『誘惑〜Induction〜改訂版 STAGE-6』

表TOP 裏TOP 裏NOV BBS 5<6>7

 忘れないといけない。
 手を伸ばしてはいけない。
 見上げてはいけない。
 耳を傾けてはいけない。
 感じてはいけない。
 罪悪感と共にある胸の奥を焦がすもの。
 目を眩ませる、冬の一等星の様な人。

 何故思うままに動けないのだろう。
 ベッドの中で一人、溢れる涙を拭う事も出来ないまま瑞穂は嗚咽を堪える。万年筆を隠すつもりもなければ、ネクタイを返さないつもりもない、ましてや男女の秘め事を覗き見しようなどとは思えない…だがそれなのに医師に咎められてしまう。罪は犯したくない。だが結果を考えれば、確かに咎められても仕方のない事をしてしまっている自分に少女は戸惑い恥じていた。
 明け方近くまでの医師による罰の後、病室に戻された瑞穂は熱を出した。たかが三十七℃台前半ではあるがまだ事故の精密検査を全て終えていない為もあってか、看護婦には心配をかけてしまったのもまた瑞穂を塞がせる。心配をかけず堅実に穏やかに過ごしてきた少女は入院して、医師と出会ってからの変調に馴染めず戸惑うばかりだった。泣いては更に熱が上がってしまうと判っているのに涙が止まらない。
 細く区切られた通路の奥に見える絡み付く身体と身体。男の頭を掻き抱くしなやかな腕、髪に絡む指、激しく重ね貪りあう唇、くびれたウエストを抱き寄せる逞しい腕、重なり合う腰と突き上げる動き、大人の男女の美しさと獣の様な激しさへの気後れと…そして胸を刺す痛み。医師の様な大人の男性ならば相手の女性がいて当然なのだと判ってはいても、それを目撃してしまった少女は凍り付いた様に動けなくなってしまった。医師の頬に触れる手、医師の背に回る腕、重なる唇、何度も何度も何度も体勢を変え速度を変え打ち付けあう下腹部、恍惚として性器を舐め咥える女性、その頭を揺さぶる医師。――対等な男女とはこういうものなのだと少女は衝撃を受ける。異性の手を取るダンスですら恥ずかしい少女には、原始的に男性と絡み付く女性は自分とは違う生き物にすら見えてしまっていた。憧れとは異なり、処女としての潔癖な否定とも異なるそれをどう表現すればいいのかが少女には判らない。
 ただただ、胸が痛かった。
 いつの間にか屋上で一人泣いていて、そして医師にそれを見咎められてしまった。いや、あれは見咎められたのだろうか?冷え切っていた身体を暖められたから微熱で済んだのかもしれない。だが、その方法は、相手を持つ男性としてあるまじき行為だった。それをさせてしまった自分がいけなかったのだろうか、最初確かに医師に節度を求める事が出来た気がした…だが……。
 医師の匂いを嗅いだだけで、あの手に触れられただけで、煙草の匂いのする唾液を舌伝いに注がれただけで、もう何も考えなくなってしまう。少女が落ちない様に支えてくれる逞しい腕、命令する低く張りのある声、漆黒の髪、やや険のある気難しそうな表情、瑞穂の視線が胸板の高さになる長身、何もかもに絡め取られてしまった様にその姿しか見られなくなる…異性を見つめる事など恥ずかしくて出来ず結局俯くしかない少女は全身が医師へと集中してしまう。だがそれは相手のいる異性にしてはならない浅ましい事だった。
 とめどなく溢れる涙に、今日は母親の見舞いの予定がなくてよかったと少女は思う。泣き腫らした目では親に心配をかけてしまう…このどうすればよいのか判らない状況を誰かに打ち明けて正しい解決法を乞いたい、だが誰に相談など出来ようか。自分の理不尽な後ろめたさと浅ましさを、医師の不実な大人の悪戯を。
 ベッドの上で縮込まる少女の発熱している身体の奥でどくんと狂おしく苦く甘く熱い固まりの様なものが脈を打ち、華奢な身体を更に小さくさせる。医師の身体。大きく筋張った手と長い指、広い肩と胸板、長い足と淫らな動きの舌、そして……。
 自分を圧し潰す様な息苦しさと胸の痛みにキツく閉じた瞼に、熱い涙が耳元へ流れ枕に滲みていく。
 医師の声が聞きたい。例えば飲み物は何か好きか、音楽は何を聴くのか、どの様な時間が好きなのかを話して欲しい。初めての異性への興味。だがそれは涙を流す程深刻で悲痛なものではない筈だと少女は考える。
「先生……」
 ゆっくりと乳房を撫でる手、乳首を捏ねる指先、首筋を優しくなぞる唇と舌、優しく丁寧でそれでいて何一つ逃れる事の出来ず支配される恐ろしい感覚は残酷でありながら堪らなく甘く、十七歳の少女の身も心も絡め取っていく。

「お熱は如何かしら?」
 不意にかけられた声に、泣き腫らした瞼に濡れタオルを乗せていた瑞穂は軽い微睡みから我に返る。高くなく低くなく綺麗なその声は余り聞き覚えがなく、戸惑いながら濡れタオルを取った少女の瞳にカーテンを直している看護婦の姿が映った。
「恐れ入ります、朝より低くなった気がします」
 見覚えのない看護婦は同性から見ても美しい女性で、一瞬戸惑った後瑞穂は軽く背を起こしているベッドの上で一礼する。入院直後に担当看護婦の紹介があったものの勤務シフトで数人が受け持つものらしく、彼女もその一人なのだろう。艶やかな笑みを浮かべる看護婦の小さな名札は至近距離にいない為読みとれず、担当看護婦の自己紹介もない為に瑞穂には彼女の氏名は判らない…検温や採血のカートも傍らにないのは熱を出した患者の様子を診に来てくれただけなのかもしれない。
 ふと、瑞穂は看護婦の視線がベッドサイドのテーブル状の畳んだネクタイに注がれているのに気付いて赤面する。寝間着で過ごす入院患者には当然ネクタイなど必要もなく、それは浴室で瑞穂を拘束したまま置き去った医師の忘れ物だった。入院患者としてちぐはぐな状態を不思議に思われたのであろう、と、瑞穂はちょうどすべき質問を思い出す。
「あの、クリーニングなのですが、寝間着など以外もお願い出来るのでしょうか?」
 この病院には各階毎のコインランドリーの他にクリーニングのサービスもあり、瑞穂は何とか自分で洗えなくもない下着はどうにか手洗いをしていたが、流石に片手では対処できない寝衣はクリーニングに出していた。
「指定の袋に入れて貰えれば後は業者が水洗いとドライクリーニングに分けて貰えるわ」
 医師の万年筆は返却前に何とか片手でも磨く事が出来たものの、アイロンなどもない環境の上、縛り付けていた為に皺が入り水などで少し濡れたネクタイをどうすればいいのか困っていた瑞穂は、口の端を優雅に上げる看護婦に少女は安堵する。
「他に何か困っている事はないかしら?」
「いいえ、特にありません」
「そう、お大事に」
「ありがとうございます」
 様子見だったのかそのまま瑞穂の側に寄る事もなく立ち去ろうとする看護婦に瑞穂は一礼するが、頭をあげたときには彼女の姿は病室にはなかった。看護婦と言うよりもモデルか芸能人の様な美しい顔立ちを思い出しふぅと息をついた瑞穂は、何故か連想する様に浮かんだ医師の顔に赤面し、そして顔を曇らせる。
 社会人である医師の周りには今の看護婦の様な大人の女性が大勢いるのだろう。皆落ち着いて立派で、まだ学生である自分など取るに足らない存在に過ぎないただの患者でしかない。いや医師として患者に治療を施す意味で不誠実であるとは思わない、ただ、自分が異性としての魅力に欠けている事実が胸に痛い。せめてあと五年早く産まれていれば社会人として少しは見栄えも良かったかもしれない…そう考えかけて瑞穂はまた赤面する。入院中は顔色などが判らなくなる化粧などするものではなく、結局自分が美しく装って医師の前に姿を現す事など出来ない上、医師には既に思う人がいるのである。
 浅ましい。
 胸に浮かんだ言葉に少女の瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。手にしていた濡れタオルで涙を拭っても次から次に溢れる涙に、瑞穂はベッドに埋もれてまた目元に濡れタオルを乗せて瞳を閉じる。
 今すぐにでもこの病院から逃げ出して医師に会えてしまう幸運から遠ざかりたい、だが事故の怪我人としてはこれ以上身勝手な行動で迷惑をかけるわけにはいかない。
 コンコンと軽く病室のドアをノックする音に瑞穂は慌てて濡れタオルで目元を拭った。
「はい」
「入室していいか?俺だ、山崎」
「――大作兄さん? どうぞ」
 隣に住む幼馴染みの声に瑞穂は慌てて濡れタオルをサイドテーブルの上に置いて自分の姿を確認する。乱れた姿になるつもりはなくても横になっていれば自然と着乱れている場合もある…本当の兄妹ならば意識しない事なのかもしれないが実際の兄妹でない以上はそれなりの配慮が必要になる、そんな間柄である。同じ高校の制服姿の山崎が紙袋を手に入室してきたのを瑞穂はどこか気恥ずかしく迎え入れた。
「事故の件聞いてなくて母さんが水臭いって怒ってる。これ見舞いの…もう花結構あるんだな」
「お気遣いなくとおば様に伝えて下さい。骨折はしているけれど大した事はないから」
「そうなのか?病室も相部屋じゃないし…ここ結構高い差額ベッドだろう」
「そうみたいです。事故の車の方が手配をされている様で……」
 贅沢な個室や高価な花束を物珍しげに見回す幼馴染みに、瑞穂は同じ様に部屋を見る。学生の身分の上に事故の被害者とは言っても幼子を庇う為に自ら飛び出した様な形の為、贅沢な待遇はどこか後ろ暗い。何度か看護婦には一般病室への移動を希望しているのだが、加害者側から厳しく指定されているらしく移動はままならない。
 オレンジ色を主にした可愛らしいフラワーアレンジメントを紙袋から無造作に取り出し、山崎は花の並ぶ棚に置いた。
「……。うん。地味に埋もれるな」
「そんな事ないです、おば様にありがとうございますとお伝え下さい」
 柔らかな色合いの花に隣に住む気さくな女性を思い出し顔を綻ばせる瑞穂に、不意に山崎が手を伸ばして額に手を当てる。
「少し熱があるか?」
「少しだけ」
 中学生になってからやはり男女の違いもあってなのか微妙に疎遠になっていてもそこは幼馴染みなのもあって、一度話が始まると自然に続く。そのまま瑞穂の顔を見た山崎が軽く首を傾げた。
「歩けるか?」
「はい」
「それなら一階の本屋にでも行くか。俺からの見舞い品持って来ていないから何か買おう」
「え?そんな、お気遣いなく」
 慌てて首を振る瑞穂の頭に手を乗せ子供時代と同じ仕草で山崎は髪をくしゃくしゃと撫でる。お菓子などでなく見舞いに本を選ぶ辺りが昔から本好きだった幼馴染みらしく思わず笑みが零れる瑞穂に、山崎が手を差し伸べた。
「あ…後で数学で少し教わっていいですか?」
「何だ入院中でも真面目だな。――本屋のついでに喫茶店で教えるから問題集も持って行こう」
「? ここでもいいですが」
「個室に篭もっていると気分も沈むぞ。たまには気分転換をしておけ」
 泣き腫らした顔がまだそのままだったのか慌てて顔に手を当てた瑞穂に、山崎の手がまた頭を撫でる。
「昔から泣き虫なんだよお前」

 少し前に発売していて気になっていた単行本の上下巻を見舞いに贈られた瑞穂は、病院一階のカフェテリアの窓際席で問題集を広げて山崎の説明を聞いていた。優等生だけあって判り易いその説明についつい難問に感じていた他の部分まで教わる間に、本のお礼に瑞穂が支払ったフレーバーティーが温くなっていく。昼食の時間もとうに過ぎているカフェテラスにはまばらに空席もあり、落ち着いた空気が流れていた。
「そう言えば母さんが『退院したら暫くウチに住め』って言ってた」
「そんな申し訳ないです」
「せめて試験中だけでも負担減らそうって話なら有り難く受け取ってけばいい気がするけどな。その手だと家事は時間かかるだろう?」
「そうですが……」
 自分の下着などを手洗いしている場合などに感じる不都合を思い出しながら首を振る瑞穂の額を、山崎の手にしたペンのキャップがこつんと叩く。
「余り気を使うな。お前婆ちゃんと母さんに気に入られてたからな『女の子が欲しかった』って俺は何回ボヤかれたか」
「そんな、大作兄さんはおば様達の自慢の息子さんですよ?」
「そうかね、いつも文句言われている気がするんだが」
 温くなった珈琲を啜る山崎にくすくすと笑った瑞穂は不意に首を巡らせ、そして動きが止まる。
 カフェテラスから望める晩秋の黄金色の中庭の渡り廊下に佇む人物と視線があった瞬間、瑞穂の胸の鼓動が跳ね上がった。相手まで十メートル以上はあるであろう、決して近くとは言えない距離の上、あまり表情に出ない医師は偶然こちらを見た瞬間だったかもしれない、だが瑞穂の胸は締め付けられた様に苦しくなる。中庭を一瞥しただけなのか、流される医師の目に唇が動きかけた。
「どうした?」
 怪訝そうな山崎の声に視線を戻した瑞穂は慌てて首を振る。
「庭に何か?」
「……。綺麗で……」
「まぁ…いい庭だな?」瑞穂の表情と自身の中庭の評価が噛み合わないのか、乙女心はよく判らないといった風情で首を傾げた山崎が静かに問題集を閉じた。「さてそろそろ病室に帰ろう。熱が上がると大変だ」
「あ……。ごめんなさい教えて貰って時間取ってしまって」
「いやいいよ。人に教えるといい復習になる」
 温いフレーバーティーを急いで飲み干す瑞穂は目の前の幼馴染みにお礼を言いつつも、意識は今見たばかりの医師に向いて仕方がなかった。昨夜は遅くまで病院にいた医師の仕事はどうだったのだろうか、無理はしていないのか、睡眠時間は満足にとれたのか、食事はしたのか…確かめるのも烏滸がましくだが聞きたい心配事が胸から溢れそうになる。
 病室まで送ってくれると言う山崎を中央玄関で送り、その姿が見えなくなるまで見送った瑞穂は最後に手を振った姿勢のまま溜息をつく。奇妙で不慣れな後ろめたさはあまり憶えのないものだった。と、ネグリジェ姿で中央玄関まで出てくる入院患者が珍しいのか幾人かの視線が自分に向けられているのに気付き、瑞穂は赤面して踵を返した。
 まだ人の多い外来受付を避け検査室の並ぶ通路に入った瑞穂は人影の少なさに安堵する。以前から人混みはあまり得意ではなかったが、何故だろう今は大勢の中にいる事がどこか怖い。周囲の人々は疚しい所はなく少女の疚しさを咎められるまではいかなくとも、過ちを見透かされてしまっている気がして顔を上げるのが辛くなる。
 俯きがちなまま歩いていた瑞穂はエレベータに乗り、階数のボタンを押しかけてしばし迷う。見舞いに来てくれた幼なじみがバス停へと向かうのを見送るのならば、母親の時と同じ旧棟屋上でいいのだが、屋上の記憶は全て医師に繋がり少女を躊躇わせる。先刻見た姿は白衣であり午後の外来で屋上に訪れる時間はないのかもしれない、いやそもそも忙しい医師と偶然出会えてしまう方が奇跡的なのだろう。
 困惑と落胆に瞳を揺らせてから屋上のボタンを押した少女は胸に手を当てて俯く。直前に偶然か奇跡だと思いながら、もしかしてまた煙草を吸っている医師に会えるかもしれない、いや姿を遠くから見るだけでもいい…そんな事を考えてしまう自分が判らない。低く硬質な響きの声を思い出すだけで胸の奥がぎゅっと締め付けられて苦しくなる。思い人の居る男性といかがわしい行為をするはしたなさは論外だと判っているのに、何故心が乱れるのだろう。
 到着のチャイムが鳴りエレベータの扉が開いても即座に狭いホールへと出られず何度か深呼吸をしてから瑞穂は外へと出た。

 先刻中庭を見た時は予想出来なかった風の冷たさに瑞穂はショールごと自分の腕を抱きしめた。強風ではないものの晩秋らしい寒さは上腕の半ばまでのゆったりとした袖から先は剥き出しの腕を強張らせる。それでも屋上に干されていて冷たい風に揺れているシーツは、入院患者用でなく職員用なのだろうか、不意にどうでもよさげな事を考えながらそっと瑞穂は歩を進めた。
 この寒さでは誰も長居などしないであろうと安堵する一方で一抹の寂しさが過ぎり、瑞穂は自分の一喜一憂の目まぐるしさに呆れ笑みを漏らす。いつの間にか緊張していた身体を伸ばそうとするが寒さに侭ならず、きゅっと身を縮こまらせながら歩くその足取りはどこか軽い。
 病室から直接ここに来たのではなく中央玄関で既に姿が見えなくなるまで見送った幼馴染みの姿は、フェンスに辿り着いても通りに見つける事は出来ない。幼馴染みが三年生の大事な時期にこの寒い中風邪を引いてしまわないか不安になりバスを探す瑞穂は、不意に頭の横でフェンスを掴んだ手にびくりと強張る。
「この寒い中、何をしている?」
 この場所で一番聞きたかった声が至近距離から聞こえ、弱いものの冷たい風に当たっている顔が熱く火照るのを感じて少女は俯いた。
「ぉ……お見舞いの見送り、で……」
 寒さと風向きのせいなのか消えそうな声しか出せない瑞穂は医師に上腕を捕まれ強い力で引かれ、その顔を反射的に見上げた瞬間、混乱の中に含まれる喜びの部分が凍り付くのを感じた。
 怒っている。
「熱を出しているならば大人しく寝ている事が何故出来ない」
 不実な悪戯や優しい動きなどで一喜一憂する前に相手が医者だと忘れていた感覚に赤面するよりも、医師の突き放す様な硬質な声音と表情に瑞穂の膝が小刻みに震える。
 夜もここで泣いて熱を出した患者がまた冷たい風の中ふらふらしているのでは咎められて当然だった。自分は何をしているのだろうと反省するよりも、目の前の医師に嫌悪される苦しさと思う人の居る相手への行き場のないもどかしさと憤りと悲しさを抱えてしまう自分に少女は泣きそうになる。
「申し訳ありません、今すぐ戻ります」
 捕まれた腕の痛みさえ喜んでしまいそうな自分の愚かさに、深く頭を下げた瑞穂は逃げる様にエレベータホールへと向かう。――医師が呼び止めてくれないか、抱きしめてくれないか、触れてくれないか、そんな期待が一歩進む度に小さくなっていき少女の大きな瞳に涙が溜まっていく。何を期待しているのだろう。この異質な甘い期待は何なのだろう。
 新棟のエレベータホールまでたどり着いた瑞穂は、やや上がった呼吸を整えながら堪え切れず溢れる涙を拭う。せめて迷惑をかけないいい子でいたい、これ以上嫌われ疎まれたくない…医師だけではない、親も学業も山崎も入院して迷惑をかけ支障を生じさせているのに自分は何をしているのだろう。
 チャイムが鳴りエレベータの扉が開き、中に車椅子に乗った初老の男と看護婦が乗っているのを見て瑞穂は慌てて本の入った袋で顔を隠して乗り込む。
「――室生瑞穂さん、かね?」
「はい…? そうですが…申し訳ありません、何方でしょうか……?」
 階数ボタンを押して気まずさに俯く少女は不意にかけられた声に涙を拭ってから振り向き一礼をし、男の顔を見つめるが記憶になく小首を傾げる。
「これは失礼した。私は香取正蔵。事故の車に乗っていた者だ。私の運転手の不注意で迷惑をかけて大変申し訳ない…もしよろしければお招きしたいのだがよろしいかな?」

 泣き顔の理由を誤解させてしまったのかと慌てて首を振ったものの、有無を言わさぬ強引なやりとりで招待された瑞穂は、病室と言うよりホテルの一室の様な特別室を思わず見回してしまう。
 車椅子やストレッチャーの取り回しを考慮しているのか大理石張りの床に高い天井高、豪奢な応接セットと家具、そして病院らしからぬキングサイズのベッド。特別室とは言え市立病院の一室とは思えない贅沢な空間に違和感を覚えるが、反発よりも純粋な驚きの方が大きく、そして部屋の一角を占める大量の見舞いの花を見て瑞穂は慌てて男を見る。
「お見舞いのお花をありがとうございました」
「入院には私も慣れていなくてね。花の匂いは思いの外息苦しいものだと今更気づかされたが迷惑をかけてはいないかね?」
 ふるふると首を振り、瑞穂は部屋にいたもう一人の男性に給仕されたお茶を飲む。
 三十代だろうか上質なスーツを隙なく着こなした男性は香取からの紹介もなく、雰囲気的には家族でなく秘書か部下といった所だろうか、そう言えば事故の加害車両は議員のものだと事情聴取に訪れた警察官から聞いた事を瑞穂は思い出す。看護婦も去り見知らぬ男性二人だけの病室にやや緊張する瑞穂は紅茶だと思って飲んだものの味の違いにカップに視線を落とす。基本は紅茶なのだろうが何かで既に甘みがついている上に抽出が濃いのか苦みと癖が強く、変わったにおいがした。
「お気に召さなかったかな?」
「え……いいえ、初めて飲む種類なので」
 気まずさにくいっと残りを飲み干した瑞穂は口内に残る甘味と苦味にやや戸惑いながら笑顔を作る。健康茶や外国の変わった種類のものなのだろうか馴染みのない味よりも、濃厚で鼻の奥まで押し寄せる様な芳香が病室の大量の花もあって瑞穂に軽い眩暈を憶えさせた。
 熱の為なのか喉の渇きもあって二杯目の茶を飲みながら香取と話していると、徐々に身体が温まってきた気がする。入院中の家庭教師の手配の話などを断っている間にふっと押し寄せてきた睡魔に瑞穂は首を振った。
「どうかしましたかな」
「あ……、いいえ…あの……、私そろそろおいとまさせて……」
 昨夜からの睡眠不足なのかくらっと揺れる身体がソファの背凭れに沈む。上質なソファの柔らかさが心地よく、退出せねばと思う瑞穂の視界がぼんやりと滲み急激な睡魔に瞳が閉じる。緩やかになっていく思考で起きねばと思うものの身体はぴくりとも動かない。全身が滲んで溶けていく様な感覚の中で、自分の呼気と部屋に漂う茶の匂いがじわりじわりと甘く痺れた感覚が広がっていき、身体の芯で温かい何かがとくんと脈打ち指の先まで巡っていく。
 強い芳香のバスバブルを入れた湯船に浸かっている様な心地よさの中、甘い痺れが全身を巡り、瑞穂の意識は途切れた。

 柔らかに沈み込む身体。
 伸ばされる手足。
 閃光と音。
 胸元の動き。徐々に降りていく。
 肌に触れる空気。
 乳房を撫でられる感覚。
 ぬちゅりと鳴る音と乳首を包む滑る温かいもの。
 指と違うぺっとりと貼り付き捏ね回される感触。
 引っ張られる……吸われる感覚?
 乳房がゆっくりと撫で回される。
 先生?
 吸引の音と乳首のむず痒さと甘い痺れ。
 軋む音と揺れ。
 唇の感触と、流し込まれる液体。
 とろっとした甘くて少し苦い液体。
 噎せかえる様な茶と花の匂い。
 つく息と、また注がれる液体。
 「のみなさい」
 頭の中で響く声。
 乳房が捏ね回される。
 先生?
 とくんとくんと身体の芯が温まって、溢れていく。
 上げられる脚。
 腰から下ろされる下着。
 広げられる脚。
 閃光と音。
 身体の芯を舐められた様な刺激。
 甲高い、いやらしい声。
 蛭の様な動き。
 ねちょねちょと響く音。
 内腿を押し開かれる。
 じゅる。
 先生。
 敏感な部分に執拗に絡みつくぬめぬめしたもの。
 滲む汗。
 跳ねる腰。
 閃光と音。
 吸われる。
 音。
 話し声。
 舌打ち。
 浮遊感。
 煙草と消毒液の匂い。
 先生……?

 唇が重なる。頭を抱き込んで逃さない様な腕と、唇を甘く挟む唇。
 肺の奥へ流れ込んでいく煙草と消毒液の匂い。
 触るか触らないかの切な過ぎる感覚で唇を撫でる舌。
 はしたない声がどうしても零れてしまうとてもとても甘くて淫らな舌の動き。
 肩から落ちる布。背中に回る腕。
 くちょっと音をたてて唇を割る舌。
 とてもゆっくりと上唇の内側を舐め回す舌。
 至近距離からの、硬質な甘い声。
 歯を舐める舌……とても恥ずかしいのにうっとりとしてしまう、いやらしくて甘い舌の動き。
 くちょくちょと沸き立つ音。流し込まれる唾液。
 唾液を嚥下すると頭が撫でられた。
 背中に回っている腕が、下へと降りていく。
 背中から腰へ、腰から尻肉へ、そして脚を上げさせ……。
 じゅぷっと音を立てて、膣内に挿入される指。
 溢れる声を封じる唇。
 舌に絡みつく舌、深く重なる唇、舌先では判らなかった舌の大きさ。
 ぐちょっぐちょっと卑猥な音。
 始めから優しくない淫らな抽挿で愛液まみれの膣内を容赦なく掻き乱す指。
 腕の中で跳ねる身体。
 逞しい腕、広い胸板に密着して潰れる乳房。
 ずっと甘く痺れていた身体が一気に弾けそうになる恐怖。
 怖い。
 全身で弾ける電気の様な刺激。
 悲鳴を絡め取る舌。
 じゅぷっじゅぷっとせわしなく響く音、尻肉まで濡れている感触。
 指をきゅっと締め付けてしまう恥ずかしい膣の動きが激しさを増してしまう。
 頭の芯と腰の奥で弾ける火花。
 激しく抱き締める腕の苦しさすら気持ちよく、嬉しくて、でも恥ずかしくて溢れる涙。
 鳴き声で動く舌が口内で舌と絡み合う、淫らな摩擦ととろみ。
 糸が切れてしまう寸前の様な怖い予感。
 激しい抽挿を繰り返している指が、膣内で強引に曲げられた。

 柔らかなノイズの様な音が流れていた。
 酷く気怠く、だが雲の上にいる様な甘い浮遊感にぼんやりと瑞穂は瞳を開いた。いつの間にか外は雨が降り出したらしく暗くなった空から銀色の糸が降り注いでいる。折れた右腕の疼く痛みに、古傷などでなくても雨の日は痛むのだとゆっくりとした思考を巡らせた少女は、人の気配に驚いて振り向く。
「――先生……」
 全身が揺れる様な高鳴る鼓動と熱くなる頬を気にしながらベッドの上で身を起こしかけた瑞穂は、するりと落ちた布団の下は一糸纏わぬ裸と気付き慌てて左手で毛布を掻き抱いた。
 何故自分が全裸なのか、特別室で茶を飲んでから曖昧でよく判らない記憶に瑞穂は凍り付く。
「面倒な小娘だ」
 冷淡な声に瑞穂は震えながらそっと医師の顔を覗き見かけ、叱責されていると気付いて身を縮込まらせる。何があったのかは判らないが、医師の手を煩わせる事があったのであろう…しかしそんな状態の上この姿である理由を問う勇気は少女にはなかった。
 雨の音が微かに聞こえる病室に、早い鼓動が医師に聞こえてしまうのではないかと恥ずかしがる少女は、そっと医師を盗み見る。既に仕事を終えているのか、濃灰色に淡灰色のピンストライプのシャツに砂色のスラックスがとても落ち着いた色合いで似合っている…何故仕事後にこの病室にいるのかを聞きたいが、聞いて不快に思われる事が怖くて言葉に出来ない。
「右腕を出せ」
 医師の言葉におずおずと差し出したギプスの右腕に、医師が手慣れた動きでビニールを巻きテープで留めるそれは入浴時に看護婦に施される防水のカバーだった。手早い処理に素直に感心する瑞穂は自分の入浴準備を医師が行う意味を判断しきれずにいる。この前の様に医師が洗うのならばカバーはいらず一人で入浴する準備を整えて貰えたのか、それとも……。
「来い」
 短く言い左手から毛布を剥ぎ取る医師に、ベッドの上の裸身が露わになり瑞穂は身体を竦ませる。まだ夜には早い窓に白い裸身が映り、男の腕が細い腰を引き寄せた。悲鳴をあげない自分に驚きながら、少女は言葉を探そうと必死になるが何一つ形になる気配がしない。ベッドサイドのスリッパに足を通す事すらなくユニットバスへと医師に容易く抱き上げられ運ばれる少女は、下腹部の滑りに気付いて赤面する。何故医師は自分が服を纏ってない事に驚かなかったのか、愛撫の余韻を身体のそこかしこに感じるのははしたない夢の為だけなのか、相思相愛の相手がいる医師にこれ以上触れてはいけないと判っているのに、医師の医療行為の延長線だと言うのならば患者として甘えてもよいのではないかと考えてしまう。
 いつの間に持ち込まれたのかステンレスと樹脂製の背凭れ付きの浴室用椅子に座らされた瑞穂は、無造作に服を脱ぎ始めた医師に顔を伏せる。
「あ……あの、目隠し…は……」
「今更必要でもあるまい?」
 これでも医療行為の延長線と考えていいのだろうか、医師が服を脱ぐ音にどくんどくんと全身で脈を打ち床が揺れている錯覚に襲われる瑞穂の瞳が揺れる。ただ服が濡れるのが面倒なのかもしれない、性を意識して配慮する程大人の女性と認識されていないのかもしれない…祈る様に逃げ道を探しながら、だが瑞穂の意識が非常用の呼び出しブザーへと向けられる事はなかった。
「立て」
 床へ向けた視界に男性の素足が入り、少女の肩が小さく跳ねる。柔らかな明かりの下、生白く細い少女自身の脚と比べ日焼けとは違うが医師の足は健康的な肌色で骨格と筋肉は無駄がなく整っている…腕も胸板も逞しいと知っている、その力強さも、抗い難い言葉と動きも。――逃げ出さないといけない。肌を重ね合うのは医療行為の域を越えてしまう、患者が医師の裸を見る事はあってはいけない、しかも思い人のいる男性を。
 不意に瑞穂の顎を守崎の指が捉え、上げさせた。
「ぁ……っ」
 医師の顔へと視線を上げさせられる中、一瞬だけ目が捉えてしまった猛々しい男性器に少女は小さな悲鳴を漏らす。芸術作品でのそれをまじまじと見た事はないが、項垂れたそれらと異なり臍の辺りまで勢いよくそそり立つモノは少女の華奢な手首程もあり、そして引き締まり筋肉がよく判る医師の脚や腹筋よりも硬く凹凸を感じさせた。
 かっと熱くなる頬に視線を逸らす瑞穂はじわりと下腹部の溝を滑らせる愛液に泣きそうになる。ただ顎に指を添え促されているだけなのに、小刻みに震える全身が催眠術にかかった様に危なげに立ち上がってしまう。胸板までの視線の高さで見上げる彫刻を思わせる端正な顔立ちは酷く冷淡で、本当に医者が患者の看護をしているとしか思えないが、その腰の物の状態は少女の祈りを裏切る様に猛っていた…だが怯えながら、多少は女性として見られているのかと後ろめたい密かな安堵と怯えが甘く背筋を蕩かしていく。とくんと心臓が脈打つ度に膣奥から愛液が滴る感覚が腰をざわめかせ、意識しまいと思う程至近距離の医師の物に集中してしまう。
「先生……、なぜ……あの…服を……」
「俺も洗わせて貰う」
 非常に合理的なその返事に瑞穂は半ば呆然として医師を見上げた。子供と親が一緒に入浴するのは一応判るが、ヘルパーの介護やペットの入浴で洗う側も裸になる例は聞いた試しがない、いや世間知らずな自分が知らないだけで世間では一般的なのだろうか? 納得していいのかいけないのか判らず混乱する少女の顎を捉えている人差し指をそのままに、男の親指にそっと唇をなぞられて瑞穂は我に返る。
 舌を淫らに舐る医師の舌を連想させる優しげな動きに、薄く開いた唇から零れる吐息が熱く震え男の指先と唇を温かく湿らせていく。医師が接吻をすれば恐らく同じ位に甘く悩ましいものなのだろう、微かな唇の震えが男の指の愛撫に応える形になっていく気がしても止められず、長い睫毛を揺らす少女と医師の視線が絡み合う。
 男の指が唇を割って唇の内側を撫でた瞬間、酷く淫蕩な既視感に少女の膝が崩れかけ逞しい腕が抱き留める。密着する乳房と下腹部に恥じらうより先にぞくんぞくんと全身を巡る切ない疼きに瑞穂の唇から甘く蕩けた吐息が零れ、全身が男の腕の中に委ねられる。
 医師の声が聞きたいと思う反面、拒絶の言葉が怖くてこのままでいたいと願う少女の身体を抱き上げ、医師が椅子に腰を下ろし向き合う形で腿を跨がせた。屋上での体勢そのままではあるが今は互いに遮る物のない裸身の上、力の入らない少女の身体は男の身体に力なくもたれ掛かり、その愛液にぬかるむ粘膜の谷間が熱い幹に突き上げられる形になっている。
 浅く熱く乱れる吐息を漏らす少女の腰まで届く黒髪を掻き分けた医師が、壁にかけられたシャワーヘッドを手に取り、温かな湯をほんのりと火照る背中に湯を掛けた。椅子や温度調整などはいつの間に準備したのか、そもそも何故医師が瑞穂の部屋にいたのか判らないまま、瑞穂は無意識にひくんひくんと下腹部の粘膜を震わせて男の幹を淫らに撫で回していると気付かないまま惚けてしまう。どこで掻いたのか軽い汗を流すお湯の温かさと医師の肌の悩ましい心地よさに、肩に顔を埋める瑞穂の唇から甘い声が零れる。
 しばし互いの身体に熱めの湯がかけられた後、たっぷりとボディソープを絡めた手が瑞穂の乳房を包んだ。
「ぁ……」
 スポンジもタオルもなしで直接触れる手の感触に瑞穂は小さく喘ぐ。確かにボディソープがあるのだから洗っているのに間違いないが、男の手が直接乳房を揉みしだく行為は愛撫に余りにも近く、そして恐らく医師がこれから全身を洗うのだという淫猥な予感に少女の身体が震え、下腹部で粘膜と幹がぬるぬると擦れる。
 一度同じ場所を過ぎるのでなく執拗に力や揉み方撫で方を変え乳房を捏ね続ける医師に甘い声を零し続ける瑞穂の腰を支える手が前後に動く。ボディソープの花の芳香と愛液のにおいが暖まったユニットバス内に篭もり、顔を埋めている医師の肩の微かな汗が唇と舌先に触れた瑞穂はおずおずと、だがはしたない悦びに戸惑いながら微かな汗の味を確かめて恍惚としてしまう。異性として感じてはいけないと判っている筈なのに、医師に与えられるまま医療行為を越えた部分に溺れる自分を止められない。
「舌を出せ」
 乳首を捏ね回しながらの医師の言葉に、瑞穂は一瞬戸惑い、弱く首を振る。溺れてしまっても消えない罪悪感が時折思考の表層に浮かび上がり少女を拒ませた。
「瑞穂」
「ぁ……ぅっ」
 乳首を強く摘ままれ捏ね回されながら名前を呼ばれ、瑞穂の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。痛みで逆らえないのではなく、医師の声に逆らいきる事が出来ず思い人のいる男性に身を委ねる自分の非常識さが情けなく、相手に申し訳なく、だが何より医師を求めてしまう自分の気持ちが抑えられない。
 涙を零しつつ差し出した舌を医師の舌が舐め上げる。いつ唇を奪われるのだろうと高鳴る胸は絡み続けるだけの舌に肩透かしをくらいながら卑猥なその動きに蕩けていく。乳房から腹部、背中、腰へと塗り広げられるボディソープに身体が滑り、医師の腕の中で少女の華奢な身体がくねり続ける。向き合う姿勢で前後に揺さぶられる腰は窄まりからクリトリスまでを男の傘と幹のごつごつとした突き上げに擦られ、愛液のぬかるみの中、小振りな襞が巻き込まれ伸ばされる刺激が膣口を更にざわめかせる。
 勢いよく反り返る物は時折膣口に傘をめり込ませかけては逸らされ、その度瑞穂は怯えながら医師に貫かれる予感に喘ぐ。指を根本まで挿入される事はあっても当然まだ男女の交わりを体験してはいない少女は、手首を連想させる医師のものの太さに処女らしく怯えながらそれでいて医師に支配される交わりの想像に陶酔する。
「ぁ……っ、いゃ……そこは……」
 僅かに体勢を変えさせられ、頭上からシャワーが降り注ぐ中、医師を跨ぐ形で腰を浮かさせられた瑞穂は、膣口に傘をめり込ませかけたまま窄まりの皺を解す様な悩ましくこそばゆい動きを繰り返す指に声を漏らす。小刻みに震える膝が崩れれば、先端を膣口にめり込ませかけている医師の男性器を自ら迎え入れてしまう体勢に、熱いシャワーを浴びながら無我夢中で瑞穂は首を振る。
 ボディソープが中途半端に流された乳房を医師が舐り、そして強く吸った紅梅色の跡が上気した淡い桜色の肌に散り、男に乳首を舌で転がされる心地よさと甘噛みされるむず痒さに、華奢な身体が腰を中心に上下した。シャワーの湯が洗い流せずにいる下腹部の淫らなぬかるみの中、妖しいもどかしさに白い腰が揺れ動く。
「ゃ…そこは……、そこ……はぁ…っ……あらってはいやで……す……っ……ぁ…んっ……ゃあ……ん、せんせ……ぁんっ」
 懸命に止めようとする声音が甘く蕩けきった男の嗜虐心を煽るだけのものになっているのに瑞穂は気付けないまま腰をくねらせ続け、やがて崩れまいとする身体は無意識に男の頭を掻き抱いた。

Next 『STAGE-7』
改訂版1509041735

■御意見御感想御指摘等いただけますと助かります。■
評価=物語的>よかった/悪かった
   エロかった/エロくなかった
メッセージ=

表TOP 裏TOP 裏NOV BBS