市民生活 2006.VOL.28 12月発行  広島・地方行政研究所

目次

市民生活 2006.VOL.27 6月発行  広島・地方行政研究所

目次

 ヒロシマもう一つの顔 続編(二)                     元市議  山口 氏康

 耐震偽装マンションの教訓と余波                広行研・常務理事  中本秀智

 いま学校では―大規模校の悩み                   学校事務職員 佐藤若光

 原爆小頭症患者について                   広行研・事務局長 松井 邦雄

 広島という街                         滝 恭岳

 市議会報告―契約と談合              広島市議会議員 南区 松坂 知恒

 県議会報告―本州四国連絡橋について  
広島県議会議員 南区 中原 好次

 老いを考える―老い愉しく        ジェロントロジスト 青山裕三朗

 自然破壊で大儲け 〜ヒロシマもう一つの顔より                     山口氏康

 山陰からの便り           「ぴぃーすうぉーく松江」事務局長 吉田 英夫

 投書 「生命を賭ける女性」                               麻生静雄

 
公開講座のお知らせ                            広島・地方行政研究所
第三回公開講座

行政研究公開講座要領

議題 広島市政の課題(展望)
日時 二〇〇六年七月二十二日(土)  午前十時〜十二時
場所 広島市西区民センター 大会議室C
参加費 五〇〇円
講師は、松坂市議員、中原県会議員、等です。
公開講座ですから、どなたでもご自由に参加してください。



市民生活 2006.VOL.26 3月発行  広島・地方行政研究所

 

目次 

放置されている西部開発事業用地    広行研・理事長 山口氏康

「妻との一生」            広行研・常務理事 中本秀智

市議会報告――消防設備点検と改修   広島市議会議員 南区 松坂 知恒

県議会報告――知事後援会の政治資金規正法違反事件について

                   広島県議会議員 南区  中原好冶

広島市のインフラストラクチャーU   広行研・事務局長 松井 邦雄

3セクター経営の無責任〜地下街・シャレオー  瀧 恭岳

12回アジア競技大会と財政負担   山口氏康

いま学校では――学校業務員の配置見直しとこれからの学校事務職員制度 学校事務職員 佐藤 若光

老いを考える――揺れる老い心 ジェロントロジスト 青山 裕三朗

山陰からの便り     ぴぃーすうぉーく松江・事務局長 吉田 英夫

 

投稿「正義を貫く勇気」  麻生静雄

公開講座のおしらせ  広島・地方行政研究所

第二回公開講座

議題 広島市政の課題(市長選の展望)

日時 四月二十九日()  午前十時〜十二時

場所 広島市西区文化センター 美術工芸室

参加費 五〇〇円

講師は、松坂市会議員、中原県議会議員、等です。

公開講座ですから、どなたでもご自由に参加してください。



市民生活  2005  VOL.25 12月発行

目次 

一方的な医療費請求事件  広行研・理事長 山口氏康

放置されている市有地   広行研・常務理事 中本秀智

県議会報告――放置されている漁港   広島県議会議員 南区 中原 好次

市議会報告――加藤勇三郎と早速整矢  広島市議会議員 南区 松坂 知恒

安心して住める街         広行研・事務局長 松井 邦雄

広島という街〜明治から昭和へ   瀧 恭岳

「現代美術汚職事件」(その3)  山口 氏康

いま学校では――現場を無視した防犯センサー  広教祖 事務職部  堀内 彰

老いを考える――スピリチュウリティ  ジェロントロジスト  青山 裕三朗

山陰からの便り  ぴぃーすうぉーく松江・事務局長 吉田 英夫

投稿 「対岸の火事であろうか!」  麻生 静雄

投稿 「キム・オクサンさんの証言を聴く」 松井 邦雄

投稿 「不当な設計業務」  西区民A

新年のごあいさつ

新年会のご案内   広島・地方行政研究所

編集発行所  広島・地方行政研究所 山口氏康

郵便番号733-0841 広島市西区井口明神1-4-14

電話082-276-2582

FAX 082-276?2583

郵便振替 01350-3-60557


長崎平和推進協の「被爆者は政治的発言の自粛」要請について

                                       米澤鐵志

322日「朝日新聞」夕刊によれば長崎市の外郭団体である長崎平和推進協会が証言活動をする被爆者に「政治的発言」の自粛を求める文書を渡し、これに反発した被爆者等は文書の撤回を求めているが推進協はこれを拒否していると書かれている。

さらに文書の内容として、被爆体験講話を行う場合「意見の分かれる政治的問題についての発言は控えよ」として@天皇の戦争責任A憲法(9条)の改変Bイラクへの自衛隊派遣C有事法制D原子力発電E歴史教育・靖国神社F環境・人権など他領域G一般に不確定な問題の発言(劣化ウランなど)があげられている。

長崎の「被爆体験の継承を考える市民の会」など被爆者たちは、戦争・原爆を語るに「政治」の問題抜きには語れない、言論の自由に対する侵害として文書の撤回を申し入れているといい、推進協設立の前本島長崎市長も「一つの価値観への忠誠を強いて戦争へと突き進んだかっての道が現れた」と報道されている。

今の戦前への右傾化の進んでいる中で、先の八項目のような問題で立場を明確にするのが難しい風潮の中で、被爆者は唯一といっていいぐらいそれが出来る。被爆者は体験を語るとき自民党支持者の人や保守的な人でも、あの戦時下の非道な状況を語らざるを得ない。また体験を聞いた市民や学生、子供たちも何故そんな理不尽なことになったかの質問をし平和と反核の重要性を意識する。

私は小学校、中学校などで被爆の話しをし、日本の戦争責任や、韓国、朝鮮人の被爆と差別の話をしているが、小学生の中には「かって日本は拉致よりもっと酷いことをしたんだなあ」という感想文をくれる。そういう意味でも被爆体験談は今の流れにきつい対抗になりうるし、そのことが今の権力、為政者にとって目障りなのであろう。

平和推進協というのは京都でも各自治体ごとにあり、婦人団体、青年団体、福祉団体や青年会議所など広範囲の団体が参加しており(長崎も一緒だと思う)宇治では平和月間として毎年記念講演、映画、(去年は吉永小百合の峠三吉の原爆詩や神田香織の講談はだしのゲンをやった)など行い8・15には二度と戦争は繰り返さないという平和の像の前で集会と献花を行い、推進協会長の宇治市長が平和宣言を行うが、その中身は戦争の反省と核兵器廃絶への願いがこめられ非常に格調の高いもので、広島、長崎または沖縄の訪問小・中学生の献花もあり、全市議も参加市民有志も誰でもが参加できた有意義な集会であった。

ところで長崎の記事を読んで気になることを思い出した。

財団法人京都府原爆被災者の会は40人ぐらいの語り部を持っていて、あらゆる場所で体験講話を繰り広げているが、昨年末語り部交流会の会場で被災者の会会長が「体験講話は事実にもとずいた体験を話すだけにし、戦争反対などの意見は言うべきでなく、聞かれれば個人の意見と前置きして意見を言って欲しい」と要請された。

私は直ちに今の会長の意見はきわめて政治的で、核を語るのに政治や人生観を抜きにした講話はありえない。私の被爆体験の中身は日本の戦争責任とあらゆる戦争に反対する行動の呼びかけであり、それが生存するヒバクシャの任務だと考えていると発言した。

他の人からも被爆を通じて持った人生観や生き方を語るのは当然だという意見が多かったが、米澤さんのような体験講話は被爆者の会の肩書きでなく、被爆者個人としてやって欲しいと要請された。

もともと私は被爆者の会からの要請で体験講話をしたことは無く、昨年の15回の講演も個人に要請されたものばかりだったので、まあ勝手にやるかと思っていたが、会長発言が一つの流れだと考えられれば語り部の中に問題を持ち込む必要があるか考えている。

また平和推進協の中に動きが出れば、今までの路線が変更されないように働きかけねばとおもっている。

2006323日                        


山陰からの便り

沖縄、岩国のたたかいに学ぶ

 「ぴぃーすうぉーく松江」事務局長 吉田 英夫

 小泉内閣は悪政を続けながら、一路本年秋の任期満了を迎えようとしている。耐震偽装、ライブドア問題、食肉輸入不祥事、更には防衛施設庁談合事件など、ようやく彼等のホコロビも目立ちはじめたのに、周知のとおり民主党の功をあせった国会戦術の無残な失敗のため、かえって与党の立場を強化してしまうという結果をもたらしてしまった。こうして前途のみえない生活苦にあえぐ一般勤労者のフラストレーションは、いっかな解消されそうもない。野党の奮起をうながす声は切実であるとういえ、少々あきらめムードも混じりかけている現状だ。これではならぬと心から思う。

 ところでそんな情勢下、米軍再編、日本軍事協力態勢強化の動きに対し、いま沖縄や岩国で展開されている住民のたたかいが、沈滞ムードをふき飛ばし勇気を与えるものとして注目を浴びている。これにあやかって私たちもがんばりたい。終わりに『かまきり通信第一八号』の最新号を紹介しておく。(市民生活2006.VOl.26掲載)


かまきり通信

かまきり通信  第一九号(山陰・島根より)

 

アメリカ追随の小泉政権はわれわれを何処へ連れていくか

〜いまこそ全国民的抵抗を〜

                                               HY

 三点セットとか四点セットとか呼ばれてきた(過去形で語られるのがいかにも情けない)自公政権の失政の集点をめぐる攻防は、口にするのも腹立たしい民主党のチョンボのお蔭で、いまいち野党側の気勢が上がらない。反対に自公与党にとっては勿怪の幸いとなり、ひところの浮き足立ったそぶりがウソのように掻き消えて、もとの図図しさを取り戻している。

 だが小泉さんよ、喜ぶのは早すぎるぞ、あなたの悪政のタネがなくならない限り、国民からの手痛いシッペ返しもまた免れられないというものだ。アメリカの世界戦略の転換がもたらす極東米軍の再編計画は、彼らにあごで使われっぱなしの小泉政権と日本国民との間の矛盾をいやおうなしに激化させる。

 サル十二月には厚木基地の米空母艦載機の移転計画に対し、岩国市民は痛烈なノーを突きつけた。そしていままたアメリカ側は、沖縄からグアムへの米軍移転費の七五%(八八五〇億円)というべらぼうな金額の負担を日本側に押し付けようとしており、国民の反発を招くのは必至である。

 しかし小泉政権と与党の首脳は、これに無条件で応じかねない破廉恥な姿勢を見せ始めておいて、少しの油断も許されない。額賀防衛庁長官の国会答弁を聞いていると、今人物、風貌は村夫子然としているが、なかなかのしたたか者らしく一筋縄ではいかぬ悪知恵の持ち主とみた。くれぐれも要注意。

 

さて弥生三月も、はや下旬である。九日には日銀の「量的緩和政策」五年ぶりの解除というしろものにはなにがなんだかよく分からぬ改変が行なわれたわけだが、要するに庶民の「預金」には底ばいが続き(ホンのちょっぴり金利が引きあげられるという話が一部にあるにせよ)、その反面「住宅ローン」は確実に上昇局面に向かっていくというのだから何のことはない、すべてこれ従前どうりの金持ち優遇・弱者切り捨ての金融システムの続投と言うことなのだろう。

 更にはPSEマークをめぐる零細リサイクル業者や消費者泣かせの経済産業省の施策の問題がある。最小限の気配りも欠いた今度のやり口に対する抗議の声は、無神経な官僚連中を大慌てさせるほどの高まりを見せた。

 こうして現状への怒りはじはじはと国民各層に広がり、秩序の壁を揺さぶりはじめている。

 終わりにもう一度日米関係に立ち返ろう。ブッシュ大統領は、二十一日の記者会見で在イラク米軍の完全撤退は、将来の米大統領とイラク政府が決める問題だと述べた。彼の任期が続く、後二年半以上もの間、イラク占領を続けると公言したわけである(彼の言葉どうり占領継続が可能かどうかは別として)

 ところで日本政府はどうするのか。彼らは陸自撤退の目安を本年五月ごろと非公式に表明してきたのだが・・・。われわれはキッパリト云おう。外国の軍隊が居すわる限り、イラクに平和は甦らない。

 小泉首相よ、今すぐ自衛隊を引き揚げさせなさい。

2006.3.24

「かまきり通信」のバックナンバーはこちらから

山陰からの便り

がっかりせず確信を持って前へ!生活、憲法、平和

 「ぴぃーすうぉーく松江」事務局長 吉田 英夫

 

 九.一一総選挙の結果が、平和と生活を守るまれわれの運動に少しの心理的打撃を及ぼさなかったといえば、ウソになる。日頃地道な努力を積んできた人ほど受けたショックも大きい。だが、いつまでも自信喪失状態のままで、日々を過ごすことの許されぬ過酷な現実がそこにある。手さぐりの中から新たな反撃のキッカケをつかもうとする格闘が続く。

 前号で報告した『かまきり通信』は選挙後も継続発行されており、つぎに紹介するのがその最新号(第一七号)である。(市民生活 2005.Vol.25)



「ヒロシマ もう一つの顔」を読んで  兼井 亨 (労研通信No.24号 1986.8.28発行 掲載書評)

 

広島市の市会議員だった山口氏康氏の『ヒロシマもう一つの顔』(青弓社・千六百円)が出版された。その前書の一節は次のように書かれている。

 -―四〇年前に原爆の惨渦にみまわれた広島は、「ヒロシマ」として世界的に有名である。だが、ノーモアヒロシマの言葉のもつ陰影、悲しき、清潔さの混じり合ったイメージとは違う、もう一つの顔がある。それは、広島市役所を舞台として市長ら理事者と市議たちが演じる政治劇である。ドロドロした流れの中を、人影がうごめいている舞台とでも言おうか。それを私は書いてみたいと思う。

 私も山口氏同様に広島市内に住む百万市民の中の一人である。いまは広島市域に編入された郊外に生まれ、地元の新聞社に勤め、応召したがために原爆をまぬがれ、戦後再び記者生活に戻り、多少とも広島市政にかかわりをもった者にとって、「広島」はいつも二つの顔をもっていた。「きれいなヒロシマ」と「きたない広島」の共存である。ノーモアヒロシマを叫ぶ為政者が、同時に私利私欲のために権謀術数をめぐらせる。この二重性は今後もなかなか変わりそうにない。なぜなら、市民の大多数は保守的な風土に身をゆだね、政治や行政はあなた任せであるからだ。この本は、その意味で。広島市民への告発の書である。

 目次の順に内容を簡単に紹介すると、[ボス議員との出会い]では保守系の大ボスが市議会での多数派工作のため、革新系の新人山口氏の自宅へ元日に突然訪れ、「御年玉 御室様」と、しるした封筒を置いて帰ったエピソードが出ている。中身は二十万円の札束だった。同氏はむろん突き返す。

 [開発公社汚職事件]と[暴かれる疑惑の数々]は圧巻である。議員のだれもが見過ごす決算書から『疑惑の芽』を見つけ出した山口氏は、極秘裏に調査を始め、以来三年間にわたり執拗に追求し続ける。同氏の努力で議会に設けられた百条調査特別委員会は、保守会派の画作で結局、審査打ち切りとなるが、財政局長ら市の幹部、ボス議員、宅建業者たち計十人が捕まり、助役の一人は辞職した。このほか荒木武、現市長や通産官僚の疑惑、地方財界に食い込むフィクサーの逮捕と自殺など、スリルに富んでいる。

 [議員の任務]では議会のチェック機能の重要性を説く一方で、市長ら理事者に尾も熱質問原稿を理事者に事前に見せ、答弁しやすいように内容を変えて恥じない議員などが描かれている。

 [議員の生態]は共産党議員の偏狭さを示す具体例をあげているほか、山口氏がタクシーに乗っていてふと耳にしたラジオの、主婦の声をヒントに、市が取り過ぎていた水道料金一億円を返還させる痛快きわまる話、無意味な国内や海外の行政視察、不明朗な調査研究費の使途など、市税無駄遣いの実態を明らかにしている。

 ところで、この種の本は著者のプライベートな面に触れないのが普通である。どんな生きざまをしてきたかが抜けたまま、公的な人間像だけを読まされる。だが、山口氏は[私の生い立ち]のなかで隠すとこなく自分の出生と遍歴を語っている。家が没落し里子にだされた幼少期、小学校高等科を終えると、すぐ酒屋へ丁稚奉公に入った少年期、恋に目覚めたものの、おのれの貧しさに自ら逃避して船乗りになった青春期、軍隊応召、原爆、敗戦、共産党入党、同党との決別―を読んでいて、それは山口氏の恥辱ではなく、勲章だとつくづく思う。

 [市民とともに]では夫に死に別れの女性への支給される児童扶養手当の不備を、女性たちとともに中央官庁に陳情して法改正させたり、杓子定規の開発許可や市道編入、地区の美化、かまぼこ業者の集団化事業などを、粘り強い折衝で解決した事例を紹介している。

 [大衆闘争]では締め出された漁民のための漁協設立、大田川流域下水道の建設反対闘争という二つの問題に、地域住民と取り組んできた経過、さらに学校事務職員の地位向上に成功した顛末を書いている。

 [決定とは何か]では、一九九四年(昭和六十九年)に広島市を中心に開催されるアジア競技大会の用地建設と西部埋め立て地開発の奇々怪々な動き、中央卸売場市場移転問題のからくり、ぜいたくすぎる市庁舎の建設などが取り上げられている。

 最後の[原爆・平和]では広島市が「非核宣言都市」を渋々宣言したうち内幕をあばくなど平和問題への取り組み方の不十分さを大胆に批判している。

 以上がこの本の大まかな内容であるが、それが事実に即して多くの実名で書かれている点も注目される。したがって、無味乾燥な広島市史に比べ、ビビットな資料として貴重な出版物であると保証してよい。

 広島市政を内側からつづったものは戦後、故浜井信三市長の『原爆市長』しかない。彼は原爆投下の日から二十年間の、復興期の広島の歩みを記録した。それに続くのが、昭和四十六年から五十八年までの十二年間を記録した山口氏のこの本である。しかも、広島市議会の内側からの執筆は同氏をもって初めてとする。

 私は長年、新聞記者をし地方自治体に少なかならぬ興味をいだいている関係で、それに関する本にかなり接してきたつもりである。しかし率直にいって落胆する場合が多い。役人の書いたものは固苦しい条文解釈にすぎず、学者のものは抽象的である。知事や市長など地方自治体の責任者のものは自画自讃で、私のような新聞記者は現象面をなでただけ、といった具合である。山口氏の本は、こうした欠点を見事吹き飛ばし、驚くべき行動力と研究心とで、公正な市政が運営されるために活躍した一市議員の清潔で勇気ある姿が結晶している。

 この中に書かれている事例は全国の地方自治体共通の課題が多い。一見、不可能や不条理に映る難題も、豊かな感受性とひたすらな研究心があれば解決することを、この本は証明してみせる。また、主義、信念という抽象概念はそれ自体無力であり、大衆のなかでのみ開花くものであるということを教えてくれる。

 ヒロシマの素顔を知りたい人も、自分に一番身近な町や村の政治・行政を見直したい人も、さらに「物を考えるヒント」を楽しみたいだけの人も、ぜひ一読してほしい。文体もさわやかである。

 (筆者は元中国新聞特別解説委員)    

「広島・地方行政研究所」

4月12日(金)に、広島・地方行政研究所の理事会がサンプラザであり、出席しました。
広島・地方行政研究所は、理事長が山口 氏康さん(元広島市議)で、理事には松井 邦雄さん(元広島市議)、井手 正夫さん(元広島市議)を含む18名の方々がいらっしゃいます。
主な事業は、「市民生活」という小冊子を季刊で発行する、というものです。

理事長の山口先生には、広島市議時代(平成3年~平成5年)に大変お世話になりました。
市議会は5期勤められ、任期中は無所属の一人会派を貫かれ、各会期ごとに必ず本会議で質問をされたそうです。
その質問も、原稿を執行部とお互いに棒読みするようなものではなく、問題点を的確に指摘するもので、十分な調査と市民の視点という意味では、「議会での議論はこうあるべきだ」というお手本として私自身いまだに印象に深く残っています。

私の市議時代には、党派を超えた勉強会を主催され、ルイス・マンフォードというアメリカの都市計画家(1895年ニューヨーク生まれ)の思想を勉強したり(彼の著作「都市の文化」を題材に、人間にとって最も住みやすい(生活しやすい)都市とは何か、を研究した)、いわゆるハト公害というものを提起いたしました。
広島市民であればハトのフンには一度は被害を受けた経験があるはずです。
またハトのフンはビル管理上も問題となってきており(屋上の室外機や貯水槽に巣をつくる)、広島市が行政上に対策を講じるべきだ、という我々の主張は「ハト条例」として実を結びました。

私は、地方議員としての理想像を山口先生においています。
平成7年の市議選で落選されてから、一市民として行政に物申す活動の一環として平成11年に、この広島・地方行政研究所を設立されたわけです。
以来「市民生活」は第10号が4月に発刊され、財政的にも冊子の売上金が140万円と安定してきています。
私も毎号寄稿させていただいておりますが、議員活動というのはなかなか文章にするという作業がなじまないことが多いため毎回苦労します。
何がなぜ問題なのか、を指摘することは大変な作業だと思います。

第10号には、「財政状況から見た介護保険制度の問題点」を寄稿いたしましたが、このことも介護保険財政が赤字になることが問題なのではなく(むしろ赤字の自治体は福祉に熱心だということもいえます)、在宅サービス・施設サービスともに不足している、という認識がないのが問題だ、ということです。
今の計画ではいずれ破綻する、という問題意識を私は持っています。
そのことの具体的な現象が財政的な赤字になって現れているわけです。

今この広島・地方行政研究所をNPO法人にしよう、と理事会で議論しています。
活動実績からいって資格が十分あると思います。市民が明確な問題意識を理路整然と文章で論ずる貴重な言論活動として、これからも積極的に関わっていこうと思います。
なお、この「市民生活」購読希望の方、
寄稿希望の方は私のほうまでご連絡ください。

今週の活動欄につきましては、先日「スケジュールとはいえないし、暇だと思われるから記載方法を考えたほうがいい」という貴重なご意見をいただきました。
確かに朝から晩まで何をしたのかご報告することが本来ですが、これにも限界があるので、主な行事(特に公務や市民相談、プライベートでの重要な出来事等)についてピックアップしたものとお考えいただきたいと思います。
議員活動の一端としてご報告させていただきます。

「広島西飛行場@」

先日11月10日(水)午後、広島地方行政研究所の山口先生、松井先生と広島西飛行場に現地調査に行きました。
この飛行場のあり方について今後の方針が
広島市から明らかにされたからです。
広島市は9月に、「広島西飛行場の機能のあり方について」と題してその考え方を発表しました。
その中で、「広島西飛行場の運営については、来年2月に予定されている新潟線の休止など厳しい状況にあるが、本市の発展のためには、50人乗り程度のコミューター機だけでなく、150人乗り程度の小型ジェット機による東京便就航が必要であると考えている」として、あくまでも現飛行場の機能維持・強化を図ろうという姿勢です。
こうした広島市の飛行場に対する姿勢には様々な批判があります。
第一は現地住民等からのもので、広島空港移転時に現飛行場は廃港とするという当時の約束を守れ、というものです。

第二に、たとえ150人乗りの小型ジェット機による東京便が復活しても、一日5便飛ばしても750人しか利用できず(東京便利用者は一日約7000人)、一部の人間の利便性が良くなるだけで無駄遣いではないかというものです。

第三に、空港機能は現広島空港(本郷町)に集約すべきで、1県2空港は広島県には必要ないし、飛行場を維持するだけの財源があるなら現空港の機能強化にこそ使うべきである、というものです。
それぞれ説得力のある批判です。

広島空港の利用者は年間330万人(海外が30万人)、うち東京便が240万人(1日16便)です。

一方西飛行場は利用客10万人(路線休止で減少傾向にある)で、搭乗率は49%、鹿児島線は広島空港と競合しています。
さらに広島市の西飛行場への負担金は年間3億円(平成15年度までは、15億円を国から購入した敷地の3分の1にあたる部分の土地代がかかり18億円でした)、県の負担金も同じく3億円です(国から購入した土地代は市と折半であるので市と同じく平成15年度までは18億円でした)。
県・市合わせて6億円で、利用者一人当たり約6000円の負担を税金からしていることになります。
一方広島空港はターミナル拡張工事・着陸機能強化のための負担金2000万円程度で、国直轄の運営となっています。
こういった現状を考えると、広島西飛行場の存在意義が問われてしかるべきだと思います。


『市民生活』 VOL.23  広島・地方行政研究所 2005年6月刊  定価1000円

目 次

 松江 澄を偲ぶ会               広島・地方行政研究所理事長  山口氏康

 政務調査費の不当支出                                中本秀智

 市議会報告―段原土地区画整理事業      広島市議会議員 南区 松坂 知恒

 県議会報告―市民球場建て替え問題    
広島県議会議員 南区 中原 好次

 航空母艦「赤城」の椅子                     滝 恭岳

 アーバンコーポレイションの社長に聞く             
松井 邦雄

 広島市の介護保険                                  松井 邦雄

 いま学校では―「送別式なんていらない」             学校事務職員 佐藤若光

 「現代美術館汚職事件」                                 山口氏康

 老いを考える―シニアからオールドへ            ジェロントロジスト 青山裕三朗

 山陰からの便り           「ぴぃーすうぉーく松江」事務局長 吉田 英夫

 投書 「新株」発行差し止め                               麻生静雄

 「私の市政コラム」―年功序列社会のひずみ                     山口氏康

公開講座のお知らせ                            広島・地方行政研究所

「労働運動研究」7月号 1999.No.358

地方自治と水害の問題                広島・地方行政研究所理事長  山口氏康

        ー広島・地方行政研究所の発足にあたってー

山口氏康へ

表紙へ

公開研究会の案内 新刊本の紹介 へ


労働運動研究2001.9より

 

 「市民生活」第七号、発刊される

    広島市民の生活に密着した内容

 

 広島・地方行政研究所が編集する『市民生活』第七号が発行された。巻頭の「生活保護の動向」は、広島市内各区別の生活保護者割合と国内政令各市における保護率、保護費と、その推移が示され、国の構造改革という不況リストラが市民負担の増大につながる興味深い問題提起となっている。

 同研究所事務局長の松井邦雄氏による「天は語らず人をして語らしむ」 には、氏のマツダに勤めていたときの思い出があり、そのなかに「私は弁解もしないし、裏切り行為もしなかった。代議員の声を集約しその通りに処置した。弁解するくらい淋しいことはない。(決議機関の)議長というのは、度胸のいる仕事である。孤独である。四期もよくやった」と書かれていて、読ませる。

 その他に、広教組の堀内彰氏による「予算編成?末期二〇〇一」は、学校に配分される消耗品費の突然の削減に頭をなやます事務職員の様子が素直に出ている。元広島市議会議員の井出正夫氏による「悪い奴ほどよく眠る」は同名の映画で疑獄を追求して消される刑事(三船敏郎)の姿に重ねて、市民病院用地取得にかかわって発生した市の構造汚職を回想している。

 山口氏康氏が先に刊行した 『ヒロシマもう一つの顔』から「開発公社汚職事件」の部分が本誌に再録されているが、「(浅尾市議会議長)は『君と問答しても仕方がない』と電話を切った。私と彼との対立は、これが最初で最後であった」で終るこの項は、あいかわらず議会の闘いを描いて迫力がある。

 <山陰からの便り>として、松江から寄稿している吉田トキ江さんたちの「田和山を見る女性たちの会」が、この度、文化財保護に貢献した個人、団体に与えられる「和島誠一賞」を受賞されたことを、本誌で初めて知った。できれば、この賞の由来を今すこし知りたかった。

 鹿恭岳氏の「オーストラリア見聞録」は、退職後は海外で暮らしたいという視点からみた現地報告で、広大な公園、豊かな緑、そして「観光に浮かれた日本人の私には強烈な衝撃」となった世界の現状など、異文化接触の成果が示されている。

 〈投書〉「生れも育ちも広島、肝心の行政を知らなかった」 (M子) は『市民生活』 から受けた刺激が新鮮に表現されている。

 市民生活に密着した同誌の姿勢が成果を生んでいる。

             (労働運動研究編集部)



「労働運動研究」7月号 1999.No.358

地方自治と水害の問題                広島・地方行政研究所理事長  山口氏康

        ー広島・地方行政研究所の発足にあたってー

山口氏康へ


 

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                          定款

役員は、理事十一名、監査二名で構成し理事長は理事会で選出する。
その目的は、地方自治と歴史を研究し住民意識の高揚をはかる。
その事業は、地方自治の政策、方針、分析等の研究。
研究成果は、公表し出版物の発行等を行なう。
賛助会員は、個人年会費一口、一,〇〇〇円以上、法人年会費一口、五,〇〇〇円以上である。
現在、入会者が払ってくれた年会費は平均約五,〇〇〇円になっている。
 総会では、研究課題として地方行政の基本的なものと具体的なものに大別し調査・研究を行なうこととした。

広行研からのお知らせ
2007/1/15更新


市民生活 広島・地方行政研究所(略称 広行研、山口氏康理事長


2004年VOL.19の『市民生活』目次

土地開発公社の損失額 広島・地方行政研究所理事長山口氏康1
市議会報告一広島高速道路公社 広島市議会議員 南区 松坂知恒8
県議会報告一広島南道路の整備 広島県議会議員 南区 中原好治12
認知されて5年 広行研・事務局長 松井邦雄15
開発公社の監査請求事件「続編」 行研・常務理事 中本秀智19
いま学校では−こどもの方が‥‥‥ 学校事務職員 舛岡恵子26
ひろしまという街 滝恭鳥 28
私の生い立ち〜ヒロシマもう一つの顔より 山口氏康33
老いを考える−第二の人生、貴方は幸せですか?ジエロントロジスト 青山裕三朗39
山陰からの便り           ぴい−すうお−く松江・事務局長 田英夫41
私の新幹線時代 多羅善幸42
「私の市政コラム」一突然起こった介護 山口氏康44
投書「NPO活動に思う」 麻生静雄45
公開講座のお知らせ






ニュース 広行研からのお知らせ      l
 広島県で活動している広島・地方行政研究所(略称 広行研、山口氏康理事長)は雑誌『市民生活』を発行しています。購読希望の方は労研編集部まで。

 













































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































 

広島市議会編

5.OBから

「市政の監視人」自覚を
利益誘導、危険はらむ

 「今は市議というより区議。いや、支援者のエリアでいうと町内会議員かなあ」

 通算二十年間、広島市議を務めた山口氏康さん(80)=西区井口明神=の現役議員評である。

 自らは議員時代、「めぎ(壊し)屋」と呼ばれた。議会が審議する年間百数十件の議案に対し、賛成するのは「三十件ぐらい」だった。

 「市政全般のチェックが議員本来の仕事」。一人会派を貫き、一般質問は欠かさなかった。「円滑」な議会運営を妨げ、市職員や同僚議員には煙たがられた。

 初当選から二年後の一九七三年。市政調査研究費(現在の政務調査費)導入を前に、保守系会派の幹事長が「一人会派には支給しない」と言ってきた。「『いいですが、使い道は聞かせてもらう』と返答すると、すぐに私へも支給されることになった」と笑う。

     ◆  ◇

 市土地開発公社の用地取得に絡む七七年の汚職事件、八〇年代後半に浮上した市現代美術館の高額美術品購入問題など、市を揺るがす問題を「告発」していった。広島アジア大会(九四年)を控え、だれもがバブル経済に浮かれたころも、起債を使っての都市整備を批判。「起債は借金。必ず、つけがくる」と警鐘を鳴らした。

 だが、地域住民や後援会に、受けはよくなかった。政令指定都市になって最初の市議選があった八三年、選挙区が全市から区単位に変わり、山口さんは落選した。四年後に返り咲いたが、九五年にまた落選した。

 「不景気だから市民は我慢してくれ、って演説すると、『落ちるから言うな』って言われた。選挙には弱かったよ」。今も「市政の監視人」としての自負から、市政の課題を問う季刊誌「市民生活」の発行を続ける。

     ◆  ◇

 各区それぞれ五千票とされる「当確ライン」を目指し、議員たちは奔走する。地域から持ち込まれるさまざまな要望を市に伝え、実現を働き掛ける。だが、地域代表の度が過ぎたりすれば、「利益誘導」へと振れる。

 七五年から三期連続で市議を務めた別のOB(76)は「選挙が区単位になってから、他の区の住民からの相談はなくなった」と振り返る。

 道路やがけの改良工事の陳情を受け、台風が接近すると地域をパトロールした。住民要望を書き留めた大学ノートは十二年間で八冊分。数千人と面会した記録は、今も大事に保存してある。

 「住民の『ご用聞き』も議員の宿命。(選挙に)通ってなんぼ、だから」。それでも、「地域に密着する『ミクロ』と市政全般をチェックする『マクロ』の両立に苦労していた」。

 このOBも山口さんも、現役へのメッセージは、同じだった。

 「権力の中でする仕事だから人一倍、努力しないと。もっともっと勉強してほしい」

おわり

 市議会編は木原慎二、城戸収が担当しました。