そ の 2
   三重の障害を持った猫

ようやく体調が回復したと思われたピエスでしたが、
何と、与える食事を全て吐いてしまうのでした。
動物病院でレントゲン撮影して判明したのですが、
先天性で、食道から胃へつながる部分が極端に
狭くなってしまっている病気なのだそうです。
このままでは、余命はせいぜい2週間だろうと、
動物病院の先生は言うのでした。
恐らくは、それまで、母猫からもらう乳のみの、
固形物を摂っていなかった為、数ヶ月間は成長
出来たのでしょうが、固形を食べる事が出来ないピエスは、
離乳と同時に母猫(野良)に捨てられたのではないでしょうか。

ピエスは他にも障害を持った子であった事も判りました。
小脳障害があるのです。
小脳とは運動機能を担う部分なので、普通の猫たちの様な
運動能力がないのです。
床から椅子までぐらいの高さでないとジャンプ出来ないのです。

それと、もうひとつ、可哀相な障害があったのです。
耳が全く聞こえないのです。
クリクリ、っとした目で、我々人間の動きは一生懸命追っていて、
すぐには気付かなかったのですが、
寝ている耳元でコードレス電話子機を鳴らしても、
全く反応しない、完全に耳の聞こえない子なのです。

こんなにも、多くの障害を背負っていた、ピエスでありましたが、
十分の食事を摂ることが出来ないことが、
最も切実な問題でありました。
とりあえず、栄養を摂取する為に毎日、
朝、動物病院へ行き、夕方、自宅へ連れて帰るという
生活をピエスは始めました。
固形がダメなピエスは、口から無理矢理にチューブを入れて、
液状の栄養物を直接胃へ流し込む・・・・・
こんな辛い、栄養摂取法をされる為に、
毎日、ピエスは動物病院へ通っていたのです。

しかし、このチューブで栄養摂取の生活は
正直、2つの大きな負担があったのです。
1つは、我が家の経済的な負担です。
毎日の通院をずっと続けていたら、
月々、数万円が飛んでいってしまいます。
とても、支払い続けられる額ではありません。
そして、もうひとつ、こちらはもっと大変な理由、
このチューブでの摂取の方法は、
ピエス自身の体にとてつもない負担を負わせているのです。
このチューブ流し込み法は、ひとつ間違って、
液状栄養物が胃ではなく、肺へ流れ込んでしまったらば、
命の危険すらある大変な事になってしまう、
危険性があったし、
チューブで口の中や食道を傷つけてしまう危険もありました。
それに、この方法で、果たして十分な栄養が摂れている否かさえ、
実は病院の先生にはっきりは、わからないのだそうでした。

先生とも相談をした末、約1週間で、このチューブでの生活は諦め、
自宅にて、何とか栄養を摂取する別の方法を試みる事にしました。
その方法とは、
比較的柔らかいモンプチビーフ缶を水や牛乳などの水分と混ぜ、
ミキサーに十分にかけて、流動食をつくり、少しずつ、舐めさせて
栄養を摂取する方法です。
この方法ならば、チューブによって傷つく心配はないのですが、
上手く胃まで、到達すらかどうかがとても微妙だったのです。
順調な時は、美味しそうに食べて(舐めた)後も、
吐かずに胃の中へ入っていった様でしたが、
そうでない時は、すぐに吐いて戻してしまいました。
このやり方で、果たして、ピエスが十分な栄養を摂取出来て、
成長できるか否かは、もの凄く心配でしたが、
この方法にかけることにしました。

紹介してもらって、診てもらった麻布大学動物病院の
その道の権威である教授さんのお話だと、
この病気の子は手術して治すしか方法はないのだけれど、
その手術は大手術になる為、体力的に耐えられるであろう、
大人になってからにせざるを得ないので、
一年後に再び診せに来て下さい、
その時に必ず手術をしますから! 、と。

何としても、手術をしてもらうまでは、
必ず、生き続けて立派に成長しなければ!
我々家族の思いと、ピエスの生き続けようとする頑張りが続く中、
約1年の歳月が流れました