『真夏日とセーラー服(仮)』陽炎2

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 微かなエアコンの音以外に、窓の外の喧噪が聞こえた。
 日本有数の乗降客数を誇る駅舎と融合した古めかしいホテルは近年リニューアルしたのもあり、どこか懐かしい内装でありながら設備は最新の物が揃えられている様だった。だが身体を包み込む様な落ち着いたアイボリーの椅子に座り腿の上で手を重ねている香澄は項垂れたまま、部屋の様子や優雅なカーテンの向こうに広がる光景を楽しむ事はない。
 クラシカルな西洋様式の部屋はアイボリーと青を基調にした落ち着いた部屋でありながら正方形とは異なり多角形で弓状の内側へと大窓が面し、天井高はとても高い。地下駐車場からそのまま連れてこられた香澄は現在地もホテル名も判らないままだったが、だが興味を示せる程の余裕もなかった。
 今の香澄が身に纏っているのはあの丈の短い淫らなセーラー服ではなく、本来の制服だった。ほぼ半日着け続けていたニップルリングは机の上でハンカチに乗せられている。何一つ問題のないいつも通りの姿であり、それが更に少女を打ちのめしていた…あの忌まわしい列車に乗る前に身に着けていた下着を、香澄は身に着けていた。下着同様に制服も密室で甚振られていた間にクリーニングされた様で着心地は良いのだが、下着は友達であった筈の裕子に昨日預けていた筈であり、それが男達の手に渡っている現実が少女の胸を塞がせる。自分は友達に陥れられたのだという実感と、常と変わらぬ姿でこれからの恐ろしい行為をせねばならない絶望感に声もなく震える香澄は、ただひたすら時が訪れない事を祈るだけしか考えられずにいた。
 かちりと硬い音に続きドアの開く微かな気配に、香澄の全身が強張る。
 売春婦としての口上などを男達に教えられてはいたが、椅子から立ち上がる事も男を歓待する事も出来ずに今にも貧血で倒れそうな青ざめた顔で浅い呼吸を繰り返す香澄の視界に、磨き込まれた靴とスラックスの裾が映る。
「――お……、お願いします……助けていただけませんでしょうか……」
 蚊がなく様な声で途切れそうな意識の中、どうにか言葉を口にした香澄の重ねた手の上に、何枚もの写真が落ちてきた。
 男子生徒に窄まりを犯されながら身悶える姿、田舎駅のベンチに全裸で腰掛け自ら下腹部の谷間を指で広げている姿、精液まみれの顔で男の下腹部に顔を埋めている姿、白い乳房に赤黒い幹を挟み扱きたて傘を舐めしゃぶる姿、混雑する車内で前後左右から半裸の状態で弄ばれる姿、全てに香澄の顔がはっきりと写り込んでいる。
 どくりと香澄の身体が脈打つ。確かに昨夜も顔の写り込んだ写真は見せられているが、それは男達の仲間なのだから持っていても当然だった。だが今香澄と二人きりのその男はその輪の中には含まれていない筈の人物である。どこまで自分に加えられた残酷な仕打ちを知ってしまっているのか……。
 不意に香澄の顎を男の手が捉え、強い力で上げさせた。
「人と話す時は相手の目を見ろと親に教えられてはいないのかね?」
 五十代前半か香澄の父親と同世代と覚しき男の声音は重厚で有無を言わせぬものだったが、緊張しきった香澄はその一言に更に萎縮し、言葉どころか呼吸さえままならず震えだす。
 何故目の前の男を見て父親の姿を思い出したのかは少女には判らない。顔立ちではなく年齢だろうか。同じ上流階級的な空気を漂わせてはいるものの、温厚な印象の香澄の父親とは違い目の前の男には強い支配欲の様なものが漂っていた。体格も年齢的な衰えを感じさせない引き締まった身体付きであり、整えられた髪も品の良いスーツも壮年男性としての悪印象を抱く点は一つもない。――だが香澄を見下ろす目は残酷な光が見え隠れしていた。
 男の顔を見続ける事など出来る筈もなく視線を落としていた香澄は、不意に男のスーツの襟の社章に気付きびくっと震えた。父親の物と同じ社章に、適温に保たれた部屋の中で少女の背筋が寒気に震え汗が流れる。
「君の『宣伝』が我が社にも届いてね。何やら関係者ではないかと調査をする事になったのだよ」
 校内男子生徒に流れた顔の判別が難しいものでなく、香澄と特定出来る画像が父親の勤める社内に拡散している可能性を仄めかす言葉に、香澄の膝が激しく震える。
「……。ぁ……の……、ぁ……」
「もしも関係者だとすれば不祥事だ。ましてやこんなふしだらな画像が面白可笑しく報道された日には我が社の信用問題に関わる」
 男の言葉に哀願しようとなけなしの勇気を奮いかけていた少女の舌が凍り付く。目の前の男が自分と父親の間柄に気付かないでいて貰える事だけを祈るしかない香澄にはもうそれ以上出来る事は考えられなくなり、俯いて涙を零す。
「秘密に……してください……、おねがいします…どうか、秘密にさせてください……」
「つまりこの目立つ制服に気付かないでいて欲しいと言う事かね?『香澄』君」
 力無い香澄を椅子から引き起こし、目立つリボンの胸元を指で執拗に弄る男に、肺を満たさない呼吸を何度も肩で繰り返した少女は下手な操り人形の様なぎこちない動きで手を上に上げる。
「お願いします……、どうか…どうか……なにも……気付かなかったことに……してください……」
 堪え切れず涙を零し細く啜り泣きながら香澄は男の手を避けてリボンに手を重ねる。有名で目立つ制服は調べればすぐに学校名は判るであろうし、もしかしたら社員の家族の進学先も調べれば簡単に判ってしまうものなのかもしれない上に、男は既に香澄の名前も知っている。いや学生証と香澄の姿が一緒に映されたあの画像がもしも流出していれば苗字も何もかもがもう伝わってしまっている筈であり、調査をするまでもないだろうから、そこまでは至っていないと安堵するべきなのか。だが目の前の男の機嫌を損ねて客のクレームとなり男達を怒らせば何もかもが晒されてしまうだろう。
「社の大切な調査を僕にするなと言うのかね?君」
「は……ぃ……、おねがい…します……」
 リボンの結び目に重なる指を、ねちねちと撫で回す男の指に少女の背筋がぞくりとざわめく。本能的に感じる執拗で残忍な牡の気配が、絶望に打ちひしがれる少女を妖しく炙り始める感覚にまだ香澄自身は気付いていない。男達に捕らわれてから接触を避けられていた身体は制服越しの男の指の動きに過敏に反応し、緊張で気付かぬ内に布の微かな摩擦と相俟ってようやくニップルリングの呪縛から解かれた筈の乳首は柔らかなレースを突き上げる形に硬くしこってしまっていた。グラグラと床が揺れている錯覚に捕らわれ震える少女の青醒めた顔を冷たい汗が滑る。
 父親に迷惑をかけないで済ませる事だけを願いつつ、男に撫で回されながら華奢な白い指がリボンを解き、そして制服のボタンを頼りなく遅々と外していく。
 華美でありつつ上品な印象の制服のボタンが一つ外れる毎に乳白色の柔肌が徐々に露出し、卑猥なニップルリングのみの淫虐な姿ではなく良家子女らしい上質な下着に包まれた姿が窓から差し込む光の元、露わになっていった。
「僕に何をさせようと言うんだい?え?」
 恐らく社内でも相当の地位であろう、弱者を見下す事に慣れている人種特有の高慢な空気を漂わせる男に怯える香澄の中で自らの選択への微かな迷いが削り落とされ、蹲り全てから逃げ出したい絶望が広がっていく。
「……。ま……まだ…処女の……くせに……せ…せ……セックスしたく……て……疼く……淫乱な…、か、香澄を……お仕置きして……、処女を、捧げさせてください……っ」
「ほう、そんなに男が好きなのかね」
「っ……、は……はぃ……かすみ、おじ様に……初めての人に……なっていただけて…しあわせ、です……」
 決して幸せそうには見えない悲痛な表情と声で口上を述べながら全身を震わせて香澄は制服を脱ぎかけ、緊張のあまり床に崩れ落ちかける。半ば貧血に近い眩暈に朦朧とする香澄の華奢な身体を手荒く抱き留めた男が、そのまま制服が床に落ちた下着姿の少女をベッドメイクもそのままのキングサイズのベッドへと放り込む。適度に沈むベッドの上で緩やかに弾む白い身体に男の手が延び、柔らかなブラスリップの胸元を男が無惨に引き千切る音が室内に鳴り響いた。
「――ゃ……ぁっ」
 あまりにも乱暴な行為に思わず小さな悲鳴をあげかける香澄の唇を男の口が塞ぎ、舌が捩じ込まれた。蛭を思わせる滑った舌が熱く香澄の口内を舐り回し、じゅるじゅると音を立てて初対面の少女の十七歳の唾液を啜ったかと思えば今度は唾液を流し込み、そして執拗に上唇を舌で撫で回す。その動きは口腔陵辱と指での膣や全身の愛撫を教え込まれている少女の身体を煽り、緊張の余りに意識を失いかけている無防備な身体をざわめかせる。
 父親程の年齢の男に粘着質な接吻をされながら母親が選び買い求めた繊細なブラスリップが力任せに無惨に何度も引き千切られ、カップだった部分から零れた乳首を男の指が強く摘まみ上げるが、その力加減は抓り引き伸ばすと言った方が近いものだった。まるで香澄に恨みがあるかの様な乱暴さで弄ばれながら、怯える香澄の身体の奥でたった一日の間で残酷に身体に刻み込まれた被虐の卑猥な疼きがどくりと脈打ち、開脚台の上で繰り返し洗浄された膣奥からとろりと熱い愛液が滴り満たされていく。
 豊かな乳房を荒々しく揉みしだかれた後、爪で強く弾かれた瞬間、香澄の全身がびくんと跳ねる。犯されていると言ってもいい強引なものでありながら男の下で徐々に香澄の身体は狂おしい熱から逃れる様なはしたない動きを繰り返す。朦朧とする意識は冷静な思考力を失い、男が調査を中断してくれる事と、眩暈の中横になれた事への安堵感と、下着を破かれ母親を悲しませる胸の痛みと、何故自分は友達にここまで嫌われたのか、そんな様々な事が深く考える余裕もなく浮かび上がっては消えていく。
「こらこら、香澄君?しっかりもてなさないといけないじゃないか。ああん?」
 乳房を捏ね回しながらにやりと嗤う男に、香澄は何とか言葉を口にしようとして唇を動かすが涙が零れるばかりで音にならず泣きじゃくる。男達に口腔と手での奉仕を教え込まれてはいても、少女自身は一対一で男性にどう触れればいいのかも判らない状態であり、眩暈もあって動きようもなく怯えるしかなかった。
「立派に育ったのは身体だけで父上に厳しく躾られていないんだねぇ君は」
「ひ……ぁ……!」
 ベッドの上で俯せに転がされた香澄の腰を引き寄せ高く上げさせた男が、そのままぴしゃりと尻肉を平手打ちする。反抗期らしい時期もなく親に手を挙げられた記憶もない香澄は、続いて何度も容赦なく打ち据えてくる男の手に驚き、頭の中が真っ白になった。上品な室内に繰り返し打擲音が鳴り響き、無惨に引き千切れたブラスリップを纏った白い身体がびくんびくんと跳ね上がり、男の手が細い背筋に延び更に薄布を引き裂く。背筋の半ばより下まで引き裂かれたスリップは落ち掛けていた肩紐を留める力もなく、たおやかな肢体に比べ豊かに突き出す乳房を露出させてしまう。淡い鴇色の乳首は初々しい色合いでありながら先の男の愛撫もあって卑猥に硬くしこり、男の再開する打擲の度にぶるんぶるんと揺れる乳房にベッドカバーを擦る様に前後に揺れる。
 ぱん、と男の手が叩く度に走る痛みに香澄の虚ろな瞳から涙が零れる。崩れ落ちようとする腰を片手で抱える男の腕が、じんと痺れが広がりかけては打たれて痛む尻肉が、空白状態になった香澄の思考をじわりじわりと浸食していく。何をすればいいのか判らない身に、まるで子供を厳しく叱る様な男の打擲はひたすら堪えて従えば許される錯覚に捕らわれ、そして力の差の支配は香澄の身体に刻み込まれた引き金を引く。
「――あぁん?何だねこの濡れは」
 ブラスリップと揃いの下着をねっとりと濡らす愛液に、男の指が重く濡れた布の上を上下する。しばし続いていた打擲に泣きじゃくり乱れた呼吸を繰り返していた香澄は下腹部の丘の溝に布ごと指を沈み込ませるその動きにびくんと背を震わせた。
「香澄君?まさか君ぃ、躾の悪さを咎められておまんこを濡らしているのかね?」
「ぁ……っ」
 俯せだった香澄の身体を軽々と転がした男が、仰向けにさせられた白い身体を深く曲げる。上品なデザインの下着を下腹部の丘の溝に食い込ませた状態が瞳に映り、濡れた瞳を逸らそうとした香澄は不意に布越しにクリトリスを指で押しつぶされて悲鳴をあげてしまう。
「目上の者の質問に答えないとはねぇ。厳しい躾が必要だねぇ?ええ?」
「は……ぁああんっ!」
 レースごとクリトリスを爪先で抓られた香澄の全身が男の腕の下でびくびくと激しく痙攣し潤みきった瞳の目尻と頬が艶めかしく染まる。
「大体何だねこのおまんこは。陰毛までないじゃないか、赤ん坊でもあるまいしはずかしくないのかね。――答えたまえ?香澄君」
「ぁ……っ、ぁぅ……んっ、ちが……ちがぅ……ちがいま……す……はあぁん!」
 目の前の男には剃毛の画像を見られずに済んだ事を精神のどこかで安堵しつつ反射的に言い訳をしようとした香澄は突起を捏ね回す男の指に喘ぎ首を振りたくる。捕らえられてから一切与えられていなかった身体への愛撫は、まるで火で炙られたか酷い蚊に刺された様な耐え難い痛痒感として少女の全身を絡め取り、白い肌を上気させ十七歳の甘い体臭がベッドの上に濃密に篭もらせた。滲む汗がスリップの絹地を張り付かせ、濡れた瞳に映る下腹部の下着は男の指の食い込みの窪みの上にまで愛液の滑りを浮かび上がらせていた。

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201508202216

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