流れに断固たるメスを! 20  

 
永田衆議院議員への風当たりは、弱まりそうにもない。政治家の『けじめ』なるのものを要求して飛び交う意見を聞いていると、政敵自民党よりも身内の民主党からの方が、きびしいくらいだ。懲罰委員会での各党の言い分は、要するに彼永田氏が議員の品位を損なったとか、国会への信頼感を傷つけたとかいうことに帰着するらしい。ま、いろんな考え方があるとは思うけれど、今の議員諸公や国会に、そもそも品位や信頼感があるのだろうか。

 もともとありもしないものが、これ以上損なわれたり、傷ついたりするものか知らん。それにしても、永田議員がなぜあんなことをやったのか、さっぱりわからぬ。典型的なエリートコースを歩んだあのお人が、どうしてこんなこどもでも引っかからぬようなあやふやな情報に、振り回されたのか。エリートなのにどうして…といったが、ひょっとするとエリートだから見事につまずいたということかもしれぬ。

                  ※    ※   ※

 ところで、『品位』や『信頼』の問題はさておき、今度の騒動で誰が泣き誰が笑ったか、どちらが得をしどちらが損をしたか、そう眺めてみるとこれはもう一目瞭然、疑問の余地なくはっきりしてくる。
 大いに点数を稼いだのが、政府、自公両党そして権力の側に立っている人々であり、打撃を受けたのは野党側(民主党だけではすまぬ)と悪政に苦しめられている一般国民であることは明らかだといわねばならない。
 このドタバタ劇を仕掛けたものは誰か、そんな具合に推論を進めると、なにやらサスペンスドラマの見すぎだといわれそうだから、これ以上の追求はしない。
 ただ、強調しておかねばならぬのは、われわれが闘っているのは、とにかくとてつもない大きな力を持っている相手だということである。

                  ※    ※   ※

 新年度予算案をいとも簡単に通過させて、記者会見に臨んだ小泉首相は終始余裕の表情であったが、傍若無人のようでその実緻密な計算にも長けている彼らしく、要所要所は慎重に言葉を選んで、インタビューに応じていた。
 自衛隊イラク撤退の時期に関してはそれを明示せず、アメリカの顔色を伺いながら英豪などの対応を見守りつつ、様子見の姿勢に徹する構えのようである。
 アメリカの世界戦略の見直しに伴う、沖縄からグアムへの米軍移駐の費用負担問題、日米軍事協力体制の質的構造的変化を画策する両国支配層の動向、そして日米同盟を後生大事に奉って口先だけのアジア善隣外交の空念仏を繰り返す政治姿勢…それらに対決する有効なたたかいが、早急に組織されなければならない。
 それはまたポスト小泉をめぐる与党内部の抗争の反国民的本質を、白日の下に明らかにする道にもつながるものだ。
 前途は険しいが、ひるまず頑張り抜こう。
    2006.3.31



かまきり通信  第一九号

 

アメリカ追随の小泉政権はわれわれを何処へ連れていくか

〜いまこそ全国民的抵抗を〜        HY

 

 三点セットとか四点セットとか呼ばれてきた(過去形で語られるのがいかにも情けない)自公政権の失政の集点をめぐる攻防は、口にするのも腹立たしい民主党のチョンボのお蔭で、いまいち野党側の気勢が上がらない。反対に自公与党にとっては勿怪の幸いとなり、ひところの浮き足立ったそぶりがウソのように掻き消えて、もとの図図しさを取り戻している。

 だが小泉さんよ、喜ぶのは早すぎるぞ、あなたの悪政のタネがなくならない限り、国民からの手痛いシッペ返しもまた免れられないというものだ。アメリカの世界戦略の転換がもたらす極東米軍の再編計画は、彼らにあごで使われっぱなしの小泉政権と日本国民との間の矛盾をいやおうなしに激化させる。

 サル十二月には厚木基地の米空母艦載機の移転計画に対し、岩国市民は痛烈なノーを突きつけた。そしていままたアメリカ側は、沖縄からグアムへの米軍移転費の七五%(八八五〇億円)というべらぼうな金額の負担を日本側に押し付けようとしており、国民の反発を招くのは必至である。

 しかし小泉政権と与党の首脳は、これに無条件で応じかねない破廉恥な姿勢を見せ始めておいて、少しの油断も許されない。額賀防衛庁長官の国会答弁を聞いていると、今人物、風貌は村夫子然としているが、なかなかのしたたか者らしく一筋縄ではいかぬ悪知恵の持ち主とみた。くれぐれも要注意。

 

さて弥生三月も、はや下旬である。九日には日銀の「量的緩和政策」五年ぶりの解除というしろものにはなにがなんだかよく分からぬ改変が行なわれたわけだが、要するに庶民の「預金」には底ばいが続き(ホンのちょっぴり金利が引きあげられるという話が一部にあるにせよ)、その反面「住宅ローン」は確実に上昇局面に向かっていくというのだから何のことはない、すべてこれ従前どうりの金持ち優遇・弱者切り捨ての金融システムの続投と言うことなのだろう。

 更にはPSEマークをめぐる零細リサイクル業者や消費者泣かせの経済産業省の施策の問題がある。最小限の気配りも欠いた今度のやり口に対する抗議の声は、無神経な官僚連中を大慌てさせるほどの高まりを見せた。

 こうして現状への怒りはじはじはと国民各層に広がり、秩序の壁を揺さぶりはじめている。

 終わりにもう一度日米関係に立ち返ろう。ブッシュ大統領は、二十一日の記者会見で在イラク米軍の完全撤退は、将来の米大統領とイラク政府が決める問題だと述べた。彼の任期が続く、後二年半以上もの間、イラク占領を続けると公言したわけである(彼の言葉どうり占領継続が可能かどうかは別として)

 ところで日本政府はどうするのか。彼らは陸自撤退の目安を本年五月ごろと非公式に表明してきたのだが・・・。われわれはキッパリト云おう。外国の軍隊が居すわる限り、イラクに平和は甦らない。

 小泉首相よ、今すぐ自衛隊を引き揚げさせなさい。

2006.3.24

    HY


山陰からの便り

沖縄、岩国のたたかいに学ぶ

 「ぴぃーすうぉーく松江」事務局長 吉田 英夫

 小泉内閣は悪政を続けながら、一路本年秋の任期満了を迎えようとしている。耐震偽装、ライブドア問題、食肉輸入不祥事、更には防衛施設庁談合事件など、ようやく彼等のホコロビも目立ちはじめたのに、周知のとおり民主党の功をあせった国会戦術の無残な失敗のため、かえって与党の立場を強化してしまうという結果をもたらしてしまった。こうして前途のみえない生活苦にあえぐ一般勤労者のフラストレーションは、いっかな解消されそうもない。野党の奮起をうながす声は切実であるとういえ、少々あきらめムードも混じりかけている現状だ。これではならぬと心から思う。

 ところでそんな情勢下、米軍再編、日本軍事協力態勢強化の動きに対し、いま沖縄や岩国で展開されている住民のたたかいが、沈滞ムードをふき飛ばし勇気を与えるものとして注目を浴びている。これにあやかって私たちもがんばりたい。終わりに『かまきり通信』の最新号を紹介しておく。(市民生活2006.VOl.26掲載)


★禁じ手はダメ
       正攻法で勝利を!        
18

 送金メール問題はまともに論ずる気も失せてしまうようなバカバカしい様相を呈してきた。民主党は、今日のうちにも事実上”おわび”を意味する経過報告を発表するらしい。
野党第一党のこのみっともないつまづきもさることながら、何としてもわれわれの腹の虫が治まらぬのは、わずか十日あまりの経過の中で、あんなに追い込まれていた小泉自民党がすっかり息を吹き返してしまったことだ。
 彼らは窮地に立たされた前原氏に、救いの手をさし伸ばすほど余裕を見せている。もっともこれは、集団的自衛権や対中国政策などで、自民党そこのけのタカ派的発言を繰り返す前原氏が引き続き民主党のトップであり続けるほうが好ましいという思惑もからんでのことだろう。
 政府与党の悪だくみの本丸、憲法改悪への道を掃き清めるためには、前原氏の協力がぜったい不可欠の筈だからだ。

                 ※     ※    ※


 さてもなさけない状態に陥っている民主党だが、今からでも遅くはない。くだらぬ人身攻撃にうつつを抜かすような愚かなことはすべて終わりにして、本来の政策論争に身を入れたらどうか。
 耐震偽装、ライブドアの証券取引法違反そして食肉輸入にまつわる不祥事、すべてこれ小泉政権の推進してきたむちゃくちゃな規制緩和と”官から民へ”路線、格差拡大とアメリカ追随の政策がもたらした人工災害である。
 武部氏の息子を標的にした今回の騒動の陰で、ないがしろにされて済む問題ではない。議席は減ったとはいえ、すぐれた論客をそろえている民主党には、この切実な国民的課題に対応できる充分な力があるではないか。
 共産、社民その他の野党とも連携を蜜にしスクラムを組んで、水ぶくれの「巨大与党」に果敢な戦いを挑んでほしい。

                
※    ※    ※

 相手は衆院で三分の二以上を制しているといっても、ひと皮剥けば度胸も根性もない腑抜けの集まりである。野党側が正しい政策を引っ提げてぶつかれば、戸惑いやたじろぎが生じて彼らの結束も大いに乱れることだろう。
 さてアメリカは、先に小泉政権を侮って政府間の約束もないがしろにした有害食肉の輸出をやってのけたが、今度沖縄からグアムへの米軍移転に関してまたもや理不尽な費用負担を、日本側に押し付けようとしている。あまりにも法外な要求なので、小泉政府もさすがに二つ返事では承諾しかねているが、国民の間で反対の声が広がらないと見れば、最後にはアメリカの云いなりになってしまうこと火を見るより明らかであろう。
 そんなことができないよう監視の目を光らせようではないか。こうしてひとつひとつ彼らの政策に”待った”をかけること、それらを積み重ねていくことがこの反国民的な政権を放逐する道につながるのである…。
 まるで夢物語のようだと批判されるかもしれないが、決してそうではない。夢を現実に変えるため全力を尽くそう。

 
                              
2006.2.28


山陰からの便り

がっかりせず確信を持って前へ!生活、憲法、平和

 「ぴぃーすうぉーく松江」事務局長 吉田 英夫

 

 九.一一総選挙の結果が、平和と生活を守るまれわれの運動に少しの心理的打撃を及ぼさなかったといえば、ウソになる。日頃地道な努力を積んできた人ほど受けたショックも大きい。だが、いつまでも自信喪失状態のままで、日々を過ごすことの許されぬ過酷な現実がそこにある。手さぐりの中から新たな反撃のキッカケをつかもうとする格闘が続く。

 前号で報告した『かまきり通信』は選挙後も継続発行されており、つぎに紹介するのがその最新号である。(市民生活 2005.Vol.25)


今求められるのは
       正面からの政策論争だ!    
17


 
耐震強度偽装、ライブドア証券取引法違反、米国産食肉輸入の不始末が失政三点セットと呼ばれているが、これだけにとどまらず防衛施設庁の談合だの麻生外相の靖国問題にかかわる不規則発言などがつぎつぎに飛び出し、弱り目に祟り目というのか、泣き面に蜂というのか昨秋の総選挙直後には想像もつかなかったような窮地に立たされている小泉政治の今日この頃である。
 対する野党側は息を吹き返し、ここぞとばかり反撃に転じての諸悪の根源自公政権を追い詰めようと意気込んでいるようだが、これがどうもいまいち迫力を欠き、見ていても歯がゆい感じがしてならない。
 それというのも民主党あたり特にそうなのだが、問題の本質にメスを入れるのではなく、政権与党と同じ土俵の上で、相手の取るに足らぬ凡ミスをあげつらったり、政治家個人のスキャンダルを暴いたりといった点に、精力の大部分を集中させているかに見えるからだ。

                 ※    ※    ※


 そういう手法の一つが、最近話題に堀江氏から武部氏次男への送金メール問題である。このメールの信憑性をめぐってはいろいろ取りざたされているが、本物であるにせよガセネタであるにせよ更に一部でささやかれているように政府自民党筋の仕組んだ罠であるにせよ、小泉悪政のもたらした当然の帰結たる弱肉強食社会を変革してゆく闘いの本筋とは、ほとんど何の関係も無い瑣末事だといわねばならない。民主党もつまらぬあら捜しでなく堂々とした姿勢で論戦に臨むことをわれわれは期待する。
 それにしても権力を持つ小泉自公政権はしぶとい。これだけ逆風に見舞われてもまだ持ちこたえている。この堅陣を突き崩すには、並々ならぬ努力が国民すべてに求められるということになるのではないか。
 さもないと彼小泉氏は、またまたあっけらかんと立ち直り、涼しい顔で今週の任期満了の日を迎え、後継者に将来を託することになりかねない。

                
※    ※    ※

 さて最後になるが、秋篠宮(アキヒト天皇の次男)夫人の懐妊に伴う皇室典範改定問題先送りについてひとこと。昨今の現行典範の是非をめぐる論議は、そもそも主権在民をはっきり規定した日本国憲法の本来の趣旨に即して眺めるとき、はなはだ見当はずれのぎろんだといわねばならぬ。
 自公や政府与党筋のあれこれの発言は言うに及ばず、野党側が発表する見解にも(商業紙やテレビなどの報道を通じて知る限り)あまり見るべきもののないのは、残念至極という他はない。
 この困った風潮のなかにあって、九条の会の呼びかけ人の一人でもある碩学O氏のコメントはさすがにきらりと光っていた。頭の下がる思いである。  
                        
2006・2・21



★小泉政治を歴史の屑かごへ
      働く者がむくわれる社会に!   
16

 
ライブドア騒動はグループトップの逮捕に発展した。昨秋の総選挙に堀江氏を担いだ自民党は大慌てとなり対応に苦慮、弁解だか居直りだかわけの分からぬコメントを重ねた末、ここはひとまず謝るだけは謝っておいた方が得策と判断したのか、武部、竹中両氏に当時の言動を陳謝させ、小泉首相本人もふてくされた態度ながら、とにかく自らの不明を認める記者会見となった。
 ところで、選挙戦で苦杯をなめた民主党が、鬱憤を晴らす絶好のチャンスとばかり久しぶりに生気を取り戻して、反撃を開始したのはまァ当然だとしても、あんなにべったりとホリエモンに寄り添って、提灯持ちみたいな役割を果たしてきたマスコミが、突然態度を豹変、ライブドア叩き一色となったのには、いささか鼻じろむ思いである。
                ※     ※     ※

 堀江氏とライブドアをめぐる過熱気味の報道を眺めると、天下の耳目を集めた風雲児に目をつけて、広告塔に使おうとした自民党の浅ましい選挙戦術のこと、そして、そのヒーローが今や詐欺師まがいのことをやったという疑惑の渦中にあること、それらをネタに声を大にして小泉与党の道義的責任を追及する方向に、人びとを誘導しようという構図がはっきりと浮かび上がってくる。
 しかしながら、このようなとらえ方は、問題の本質をあいまいにするものとはいえないか。今回の事件の主役たちは小泉自民党や巨大資本の手によって、しゃにむに進められてきた数々の規制緩和と市場原理万能主義の土壌が産み落とした申し子であり、彼らと小泉自民党はそれこそ持ちつ持たれつの間柄なのである。
 政府も財界も、自分たちの政策による庇護の元に大きな成長を遂げたこのモンスターの吐き出す毒気に当てられて狼狽しているが、まったく身から出たさびというべきで、彼らがこれでも懲りずに現在の弱肉強食、格差拡大路線に固執する限り、第二第三のライブドア事件が、しかも今度の失敗から学んでより巧妙、陰険な形で繰り返されるおそれなどないと誰が保障できようか。
 だから今こそ社会正義を求める圧倒的多数の国民の声で、彼らのよこしまな政策にストップをかけなければならぬ。

                ※     ※    ※

 ところで天下の情勢はどうなのだろう。昨年10月発覚した耐震偽装問題では、人命に関わる建築物の安全確認を、あろうことか民間の機構に委ねているという驚くべき実態が露になった。
 これだってあんな事件が起こらねば、国民の多くはほとんど気付かぬままだっただろう。そしてライブドア事件のあとでは、輸入再開された米国産牛肉にまつわる不祥事が明るみに出て、小泉政権にはまたまた大きな黒星となったのだが、これなどどう評すべきか。一口で言うなら、日本国民が小泉内閣のおかげで、これほどまでに侮られ見くびられているということなのだろう。
 こうしてさしもの小泉不倒神話にもようやく翳りが見えてきたようだ。

 小泉首相の登場以来4年有余、この間規制緩和、官から民へ、小さな政府、自立援助等などの美名の下、市場原理万能、福祉切捨て、弱肉強食、格差拡大の政策が情け容赦なく強行されていくさまを嫌というほど見せ付けられてきたのだが、彼の任期もあと半年余をのこすばかり。ここまでこの内閣を延命させてしまったこと…、思えば我々の非力が悔やまれてならない。
 だが、もう沢山だ。なんとしても彼らがこれ以上横車を通そうとするのを押し返そう。そしていうまでもないことだが、憲法改悪につながる一切のたくらみも打ち砕こう。
                                2006・1・29



★憲法改悪、弱肉強食に断固ノーを!       15
    〜2006年を総反撃の年に〜

 年は新しくなっても、われわれを取り巻く情勢はあまり変わらない。小泉氏の傍若無人のふるまいが、依然続いている。屠蘇気分も覚めやらぬうちかれはあたふたと中東へ飛び立ったのだが、わが国にとって何よりも大切な近隣諸国との関係をこじらせたまま、遠く離れた中東訪問を正月早々の初仕事に選ぶという神経は、やはり並たいていのものではない。
 もっともこの場合も彼は例のごとく慎重な上にも慎重を期して、万事これでよしという自信が得られた後実行に移したのだろう。不敵ともいえる彼の行動を支えているのが、第二次大戦の戦争責任など今や過去の話、超大国アメリカにべったりくっついて世界に冠たる経済大国の道を一直線に突っ走り、アジア太平洋地域に君臨しようとする排外的ナショナリズム思想に汚染された一部の「国民世論」であることも、残念ながら認めないわけにはいかない。

                
※    ※    ※

 
このあやしげな「世論」は、アメリカに尻押しされて国連安保理常任理事国入りを目指すという小泉内閣の画策にも、肯定的な評価を与える。
 昨年小泉外交は、ご主人の意向を読み違えドイツ、インド、ブラジルと組んで、常任理事国入りを図った。その際ワシントンは、自らの一極支配の永続化をたくらむ立場から露骨に不快感を示すとともに、他の三カ国への態度とは異なり小泉=日本だけなら喜んで肩入れしてやるゾとのメッセージをよこしてきたのである。
 2006年の劈頭日本外務省は、このありがたいおはからいに応えてもう独印伯の三国とは一緒にやらぬ、アメリカの庇護の下に動くのだという。“イチ抜けた宣言”を発するに至った。
 かかるみっともないことを新春早々臆面もなくやってのける小泉氏の下僚の精神構造もまたそう簡単にお目にかかれるシロモノとはいえぬ。
 それにしても繰り返すことになるが、こんなたわけた舞台を見て拍手喝さいを送る観客の「感性」とははてさていったい何なのだろう。


                
※    ※    ※

 しかも小泉政治を支える動きの中に、民主党代表前原誠司氏が一枚くわわっているのだから、まったくもって情けない話である。
 小泉氏の筆頭イエスマンだとうれしそうに語る武部自民党幹事長ごときから一緒にやろうと水を向けられるなんてこの上もない恥辱ではないか。
 「自民党との連立など99パーセントありえない」といくら陳弁したところで、このみじめさをどう取り繕うことも出来ない。自衛隊が米軍と一体となってカリフォルニア州沿岸で実施した軍事演習にしても、前原氏の度重なる不規則発言があればこそ、防衛庁内タカ派は中国を意識した演習などと、公然とうそぶくことが出来るのである。
 こうして冴えない情報が溢れる中、春闘の開始を報ずるテレビニュースが放映された。連合代表が日本経団連の会長に辞を低くして賃上げを懇請している様子が映し出され、これに対する経団連側は木で鼻をくくるような横柄な態度で終始していたのだが、今日の資本と労働の力関係をこれほど明白に物語る光景もない。

            
※    ※    ※

 こんなありさまでは、よほど気合を入れてかからねば今年は乗り切れぬわいと柄にもなく考えていたら、そこへ飛び込んできたのがホリエモンこと堀江貴文氏のライブドア関連企業に検察の手が入ったというニュースである。弱肉強食、格差社会を象徴する存在として超有名なこのお人が今後どうなるのか。
 こういうモンスターを生み出した小泉流エセ構造改革を問い質し、批判し尽くし、否定しさるキッカケとすることが出来るかどうか…。
 体制側の別働隊に過ぎぬ検察庁のやることといったら所詮トカゲのシッポ切り程度でしかない。この国を動かしている魑魅魍魎の姿を人びとの眼前に明らかにしていくこと、これを憲法改悪阻止の闘いとともに今年の重要な課題としなければならない。
 皆さん、2006年を総反撃の年にしよう。
                        
2006・1・18



★この悔しさをバネに
       来年こそは借りを返そう!    
14

 
2005年が間もなく終わる。
 省みて多事だったと感ずるが、それも悪いことが目立ちすぎ、よい知らせは少なかった。天災人災が容赦なく襲いかかり、暗澹たる気持ちは晴れない。そして9・11総選挙の結果が端的に示すこの国の政治の右傾化は、憂鬱なムードをいっそうかき立てた。
 規制緩和、官から民へ、小さな政府、行政機構のスリム化…、もっともらしくふりまかれる美辞麗句が何をもたらしてきたかを点検してみれば、それこそきりがないけれど、とりあえず最近人びとを呆れさせた耐震強度偽装問題を例にとって分析するだけで、小泉流エセ改革の本質は一目瞭然となるだろう。彼らは郵政民営化を表看板に選挙戦を乗り切るや、たちまちその本性をむき出しにして医療・福祉費の削減、定率減税制度の破壊等々勤労者を狙い撃ち日する悪性を次々に強行、日本社会を少数の「勝ち組」と圧倒的多数の「負け組」に再編成して格差拡大を目指す体制固めに入ってきている。
                ※    ※    ※

 小泉氏は、明年秋の総裁任期が終わればそれ以上政権トップの地位に恋々とするものではないと公言しているのだから、今後どういう経過を辿るか未知数であるとはいえ、彼以外の人物が権力の中枢に座る可能性も大きいといわねばならぬ。
 憲法改悪を最大の政治課題として、着々とそのための布石を進めてくるであろう彼らのいんけんなじゅつさくに対抗して平和と暮らしを防衛するための広範な運動を展開することが、我々の掛け値なしの急務になった。
 情勢がこのままで推移すれば、誰が小泉氏の後釜に座るとしても今と同じかあるいはもっと悪い反勤労者的政策を打ち出してくるであろう。
 2006年はこうして、我々と彼らとの間に展開される激しいつばぜり合いの年とならざるを得ない。
                
※    ※    ※

 はじめに今年は暗いニュースが多く、明るいニュースの乏しかったと述べた。済んだことは仕方ないが、状況を今後どう変えていくかということが、一人ひとりに課せられた大切な宿題であろう。
 そして、海の彼方からも、励ましとなるメッセージがもたらされている。地球の反対側南米のボリビアでは、つい先日ブッシュ政権の米州支配政策に敢然とノーを唱える先住民出身の候補者が、大統領選挙戦で勝利した。ボリビアといえば伝説の革命家チェ・ゲバラ終焉の地。当時先住民をはじめ被抑圧民衆の抵抗闘争はまだ緒に就いたばかり、無念の死であったと報道されたことを思い出す。
感慨無量である。
 資本のグローバリズムが全地球上を跳梁し、ブッシュ・ドクトリンのなりふりかまわぬ画策が横行する中にあって、彼らの「繁栄」にもさすがに亀裂が現れ始めているということなのか。小泉流三文芝居にたぶらかされて、反撃のきっかけもつかめぬようでは「先進国」の勤労者の名がすたるというもの。
 みんながんばろう。

『かまきり通信』の発行は本年はこれにてお終いです。皆さんよいお年を、明年またお会いしましょう。
                        
2005・12・29



★しゃんとせいや民主党
           覇気を取り戻せ全野党   
12

 
アメリカを訪れた民主党の前原代表が、彼の地でわが国の集団的自衛権を肯定すると発言し、おまけに中国の軍事力が脅威となっていると主張したのは、たいがいのことには驚かぬ人びとも、さすがにあいた口がふさがらぬ思いを抱いたであろう。あの小泉首相でさえ、少なくとも表向きは中国がわが国にとって危険な存在だなどとは、一言も云っていない。
 訪米の後、中国を訪問した前原氏が、同国の首脳と会見する機会を得られなかったのも、仕方ない成り行きであった。だが、いったい前原氏は、何のためにこうしたことを敢えてしゃべったのだろう。
 総選挙が不首尾に終わった民主党に活気を蘇らせるためには、何が何でも小泉自民党を上回る話題性を作り出さねばならぬとでも考えたのか。たとえそれが幼稚極まる火遊び的コメントであるとしても…。
 まさかアメリカに秋波を送ろうというさもしい根性ではなかろう。

                 ※    ※    ※

 ともあれ小泉氏は笑いが止まるまい。人一倍かんの鋭い彼が「今それを言っちゃおしまいよ」というわけで、あからさまに口に出すのを控えていることを、前原先生がおあつらえ向きに早々と公言してくれたのだから。小泉氏にしてみれば、ますます困難が予想される国際政局を前に、どんな布石を打つにしてもよほど自由になったと、胸をなでおろしていることだろう。いずれにせよ、しらけてしまうのは多くの国民である。
 9.11の出来すぎで小泉自民党の勢いは上限に達し、今度は下降する一方、対する野党陣営は現在どん底だから、これからは大いに巻き返すだろうと期待をかけているのに、野党第一党のトップがこんなチョンボを重ねるようでは、夢は急速にしぼんでしまう。いま小泉自公政権は衆院絶対多数のおごりで医療・福祉施策の大幅後退、低所得層を直撃する大増税等々悪政の追い討ちをかけようとしている。
 近頃世間の注視を浴びる耐震強度偽装問題も、煎じ詰めればやみくもな規制緩和と“官から民へ”“小さな政府”路線の生み出した人工災害にほかならないではないか。
             
※    ※    ※

 この小泉政治の大失態の実態を国民の面前に明らかにして、それに替わる方途を指し示すことこそが、野党第一党たる民主党そして議席数は少ないとはいえ“山椒は小粒でもぴりりと辛い”と自負する共社両党など野党各派に課せられた使命ではないのか。総選挙のショックをいまだに引きずっているわけでもあるまいが、今の野党の状態を眺めるとき、なんとなく覇気が感じられぬ。もっと奮起してもらいたい。

                               2005.12.20



★外、強者におもねり
        内、国民に背を向ける
               11
                 小泉政治に未来はない!

 
世界の護民官ならぬ世界の厄病神ジョージ・W・ブッシュ氏を古都に迎えて、小泉純一郎首相は得意満面の風情であった。小泉首相はこの場でまたまた“日米同盟をいっそう強固にしていくことがアジア諸国と良好な関係を維持することにつながる”と持論を展開、両首脳の「蜜月ぶり」を印象付けようとしたのである。

 このものいいは「圧勝」した総選挙後の国会答弁でも飛び出しており、どうやら小泉氏お気に入りのフレーズとお見受けした。だがこれをわれわれの言葉にホンヤクすれば、つまるところブッシュ虎の威勢をかさに着たコイズミ狐が周辺諸国に向かって発した開き直り宣言なのである。多少とも思慮分別を持った人間ならこんな他者の神経を逆撫でする口吻は慎むものだが、そこは9.11の「大成功」の余韻なのか、はしゃぎすぎを自分でも抑制できないらしい。
 さて一方、大旦那の合衆国大統領も番頭のゴマすりに調子を合わせ、不細工なだんびらを振り回して見せた。台湾を「民主社会のモデル」と誉めそやして中国の弱点を衝いたつもりらしいが、アメリカに他国を説教する資格などこれぽっちもないことは、ついこないだのハリケーン襲来時の自国被災者への対応を見れば明らかというもの。“まずお前さんの頭上のハエを追いたまえ”とご忠告申し上げておく。
              
※   ※   ※

 ところで話は変わるが、世の中ますますおかしな具合になってきましたね。そうだと思いませんか。―耐震偽装―あれっていったい何なの。責任を一建築設計事務所に押し付けて済むものではなかろう。日本列島東から西まで、南から北まで“規制緩和”と“官から民へ”の大合唱でおおわれている中で起こった出来事である。小泉氏の筆頭茶坊主武部幹事長は早くも身に降りかかる火の粉を払おうとしてか、語るに落ちるような予防線的談話を発表した。
それにしてもこの件にとどまらず、ほかにもどんな病根がわが国を蝕んでいるのか分かったものではない。
 異常な人気に支えられた小泉与党による国民不在の政治が罷り通るときどんな災難をもたらすか、ひとつの答えが出たと言うべきであろう。これは決してこじつけでも論理の飛躍でもないと考えるのですが、如何でしょうか。

                               2005・11・28



★改悪の目白押し                        10
         機を失せず反撃を!

〜医療費、福祉対策、税制そして憲法〜 

 
アメリカのGMを抜いて、今や世界一の座をうかがおうとしているトヨタ自動車。年間純益は1兆円を優に越えるといわれるが、経営陣はそれでもなお賃上げには難色を示し、法人税をもっと下げろと主張、消費税は10%以上に引き上げるのが至当だと政府に揺さぶりをかけている。
 また、アキヒト天皇の息女が近々結婚することになり、そのお祝い金として1億5千万円が国庫から支出されると言う。
 こうした報道に市民がどのように反応しているのか実のところよく分からない。積極的な肯定論はさすがにそれほど多くはないだろうけど、そうかといってたいへん怪しからんことだという受け止め方も、存外少ないのではあるまいか。世間の人々にとって、これらは所詮自分たちの手の届かぬ雲の上のお話であり、コメントする気にもなれぬといったところなのだろう。

                           
       ※     ※     ※

 その反面われわれは、次に紹介する一例のような巷のぼやきをよく耳にする。“お役人というのは結構なご身分さね、昨日もちょっとした申請手続きで、役所に行ったんだけど、どの窓口か分からなくてまごまごしていたら、若い職員がどんな用件ですかと声をかけて親切に案内してくれるのさ、それはそれで有り難いんだけど考えてみりゃ、そんなことを一日中いや一年中繰り返しているのがあの人の仕事なのかねぇ、あたしたちより給料はずっといいだろうし、ボーナスもたっぷり貰えてクビになる心配もなし、定年の日が来るまで保証されているんだものね、ホントにいやになっちゃう”
 こんなことを言うのは、おそらく倒産、失業の影に震えながら日々働いている中小零細をはじめとする民間企業の従業員やその家族たちであろう。でも、実を言えば、彼らがやっかむ下級公務員は、別に常識はずれの給料を貰っているわけでも終身雇用が約束されているわけでもない。だからそんなに羨ましがったりねたんだりすることに対し、人間のありようとして少々情けなくはないかと苦言を呈するのは簡単だが、なにしろ役所の下積み職員というのはトヨタの重役や天皇家のお姫様とは違って、限りなく身近な人たちである。文句をつける側にしてみれば、自分たちも彼らと同じクラスの人間、いやどうかすると自分のほうがもう少しましで有能かも知れぬと自惚れたくもなるのだろう。こういう相手のほうをよけい腹に据えかねたりして…。

                              
     ※     ※     ※

 だけど、難しい注文かもしれないが、ここいらで何とか発想の転換が出来ないものか。たとえば賃上げを阻んでいる要因に企業の資金繰りの悪化があるのなら、融資を拒む銀行資本とその背後にある現政権の金融政策に反対して、勤労者としての立場から闘っていこう。
 さらなる生活向上を目指す運動にいっそう努力をそそぐともに、今の自分より少しは恵まれていると思える公務員労働者の状況が、不安定になるのを期待して快哉を叫ぶといった不健康な誘惑を克服しよう。
 今回の総選挙で小泉純一郎氏と彼の仲間は“官から民へ”“特権階級をなくそう”という謳い文句を掲げ、人間の矮小な心理をくすぐりこれをたきつけた。邪な底意を秘めたこの作戦は一時的成功を収め、彼らの「圧勝」(実を言えばそれはごまかしで得票数は与野党伯仲だったのだが)をもたらした。
 新しい情勢下、事態が今後どのように進むかは目に見えている。医療費自己負担額の大幅増、障害者福祉対策費の切り下げ、勤労者への増税(年金生活者所得税の定率減税の改悪)等々が目白押しだ。そしてその行く手には彼らの悪だくみの本丸“憲法改悪”が待ち構えている。
 さぁ、われわれとしても躊躇することはない。直ちに反撃に移ろう!

                                                         2005・10・18




★“官から民へ”も“小さな政府”も              9
           とんでもないまやかしだ!

〜小泉政権の言葉の詐術を切る〜

 総選挙後テレビのディベート番組はどうなっているのかと思ってNHKの「日曜討論」を見ると、さすがに9月11以前の熱気は冷めて、与野党の代表者たちがいたってしまりのない議論を交わしていた。でも注意して眺めれば、それなりに興味深い点もあったといえる。与党側の代表は、選挙戦中執拗に訴えた”官から民へ”というキャッチフレーズを相変わらず繰り返した。それともうひとつ何度も口にしたのが、例の”小さな政府”なるスローガンである。
 有権者の支持をかき集める上で、この二つの殺し文句がずいぶん役に立ったのだなァと今さらのように感じた。「ワンフレーズポリティックス」というのだそうだが、耳新しく中身のない謳い文句のなんと危険千万なことか。
                     
※    ※   ※

 分かりきったことだけれど、日々郵便物を配って歩く郵政労働者は「官」であり、世界のトップ企業トヨタ自動車の重役は「民」である。今度の総選挙でトヨタの経営陣は、全力を挙げて小泉自民党を応援した。ひと昔前だったら、こんな露骨な肩入れが表沙汰になるとやばいというので、経営者も政府与党筋もよほど慎重に振舞っていたものである。それが今や何の遠慮もなくおおっぴらにやれるとは、いったいどうしたことなのか。まさか「民」のすることなら何でもOKというわけでもあるまいに。それとも「官」と「民」についての国民の理解が、おおよそこの程度のものになってしまったのか。だとすれば、実に憂うべき退行現象だといわねばならぬ。
 次に“小さな政府”とはいったい何なのか。市民生活がどうなろうとお構いなし、福祉の切り捨てもなんのその。“税金の無駄遣いをなくすのだ”という「錦の御旗」を振りかざしつつ、誰の利益のために行うのか国民には皆目わからぬ「行財政改革」を強行しようとする小泉政権。その政権のスポークスマンの口から平然と語られる公務員制度の画一的合理化構想、あきれてものも言えないとはこのことだだが、そうそう驚いてばかりもいられない。
                          ※    ※   ※

 野党側の代表は与党側の発言に対し、むろん反撃もしたし自らの主張も展開した。しかしもうひとつ迫力に欠けるというか、物足りなさを感じる。とにかく小泉自公政権の得意とする言葉の詐術に惑わされてはならない。彼らが繰り返し強調する「官」とは、もっぱら公務員労働者のことであり、「民」とはこの国の政治経済への支配的影響を、いっそう強めようとする一握りの巨大資本のことである。“小さな政府”とは野党側に「君らもよもや大きな政府がよいとは言えまい」と不遜な脅しをかけながら、国民生活破壊の政策遂行に本腰を入れることをはっきりと打ち出した宣言にほかならない。

                          ※    ※    ※

 かかる情勢を変えるためには、野党各派が力を合わせなければならないのは当然だが、それだけでなく与党内の心ある人々に、こうした無法な政治に“待った”をかけるよう促していくことも必要になるのではないか。なにしろ、このまま放っておいたら日本という国は間違いなく駄目になってしまうのだから。


                                     
(2005・10・7)



★あらたな運動のうねりを!              8

〜小泉与党の“大勝利”はしょせん虚構だ〜

 今度の総選挙で、政府与党は総議席の3分の2以上を獲得する地すべり的勝利を得た。たいがいのマスコミはこれを歴史的大勝ととらえ、国民が圧倒的支持を「小泉改革」に与えたかのように描き出した。郵政問題ひとつに耳目を集中させた作戦の成功により、都市部を中心に選挙戦の主導権を握り、「刺客」戦術などの採用で軽薄な劇場型人気を醸成、あれよあれよという間に一気にゴールになだれ込んだあざとさは、たしかになかなかのものである。
                         ※    ※    ※

 しかし、そういうことでこの件終わりということになるのだろうか。注目を浴びやすい首都圏をはじめとする“先進地域”では、なるほど小泉マジックは効を奏した。東京、神奈川では40近くの小選挙区のうち、わずか1選挙区を除いてすべて与党が勝ちを収めており、いわゆる“勢い”が与野党どちらの側にあったかを論ずるのは野暮というものであろう。だが、それにもかかわらず、今回の選挙結果を眺めてみれば、とてもとても彼らの圧勝などと呼べるものではない。9・11直後、マスコミの多くがおそらくは故意に人々の注意を逸らそうとした事のひとつに、与野党の得票率という問題がある。
 比例区における自公のそれは51%、小選挙区では49%に過ぎなかった。小泉氏と彼の与党は今次総選挙を郵政民営化の是非を決める“国民投票”と位置づけたのであるが、その結果は上述のとおりで、圧勝とは程遠く、両者拮抗というのが真実の姿なのである。他候補より1票でも多く獲得した候補者が、唯一人当選者となる仕組みの小選挙区制のマジックが“先進地”で弾みをつけた小泉与党に追い風を生み出し、それが全体の3分の2を越える当選者の出現という異常事態をもたらしたのであった。

                          ※    ※    ※

 8・8解散以後見苦しいまでに権力に媚態を寄せてきたマスコミは、この明白な実像をなるたけ世間の目から隠そうとして、ずいぶん苦心していたかに見受けられるが、さすがに多少は気がひけたのだろう。「良識」が売り物のA紙26日のコラム欄は、このことに関して恐る恐る発言していた(文中ではあたかも最近ようやく気が付いたかのように書かれていたけれど、そんなことがあるかしら、俄かには信じられぬ)。まァとにかくインチキ芝居も終わり、日本列島が正常感覚を取り戻すのも間近かだと思えるのだが、それにしても困ったことはこのケッタイな勢力分布がうっちゃっておけば、4年近く衆議院(国権の最高機関)を支配し続けるだろうという憂鬱な現実である。
                          ※    ※    ※

 とはいえ、自公両党の「大勝利」が彼らの長期にわたる安泰を保証するわけでもなんでもないことは、他ならぬ当の小泉純一郎氏があの抜群のカンで誰よりもよく心得ていることだろう。
この相手に対決する我々は、当面する諸課題(生活、憲法、平和)への取り組みをいっそう強めるとともに、是非とも彼らを上回る感性を身につけなければならない。

                                              (2005.9.30) 



★がっかりせず確信を持って前へ!        7

〜生活、憲法、平和〜

 
総選挙で思いもかけぬ苦杯を喫した民主党には茫然自失するイトマもない。早々に次への対応を迫られた。乾坤一擲の賭けに出たとでもいうべき前原誠司新代表の選出である。

                         ※    ※    ※


 前原氏の第1声は、およそ以下の3点にしぼられよう。
@民主党を戦う集団にしていく
A政府・与党に対して必ず対案をぶつける
B大切な問題を党内でウヤムヤにしたり、先送りはしない
 これを見ると、確かに威勢はよい。が、まァひとつひとつ点検していこう。先ず@について…アジとハッタリの小泉流に対し、とかく後手に回り受身を強いられた民主党に活を入れていくということなら、なにはともあれ一応歓迎したい。次にAであるが、批判のための批判、無責任な野党という相手側の反論を打ち砕くには、対案の提示が不可欠であろう。ただし、それが向こうの土俵に引きずり込まれる危険性を常に内包していることを、民主党は自戒せねばならぬ。最後にBの党内論議の問題はどうか。新代表は自他共に認める改憲論者であり、自民党内の若手タカ派ともエールを交換しかねないとまで見られている。ここは注意深く彼の動向を見守る必要があろう。ただし、前原氏もこと憲法に関する限り態度は慎重である。自民党をも含め“挙国一致”体制の中でしか、この懸案は解決できないと、短兵急にはことを運べないとも取れる口吻を漏らしているようだ。民主、自民両党内の「ハト派」を意識した発言というべきか。

                         ※    ※    ※


 憲法改定(なかんずく九条)をめぐる動きは、緊迫の度合いを増している。油断は禁物だ。ただ、このことについていえば、苦しいのはわれわれだけではない。あちらさんだって結構たいへんなのだ。
 総選挙の争点を郵政一本に絞った小泉首相は、見方を変えれば憲法をいじることが彼にとって命取りになりかねない危険性を、あの抜群のカンの鋭さで感じ取っていたともいえる。自公の圧倒的な議会内勢力、改憲論者をトップに選んだ野党第一党、それに引き換え改憲阻止を標榜する政党はといえば、少なくとも議席数では問題にならない。だが、図体は大きくてもアキレス腱を持つ相手方の本質的な弱み、それを見据えわれわれは憲法擁護の可能性について、絶対に希望を捨ててはならぬ。
 逆転のチャンスは残されている。これからの数ヶ月、半年、一年(更にもっとかかるかも)、この時間をわれわれの味方につけねばならない。

                         ※    ※    ※


 9.11の催眠劇は、確かに一時的成功を収めた。しかしインチキは所詮インチキである。醒めるのも早いだろう。平和と安全、よりよい生活を求める運動は、ますます広がっていく。これを押しとどめることは誰にも出来ない。

                                           
(2005・9・23)




★状況を逆転させ歴史の責めを果たそう      6

 〜9.11の選挙結果をふまえて〜

 総選挙は終わった。政府与党は、全議席の3分の2以上を獲得した。民主党は自民党にダブルスコア以上の大差をつけられた。小泉純一郎氏の思惑が、見事に当たったというべきだろう。この現実を前にしては、何を言っても所詮“ひかれ者の小唄”にしかならないのかもしれぬ。でも、必要なことだけはしゃべっておかねばならない。誰の眼にも自暴自棄と見られた8・8解散、追い詰められたかに見えた形勢を一挙に逆転、そのまま「大勝利」に結び付けていった小泉氏の感の冴えは、たしかに水際立ったものだった。だが、郵政民営化の是非だけを問う子供だましの一点突破主義に最後まで振り回された野党側の不甲斐なさも、大いに責めなければならぬ。
 そもそも郵政問題についての国民の関心度は、年金、福祉、景気対策などに比べて格段に低く、せいぜい5位か6位程度に思われてきた。そのことが野党側に、ある種の気の緩みをもたらしたと考えられる。ところが実際には、たとえ優先順位で下位にランクづけられていたとしても、民営化それ自体について賛否を問われるならば、賛成とする声のほうが反対という意見をかなり大幅に上回っていたのである。過疎地の住民やお年寄りの間でこそ、今の形の郵便局をなくされては困るという声は切実であるが、都市の住民や若年層にとっては、それほど深刻な事柄ではない。

               
      ※    ※    ※

 “官から民へ”“特権階級(郵政労働者のこと!)をなくせ”という小泉氏のアジテーション、インチキではあるが単純で明快な「論理」に丸め込まれてしまったゆえんである。さらに野党側が民営化路線の背後に、日米巨大資本の貪婪な野望が隠されていると警告しても(正直なところ、このことが充分訴えられていたとは言い難い、ましてマスコミは、意図的にこの問題に触れるのを避けていたようである)選挙民の多くはあまり耳を傾けなかった。
 「小泉改革」によってもたらされる競争原理万能主義、弱肉強食のおぞましさをいくら説明しても、大抵の人は自身のこととして真剣に考えることがあまりにも少なかったのかも知れぬ。まァ人間とはとかくうぬぼれが強く、自らはそこそこの能力を持ち、強食ではないまでも、少なくとも弱肉の災厄は免れるものと自負する傾向があるらしい。われわれ一人ひとりの意識変革、冷静な自己省察の必要性が、求められているといえるだろう。
               
      ※     ※    ※

 とまれ、郵政一本に絞った小泉戦法を切り返せなかったことで勝敗は決した。もちろんまだまだ闘いは続く。うそやハッタリが長続きしたためしはない。確かな眼力を養って将来を見据えよう。1985年、かっての西独大統領ワイツゼッカー氏は「ドイツ国民の敗北は第2次大戦におけるナチス・ドイツ無条件降伏の1945年5月ではなく、ナチ党に政権を委ねた1933年1月30日に遡るのだ」と言った。歴史に対する責任という重みを感じさせる言葉である。
 われわれもまた、2005年9月11日がこれからの歴史への負い目にならぬように、全力を尽くして状況を逆転させなければならない。
                                                
(2005.9.14)

今回の選挙区、比例代表の与野党得票数、小選挙区のマジック、本当の意味で自・公の圧勝なのか?(議席の数ではなく)等々論点は多いがそれらは別の機会に…



★選択の時は来た
                     5

 失政をごまかすため“郵政民営化”を表看板にかかげたボロかくし解散、総選挙の投票日も明後日に迫った。ここにあらためて、その真の事実をながめてみることにしたい。

 ★金持ちの優遇か          ★格差の是正か
 ★弱肉強食か            ★共生社会か
 ★アメリカ一辺倒の継続か     ★アジアとの友好重視か
 ★更なる戦争加担か        ★すべての戦闘地域への派兵取り止めか
 ★憲法改悪か            ★九条堅持か

 今後数年、十数年にわたって、わが国の命運を左右する総選挙、くれぐれも選択を誤らないようにしよう。

                              
(2005.9.9)




★小泉エセ改革に鉄槌を!!                          4

 “改革、改革”という言葉がやたら大声で飛び交う。たいていは与党側の候補者からのものである。選挙ポスターを見ても、自民党のそれには小泉首相の大写しの写真に「改革を止めるな」と大書してあるし、公明党は二人の正副代表が「日本を前へ」と訴えかけるという構図である。
 そのくせ「改革」の中身はというと、これがいたってハッキリしない。彼らのマニフェストを手にとって、ていねいに目を通せば通すほど、うさんくささがきわだってくる。


                           ※   ※   ※

 ここでようやく“変だな”と気づく。だがこれは不思議なことでもなんでもない。洋の東西を問わず、権力者側は、追いつめられるとおおむねこういうサギ師的手段で、ひとびとをを誑かしにかかる。かってヒトラーのナチ党は「われわれは革命を行うのだ」と広言した。ナチ党の党歌『ホルスト・ヴェッセル』の歌詞の中には「反動とたたかいつつ、われ等の隊伍は進む」という一節さえある。あれから4分の3世紀の時をへだてた現在の日本は、おそろしいほどかってのドイツ、第2次世界大戦をひき起こしたドイツに似てきているといえないだろうか。
                           ※   ※   ※

 いまこそ歴史の教訓に学び、邪悪な企みをうち破ろう。この総選挙戦をネオ・ファシズムの墓場にしよう。小泉氏や自公両党がいかに国民を騙しにかかっても、ウソはしょせん見破られる。本日(7日)の新聞報道によれば、日本企業最高の実績を誇るトヨタ自動車の経営陣が、自民党支援に本腰を入れてエンジン全開だという。
                              
(2005.9.8)
 
まったくとんだ「改革」である。

                     ネオ・ファシズムの登場を許すな





★全世界に醜をさらした国連常任理騒動!
      3


 “ユーセイ、ユーセイ”の金切り声の前に、ともすれば聞きとりにくくなる他の国政テーマを論ずる声の中から、国連安保常任理事国入りの問題を取り上げてみよう。
 小泉内閣は、国連にはどの国よりも多額の金を出しているのだから、当然その貢献に見合った地位を求めるとしてドイツ、インド、ブラジルとスクラムを組んで常任理事国入りをめざすと宣言した。この辺りなかなか意気軒昂たるものがあったが、ワシントンのご主人筋の意向をキチンとたしかめずに早合点で始めたらしいこの策動は、自らの一極支配構造の永続をたくらむワシントンの忌避にふれ、事実上断念に追い込まれたのである。
                                ※   ※   ※

 ところで、このドタバタ劇には、いくつかの甚だみっともない付録がついていた。
 先ず、ワシントンからは、日本だけの常任理事国入りなら他の3カ国とは違い認めてもよいのだとの意向が伝えられ、小泉政権がいかにおぼえめでたい存在であるかということが白日の下に露呈されてしまったこと。つぎに総会での採決時カギをにぎると思われるアフリカ諸国へのあけすけな買収工作、しかも、それが無残な失敗に終わるという醜態をさらしたこと等々である。こんな裏工作を日本国内でやれば犯罪行為と糾弾されること必定であるが、それが新聞紙上に堂々と載りしかもマスコミがひとことも苦言めいたコメントをしないとはどうしたわけか。

                                   
※   ※   ※

 
ともあれ、こんな振る舞いを演じたあげく、失敗を喫した常任理事国入り騒動なのだから、本来なら、責任者町村信孝外相の進退問題に発展して少しも不思議ではない。それどころか町村氏を任命した小泉純一郎氏の責任も免れないというものである。
 それがなんたることぞ。不明を恥じるそぶりを見せるどころか、いっさい頬かむりをして押し通そうとしている。この鉄面皮な男、小泉氏と彼をトップの座にいただく自公連立政権は、これだけの理由でも即刻ご退場願わなくてはならぬ。

                             
(2005.9.6)
 皆さん、そうではないでしょうか。
     
                  
小泉さん頬かむりで済ます気ですか。



★もてる者だけがますます得をする
      バカを見るのはまたも一般庶民
     2

 日本経団連が自民党支持を決めた。
 “持てる者”の利益代表である自民党を経団連が支持をするのは当たり前の話で、そのこと自体に別段ニュース性はない。これまでだって経営者団体はいつも自民党に肩入れしてきたものだ。
 だが、前回の総選挙の際には自民党支持を打ち出しながらも、民主党あたりにも思わせぶりなポーズを見せるなど、いくらか芸の細かさがうかがわれた。それが今度は民主党には目もくれない。全くの自民一辺倒である。郵政民営化に象徴される小泉的「改革」が大企業にとってはよほどうれしいらしい。郵貯、簡保に積み立てられた300兆円にも及ぶ国民の資産 ― この絶好の餌食を前にして、よろこびをかくしきれない彼らの表情が眼に見えるようだ。日本の銀行や保険会社ばかりではない。太平洋の向こう側でも禿鷹みたいな連中が、チャンス到来とばかり、いつでも海を越えて飛びかかろうと待ち構えている。
 これに対する一般国民の受け止め方はどうか。小泉的「改革」でこの国の財政再建や経済活性化、雇用創出が軌道に乗ると期待している人が巷間語られるごとくまだまだ存在するとすれば、それは余りにも無邪気な姿だといわねばならぬ。小泉純一郎氏 ― この薄情な男は庶民にそうそう幸せはもたらしませんよ。

                             
(2005.9.1)



★ウソはいくら早足で歩いても真実を追い越せない!!
         小泉自公政権にノーを!   
  .1

“ウソも百回繰り返せばホントになる”
“訴えは短く、簡単に”
 かって、アドルフ・ヒトラーはナチス・ドイツの聖典とされた彼の著書『わが闘争』の中で、虚言を政策として推奨した。80年を経た現在の日本でわれわれは、国権をにぎる自民党の首相が、あの怪物の故知に学んだか全く同じやり口で選挙戦に臨んでいるのを目撃している。
 いまペテン師そこのけの彼らの実体を白日の下に明らかにして、本来の政策論争の場にひきづり出すことが早急に求められているのだが、これもまさしく時間との勝負になってきた。
アブラハムリンカーンの言葉に、われわれを鼓舞激励してくれるつぎのようなのがある。
“大勢の人をいっときの間騙すことも、少数の人を長い間騙し続けることもできる。しかし、大勢の人を長い間騙しおおせることはできない。”
 きょうから9月11日に至る10日そこそこの日数(10日しかないというべきか、10日もあるというべきか)、この期間に彼らの主張をとことんふるいにかけ、この資本優遇、弱者切り捨て、アメリカ追随、アジア軽視、憲法改悪、戦争加担の政策を徹底的に論破しようではないか!

                              
(2005.8.30)

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市民生活 広島・地方行政研究所(略称 広行研、山口氏康理事長)へ

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