2022余所自作99『セックスは駄目だけど』

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「天音さん?状況判っているかな?」
「あの…他の場所でお願いするよりはよいと思うのですが……」
 職場や喫茶店でお願いされるよりは確かにマシだが逆に整い過ぎている状況に省吾は天井を仰ぐ。女の子の一人暮らしの部屋で乳を揉め…しかも相手は妙に懐いてきている敏感巨乳美人、どう考えても据え膳過ぎて逆に怖くなる。
「二十分だけだよ」
 ここでだらだらと時間工作をしても恨まれるばかりだと溜息を吐き出し、省吾は居間へと引き返しながらネクタイを緩めた。掴まっていた手を解いて後ろをついてくる彼女の頬が妙に恥ずかしげで、それは大胆なお願いをした子とは同一人物とは思えない程であり、今からいけない事を教える様な後ろ暗さと同時に堪らなく嗜虐心を煽り立ててくる。
 廊下から居間への硝子戸を開き、省吾は扉の脇にある照明のスイッチを絞る。明るかった居間の豪勢なシャンデリアが薄暗く陰影を浮かび上がらせる程度の光量に落ち、何処か淫靡な印象に変わった居間のソファに省吾は深く腰を下ろした。
 さあ、チキンレースの始まりだ。
「天音さん、おいで」
 社員旅行の露天風呂と同じ体勢をとった省吾に、こくんと彼女が頷いた。

 白いワンピース姿ではしたなく腿の上に跨がった彼女の腰を片腕で支え、省吾はそっと彼女の乳房を指先で撫で回す。
「ぁ……っ」
 微かに零れる甘く蕩ける蜂蜜声がいやらしい。
「二十分なら平気?」
「はぃ……?」
 たった一回乳房を指先で撫でただけで既にうっとりとした淫らな、それでいて羞恥に泣き出しそうな顔をした彼女が首を傾げる。
「濡れても自宅なら問題ないね。それとも二十分程度なら、濡れないかな」
 出来れば辱める言葉に怒って欲しいのだが、彼女はぽおっと頬を染めて困った様に視線を逸らし、ほんの少しだけ指先でシャツの肩口を抓るだけだった。
「伊能さんは、本当に…いじわるです」
「……。じゃあ、あれからどう困っていたか、教えてごらん」
 対処法として聞いておきたい問いに、彼女の身体が腿の上でぶるっと震えた。半泣きを堪える様な彼女に、ゆっくりと乳房に指を食い込ませたぷんと揺らすと豊か過ぎる乳房が目の前で重々しく上下に弾んだ。湯の中の浮力がない状態は彼女の白い乳房を重力が虐げている様にすら思え、省吾は下の裾野から掬い上げながらゆっくりと指で乳房を揉みほぐす。
 んあ……っと無防備に甘く囀る彼女の腰が腿の上で柔らかに弾む。露出の高いワンピースだと思っていたが、彼女はブラジャーを着けてはいなかった。部屋着とはそう言うものなのか判らない省吾は、涙目になっている彼女の乳輪の辺りを指で?く…あくまでも乳首に触れずにいる男に、びくびくと身体を震わせながらまだ恋人のいない人が濡れた瞳を向けてはもどかしげに逸らす仕草を繰り返す。
「ずっと…、ずっと…伊能さんが触ってくださってから…むずむずして……だめなんです……」とても美しい血統書付きの子猫…それも初めて発情期を迎えた位の甘え上手な子猫が人間の飼い主をお相手をしてくれる牡だと思い込んでいる様な、もどかしげに全身で擦りついてくるみたいなとろりと絡み付いてくる声が悩ましい。「少しこすれただけで…伊能さんを思い出してしまうんです……ぁ…ん……いやらしく……さわって……ほしいの……ぃや…っ、はずかし…ぃ……」
 刷り込み効果ではなく完全に猥褻行為。いや自分は大した事はしていないと内心弁解しながら、省吾は白い布の上からそっと彼女の乳首を?く。んは……ぁ…っ!と上擦った鳴き声が可憐な唇を割り、仰け反る華奢な身体に省吾の腕に雨に濡れた髪が触れる。
「天音さん。今日はなしにしてしっかり風呂に入ろうか」
「いっしょにですか?」
「却下」
 親切心をすっぱり無視する恥ずかしげな問いに、省吾は思わず彼女の額を指で弾く。んもーと少し拗ねた声をあげた彼女が、不意にふふふっとこそばゆそうに微笑んだ。
「伊能さん」
「はい」
「伊能さん」
「はい」
 何か言いたい事があるのかと待つ省吾に、彼女が幸せそうに額を弾いたままの男の指に瞳を閉じて額をそっと当ててくる。
「ないしょ、です」
「?」
 その声音がとても甘く穏やか過ぎて、省吾には何を言いたいのかが判らない。
「……。じゃ、そう言う事で?」
 身体を離そうとした省吾に、彼女がまた頬を膨らませた。
「弄ってくださる時間以外はロスタイムです」
「純粋な滞在時間」
「そこまで仰るなら……、疼かなくなるように…かわいがってください」
 恥ずかしげに、だが拗ねた様に、ワンピースの肩をそっと下ろそうとする彼女に、その手をそっと省吾は止めた。勇気を出した行為を止められ少し泣き出しそうな彼女に、省吾は腰を押さえている腕を小さな頭の後ろに回し少し引き寄せる。豊か過ぎる乳房が邪魔して届きにくい額に軽く唇を当て、離されても顔を真っ赤にしてぽかんとしている彼女に、省吾は少し顔を逸らしてから意地悪く笑ってみた。
「脱がすのは男の仕事だから、やるんじゃありません」
 顔を真っ赤に染めたままこくんと小さく頷いた彼女が腰を抜かした様に脱力しているのが判り、再び腰を抱きながらそっとワンピースの肩を落としていく省吾に、小動物みたいな速い鼓動が伝わってくる。小さな袖とも呼べない飾りのフリルがついているだけの肩の布を指で掬い、そっと落としていくと彼女のワンピースがあっけなく緩んでいく。片方の肩から布が落ちただけで小刻みに震える彼女の唇から甘く濡れた吐息が零れ、もう一方の肩に指をかけた瞬間、かくんと身体が崩れかける。露天風呂で既に全裸を晒している彼女の初々しい羞恥の姿に、股間に嫌と言う程血液が集中していくのが判る。
 はぁっと甘い、喘ぎ声に近い吐息が繰り返し零れ、目の前の白い布の頂は痛々しい位に尖っているのが見てとれた。あの一晩だけにしておかないと偽彼氏としての一線を越えていると考えながら、彼女の疼ききった声を耳にしていると頭の芯がぼうっと茹だっていくのが判る…好み過ぎる可憐な蜂蜜声が、淫らな蕩けた艶を帯びもっともっとと強請る様に甘えて絡み付いてくる。疼きをどうにかして欲しいのならば最後までしてやるのが男だろう。湯の中で屹立に触れた手の甲、挟み込んでずっと擦り立てていた尻肉、向き合った腹部と腹部の間で挟み続けていた刺激、ねっとりと絡み付く夥しい愛液。ただのお知り合いとしては完全に一線は越えている。
 もう一方の肩から布が落ち、豊か過ぎる乳房をさして隠し切れてはいなかったワンピースは一気に滑り落ちそうになって縁のフリルが乳首に引っ掛かる淫らな姿に変わった。
「天音さん」
「は……、は…ぃ……」
「噛んでいいかな」
「――っ!」
 堪えきれない様な可愛らしい呻き声をあげる彼女に少し笑いながら、省吾は布越しにそっと舌を乳首に這わせる。透けはしないが硬くしこった乳首の形を浮かび上がらせる生地はとても滑らかで、舌先にはっきりと彼女の乳首の存在が、豊か過ぎる乳房と比べてささやかな可愛らしい小豆大の突起が伝わってきた。舌で押すとくにっと倒され、舌が弧を描くとそれに払われ捏ねられるそれを、軽く唇で挟むだけで、彼女の腰がかくんと揺れる。胸の頂に引っかかっているだけの状態で次の瞬間にでも脱げてしまいそうなワンピースはわざと唾液で湿らせた布地が更に貼り付き、美味しそうな柔らかな鴇色が生肌で見るよりも卑猥に色を浮かび上がらせていた。不感症疑惑などとんでもない、とても敏感な乳首は省吾の唇で軽く挟んで左右に軽く擦るだけで彼女の甘い喘ぎ声を引き出し、腰を抱かれた身体がひくひくと仰け反り震える度に豊かな乳房がぷるんぷるんと卑猥に弾む。
「いのぅ…さん……、ぁ……んっ…すご……、ぁぁ……んっ」
 乳房しか弄っていないのに濡れ切った声で囀る彼女の声は情事の最中としか思えない程頼りなく男に身を委ね切っているものだった。片方の乳首をじっくりと舐りながらもう一方の手で乳房を掴み…そう、掴む。そっと柔らかに包むのではなく男の手を大きく開き指でバスケットボールを持ち上げようとするかの様に指と手全体で掴むと、彼女の声が甘く引き攣ったものに変わる。少しは痛い筈だが、その喘ぎはいやらしい悦びを潜ませている。触れるか触れないかの愛撫も好きだがこうして掴まれるのも彼女は好きだ。ほんのりと目尻を欲情の朱に染まらせながら恍惚とした瞳で自分の乳房に痛みを与える手を見つめてくる。今と同じ様に。伊能さんいのうさんと何度も上擦った蕩けきった甘い声で名前を呼び続ける彼女の乳房を中心に、熱を持て余したように細い身体がくねりふわりふわりと淫らな花の匂いが身体の周囲に纏わりつく。雨に濡れた身体は風邪を引かせないように出来るだけ早く温かな湯で入浴させたいのに、牝のとても良い匂いを漂わせる彼女の身体は湯の様に熱い、特に、腿に跨った華奢な脚の付け根の辺りが。
 まるで舟を漕いでいるみたいに揺れる熱い身体がうっすらと汗ばみ、白いワンピースが全体的に柔肌に貼り付くと薄桃色に上気した身体に薄布が纏わりついているだけの状態に変わっていく。元から乳房に貼り付く形の卑猥な胸だけでなく、細いウエストやまろやかな腰も布が密着し裸身よりも淫猥な姿が省吾の上でくねり続ける。乳房だけでこうも良い反応を示す身体を思うままに女にしたい衝動に駆られスラックスの中の猛りきった肉槍から背筋を通して脳髄までどくりどくりと牡の欲望がうねる。
 押せばどうにか出来てしまう気もしなくもない。
 汗ばんだ愛らしい顔の濡れ切った唇が何度も震え、そして『お願い』と微かに動く。自制心を挫いてくる極上の甘い蜂蜜声に、省吾が彼女の乳首を頼りなく包み貼り付いている布を歯で噛み、引き下ろそうとした瞬間。
 腕時計のアラームが鳴った。
「……。――はい終了ー」
 彼女の腰を支えている腕は一応そのままに上半身を剥がして無粋に鳴り続けるアラームを止める省吾に、何があったのか判らない様子でぽかんと呆けていた彼女が、数秒かけて情けない顔に変わる。
「そんなのなしですー!」

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