2017梅雨時リハビリ『愛情表現A面』

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 視線を感じる。
 ずっと着かず離れずの距離で彼を尾行している少女の存在に正木は気付いていた。初恋の相手を見つめる様な初々しいものではなく、その視線に込められているものは憎悪である。
 原因は判っていた。正木は一週間前に少女を強姦していた。目隠しを施して正体を知られない様にしていたが幼馴染である少女には自分と判ったのかもしれない。塾帰りに彼女が人気のない公園を通るのは知っており、そこで犯した。昔から欲しくてほしくて仕方なかった、ただ待ち伏せているだけでも汗が滲む熱帯夜の茂みに彼女を引きずり込み、ナイフを頬に押し付けて無言のまま威嚇をしたが一度だけ逃げられかけて頬を殴った…柔らかな綺麗な頬に拳が沈みこんだ瞬間、正木は射精するのではないかと思う程の興奮を覚えた。それからはがむしゃらに犯した。処女だった膣内に何度もなんども射精した。
 その時と同じ興奮が正木を満たしている。
 恐らくは気付かれていなかった自分の恋慕が実を結ぶ。今彼女の心を占めるのは自分の存在であり、他の誰でもない。彼女の視線に気付かぬフリをして歩く正木はまるで膝の上の子猫を撫でる様な幸福感に微笑む。
 悲鳴の様な叫び声が背後から大きくなり、そして正木は背骨近くを刺される衝撃に立ち止まる。激痛に伸びる身体の中、正木の口が悦びに歪む。独り占めだ。彼女の処女を奪い、彼女に刺し殺される、ただ独りの男。あのナイフで刺したのだろうか、確認したい、彼女への贈り物だ。
 ああ、ただひとつ心残りがあるとしたら、愛しいこの女が自分の子供を孕んだかを知りたかった。産んでも堕胎してもどうでもいい。ただ、消えようのないものを与えたかった。
 恐らくは誰も認めないだろう。
 それでもこれが正木の愛情表現だった。

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FAF201706281504

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