『誘惑〜Induction〜改訂版 STAGE-14』

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 繰り返し繰り返し押し寄せる、奇妙な感覚。

 よく判らない女だ。
 その癖、判らない部分以外は何もかもが己の一部の様に判る…まるで牡と牝が溶けて融合する深海魚の様に指先まで伝わってくる、甘い痺れ。男は自分の発想に自嘲する。自然界に多い大きな雌と矮小な雄の構図と同じあの深海魚の対比は例えとしてないだろう、自分が依存すればこの少女はすぐさま潰されてしまうだろう。身も、心も。
 くちゃっくちゃっと唾液を絡ませる音が居間に籠もる中、男の指は先刻から執拗に少女のワンピースの上から乳首を避けて乳輪を捏ね回し続けていた。白い身体が熱い。
 リゾートホテルに連れて行く予定だったが、気を失っている小娘を抱えてのチェックインは流石に願い下げだった。夕食をどうするかの問題はあったが、食事に出てもいいし、一度落としておいて一人で買い物に行くのもいい。どうせまだ昼過ぎで夕方までは時間がある。そう、時間はある。ゆっくりと時間をかけて女を弄ぶのは面白いと判っているが、この奇妙な満足感は何だろう。
 何度も舌伝いに流し込んだ唾液を嚥下し、少女がはぁっと小さな甘い吐息を漏らす。晩秋の柔らかな日差しが差し込む中の、黒革のソファと絹糸の黒髪と、いやらしい悪戯に仄かに染まった抜ける様な白い肌。堪らなく清楚で、堪らなく甘く脆く恥ずかしがる素振りで嗜虐を煽る処女の小娘。風俗は一切縁がない男の頭に、この少女ならば相場はどれ位なのだろうと疑問が浮かぶ。リゾートホテル一泊と外出着二セットでも惜しくないと男が判断している時点で他と比較するのは無意味だと思考を放棄する。――放棄する寸前に掠める思考…この少女は他でも得られるのだろうか。
 ぞくりと、悍ましい感覚が背筋を走る。
「せん…せ……ぃ…っ」
 力を込めてしまったのか悲痛でいて甘くいやらしい少女の声に、男は気付けば抓っていた乳輪を指で弾く。あんと蕩けた顔で鳴く少女の額に口付ける。
 それ以外にもずっと面倒臭い事柄が頭の隅で燻り続けている。
 一人暮らしの男の家に連れ込まれている自覚がこの小娘にはあるのだろうか? 仕事のメールに感けている間は大人しく待つのはこの少女らしい。遠からず近からずまるで躾られた犬の様に待っていたその距離感が絶妙だった事に驚き、しかも正座までしていた姿に奇妙に戸惑ったが、悪印象はなかった。だが警戒心のなさが苛立たせる。男に性欲がないとでも考えているのだろうか。この腕の中で何度も繰り返し失神するまで達しておきながら、膣内に指を挿入されてクリトリスを捏ね回されて甘い声で鳴いておきながら、相手が男だと判らないのか。それとも処女も唇も奪わない無難な玩具だとでも認識しているのだろうか。
 ソファと男の身体の間で細い身体がくねる。手の中に収まりきらない豊かな乳房を包んでいるブラジャーは頼り無いレース素材…考えてみれば入院中の少女は殆ど就寝時間の為かブラジャーを着けてはいなかったと男は思い出す。冬物のワンピースとレースのブラジャーの上からでも判る硬くなった乳首と柔らかな乳房。豊かな乳房の頂を避けて柔らかく撫で回し続けていると、少女の瞳がとろんと潤んだものに変わり、身体から力が抜け落ちていく。
「ぁん……」
 堪らなく甘い鳴き声に男の腰骨がざわめく。ユニットバスで勃起したモノで擦り立てているのだから、男の欲望に全く晒されていないとは言わせない。それでも尚、男を舐めるのか。無防備に微笑むのか。
 ソファに横たわっている少女の脱力した身体を座り直した膝の上に向き合い跨ぐ形で座らせ、男は乱れたしなやかな黒髪を掻き上げた。腰まで届く癖のない細く豊かな髪が指の上で滑る。甘い花の匂い。くったりと男の肩に埋もれそうになるのを堪える少女の恥じらう顔は何とも初々しく、そして淫らで、男の嗜虐心を刺激する。
 ワンピースの背のホックを外し、ゆっくりとファスナーを下ろしていく微かな音が鳴り、じわりじわりと少女の服が撓んでいく。他のサイズと比べ胸が豊かな華奢な身体の、まず襟元から肩の辺りの布が緩み、僅かに顔を逸らし頬を染める少女の身体が男の腿の上で小刻みに震える。
「あ…あの……、しゃ…シャワーを……」
「どうせ朝に済ませているのだろう?」
 少女の病室は大部屋とは異なり個室にユニットバスがある為、基本的に消灯時間以外の入浴時間制限はない。それでも消灯時間中に何度も少女を洗ってはいるが、この少女自身が規則を破る事はまずないだろう。外出前にシャワーを浴びるのは当然だろうが、それが男との淫らな行為を前提とした艶めかしいものかは、判らない。
 黒髪の内側で意図して遅く下ろしていくファスナーの金具が一番下まで辿り着き、白い身体がびくっと震える。背けた顔は耳まで赤く、柔らかな素材のワンピースは全体的に弛む中、男へ向かい突き出す形の乳房の膨らみとその頂に布地が乗り引っかかる形になり強調していた。
 剥き出しになった背筋に男はそっと指先を這わせる。細い華奢な背中を一撫でするだけでびくりと反応する少女の腿の震えが男の腿に伝わってきた。
「瑞穂」
 男が小さく囁くだけで少女の身体がぴくっと震え、そして二度目の囁きで戸惑いがちに視線が動き、僅かな間の後、おずおずと少女は男へと舌を差し出してくる。小さな舌を絡め取ると甘く、くちょっと唾液が音を立てた。児戯に等しいが少女にとってはどれだけ恥ずかしい行為なのか、寄せられた顔の分だけ詰まった距離に、男の胸板に少女の乳房が重なり、柔らかな乳房の中で乳首の感触だけが硬い。
 舌を舐りながら男の指は少女の背中を這い回り、身動ぎする少女の肩からじわりじわりと布がずれワンピースの乱れは増していく。まるで子供の様な小さな骨格はどこか小動物を思わせる程脆く儚げで、男の腕の中に軽く収まってしまう…だが純粋に脆弱とは感じられない、堪らない嗜虐の欲望に男の片手が少女の腰を抱く。これが裸ならば切っ先で膣口を擦れてしまう距離。誰も咎める者の居ない場所で、無防備に舌を絡める少女の腰が熱い。
 だがこの華奢な身体で、この頼りない風情で、何一つ少女は男に求めてはいない。
 苛立たしい。乱暴に服を引き千切り屈辱的な体位で処女を奪い赤裸々な快楽を刻み込み孕ませれば少しは何かが残るのだろうか。どうでもいい。面倒臭い。それなのに、何故。
 明るい。障害物のない窓から差し込む晩秋の晴れの日差しは仄かに暖かい。無彩色に近い居間は季節をありのままに映し出す…煙る春、灼く夏、枯れる秋、吸い込む冬、あるがままの光。装飾も観葉植物もいらなかった。生活が世話をするのに向いていない上に愛でる意識がない。――その中で、髪が揺れる。
 腕の中の花の匂い。滑らかな温かい肌。耳を擽る小さな吐息。身体に感じる存在の重み。時折男を映す濡れた大きな瞳。
 無機質な世界が変わる。
 まるで、花が咲き綻んだかの様に。
 無彩色の世界の硝子の向こう側に、柔らかな光が差す。

 肩から落ち胸元に掛かっていたワンピースが、男と少女の舌と身体が僅かに離れた瞬間にするりと落ちた。
「ぁ……」
 落ちた布は肘で留められただけで上半身はブラジャーのみになった少女の唇から、甘い戸惑いの声が漏れる。繊細なデザインのブラジャーは総レースでカップもない為、鴇色の乳輪も乳首も全く隠せてはおらず、華奢な純白のレースの下の初々しいそれらも、それ以上に色濃く残されている男の付けた複数の唇の後も探すまでもなく男の目に入った。
 反射的に乳房を片手で隠そうとする少女の手を絡め取り、腿が乗っているだけの不安定な腰を引き寄せ、白い小振りな尻肉の奥底が既にねっとりと熱く濡れている事に気付き口の端を歪める。
「焦る必要はない。キスとセックスだけはせずにおく」
 びくりと震える身体の僅かな強張りが男の腕の中で諦めたかの様に抜けていく。
 所詮、それか。不手際で処女を失わないで済む都合のいい大人の玩具扱いへの失望と同時に違和感が混ざる。出来うる限り丁寧に優しく扱いたい感覚と力尽くで犯してしまいたい激しい衝動がうねり、息が熱を帯びた。
 胸を隠そうとしていた手を捕らえている腕を引き、少女の手を自分の襟元に当てさせる。
「お前の手で脱がせろ」
「ぇ……?」
 不思議そうに小首を傾げた後、少女の頬が真っ赤に染まる。はっきりと身体が後退ろうとするのを腰を抱える手だけで押さえ込み、男は近い距離にある恥じらう顔を指でなぞった。男の身体に触れる事すら恥じらう娘にとっては服を脱がせるなど言語道断なのだろう、だからこそ敢えてやらせたい悪戯程度でその身体は重罪を犯すかの様に小刻みに震えている。
 震える指が釦に触れ、少女が頼りない肩での深呼吸を何度も繰り返す。誰かに見咎められる訳でもない私室で、たかがシャツのボタンを外すだけで緊張し恥じらう少女の指の動きはかなり覚束ない。屋上で口元から煙草を取る真似はごく自然に出来たものをと、そのアンバランスさに男は口の端を歪める。
 細い指が男の胸元で動く。酷く遅々とした動きは男を焦らすかの様なものであるが、男の視線に気付いていない少女の顔をまじまじと見るいい機会だった。傷も黒子もない滑らかな玉の膚に、顔が小さな為により目立つ黒目がちな大きな瞳。穏やかな晩秋の日射しの中で見る瞳は綺麗な褐色に軽く翠が差している。睫毛は長いが産毛は殆ど目立たない。淡い桜色に染まった肌の輪郭に浮かぶ金色がかった微かな産毛はどこか鳥の雛を連想させる。整った鼻梁も小さな唇も、硝子細工の様に繊細で脆く見える。
 不意に、唇にむしゃぶりつきたい衝動が込み上げてきて男は僅かに目を細めた。まだ男も碌に知らない小娘に欲情する自分が男には可笑しい。どれ程の覚悟があって今ここにいるのか、膣口に切っ先を押し当てて問い詰めてやりたい…怯えるか泣き出すか抗うか、物欲しげな牝の顔を見せるのか。いっそ犯してしまえばいいのかもしれない。不愉快な爺や餓鬼の手の届かない所に閉じ込めて接吻の仕方から全てを教え込んでしまえばいい。特別室の男とあの光景が脳裏を過り、男は眉間に皺を寄せる。
 どうせ時間はあるのだと少女に男の服を全て脱がせるのも面白いが、不意に燻った不快なもどかしさに男は少女のワンピースの裾を手繰り上げ、その内側へと手を滑り込ませる。腿を跨がせている体勢に、手は総レースの下着と揃いのガーターとガーターベルトに包まれている内腿に辿り着く。ぴくりと目の前で少女が震え、戸惑った様に釦を外しかけていた指が凍り付く。
「続けろ」
 男の声に困惑しながら再び指を動かす少女の顔が、男がゆっくりと内腿を撫で上げる度に切なげに揺れる。軽い。華奢でしなやかな少女の太腿は脂がのった熟れた女のものとは程遠いが、細いなりの筋肉と脂肪が頼り無くも存在し、骨張った硬い印象は与えない。だが細い。腿にかかる加重も全く苦にならない…どちらかと言えば物足りない位かもしれない。成熟には程遠い、まだ成長期の途中の様でいて、身体は十分に男を受け入れられる筈だった。
 指をするりと滑らせるガーターの上から指で撫で回す前からワンピースの内側は牝の潤みで微かに蒸れている。甘く息を詰まらせる少女が恥ずかしげに顔を逸らすのを、軽く顎を動かすだけで促し、舌を差し出させ、絡ませる。ねちょりと重なる舌は小さく、甘い。こうも舌を舐らせる女が居ただろうか…噛む事は好むが、そう考えて男は他の女と比較しようとして余り憶えていないのに気付く。名前も身体も弱点も好む体位も憶えてはいるが熱のないただの記憶であり、適当なものだった。女を抱くのはそう言うものなのだろう。
 ほんの数ミリ先に少女の唇がある。もう密かに何度も奪っている唇は……。
 あの老害も、貪ったのだろうか。
 考えても無駄な事柄だと判っていても時折急激に膨れ上がる不快な感覚に、男は少女の腰を更に引き寄せる。軽い。軽過ぎる。抵抗してもさほど力が出せないであろうたおやかな身体に、男は眩暈に似たものを覚え、衝動的に少女の身体を床に組み伏した。

 フローリング上で白いものが揺れる。細い脚。白いガーターベルトを纏った薄桃色に染まった内腿に幾つもの唇の痕。そして、目の前のいやらしく濡れきった鴇色の粘膜と漆黒の柔毛。愛液を吸い重く濡れた下着をするりと抜き取り大胆に広げさせた脚に、少女が真っ赤に染まりがくがくと震えていた。ワンピースも脱がさない忙しない愛撫だが、たかが中指一本の抽挿でもう少女は蕩けきっている。おかしな薬は盛っていない。素面で少女は男の玩具にされている。
「瑞穂」
 下着を奪った下腹部は既に濡れきっていた。小振りな襞もクリトリスも全てが男の前に剥き出しになっている。ゆっくりと挿入し、ただそれだけで簡単に達してしまった少女を言葉で辱め続けながら、指を曲げ、掻き混ぜ、ねっとりと愛液でシャツの袖口まで濡らし軽くふやけるまで、抽挿を続け膣口は僅かに綻んでいる。誰も邪魔の入らない時間は堪らなく愉快だった。
 床の上に仰向けに転がされ羞恥と快楽に耳まで染まり呼吸を乱している少女が男の声にぴくりと震える。
「せんせ……ぃ」甘く溶けた声が堪らなく耳に心地良い。まだ処女の分際で、男に膝を割られ脚の間に身を割り込まれ恥じらいながら、この女が自分を認識している事が面白い。「ゃ…、はずかし……ぃ…で……ゃ…ぁあっ…やぁ……っ」
 顔を寄せると牝のにおいが鼻腔を埋め、肺の奥に染み込んでいく。流石に愛液まで甘い花の匂いはしないが逆に少女の牝臭はどちらかと言えば薄い…だが愛液の量は多く、濃い。全身を震わせ身悶え啜り泣いているのを感じながら、舌を差し出して鴇色の粘膜をねっとりと覆う夥しい愛液を掻き混ぜる。くちゃくちゃとあからさまな音が立ち、男の両脇で腿が跳ね、そして腰が蠢く。コントラストの強い白い肌と漆黒の細い柔毛の下で、瑞々しい果実が葛を絡ませているかの様な獣の食欲を煽る光景が慎ましく、だが淫らがましく艶やかに男の目を愉しませる。ぬろりと舌先を動かし粘膜の谷間の上端にある小粒な突起を捏ね回そうとすると、濃い愛液が滑らせ自然とクリトリスの周りを舌で撫でる形になった。薄い、体液の味。たった数日前の濡れは水に近かったと、別の生き物の様にびくびくと跳ねる腰を押さえながら男は口の端を歪める。
 何故、消えない。
 何かの拍子に脳裏を過るあの特別室の光景に男の奥歯が鳴る。面白くもない記憶がこびりつき消えない不愉快さに、腹腔の底で泥に似た物が煮え滾る。抱き慣れた女が夫と幸せそうに歩く姿を見ても、理解不能な執着の揚句に泣き叫ばれても、恐らくは気まずくなる筈の幾つもの光景を意図して思い浮かべても何も感じない…それなのに思い返そうともしないで何度も浮かび、こうも不快な記憶は何なのだろうか。
 ねっとりと溢れかえっている愛液を下品な音をわざと立てさせて啜る男に、少女が鳴く。
 あの後、散々洗った。掻き出し、膣内まで流し、これ以上洗いたいならば医療設備が必要なレベルまで清めてから弄んだ。毛穴一つまで老害の唾液も汗も付着していない様に、もうこの身体には自分のものしか残らない様に。実際付着物など残ってはいないだろう。それなのに、汚れを思い出す。胸糞悪い。何なのだろう、この現象は。
 濡れやすい少女のこの愛液は自分の愛撫によるものだと思えば汚れなど感じる必要はない。じゅるじゅると啜る唇の内側で小さな襞が泳ぐのを、舌で捏ね回し、軽く、痛みを憶えさせる程度に噛む。この少女の愛液を嚥下するのに躊躇いはない。鼻先に、顎に、ねっとりと少女の快感の証が絡み付く。濡れ易過ぎるのも困りものないやらしい潤滑液が減った所でクリトリスに吸い付くと、少女が一段と甘く鳴いた。明るい、晩秋の穏やかな日差しの中、たおやかな白い存在がくねり身悶える。ほぼ無彩色の部屋にまるで花を散らした様だ。煙草と珈琲のにおい位しか存在しなかった居間に甘い匂いが漂う。白い肌に薄く滲む汗。高く澄んだ、甘い鳴き声。
 何なのだろう、このもどかしさと苛立ちと胸の苦しさは。
 舌で膣口を穿ちつつ、男は少女の白い腰に爪を立てる。抓りたい衝動に繊細な白いレースのブラジャーのカップの上から乳首を捏ね回し、そして指で強く潰し、悲痛な、だが被虐の淫らな甘さを帯びた悲鳴を聞いた後は優しく撫でた。このたった数日指で解し続けてきただけの牝肉は抉る舌を指に見立てる様にぐびぐびと締め付けてくる。十分に挿入可能な状態に蕩けた女に、男の下腹部のモノは既に十分漲っており、今この瞬間にでも貫いてしまっても何の問題もなかった。
「せんせい……」
 甘い声に、不意に男の動きが止まる。
 馬鹿らしい程に凪いだ気持ちと、苦しい程のもどかしさが急速に膨らみ、無性にこの白い身体を抱き締めたくなり、男は戸惑う。何なのだろう、落ち着きなく感情が変化し雑多なものが精神を荒らす。不快…そうこの理解不能な感覚は不快だった。精神が荒れる。そう、荒れる。何もない明瞭な視界がこの少女が居るだけで目まぐるしく変化して息が詰まる。愚図な人間を見下していた自分が実は世界で一番愚かに思え、男は舌打ちをした。
 反射的に男の身体が少女を抱き締める。
「!」
 腕の中で華奢な身体がびくりと揺れるのも構わず男の腕が力任せに締め上げる様に抱き締めると、少女の身体が軋む感覚がした。細い。細いが、胸は柔らかく豊かで男の胸板との間で潰れ実にいやらしい緩衝材の様に撓む。いつ抱いても不安になる程細く頼りない。黒髪は豊かだが腕も首も腰も折れそうな儚い感触で、男の理性は力を抜く必要を訴えているが、身体は一切それに従わず、逆に少女を抱き締める腕の力を更に込めようとする。温かい。空調で快適に保たれている居間で、腕の中の温もりは男に春を連想させる…麗らかな満身に浴びる陽光の恵みとは異なる、密やかに独占する木陰の微風や、指先で触れる温み始めた清流の心地良さにそれは似ている。だが静穏な印象のそれらを思い浮かべながら男の腹腔の奥は煮え滾る。湯の沸騰とは異なる重油の様な重い液体が腹の底で煮えて男の身を焦がす。
「瑞穂」
 短く名を呼ぶ男に応える様に少女が長い睫毛を伏せて僅かに舌を差し出し、ぬるりと舌同士が絡み付く。締め付けられ呼吸をするのも苦しいであろう少女の微かな甘く鼻にかかった鳴き声が男のモノを滾らせる。
 少女の腰を跨ぎ細いウエストと背中を抱き締め、床の上で覆い被さりながら舌と舌を絡める。腕の中の華奢な身体の動悸が伝わってくる…まるで小動物の様な脆弱な速い鼓動。床に広がるしなやかな長い黒髪。ねちょねちょと舌を探り擦り付けてはやや強く跳ね上げ、舌先で舌先に弧を描く。微かな鳴き声が至近距離で漏れ、甘く悩ましい鼻にかかった吐息が愛液塗れの唇を湿らせる。
 細い腰の上に跨がったまま上半身を起こし、少女が半端にしか釦を外せずに終わったシャツを荒々しく脱ぎ捨てる男に、まるで夢の中の様に頬を染めてぼんやりとしていた少女が慌てて身体を縮込まらせ顔を逸らす。
「醜悪か?」
「――え……?」
「俺の姿はそれ程醜悪か」
「ちが……っ」男の問いに少女の身体がびくりと震え、僅かに遅れて問い返す様な、強く訴えかける様な瞳が男に向けられ、そして臆したのか伏せられる。「……。違い、ます……」
 今にも泣き出しそうな細く震えた小さな声が微かに届き、少女の瞳から涙が零れた。
 男とて自らの姿が一般から激しく逸脱してはいないと判っており、どちらかと言えば貪婪な女が喜ぶ類の要素には恵まれているらしいと知っている。男を知らないこの娘は羞恥心が強くたかが上半身裸なだけの異性ですら直視出来ないのだろう。だが触れるのも見るのも逃れ続けるその在り方が苛立たしく、同時に酷く嗜虐心を煽り立てる。
「何が違う」
「綺麗だと…思います」
「碌に見もしないでか」
 男の淡々とした詰問に少女の瞳からぽろぽろと涙が零れていく。何がそこまで恥ずかしいのか判らないまま、少女を見下ろす男の方こそ感嘆の息をつきそうになる光景だった。骨格全体が小さく華奢な姿態は抜ける様に白く、高級ブランドの下着に見劣りしないたわわな乳房の曲線も純白のレースから垣間見える鴇色の乳首も乳輪も初々しくだが堪らなく淫らがましい。羞恥に震える繊細な美貌と肢体は幾度見ても西洋の妖精画を彷彿とさせる。
「それとも男の身体など見慣れていて、適当に喜ばせる言葉を紡ぐのか、お前は」
「違います……っ」
 不意に、少女が強く訴えた。
 悲痛な悲鳴に近い声音は何処か理解を求めているかの様で、男は思わず目を瞬かせた。この少女は行動を予想出来る様でいて偶にそれをあっさりと裏切る。自分の声の大きさに驚いたのか耳まで赤く染めて更に身を縮込まらせる少女に軽く覆い被さり、男は華奢な顎を捕らえ前を向かせた。
「何が違う?」
 男の身体を綺麗だと思う感覚が男には判らない。治療痕等の美醜は理解しているが、この少女の価値観において何を綺麗と感じているのかが判らない。黄金律等と言った美術的なものなのか、傷のあるなしか。指先に感じる微かな震えが男のモノを更にいきり勃たせる。本当に少女の価値観を理解をしたいのか?まるでナルシストの露出狂の様な自らの行動に男は口の端を歪めた。
「……。あまり…あまり男性の身体は…、判りません…ですが……」
「男の上半身など報道番組の水泳競技なり何なりを見ていれば大凡判るものだろう」
 怯えている小動物の様に小刻みに震える少女を見下ろしながら、男の精神が揺れ動く。愉快なのか、呆れているのかが自分でも判断が付かない微かな揺らぎがもどかしく、心地良い。他愛もない会話をしている実感は時間の無駄でありながら、続けてもよいかと男を微睡みの様に緩やかに促す。
「あの…スポーツ番組はあまり見ていません……」
 咎められたかの様に小声で返す少女に、男は華奢な喉元を撫でる。
「何も怒ってはいない」
 少女が運動競技観戦で舞い上がっている姿が想像つかず苦笑いを浮かべた男に、やや困惑した表情を少女が浮かべた。
「……。その…男性と意識して見つめた事が今までなかったので…誰かと比べる事が出来ません…。それでも、でも…綺麗だと、思います……」
「……」
 つまりはこの少女が初めて異性として意識して見たのは自分だという中々男心を擽る発言に男は数瞬思考停止し、続いてそれを否定する。この少女の言動に正常な女性の情動を当てはめるだけ無駄であろう。だが揶揄う材料にはなる。
「裸で洗われて意識したか?」
 介護等と言う域を超え強制猥褻と呼んでもいい行為の数々は意識させるには十分だろう。だがそれから綺麗と言う評価に繋げる感覚はやはり謎だった。華奢な顎を捉えられ自分を見上げてくる少女の瞳に浮かんでいるものは、美しいものを眺める賛美や憧憬の色ではなく羞恥と困惑と男には理解不可能な何かと、どこか悲しげな色である。綺麗等と言って誤魔化しているのだろう…だが何をかは判らない。眠っている間に連れ込まれているとはいえ、男の家で剥かれて感じて喜んでいる風情ではない。――ただ流されて犯されているだけなのだ。あっさりと納得出来てしまう現実に、男は何故か暫し呼吸と動きを忘れる。
 面倒臭い。
 この少女が何だと言うのだろう。医者と患者であってもここは医者の家であって病室ではない。無許可で連れ込んでいてもそもそも呼び出しで応じている時点で男と女の自由行動に過ぎない。気分が乱気流の様に昂揚しては叩き落とされる無様な感覚に男の眉間に皺が寄る。何故この様な浮き沈みが生じるのか、判らない。
「まぁいい明日まではどうせ互いに裸だ」男の言葉に少女の身体がびくっと震えた。羞恥に頬を染めて視線を逸らそうとする少女の初々しい戸惑いが頤を捉える指に小刻みな震えの形で直接伝わり、嗜虐心を煽る。「ブラジャーのホックを外せ」
 男が手を回せば簡単に外せるものを命令され少女が許しを乞う様な眼差しで見上げてきた…白い乳房を覆う優美なレースのブラジャーを与えたのは男であり、一泊で連れ出した以上脱がす前提ではあるがそれが少女にとっても前提なのかは判らない。いや脱がされる可能性は考えていたかもしれないが、まるでこれから犯される事を承諾する様に自ら脱ぐ事を強要されると考えていなかっただろう。男は少女の全裸は既に何度も見ている。だが浴室や病室で人の気配を気にしながら忍んでのものであり、時間制限も何もない男のマンションの居間ではない。腰が熱い。スラックスの中で男のモノがいきり勃ち、そして、少女も、昂ぶっていた。
「――ぁ……っ」
 伸ばした男の指がレース上から少女の乳首をそっと捏ねる。純白のレースが抜ける様な薄い桃色の肌の乳房を覆っている。豊かな乳房を覆っているブラジャーのデザインは野暮なものでなく繊細な模様も無様に乳首を隠そうとするものでなく、華やかだが優雅なレースは乳房も乳首も透かしながら包んでいる…鴇色の乳首が可憐にだが淫らに硬くしこっているのは一目で判り、そしてそっと触れる前から柔らかなレースを突き上げている乳首が男の指でくにっと倒される。まだ処女だがこの数日浴びせる様に愛撫を受け続けている身体は元から敏感な上に感度を増していた。軽く乳首を撫でる様に捏ねられるだけでびくびくと少女の身体が震え、柔らかな小さな唇からは愛らしい喘ぎが零れる。捏ねられるのも噛まれるのも抓られるのも好きないやらしい乳首でありながら、その佇まいは清楚極まりない。
「瑞穂、自分の手で、ホックを外せ」
「……。はい……」
 喘ぐ様な、消え入りそうなちいさな声で答える少女の瞳が揺れる。はぁっと淡い吐息を漏らす少女の乳首から指を離し、僅かに身を起こす男の目に白い姿態が映った…華奢な身体の左右に無防備に落ちている手、床の上にうねる豊かな漆黒の髪、うっすらと汗ばみ上気した肌は薄桃色染まり、羞恥に震える繊細な顔が涙と汗に湿り、そして小さな唇を滑らせているのは男と少女の唾液だった。
 静寂の中、少女の微かな吐息だけが男の耳に届く。快楽の余韻の荒いものではなく、許しを乞う様な、細く儚げなそれは確かに鳴き声で、少女がこの状況で感じているのだと男の耳だけでなく肌に細かな傷をつけ染み込む様に淫らに浸透していく。――男に強要され、自ら愛撫をせがむかの様にブラジャーを脱ぐ仕草をせねばならない状況に、この少女は明らかに欲情していた。男の前で下着を自ら脱ぐ女見慣れている…だがこの少女はまるで樹からもいだばかりの蜜を滴らせる果実の様に初々しく匂い立ち男の歯を求める様に視線を奪い意識を集中させる。
「ぁ……」
 不意に少女が男を見上げ、ぴくりと身を震わせた。
 透き通る様な頬が紅潮し、大きな瞳が揺れる。
「目を逸らすな」
「はぃ……」
 僅かに竦む身体に、純白のブラジャーに包まれている豊かな乳房が淫らに撓む。少女が浅く弱い息をつく度に華奢な胸郭が動き、乳房が揺れる。ぞくりと男の背筋がざわめき、荒々しく乳房を弄びたい衝動に唾を飲む。まだ十七歳の揉まれ慣れていない未成熟な乳房を激しく揉みしだき、歯を立てたい。乳首を舐め回し、吸い、噛み、抓りあげて泣かせてやりたい。ぞくりと、腰骨の辺りから幹へと熱いうねりが押し寄せ、スラックスの中で男のモノが限界まで反り返り真上へ突き上げる。しゃぶらせたい。この少女の乳房ならば男のモノを挟み込んで擦りたてるのも容易だろう。牡好きなふしだらな牝の技術を教え込もうとすればやはり泣くのだろうか、そして、やはり自ら吸い付き頭を激しく前後させ、じゅるじゅると先走りを美味しそうに吸いうっとりとするのだろうか。
 左手を背に回した少女の顔が羞恥に震える。許しを乞う視線を男に向けたままの大きな瞳に涙が浮かび、頬を伝う。それ程嫌なのかと男は思い、同時に泣きながら少女が昂ぶりきっているのを感じる…羞恥心の強さも慎み深さも何もかもが過敏な身体をより淫らにさせる。男は特には好みはしないが鞭に打たれ蝋を垂らされてもこの少女は達する事が出来るかもしれない。はぁっと漏らす吐息が悩ましい。
 微かな硬直の後、ふわりとブラジャーが緩み、乳房が僅かに揺れた。
 緊張の限界の様に左手を背に回したまま瞳を閉じて乱れた浅い呼吸を繰り返す少女の長い睫毛と唇が震えているのを男は眺め、そして手を伸ばし少女の頬を撫でる。
「いい子だ」
 男の言葉に少女の身体がぴくりと震え、そして表情が変わった。
 まるで隠していた日記を読まれた様な少女の羞恥の表情の無防備さに、男の胸でかちりと硬い音が鳴る…時計の針が重なった様な、奇妙な感覚を理解しないまま男はゆっくりと身体を傾け、応じる様に瞳を閉じて舌を差し出す少女の舌を舐る。静かな吐息が重なり、小さな、甘い舌が男の舌を怖ず怖ずと撫でた。性交どころか接吻も碌に知らない初な少女が、男の舌で喘ぐ。ぬちゃぬちゃと絡ませる舌の先に微かに伝わってくる唇の存在に、気紛れにそのまま貪ってしまいたい衝動が掠め、唇を重ねない様に注意しながら男は少女の舌先に軽く歯を立てる。びくっと華奢な身体が震える度に、少し気を緩めれば重なりそうな唇の奥から甘い喘ぎ声が溢れる度に、男の腹腔の底で堪らないもどかしさが煮え滾った。指で額を撫で、うっすらと汗ばむ細い背筋をなぞり、舌を貪り、息を重ね合う。
 確かに淫らな行為ではあるが、余りにも愛撫としては初歩過ぎる。
 まだ手に入れていない処女の小娘だから、面白いのか。じっくりと執拗に舌を貪る男の前髪を晩秋の金色の日差しが撫でる。見慣れた床の上で喘ぐ少女の濡れた瞳に、男が映る。甘い囀り。凪いでいるのかざわめいているのか判らない胸が、沸く。舌の間に唾液が糸を引き、そっと離したその口元を僅かに濡らす唾液を指先で拭った男は少女の唇にそれを重ねる。
「舐めろ」
 恥ずかしげに瞳を揺らした後、少女が怖ず怖ずと指を舐めた。微かに吸い付く音が鳴り、それに驚いたのか床の上で華奢な身体が怯み縮込まる様がぞくりとする程愛らしく、男は少女の頭の脇に手を突き、見下ろす。
 少女が吸った指をゆっくりと小さな舌に滑らせて何度も往復させ、そして口内へと差し入れる。華奢で小さな骨格に相応しい小さな頭は口も小さい。んっと僅かに喘ぐ唇に、舌を指でなぞり、そして緩やかな抽挿始まった。
 指先から第二関節までの短い抽挿は口戯で快楽を憶えている者ならば愉しめるが、それ以外ならば奇妙な悪戯に過ぎない筈である。だが……。
 頬が薔薇色に染まり、瞳がしっとりと妖しく気恥ずかしげに濡れ、白い身体が僅かにくねり、ぴくっと舌が震え、指先を掠る。拒み唇を固く閉ざすでもなく悦んで迎え入れてしゃぶりつくでもない、触れて指を締め付けるのすら罪悪感を覚えるかの様に微かに触れる唇と舌が堪らなくいやらしい…触れるか触れないかの接触の繰り返しはくすぐられている様で、そして強い刺激が欲しいのならば荒々しく扱えばいいのだと唆されている様だった。
 唇が、舌が、指に触れる。
 口戯をしていればどれ程の美人でも性器を咥える為に口を突き出す惨めな顔になるが、この少女はそれすらない。いや今は指だからであり同じ様にみっともない顔になるのかもしれないが、今はまだ男はこの少女のそんな姿を目にしていない。――渡り廊下で見た、同世代の男に向けた花の様な笑みも。
「――男の身体を知らないのならば刻みつけてやろう。お前が気紛れにセックスを望むならいつでも言え。犯してやる」
 指を引き抜き囁く男に、少女の身体がびくりと震える。
 何故、傷付いた様な瞳をするのだろう。

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改訂版1908211840

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