『真夏日とセーラー服(仮)』遠雷12

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 正の字は四つを超えていた。
 何人目なのか、交番の床に崩れ落ちていた香澄の内腿に新たな線を引いた男はにやりと嗤いながらズボンのファスナーを上げる。まるで交代のタイミングを見計らっているかの様にほんの数分毎に入れ替わる男達に犯され続け、薄汚れた床の上で今にも息絶えてしまいそうな弱い呼吸を繰り返しながら全身を…特に内腿と腰をびくびくと痙攣させている香澄の膣口からどろりと白濁液が溢れかえった。交番内は牡と牝の性臭が噎せ返りそうな程に篭もり、荒淫に体力を奪われている少女はマジックで書きこまれていた時に大きく割られた膝を合わせる事も出来ないまま長い睫毛と濡れた唇を震わせて無防備に喘ぐ。びくっびくっと不定期に震える身体はこの連日の前は男を知らなかったのが嘘の様に牝の淫虐な色香を漂わせていた。すらりと伸びる脚、優美な華奢な肢体と仰向けで転がされていて僅かに形を歪めても豊かな美しい乳房と、何十人もの男達にむしゃぶりつかれ噛まれ吸われ続けても初々しさを損なわない柔らかな鴇色の乳輪と乳首は初夜の花嫁の様でいて、だが牡の凌辱を妄想だけでは終わらせない強烈なフェロモンに似た噎せ返る様な被虐の色香を溢れ返らせている。
 元から薄かった柔毛を剃られた下腹部の丘は再び生え揃う事はもうないのではないかと思える程生白く、乳輪の色より僅かに濃い下腹部の粘膜は繰り返された凌辱にぽってりと腫れかけ、そこからは大勢の牡が容赦なく射精した子種汁が大量に絡み付き、今も溢れ出ていた。噛み跡と唇の後が夥しく付けられている少女の白い腰がびくっと大きく跳ねる度に牡の径そのままに開いている膣口の奥からどぷりと精液が絞り出され、床の精液溜まりの一部へと伝い落ちていく。
 だが凌辱傾向のアダルトビデオよりも悲惨な状況でありながら、床に倒れている少女を見おろす男達の目には強姦の後の充たされた獣欲と同時に哀れみに似た色が浮かぶ。マジックで膣内射精の数を書きながらそれ以外の恥辱の落描きを悪戯に書き足すのを躊躇わせる何かが、公衆便器の様に精液を放たれる少女へのそれ以上の辱めを妨げていた。それは深窓の令嬢故の被虐美なのかもしれない。この現代で性奴隷の様に犯されながら損なわれきらない上品な空気が、過度な暴力を妨げ、そしてその分、清楚可憐な少女を犯し抜く暗い征服欲を煽り立てる。誰も一度の射精では満足しなかった。満足するまで犯す。前は何処の誰が犯したか判らない精液塗れの膣に強直を突き入れ、そして激しい抽挿を繰り返す。
 その繰り返しが香澄を歪んだ形に磨いていく。しなやかな白い身体を撓らせ、鳴きながら腰を抱え込まれ絶頂を迎えさせられる牝は、男に操られるままに体位を教え込まれ覚え従わされ、牡達の剥き出しの獣欲が好む生贄の牝へと変えられていく。何十人もの男達の凌辱がまだうら若い十七歳の令嬢を清楚さと牡に苛烈な凌辱を唆す淫乱な痴態を併せ持つ牝へと育てていた。
 やがて何人目かの男が立ち去り、ふっと香澄は眠りに落ちそうになる。――身体を隠そうとする意識は、まだ僅かに残っているが、それが無駄だと感じ始めていた。男達の仲間なのだろうか?それともただ交番に訪れているだけの第三者なのか?その疑問は何度繰り返され何度問いても答えを与えられる事はなかった…つまり、意味がないのかもしれない。
 休みたい。それは本能的な欲求だった。
 だが、寒かった。
 真夏の夜はそう冷え込む事はない。床は確かに冷たくこのまま眠れば風邪をひくかもしれなかったが、香澄が感じているものは肉体の冷えではない。
 はぁっと漏れる溜息は精液の臭いが漂っていた。全身から精液臭が漂っている。膣内射精が多いものの顔面射精もそれ以外も多い…しかも肌に散らされた精液はほぼ確実に塗り広げられた。まるで犯した証を確かにする為の様に。入浴して身体中を清めたい欲求に、のろのろと少女の手は下腹部へと延びる。全身が汗と精液と唾液に濡れていた。
 酷く、汚されている。乾きかけた精液と唾液の上から更に塗り込められ滑らかな白い肌はボディソープをかけられた様な状態になっていた。寒い。柔毛を剃られた後の下腹部の丘を撫でた瞬間、びくりと香澄の身体が跳ねた。もう自分には不要と言われた柔毛。もし生え揃うとしたら綺麗に伸びるのだろうか?それとも切られた毛先が太いままの無様な状態になるのだろうか…そもそも以前の様に戻れるのだろうか……。
 男が立ち去る時ににやにやと嗤いながら横たわる香澄へ向けておいたカメラのレンズを意識出来ないまま、白い指で下腹部を撫で回す。荒淫で体力はない。それなのに、指が動く。
 もしかして男達はもう現れないかもしれない。警官が戻ってくるかもしれない。自分はもう自由なのかもしれない。何人目かの男が手錠も外し、今香澄の身体にあるものは男達の凌辱の残滓だけだった。寒い。精液と愛液と汗と失禁など凌辱の汚れが残る床の上で、仰向けに転がされた体勢のまま、豊かな乳房を両脇から挟み込みながら、白い両手が下腹部を撫で回す。交番では荒々しい愛撫しかなかった。そう、優しくクリトリスを撫でられる事はなかった、この様に。
「あ……んっ!」
 白い指が赤く腫れたクリトリスを撫でる。噛まれて吸われて抓られた。だが撫でては貰えなかった。びくっとしなやかな身体が跳ね、そして浅い呼吸が淫らな熱を帯びる。ここではどれだけ泣き叫んでも誰も助けてくれなかったからなのだろうか、男達の責めは激しく、緩急をつけたものではなかった…いや抽挿はそうだったが、焦らす愛撫らしいものはなかった。ぐちゃあっと淫猥な音が鳴り、少女のもう一方の中指と薬指が膣口を掻き混ぜる。開いている。牡の太さに合わせて、拡げられている膣口にぞくぞくっと背筋が震え、香澄はその広さを確認しながら動く。凌辱と比べ物にならない自慰のもどかしい刺激に小さな唇が揺らぎ、そして、徐々に喘ぎ声が漏れ始める。
 ただただ犯されていた。それは確かに激しかった。だが、何かが、違う。
 名前も何も知らない男達の精液を膣奥に浴びせられるのは恐ろしい行為だった。全員、自分の絶頂を見ていた。男の射精よりも香澄の絶頂の方が回数は多い。射精までの時間が短い男相手でさえ香澄は何度も繰り返して絶頂を迎えさせられる。もし、何かがあって香澄と街中ですれ違う事があったとしても、恐らく香澄自身は気付かないであろうが、男達は気付くかもしれない。喘ぎ絶頂を迎えて何もかも言い成りになって身体の全てを肉棒に捧げたいやらしい牝の自分に。だが、それでも、異なる。
 身体ばかりが、堕ちていく。
 交番の床の上で自慰に耽る白い身体がびくっびくっと跳ねる。最後の男のものはそれなりに大きかったと頭の隅で客観的に憶えてしまっている自分に香澄は首を振りたくる。サイズなど憶えてしまいたくない。普通よりは大きかった。嫌。膣口を捏ね回す指に夥しい精液が絡み付き耳を覆いたくなる激しい淫猥な粘着質な水音が鳴り響く。知ってる。もっと大きいモノを知ってる。もっと小さなモノも知っている。腰遣い。激しい獣みたいなものから、ゆっくりと、気が狂いそうな程ゆっくりと抽挿して自分に猛々しい剛直を刻み込む動きまで。
 おじさま。
 唇が、動く。
 カメラのレンズが無機質に少女の痴態を撮影し動画が流出していく中、大企業の重役令嬢は刻み付けられている残酷な焦らしと痛みを求めて薄暗い交番の床の上で淫蕩な自慰に耽る。荒々しい抽挿とはまた異なるもどかしい刺激が白い身体を追い詰め、しっとりと濡れた黒髪を床に広げ肌に絡み付かせたまま小さな頭を振りたくり、縮込まり、そしてびくんびくんと身体を跳ねさせ仰け反り、絶頂よりも僅かに足りない忘我の快楽の只中、香澄は何度もなんどもその男を呼んでしまう。
 二度と会ってはならない、父親を傷つけてしまうであろう危険な男に何も求めるものはない。ただひたすら男の恨みが自分と言う生贄で充たされ晴れた事を祈るしかない、そんな存在が、少女の白熱した情欲のうねりを支配する。初めての男と言うものはそういうものなのかもしれない。執拗な、異常な、残酷な辱めと、初めての激痛と、そして全てを刻み込んだ、猛々しく熱い剛直。あれ以上のものはない。それは処女喪失だったからかもしれない。だが、香澄が追い求めてしまった最後にあるのは、その男だった。
 ホテルのベッドの上で、窓際で、床で、椅子の上で、自分を初めて犯した…初めて憶えた牡が、最も大きく硬く猛々しい…それ以上はないものであった悲劇。そう、悲劇、だと思う。激しい抽挿も異常な焦らし方も何もかもが、強烈過ぎた。
 傷つける言葉で弄られながらまだ出血の収まらない腰を動かした。膣内を牡でみっちりと充たされこじ開けられたまま自慰を強要されてその形を憶えた。びくびくと不安定に蠢く膣肉で、あの逞しいモノを、じっくりと味わった。抽挿も凄かった。父親の同年代であるにも関わらず物凄い腰遣いで香澄を貪り、そして年齢相応の練れた牡の獣欲は容赦なく処女を牝へと無理矢理開花させていった…処女であったにも関わらず香澄はあの男で牝の快楽を植え付けられ、そして絶頂を憶えた。何度もなんども執拗に、膣内射精を悦びとして迎えさせられてしまうまで。
 精神が、理性が、熱い紅茶に浸った角砂糖の様に緩やかに、だが取り返しのつかない状態へと崩れ落ちていく。
 ぞくりと怖気に震えながら、少女の指がクリトリスを抓る。びちゃっと液体が迸り脚の間の床に弾けた。
「――無線通りだなぁ…上玉がオナってやがる」
 その声に身体を強張らせた香澄の瞳に、薄汚れた黒いゴムの帯を持った男の姿が映る。

「や……、やめて…ください……」
 まるで犬の首輪の様に自分の首に巻かれた黒いゴム帯に香澄は交番の奥に追い詰められ壁に背を付けたまま首を振る。逃げ出すだけの力などなかった…自慰に溺れるだけの余力はあったのに、と精神の何処かで誰かが嘲笑う。そして、その人物は、舌舐めずりをしていた。黒いゴムは香澄の首に巻き付けてもまだ長く残っている。これを縄か何かの様に巻き付けられるのだろうか?身体の自由を奪ってどうするつもりなのか、とりあえず香澄を救ってくれる白馬の王子様でない事は確かだろう。
 ぐい、とゴムが引かれ、男がにやりと嗤い香澄を見下ろしていた。
「すぐ近くに水道があるから行こうや。精液塗れで汚ぇだろう」
「え……?」
 思いもよらない言葉に、香澄は呆然として男を見上げてしまう。これまで交番を訪れた男は少女の状態など誰も気遣ってはくれなかったが、この男はもしかして親切な第三者なのだろうか…?奥の部屋の水道は使えるかもしれないが、警察官も戻ってきていない状態で使うのには躊躇いがある上に直後に犯され続けていた為に試してはいない。もしも公園の様な公共の水場がありそこで洗い流せるのならば、そうさせて貰えれば有難かった。それと同時に全裸で穢れている自分の姿を恥じらい耳まで熱くなるのを感じて香澄は両手で胸と下腹部を隠す。男の服装はTシャツにスラックスであり香澄の身体を隠す為のタオルなどは持っていない為に借りる事も出来ないが、贅沢を言えば限がなく今は感謝すべきなのだろう。
 交番の床の上に落ちている浴衣と帯に瞳を向けた瞬間、ぐい、と首を絞めているゴムが引かれた。
「何やってんの」
「浴衣を……」
「犬の散歩で服着せるタイプかあんた。犬ってのはな、素っ裸でいいんだよ」
 男の言葉を正確に理解出来ていない感覚に強張る香澄の細い首を縛るゴムが引かれ、よろけた身体に両手を床に突いた瞬間、どくりと身体の奥で何かが脈打ち少女の顔から血の気が引いていく。いや…と小さな声が漏れるもののそれはとてもか細く、更にゴムを引かれた少女は強引に四つん這いの姿勢へと導かれてしまう。
 恥ずかしい姿で屋外を歩かされる事はあってもまさか犬の様に四つん這いで歩く事など…そう迷い動けずにいる少女の首を絞めるゴムが強く引かれ、まるで散歩を拒む子犬が引き摺られる様に香澄は交番の出入口へと引かれていく。雨上がりの湿った夏の夜の空気は纏わりつく様でいてどこか心地よく、だが深夜とは言え公道に全裸で犬か猫の様に四つん這いで出る事に少女は怯える。
「ぁ……あの……、歩かせ…て……ください……」
「すっぽんぽんで堂々歩くつもりか?四つん這いの方がまだ車道から見えないだろうが」
 男の理屈が何故か正解の様にも思え戸惑う香澄は、交番の床に落ちたままの浴衣をちらりと横目で見た。せめて浴衣を着れば四つん這いにならずとも済むのだと男に教えるべきなのだろうか、だが水道の位置を教えてくれる男に意見するのは躊躇われる。そう、すぐ近くとの話なのだから水で洗った後はすぐに戻ればいいだけなのだから。自分に言い聞かせる様に決意を固めた香澄は、だが不安に瞳を揺らしながら視線を左右に配る。信号待ちをしている車もなく…いや最後に車の通行を意識したのはいつだろう。男達が代わるがわる犯したのだから彼等の分は交通量はあった筈なのだが、余裕のなかった少女はそれを意識出来ていなかった。山間の温泉街の外れなのだから夜中には交通量がなくなるのかもしれない。
 震えながら息を吸った少女は気付かない。
 自分の瞳が妖しくとろりと濡れ、乳首は硬くしこり、そして引き気味ではあるがまるで後背位で男に挿入をせがむ様に微かに揺れる腰の奥で、自慰の直後の蠢く膣から精液の残滓と少女自身の昂ぶりの愛液がどろりと物欲しげに垂れている事に。

 足が、進まない。
 基本的に四つ足歩行に向いていない人間が四つん這いになって歩ける歩幅や速度は犬のそれとは比べ物にならなかった。
 田舎の歩道は滑らかな舗装とは言えず荒れたアスファルトで急いで注意を怠れば手と膝が傷付きそうな予感に更に歩みは遅くなる。そして、少女が期待していた静寂は、時折通り過ぎていく大型車によって時折妨げられていた。トラックやダンプ車が多く自家用車はない気がする…だがそれは救いではなかった。車高の高い車は運転席も高く、古びたガードレールに沿う様に歩道を歩いていても偶然運転席から香澄の姿が見えてしまう可能性が高くなる。そして全裸で四つん這いの状態では咄嗟に隠れる事も出来ず、無意味に顔を伏せるだけしか出来ない少女の白い尻肉はまるで視姦者を悦ばせようとしているかの様に高く掲げた状態になっていた。
 はぁっはぁっと浅く乱れた呼吸を繰り返す少女の瞳から涙が溢れる。一歩進む度に俯いた状態の乳房がたぷんと揺れて暴れ、せめて膝を開くまいと内腿を擦り合わせる様に動かす脚に膝近くまで伝った精液と愛液がぬるぬると滑らせた。
 二メートル程の長さのゴム帯を引く男はまるで本当に犬の散歩をしているかの様に香澄の遅々とした歩みに付き合ってくれていたが、暫く経ち、背後に回り呆れた様な声を発した。
「べとべとじゃねえか」
「見ないで…みないでください……、ぃ…やぁぁぁぁぁぁぁ……っ、あ!ぁ……ぅっ!あ!」
 首を振る少女の肩がぐいと捩じ伏せられ、腰を高く突き出す体勢になったその膣口にずぶりと挿入された二本の指にびくっと激しく白い身体が夜の歩道で跳ねる。ぐちゃっぐちゃっとあからさまに鳴り響く粘液の撹拌音と明らかに感じている少女の鳴き声が静かな夜道の遠くまで染み渡る様に広がっていく中、男に捩じ伏せられている上半身と高く突き出した腰に妖しく弾けそうな強烈なもどかしさが背筋を駆け抜け、アスファルトに顔を埋めかけながら香澄は喘ぐ。二本。もう何が何本入っているかはすぐさま判る様になってしまっていた。一本でも辱めるには十分だろう、だがそれでは足りないと判断している男に甘える様に少女の牝肉は柔やわとそれに絡み付く。こんな場所で、と泣きながらびくびくと身を震わせながら微かに白い腰が動く。交番の中での辱めよりも肌が敏感になり全身が昂ってしまうのを感じ香澄は何度もひっきりなしに首を振る。逃げ出したい。寒い。熱い。気温は決して寒くはない。ならば何が寒いのだろうか。
「やらしい女だなあんた」
「んはあ…っ!いや……ぁぁぁぁぁっ!」
 背後からゴムを引かれながら乳房を荒々しく掴まれた瞬間、白い身体を仰け反らせて香澄はよがる。指を食い込ませる男の手の力の強さと首を締め付けるゴムの苦しさに全身が妖しくざわめき汗が滲む。とぷっと愛液と精液を溢れさせる膣口の裏側を男の指が擦りたて、雨上がりの歩道でまるで犬の交尾の様に覆い被られながら少女は破滅しそうな状況での快楽に乱れ身をくねらせ男に身体を擦り付けてしまう。
「せめて…せめてみえないところ…で……ぇっ」
「――嘘つけ」
 背後で男がスラックスの前を寛がせるのを感じこくりと生唾を飲みながら香澄は首を振る。こんな公道で交わってはいけない。いつどの様な車が来るかも判らない状態で、全裸で、首にゴムを巻き付けて、まるで盛りのついた牝犬の様に。はぁっはぁっとまるで声を上げている様な荒い呼吸を繰り返す少女の粘液塗れの下腹部に熱い塊が重なり、そして緩く擦り付けられる。少し絡み付かせた後はすぐに貫かれるかと身構える香澄の予想を裏切り、男は長い刀身を繰り返しゆっくりと下腹部の溝に滑らせるだけで挿入はしない。ぐちょっと音が鳴る度に息を詰まらせその瞬間を待つ香澄を嘲る様に膣口に傘を引っかけては逸らす男に、懸命に細やかに首を振っていた少女は身を強張らせたままひたすら堪える状態になり、膣口からはどろどろと愛液が溢れ返り精液と愛液のにおいが篭もった熱く蒸れた空気が牡と牝の腰に絡み付く。
「美味しい肉が欲しいなら鳴けよ」
「ゃ……ぁ…っ」
 美味しい肉と言われた瞬間、香澄の膣がうねり全身がぞくりとざわめいた。
 足湯や郊外の温泉ですらない。ただの、普通の路上で全裸で背後の男へ腰を突き出して性器を重ねているだけで常軌を逸していると言うのに、性交を求めるなど正気の沙汰ではない。静まり返っている山間の道は遠くまで音が響くのか時折車の排気音が聞こえてくる…それはこちらへ向かっているかもしれない。香澄が喘げばもしかして街中まで聞こえてしまうかもしれない。そんな状態で後背位で激しく犯されるなど、あってはならない。せめて交番で扉を閉めた状態ならば、そう考えかけて直前までの荒淫の記憶に全身がざわめく。首を絞めているゴムが、妖しく息を詰まらせる。ぐちょっぐちょっと粘膜を掻き分ける男の幹と傘を感じれば感じる程頭の中がそれで占められていく。異常に太くはない、が、長い。これならば後背位でも楽に膣奥まで突けるだろう。この男はどうなのだろう。すぐに果ててしまうのか、それともこの路上でずっとずっと執拗に突き続けてくれるのだろうか、男が覆い被さってくれるのならば車道からは見えないかもしれない。一度で満足してしまうのだろうか。射精は何度なのだろう。ここで一度抜いた後は水場で二度目を挑まれるのだろうか。突き上げながら罵られるのだろうか、それとも乳房を激しく揉み潰されるのだろうか。射精の量は多いのだろうか……。
 まるで抽挿の最中の様に白い身体が前後に揺れていた。
「ほら、鳴けよ」
 犬の様に鳴けば、人として見て貰えなくなってしまう。熱く爛れた思考の底で熱く加熱された坩堝のうねりに少女は怯えるが、柔らかな白い肌の内側で全身を舐め回す様な甘く絡み付く疼きに絡めとられ欲情の吐息を甘く漏らし、そして項垂れる。もうどうでもいい。どうしてもいい。どうにかして欲しい。拒めば拒むだけ時間がかかって誰かの来る可能性を高めてしまうだけなのかもしれない。被虐の欲情によがり狂いそうになる少女の思考の表面をそれらが滑り結論も出ないまま消えていく。
 助けて。誰か助けて。浅ましく荒く乱れる呼吸を繰り返しながらしなやかな身体を精一杯撓らせ背後の男に腰を捧げる様に突き出し香澄は喘ぐ。路上で、犬の体位で、自ら望んで牡に貫かれようなどと考えてはならない。はぁっはぁっと喘ぐ口元がだらしなく綻び、深夜のぽつりぽつりと灯る薄暗い街路灯の薄明りの中、獣欲に濡れる少女の白い舌が宙を掻く。
 犬の体位。性知識に乏しかった香澄だが犬の交尾位は何かで見た事がある…それは書籍かTVかは憶えていない。だが、長いのだと言う。犬の交尾は挿入から終了までがとても長い。それは構造上の都合なのであって人間にそれは通用しないとしても、獣の体位に少女の理性が妖しく煽られる。しかも首輪の様にゴム帯に繋がれて、香澄一人が全裸で、夜の路上で、まるで牝犬が散歩中に発情して通りすがりの牡犬に種付けをされる様な…。
「ワン……」自分が盛りのついた白い牝犬になっている錯覚に囚われながら香澄は小さな声で鳴く。「ワン…っ、ワン……!」
 ぐいと更に背後へと腰を突き出しながら白い腰が左右に揺れる。甘く蕩けきった発情の鳴き声をあげながら、それでも少女の瞳は絶望に揺れていた。狂気が掠める。もう人間扱いをして貰えないのかもしれない、少なくともこの男からは。だがそれでも堪える事がもう出来なかった。傘で幹で擦り立てられる膣口がまるで痙攣するかの様に忙しなく蠢き、愛液が溢れ返り牡に絡み付く。ほんの数センチ先にもっと良い場所がある…牡に貫かれ抉られぐちょぐちょと犯される為の場所がある。
「――マジ、牝犬」
 男の声に、少女の口元が歪む。
 悦びの形に。

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202006180014

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