2008-9年末年始『飛び石第十夜・靄』(『誘惑2〜Deduction〜』より)

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「――まだ判らないのか?」
 小刻みに震えて俯く幼なじみの少女に、青年は声が苛立ちそうになるのを堪える。両手で持つ小さな白い棒が伝わる震えに揺れている…まるで凶器を持たされている様に怯える少女に、それを渡してもう1日。妊娠検査薬。――生理周期が判れば少しは精度が上がるが、事故の入院から生理周期が乱れているらしい少女自身がそれを異性に口にしたがらない為、性交日から三週間後くらいまで判定は出来ないかもしれない。それを知っているのに青年は少女にそれを渡した。妊娠の可能性に怯える少女に苛立っていないと言えば嘘になる。
 漆黒の髪。血の気の引いた白い肌。まだブレザー姿のリボンすら解いていない制服姿。小さな頃から見知っている妹の様な美しい少女が他の男に孕まされたかもしれないと聞けば、いい気分にはなれない。
 どんな男なのか、話したがらない少女を酔わせて少しずつ聞き出し、そして聞けば聞くだけ苛立ちがつのる。性に疎かった少女をどれだけいやらしく開発していったのか、酔わせてもまだ口が硬いその言葉の端々から滲む卑猥な響きは、幼なじみの微妙な独占欲を酷く刺激していく。
 ふと、検査キットの蓋すら外されていないのに青年は気づいた。
「何で調べないんだ?」
「……」
 少女の気性は判っている。妊娠していても堕胎が出来る性分ではない、宗教上の問題ではなく過ちの結果命を奪う事が出来ない甘い少女で、そして両親の愛情が判らない馬鹿でもない。怖くて踏み出せないのだろう。そんな弱い少女のくせに男を咥え込んだ…いや調教されてしまって、そして捨てられた。
「……。調べてやろうか?」
「え……?」
「不安なんだろう?」
 震える肩をそっと抱き寄せ、そして少女の耳元で囁き、耳朶を噛む。たまらない甘いにおい。同じ屋根の下に住んでいるからシャンプーも同じの筈だが少女の身体からは甘い花のにおいがする。華奢な肢体がびくんと震え、小さく首を振る少女に構わず青年は耳朶からうなじへと唇を滑らせ、そして顎を持ち上げた。
「だめ……おにいちゃん……ぃ…や……」
 労る様にそっと唇を重ね、そして何度か離しては重ねていくたびにいやらしいキスへ変えていく。調教の男は少女にキスはしなかったらしい。
『まるで娼婦の扱いだな。――昔の娼婦はキスはしなかったって話だそうだ』
 放り出されてボロボロになっている少女を取り込むのは簡単な様でいて難しい。優しく抱きしめ、優しく囁き、家族の様な顔をして徐々に手に入れていく。家族のキスから、舌で貪るキスまで、酒の力も借りて一晩。盗み見た自慰を目の前でさせるまで三日。そして……。

 二階の間取りは洋間と和室とトイレ付き浴室。西洋風の広い浴室はタイル張りで広い。籐の棚篭には二組の制服。至近距離でなく少女の全裸を見下ろせる。着痩せする胸はいやらしく突き出し、男に弄ばれた肢体は華奢でありながら牝の淫らさと繊細さを危ういバランスで男の劣情を誘うものだった。この数日より前は小学時代にプールで見たのが最後だっただろうか、絵本の妖精の様な華奢さばかり憶えていたが、今はなまじ清楚な美貌がより淫靡で被虐的な牝の風情を醸し出している。
 何度もキスを繰り返されて全身が桜色に染まっている少女の全身から力が抜けていた。
 親には相談出来ない。ましてや相手の男にも頼れない。そんな中、青年はただ一人すがれる相手なのだろう、どの様な仕打ちを受けても拒めないと判っていて徐々に身体を開かせていった自分の卑怯さが青年には苦い。
「教えただろう?これにおしっこをかけるんだって」
「ゃ……ぁ……っ」
「妊娠していない証拠が欲しいんだろう?」
 浴室の壁に少女を追い詰め、覆い被さり、手を伸ばした先の下腹部は既に熱く潤みきっていた。びくんびくんと肢体を跳ねさせる少女の大きな瞳から涙が溢れ、欲情と不安に壊れそうな脆い表情に青年は再び唇を重ねる。一時の誤魔化しであっても崩れ落ちそうな少女にとってはすがる存在が必要なのは事実だろう。そんな少女が不憫で、そして欲情を掻き立てられる。
 ついばむ様なキスと濃厚なキスを交互に繰り返しつつ愛撫していく青年に、少女の肢体から抵抗する力が抜けていく。壁に背を付けて崩れ落ちそうな少女を胸板に埋もれさせ、青年はクリトリスを弄ぶ指を加速させる。
「だめ……っ…おにいちゃ……んっ……ぁ……あぁ……っ…おにぃ……ちゃん……っ」
 快楽の熱から逃れようと頼りなく首を振りたくる少女の華奢な顎や頬が胸板に擦りつけられ、幼い頃と同じ甘い響きの呼び方がこそばゆく耳に届く。平時は「兄さん」と呼ぶ様になっている少女だが甘えて歯止めが効かない時は昔の呼び方に戻ってしまうらしい。
「キスしようか?」
 その男が許さなかったキスをするたびに、紅茶を吸った角砂糖の様に少女の警戒心や隔意が崩され削られていくのが唇越しに伝わってくる。どれだけ淫らな調教をされていても望んでもキスひとつさせて貰えなかったのではやりきれなかっただろう。癒してやりたい気持ちと奇妙な独占欲が青年の中で渦巻き、頭の中で低温で煮えていく。
 一階には両親もいる自宅で、預かったお隣の少女を裸で弄ぶ。いや父親はともかく母親はどうやらまとまってもいいと考えている節があるが、それでもこういった秘め事は堂々と出来るものではない。音の篭る浴室で懸命に声を抑えようとする少女の頬を撫で、顔をあげさせ、そして唇を貪る。商売女はやや年齢不相応に知っているお蔭でキスもセックスも数をこなしている青年には、少女のぎこちなく不慣れなキスが新鮮でたまらない
「――俺が調べてやるよ」
 深く重ねて離した唇と舌に唾液が糸をひく。愛液まみれの指で青年は検査キットを摘まんだ。

2008-9年年末年始Special Fin
FAF200901282130

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