2022余所自作108.5『手を出して 他』

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 こちら108『見とれてしまって言い出せない』と114『着替えを覗かれたのに』の間の話なので108.5となりました。

   『見とれてしまって言い出せない・おまけ』

 意地っ張りめ。
 傷もシミも黒子もない綺麗な白い背中には水着の背中側の紐と結い上げているものが解れた幾筋かの黒髪。すっとした背筋に、俯せの体勢で潰れて撓んだ豊か過ぎる乳房がたっぷりとはみ出している。手全体に絡めている日焼け止めのオイルは人差し指だけを下に向けるととろりと垂れていく。
 オイルが白い肌に弾けた瞬間、ぴくんと腰が跳ねた。
「準備はいいかい?お嬢さん」
「……。――きて……」
 ちょっと待って欲しいそれは何かが違う。何秒か呼吸を詰まらせた後に心細げに応えた声に、省吾は堪らない居心地の悪さを憶える。まるで初夜のベッドで挿入を待つ幼妻の様な愛くるしさと被虐的欲情の混ざった淫ら極まりない蜂蜜声は、思わず周囲を確認したくなる程に濡れていた。
 背伸びしたい年頃なのかねと遠い目をしながら省吾はゆっくりと白い背中に手を這わせる。脂肪の薄い、だが手に吸い付いてくる柔肌と手の間のオイルがぬるりと滑らせた。
 ざん…と穏やかな潮騒がすぐ近くから聞こえてくる。夏の日差しが眩しく、無防備に曝け出している白い背中を火照らせているのが手全体に伝わり、日焼けの心配より先に上着でも掛けてやりたくなる…白い肌が僅かに赤みを帯び、緩んでずれたビキニの紐の隣には跡が早くももう浮かび上がっていた。好きな男がいる乙女相手にやらかしていい限度を超えていると思いながら、指先を引っかけて上へ更にずらした瞬間、白い身体がびくんと揺れる。布と呼ぶよりフィルムの方が近い密度の高い薄い素材はラバーの様に伸びて省吾を驚かせる。これでは乳首の形など浮かび上がって当然である。
「――もしかしてこの水着…アダルトグッズ?」
「あだ…?大人用ですが?」箱入り娘には大人の玩具的知識も通用しないらしい。女子校一貫でも多少は聞くなりしてもよさげだが、こうも通用しないとかえって小気味いい。「少し小さすぎましたか…?でも…お薦めされたのですが……」
 俯せの体勢から肩越しに見上げてくる彼女の瞳は既にしっとりと濡れていた。抜ける様な青空に遠く入道雲が浮かんでいる夏のホテル専用ビーチで巨乳美女の背中にオイルを塗る…何だろうかこの非現実感はと思いながら、省吾は背中の紐を軽く引っ張って離すと、白い背中にぺちんと弾ける。
「立派にエロい水着です、これは」
「……。お嫌いですか?似合っていないですか?」
「似合いすぎるけれどこういうのは意中の相手だけに見せて煩悩を煽ってやりなさい」
「……。煽られますか?煩悩」
「俺を煽ってどうするの」
 悪戯な子猫の様な笑みを浮かべてから不意に頬を真っ赤に染め、そして彼女は慌てて顔を逸らした。またはしたない事を考えたのかもしれない。綺麗な脚がビーチマットの上でぱたぱたと上下に暴れるのは猫の尻尾の様で、機嫌が悪いのか暴れたいのかよく判らない。恐らく良い所のお嬢様で巨乳で蜂蜜声で美女なのにちょっと残念な子である。長い黒髪を一房持ち上げて真っ赤になっている顔の前でふわふわと揺らしてみると、少し怪訝そうな表情で見上げてくる。コミュニケーション失敗らしい。
「赤ん坊か何かだと思っていますか?」
「どちらかと言えば、猫? ――でもこの水着はちょっと刺激強過ぎるから……」
 パーカーを彼女の背中にかけようとした省吾に勢いよく身体を起こした彼女の乳房がぶるんと揺れる。極小の範囲しか隠していないビキニの三角形と紐部分だけが白くその周囲はほんのりと日焼けしかけている柔肌の、白の中央に艶やかな淡い鴇色の乳輪。この状況では当然かもしれないが綺麗に勃ってる乳首に省吾の背筋がぞくりとする…偽彼氏の立場でやっていいものかいつも悩みながらも舌や指で味わっているそれは実に可愛らしく、しゃぶり捏ねる度に零れる声は極上の……
 ばすっと音を立てて省吾は自分のパーカーごと彼女の身体を抱きしめた。
「ポロリ厳禁」
「ごめんなさい」
 腕の中で小声で謝る声はしょげているとも喜んでいるともとれない幼子の様で、思わず腕の中の小さな顔を見下ろした省吾と目があった彼女は真っ赤に染めたままぽふんと胸板に顔を埋めてきた。
「他の人に見られない所に…連れて行ってくれませんか?」


   『手を出して』

 不意にビーチサイドが賑やかになった。
 高級リゾートホテルからクルーザー用の桟橋への整備された道を数十人の男女が楽し気に話しながら歩くのを省吾と彼女は思わず眺め、そしてパーカーで覆った彼女を抱きしめている構図に気付き慌てて手を離す。
「あれ、何」
「シュノーケリングとダイビングのオプショナルツアーだと思います。このホテルの人気アクティビティですね」
「あー……」宿泊客も優雅だがリゾートのパーカー姿の講師陣の美男美女ぶりに省吾は抑揚の落ち切った声を漏らす。「天音さんは参加しないの?」
 一対一とはいかないがかなりの少人数でのコーチと思われるそれは上品だがどこかえぐい。さぞや丁寧に教えて貰えるのだろう…当然妙な逸脱はなしで。デッキチェアで寛いでいた男女もツアー参加者なのかそちらへと合流していくが、それでも講師陣の人数は参加人数と比べ充実しきっている。
「どうして参加を?伊能さんがいらっしゃるのに」
 きょとんとして小首を傾げる彼女に、少し動きが止まってから省吾は頬を掻く。
「さぁ……」
「それより」とても上機嫌そうに彼女がビーチマットを手でぺちぺちと叩いた。「皆様あちらに向かわれたので、誰もいなくなりました。さぁさぁ……ぁ、ぁ……ぁの…、あ……の……、続きを…お願いします」
 前半元気に弾む様に言ってから急に恥ずかし気に言い淀むのはやめて欲しい。どう考えても疚しい事をこれから行うとしか思えなくなる。省吾はちらりとホテルの方角を見遣る。
「それでもまだ視線感じるんだけどね……」

 緩やかな海風が心地よい。波音は五月蠅くなく静か過ぎもせず押し寄せる。日差しは強いがサングラスを着ける程ではない…いや着けていいかもしれない。目の前の光景が、目に悪過ぎる。
「ん……っ、ん……ぁ……ぁ…は……ぅっ……んく……ぅ……っ…ぁ……ぁぁ……」
 ぬるぬると手が滑る度に、極上の蜂蜜声が悩ましく響く。うっすらと日焼けしかけている柔肌は手に熱く、お高値いであろう海外ブランド品の日焼け止めオイルを塗り広げる指が薄い脂肪の乗った肌に窪みをつくる様が妙な嗜虐心を煽る。全身が性感帯みたいな過敏な身体はオイルを塗る前から汗を滲ませ、薄桃色の肢体がひくひくと震えて、腰が、跳ねる。遠目に見ればただのオイル塗り。お嬢様についた虫として監視されているとしても何も問題のないオイル塗り。ただ、至近距離で聞いている省吾にとってはAVよりもいやらしく贅沢な何かであるが。
 一応直させたビキニのブラジャーは俯せの乳房の左右に落ち、豊満な乳房はむにゅりと淫らな形にひしゃげている。両腕を下で組んで枕にしている顔は蕩けながらも気恥ずかし気で、時折省吾を見上げる瞳が切なげに逸らされるのが悩ましい。
「変な声あげたら、即終了だよ」
「はぃ……ぁ……ぁ…ん……っ」
 その声がアウトだと判って欲しい。だが彼女が懸命に堪えている声は人肌に温められた蜂蜜を省吾自身に絡み付かせて手で扱かれるか、もしくは愛液の代わりに滴り腰を突き動かさせる最高の潤滑液の様で、性器から脳の芯まで甘く爛れさせる。指が自然に彼女のよい所を探り、一度オイルを塗った後でも密かにそこを再び撫でさせる。力具合をもっと優しくすればいいのか、強くすればいいのか、何度も指が這い、そして彼女の声の艶が更に甘さを増していく。
「後は自分で塗る?」
 背中一面を塗り終えて声をかけた省吾に、今にも瞳から零れ落ちそうな程涙を溜めて潤ませている彼女がのろのろと首を巡らせてくる。
「意地悪。――全部…伊能さんが塗って下さい……」
「……。流石にどうかと思うんだけどねそれ」
「変な声、出していませんから、私の勝ちです」
 いや十分にエロい声が出ていますと脳内で反論しつつ省吾は大きく息を吐く。
 これは脚に塗っている間に悲鳴なり何なりあげてとっととギブアップして貰わないと拙い。こんな駆け引きは好きな相手にして貰って欲しい。だが偽彼氏の役得に若干執着している気もしなくもない。盆休み前の週末、省吾の作業は片付いているもののチーム全体としては煮詰まっている箇所が多少ある。作業の割り振りは間違ってはいないが教師か親の様に口を挟むのはぎりぎりまで避けているがそろそろ拙い。そんな状況での海水浴の上、相手の偽彼氏で、しかも会社の新人相手、揚げ句現場はグループ系列の高級リゾートホテルで、トドメに経営側のお嬢様。地雷原の真っ只中でオイル塗りをしている状況である。
「はいはい。じゃあとっとと負かしましょうか」
「絶対に負けません」
 少し拗ねたのか頬を膨らませた彼女が俯せの両膝から下をぱたぱたと泳がせる。揃えた白い綺麗な太腿から爪先までは少しむっちりとした人魚の下半身から尾びれの様で、何故か省吾は少し笑ってしまう。猫だか人魚だか忙しい相手である。

 この後、驚異的な我慢強さで堪える彼女に何とか下腹部だけは避けようとそこに至る直前でオイルの瓶一本をどうにか使い切った省吾に彼女の拗ねきった恨み節が炸裂したが、逃げ切らなければどうなったのかを一度冷静に考えて貰いたい。


   『見とれてしまって言い出せない・おまけおかわり』

「こら。何やってるんですか天音さん」
 ぬちゃぬちゃと音を立てさせて腰を動かす彼女に省吾は一気に眠気が醒める。真夏の陽光を背にしたその瞳はしっとりと潤み欲情に震える唇からは甘く蕩けた吐息が漏れている…思わず見とれてしまうくらいに愛らしいが、問題は互いの下腹部だった。露出している、いやしていない。省吾の水着は性器が完全露出するまで引き下ろされ、そして彼女の水着は脇の紐が片方解かれて太腿の付け根に貼り付いているだけになっている。その互いの下腹部が、密着している。
 くちょっくちょっと熱い粘膜に包まれている幹の快楽に省吾の背筋がぞくりとざわめく。だが牝肉のそれではない、まだ挿入してはいない。可愛らしい牝襞を巻き込みながら谷間を擦り続ける前戯の刺激。
「おいたが過ぎるんじゃないかな」
 上擦りそうな声を懸命に堪えながら咎める省吾に、泣きそうな顔をして彼女が蕩けながらも焦った顔をして睨みつけてきた。ご飯を待たされている子猫に似ている。
「は…はいって、くれにゃいんれす……。ずりゅいれふ……っ」
 寝ている間に何をされたのか勢いよく反り返っている省吾のモノは十分過ぎるまでに猛っているが、それにただ跨って腰を動かしているだけでは角度が合わずに挿入は叶わないだろう。手を添えれば簡単に合わせられるだろうにそれが出来ない彼女に省吾は苦笑いを浮かべる。
「それは残念でした。はい終了」
 どう考えても彼女の呂律が怪しい。
 そう言えば彼女が飲んだのを見た事がなかったなと省吾は思い返す。

 オイル塗りの後撃沈した彼女を残してホテルに戻った省吾に、待ち構えていたかの様な従業員と支配人自らにより派手なランチが無人のビーチにセッティングされた。伊勢海老のテルミドールに付け合わせはマッシュポテトと夏野菜のソテーに別皿で華やかなエディブルフラワーサラダとどう見てもランチには重いであろう料理に引いた省吾だった。
「お嬢様が好まれるメニューかと」
 ランチを前にまだくうくうと幸せそうに寝ている彼女を見る支配人の目は優しく、そして省吾を見る目は値踏みをしている。支払いは出来るし願わくばこちらが悪戯をしているとは思わないで欲しい。全部彼女からの仕掛けである。
 海老のミソの風味が濃いベシャメルソースは絶品だったが、気取った料理は冠婚葬祭と宴会などでしか縁の無い省吾には花を食べる習慣がなくサラダの花は彼女に全て食して貰った。花を除いても基本の野菜以外に西洋ハーブに生ハムにチーズに果物と量の多いサラダであり、フレンチと思いきや何処か和風に感じる柑橘類のソースの省吾にとっては何処か馴染のある爽やかな酸味がなければ絶対に片付かなかったであろう…逆にこれを昼から二人で食べきる認識が恐ろしい。ちなみに柑橘類が何であるか等の蘊蓄を垂れられる贅沢な食生活とは縁がない。
 他の滞在客が出払ったビーチにセッティングされたランチに一人残った支配人自らの給仕…料理だけでなく異常に重い。これが彼女の期待する夏のバカンスだとすれば世界が違う。何も気負わずにこにこと笑顔で食べる彼女の健啖家ぶりも中々に怖い。海の家での気楽な焼きそばや串焼きの方が性に合っている。
 重いランチの後に残されたカクテルを省吾が果物を盛りまくった派手な巨大カクテルを彼女が飲んでいると、海水浴の為に持ち帰った仕事で徹夜明けだった仕事人間に腹もくちて眠気が襲ってきた。そして目が覚めたら襲われていたこの構図である。

「ひ、ひとなつのぼーけんとゆーころぱかあるらないれふかー」
 ぐちょぐちょに濡れたままの下腹部もそのままに水着だけは整えさせた彼女が正座させられたまま少し唇を尖らせて拗ねた声をあげる。だがやはり恥ずかしくはあるのか目は逸らして顔は真っ赤に染まっている。いやこれは確実に酔いだろう。舌足らずな酔っ払いの蜂蜜声は言葉を正確に聞き取るには技能を要して難しい。
 酒乱と言っていいのか判らないが、キス魔よりも恐ろしい強姦未遂に省吾はまたパーカーで彼女の身体を包み込む。
「寝なさい。放っておいて悪かった」
「ちかいましゅーっ、そうりゃにゃくって、あにょっ、あにょっ」
 くるりと彼女の身体をビーチマットの上に転がした。そのまま添い寝の形になりぽんぽんと彼女の頭を軽く撫でると、真っ赤なまま拗ねた子猫の様な顔で見上げてくる。正直この状況はかなりキツい。監視の目から免れていればいいが見られていた場合は省吾側が新人女子社員にセクハラ行為に及んだと事実と逆に取られてしまいかねないし、グループ系列の御令嬢に不埒な真似をしたとなれば即解雇も有り得る。
「一眠りして酔いを冷まそうね」
「よってにゃんていましぇんっ」
「酔っ払いはみんなそう言うの」
 酔っておらずに襲ってきたとしたらそちらの方が恐ろしい。もしも手を添えて角度を合わせる簡単な事に意識が及んでいたのならば確実に挿入させられてしまっていたであろうモノは、今この瞬間もぎちぎちと猛っている。オイル塗りの間中ずっと噛み殺した蜂蜜声を聞かされ続けながら美味しそうに熟れた処女の身体を殆ど撫で回したのだから性欲的にかなり危険だった。これで入っていた暁には、やらずにいる自信は無い。
 社員旅行の宴会には参加していた筈だがこの悪癖がその場で炸裂しなかったのは奇跡かもしれない。下手をすれば大粛正である。
「いのーさんはぼくねんりんれふ…わたし、そんにゃにみりょくないれふか…?」
「逆レイプに朴念仁もへったくれもないの」
「れ……れいぷらありましぇん、わかんれふっ」
「一夏の冒険はやり捨てでしょ」
「すてりゃれたうんれふか……?」
 いきり勃ってしまっているモノが彼女を零している間に徐々に落ち着いていく。やられかけていたばかりなのに、半ベソを掻いている彼女はまるでむずがっている未就学女児の様に頼りない。泥沼に填まる前に上手にお役御免しておかないと拙いのが判っているのに、呂律の回っていない蜂蜜声が妙に切実で突き放せない。
「天音さんがもういいですって言うまでは偽彼氏を続けてあげるから、早く寝なさい」
「……」
 じっと省吾を見つめた後、ふにゃりと彼女が童女の様に笑った。
「りちゅわにしぇらないんれふよ」
 くふっと恥ずかしそうに笑う彼女の言葉は幸せそうに口元を隠したパーカーもあって、省吾は全く聞き取る事が出来なかった。


   『手を出して おまけの前日談』

 日帰りの海水浴ならば一番小さな瓶で十分な筈である。それは判っているし荷物が大きいと省吾に引かれてしまうだろうと思いながら天音はテーブルの上にある大サイズの日焼け止め瓶のキャップに指を当ててくるくると回して顔を真っ赤に染めていた。日焼け止めは塗らなくてはならないが、もしかしたら省吾に塗って貰えるかもしれない。
「……。きゃあああああああああああああああ」ロマンチックなエフェクトが大量に加えられた浜辺を想像して天音は頬に手を当てて身体をくねくねと捩らせる。「――叔父様にお願いして貸し切りに出来ませんかしら」
 はっと我に返りよい思い付きをしたつもりになったが人気リゾートを前日に我儘を言うのは問題があり過ぎる。出会いがそもそも贅沢だった。一晩中露天風呂でまったり出来たなどお堅い省吾相手では奇跡としか思えない。部屋に上がって貰えてもすぐに帰ってしまう、会社でも昼休みに少しだけ会って貰えるだけ…もっと一緒の時間が欲しいと思うのが天音だけなのが実に切ない。今回の海水浴も盆休み前で業務が忙しい時期なのだと父親と祖父はあまり良い顔をしなかった…その他色々と中止を求められた気がするのだが母親と話が盛り上がって憶えていない。
「……。私が塗って差し上げるのはどうでしょう!?」
 はっと我に返り新しいアイデアは最高だと思ったものの、省吾が日焼け止めを濡らせてくれる図が想像がつかない。肌に触れてはくれるものの…自分が省吾の身体に触れるのを想像して更に天音の顔が真っ赤に染まる。湯気が出ているのではないかと思える程に頬が熱い。ふにゃふにゃとした自分の肌とは異なる引き締まった身体は、きっととても素敵な手触りなのだろう。全身に触りたい気がするのにそれはとても恥ずかしい。それに、どちらかと言えば省吾に抱き着くよりも抱き締めて…、
「うにゃああああああああああああああああはしたないですはしたないですはしたないですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅー!」
 両手を頬に当てて遂に居間の床でころころと転がりだす天音に、テーブルの上でことんと日焼け止めの瓶が倒れた。

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