『誘惑〜Induction〜改訂版 STAGE-20』

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 降り頻る雪の様に、乞う。
 数えきれぬ程に、呼吸より多く。
 積もる。

 気付けば、少女が細く泣いている。
 無防備な、まるで迷子の童女が心細さのあまり泣き出した様な頼り無く今にも小さく蹲りそうな、その場には誰も自分を庇護してくれる存在はいない、そんな脆い泣き様に、男はそっと手を伸ばし、細い身体を抱き締める。
 常なら好む静寂が痛い。誰にも心配させまいと堪えるであろう少女の堪えきれぬ泣き声が耳に、胸の奥に刺さる。白い娘に消えぬ傷を残したい。だが、それなのに少女の涙が酷く苦く、そして天上の果実の様に甘い。腕の中に納めた少女はとても細い。鳥の雛の様だ。身長は平均的だが骨格が小振りで身幅が小さい。薄い肩も細い腰もあっけなく腕の中に収まってまだ余りある。触れれば骨の所存がはっきりと判りながら薄い脂肪と筋肉が抱き心地を補っており、嗜虐心を煽る儚げな身体に眩暈すら憶える。滑らかな白い肌。生物学上は十分に生殖可能だと認識しているが、余りの繊細さに触れる事も抱く事も何処か身体が怖じ気づく…それと同時に滅茶苦茶に犯して征服したくなる。
 換気扇のファンの音が微かに鳴っている。外は更に冷えているだろう。離れた港湾地区へ向いている浴室の窓は男の位置からは夜空しか見えない。柔らかな浴室の照明に照らされた、膝立ちの少女の足が白い。びくっと身を震わせた後それでも細く泣き続ける少女をどうすればいいのか、何故か思い浮かべずに男は取り敢えず壁のシャワーノズルを開かせた。
 排泄物と言ってもほぼ注入した薬液そのものらしい液体は少女が自分との外出を前に食事が喉を通らなかった事を意味する。当然浣腸など想定してはいまい。それが何故なのかは判らない。取り敢えず腸内が空なのは都合がいいと思いながら、食事量の少なさに職業柄軽く叱りたくなり、そして困惑する…そう、どうやら自分は困惑しているらしいと男は気付く。次にやる事は決まっているのに少女の涙と無防備さに、抱き締める事ばかり考えて、この腕の中の華奢さと脆さに動揺している。どう扱えばいいのか、経験は最適解を熟知しているが、何かが追いつかない。確かな達成感よりも大きな何かが行動を阻害していた。
 片腕で抱き締めながら、頭上からのシャワーの飛沫を二人で浴びつつ浴槽の縁に置いていた水の瓶に手を伸ばし片手で開け、軽く煽る。温くなっている水を口内に含んだままそっと少女の唇に自分の唇を重ね、ゆっくりと流し込む。口移しに少しだけ開いている小さな唇が柔らかく、艶めかしい。流し込まれる物が何かと戸惑う様子もなくこくんと素直に嚥下する少女に、腹腔の底で何かが煮える。華奢な身体が堪らなくいやらしい甘い砂糖菓子か何かに思え、男は舌を口内へと差し挿れた。
 自分は少女を貶める言葉を唱えるべきだが、男の腕は少女の身体を深く抱き締めてしまう。滑らかな唇の内側をゆっくりと舐り、狭い範囲を時間をかけて愛撫していくうちに少女の吐息が甘く震えた。
 裸の男の腕の中に居るというのに少女の身体は混乱からの濃厚な接吻の為か無防備で、白い肢体がくったりと頼りなく崩れ落ちそうになるのを支える。
 人前での排泄など言語道断であろう少女の微かな嗚咽を封じる様に、甘い口腔の中で舌を絡ませ舐り続けた。先刻かなり強引にこの口に男自身の肉棒を咥え込ませたが、恐らく少女が自ら上手に含むには時間がかかるだろう…骨格も小振りだが口も小さく、コツが要る。そう考えた瞬間、ざらりとした不快な感覚が胸の奥を撫でた。この少女に口腔奉仕を教え込むのは楽しいだろうが、慣らすのは、ましてや喜んでしゃぶりに来る姿は見たくない。いやこの少女の気質では簡単に恥じらいを捨てられはしまいが、女は情交を続けていけば慣れもすればこちらを悦ばせようと媚態も見せる、だがその変化を男は求めていない。
 この少女を手放すつもりはない、だが瑞穂は両親に秘密で抱かれる時間を作れるだろうか。当然、男はこの少女の奥で何度も膣内射精をするつもりだが、孕めば娶る事は自然だが、自分は、子供を愛せるのだろうか?いや子供を愛でる少女を許せるのだろうか?少女は産んだ子を愛するだろう、自分も責任は取る、だが少女と自分の時間に存在する他の因子を異物としか感じられない。
 みしりと、胸の底で何かが軋む。どうでもいい事ばかりの世界が、軋む。父親は知らないがあの御婦人は好意に値する、自分と男女の仲にはならないであろう所もいい。少女に似た、いや少女が似た美しい顔立ちも落ち着いた佇まいも魅力的であり節度を守れば口出しをしてきはしまい。だが、父嫌は?男に部屋に少女が泊まるなど認めるだろうか? 面倒くさい。関わってくるな。――だが少女が父親を愛さないのも、産ませる子を愛さないのも、認め難い。羞恥も愛情も、損なうのを許さない。だが、それなのに、男自身が少女からそれを剥ぎ取らせる。父親の、恐らくは娘を溺愛して庇護しそれに素直に応える少女に男に抱かれ犯される時間を求め、男が愛せはしない子を孕ませる種を仕込ませる。歪だ。
 深く抱き締めている身体が温かい。華奢だ。乳房の豊かさと比べ骨盤は頼りない。安産型ではけしてない。孕ませたくなければ膣内射精などしなければいい、だが避妊などする気はない、この膣内を犯して満たして無垢な子宮も自分の精液で穢す。責任は取る。だが子は欲しくない。だが孕ませたい。少女が自分の種で成した膨らむ腹を撫でるのも幸せそうに笑むのもいい。だがそれは男の種であって、別個の人格である必要がない。愚かな独占欲。
 この無様な欲望は何なのだろう。
 微笑ませたい。先刻クリスマスイルミネーションの前で頬を染めて喜んでいた少女の笑みを思い出す。白に青のLED照明と金銀のオブジェ、見栄えのいい虚構を目に綺麗と呟く唇。何を見て喜ぶのかと考える自分が、媚びる様で気持ちが悪い。
 そっと唇を離し、相手の顔が見える必要最低限の距離を取る男の目に、耳まで真っ赤に染まっている可憐な泣き顔が映る。涙に潤みきった瞳は常は碧みがかった白目が仄かに充血し、思わず唇で拭った濡れた頬は涙で塩辛い。驚きと戸惑いに呆けているらしい顔は濃厚な接吻の余韻で蕩けてもおり、無防備極まりない。白い肌に、首筋に胸に無数の付けた痕が赤く、自分以外の男が見れば淫欲の証と即座に判る…当然目に触れさせるつもりもないが。
「みず……」
「ぃゃ……っ」
 呼びかけた声を少女の小さな泣き声が遮った。腕の中の身体が強張り、少しでも身を隠そうとするかの様に捩られる。
 何が娶るだ。病院の屋上の出会いから数日、氏素性も知らない男が孕ませるだの何だのと強姦と変わりない、ましてや少女には恋い焦がれる青年がいる。臨時収入と貯蓄はそれなりにあるが市民病院での収入はそこそこでしかない男よりも好条件な結婚相手を父親が見繕う可能性もゼロではない、女関係が身綺麗かと言う意味では情がないだけでかなり問題があり、善良でない自覚はある。程々の努力で全てが叶っていた人生は満足感も達成感も薄いが不満もなかった。――そんな無彩色の世界で、突然に少女と出会ってしまった。
 柔らかな声音が不意に鼻を掠める花の香の様に心地良い。穏やかな気恥ずかしげな笑みはそのまま胸に抱き締めたくなる程心を乱し、華奢な肢体とその清楚可憐な顔立ちに似つかわしくない嗜虐心を煽る極上の酒の様な官能的な身体は男の理性を溶かす。
「俺を拒むな」
 言い逃れの様に水を含みせずに男は少女の唇を奪う。直前まで貪っていた舌が戸惑っているのにも構わずに絡め、折れんばかりに抱き締めた身体を弄り、重ねた腹部の間でいきり勃ちずきずきと疼く男自身を密かに少女の薄い肌になすりつける。性欲は人並みのつもりであるが他者に言わせれば性欲過多ではないが荒淫に耽っている男らしい、そして確信している事がある…この少女を犯せば、もう他の女では満足出来なくなるであろう。抱く前からこうも執着させる存在を男は知らない。逆に、少女を抱いて失望する事が恐ろしい。自分にとって少女が望ましい存在でなくなった時、どうすればいいのだろうか。
 面倒臭い。どうでもいい。
 ――それで、いいのか?
 放り出してはいけないと理解していても、感情がそれを疎ましく思う。何故負の感情に支配されるのか、陰鬱なものでなく胸が躍るのが一般的な筈だと考えた瞬間に思い出したのは大学時代の数少ない友人の苦笑いだった。恵まれきった存在だが手痛い初恋の名残を何時までも抱えている男と、初恋も知らずにそれを他人事としか捉えられずにいた男とどちらが愚かだろうか…そう思った瞬間、唐突に理解したくもないものを感覚で納得する。
 これが恋か。
 愛ではない。一般的な親が子供に注ぐ無私の愛情等とは異なる、自分の欲望をただ相手にぶつけて求める身勝手な執着。相手への幻想と妄想に視野狭窄して愚かになっている人間は嫌という程眺めてきた、だが自分がそれに陥る必要は微塵も感じてはいなかった。――確かに愚かで、見苦しく、嫌悪感が激しい。それなのに否定要素がない。
 この少女を手に入れて手放したくない。恋い慕う青年が居る事も判っており、恐らく青年も少なからず少女を気に入ってはいるであろう…あの年齢の男が一人で見舞いに訪ねてくるのならば動機が多少は必要である。つまり、横恋慕である。そう気付き己の惨めさに愕然とする…自分が悪戯でなく本気で年端も行かない少女に熱を上げて我を失うとは思いもしなかった。死ぬまで誰にも興味が湧かない人間、その方がまだ気が楽だった。
 情けない。惨め。そんな失望を生むのが恋なのか。

 ふわりと、羽毛が落ちてきた様なささやかな感触が頬に触れた。

 戸惑いや羞恥が完全に消え去ったワケでもない、だが相手を心底心配している顔がそこにある。長いながい睫毛に縁取られた翠掛かった大きな瞳が、まだ涙乾く間もなく揺れているそれに自分の顔が映っていた。ああ、犬の様だ。ただ一人自分の飼い主と決めた相手に従順に懐く犬。それは見事に当然飼い主の信頼を得るだろう…だが目の前の少女は人間だ。――慕う青年のいる、恋する乙女だ。
 誰にでも優しい人間は、誰にも興味がないのと同じである。轢かれかけた子供と同じで少女は誰彼構わず手を差し伸べるだけであり、相手にとって命の恩人であっても結局本人にとっては有象無象に過ぎない。いや、青年だけは異なるのか。
 誰も触れるな。これは俺のものだ。
 薄く細い硝子細工の花の様な少女は指に力を加えれば簡単に砕けてしまうだろう。透明に僅かに加えられた淡い桜色の花弁に、細い茎、これ見よがしの美しさに誰もが喜ぶだろうが、狭量な男はそれを許せない。手中に収められれば誰の善意からも悪意からも好意からも少女を守るだろう、だがそれは一般的な保護ではない。
「先生……?」
 鈴の様な声は甘い。心底心配し、そして心底信頼しているその瞳には疑いの色は欠片もない。何もこの少女は判っていない、牡の獣欲も、触れる事すら躊躇する程得難く思う事も、泣かせたくないと思う事も、情動の乱れの気味悪さに放り出したくなる事も。そもそも情動とは何だ?理解し難い。
「瑞穂」
 ぽつりと男は少女の名を呼ぶ。
 欠陥品だ。
 手に入れたい存在に執着しておいて、それが人であると認めていない。この少女を犯して男を教え込んでも変化を望まない…例えば悦んで口腔奉仕をするだけで自分は失望するだろう、産ませた子を抱き締める想像だけで独占欲が臓腑を焼く、それが自分の行為の結果であり愛情であったとしても。人を求めるのに適さない。これは物欲に過ぎない。完成品を求めて成長も変化も認めない、人間関係としてあり得ない。
 そっと頬に添えたままの指に光る指輪を、少女はどう考えているのだろうか。
「反吐が出る」
 自分の無様さをぽつりと吐露する男に、少女の指が微かに震える。
 このまだ未成熟な、判断を誤る、硝子細工の様な脆い壊れ物は、それでも自分より遥かに人間として正常なのだろう…だが逃すつもりはない。
 少女の常磐緑がかった美しい瞳に新たな涙が滲み、僅かに身体が退きかけるのを、男は片手を小さな頭の後ろに回して留めさせた。ああ、脆そうだ。髪の量は多いのに頭も顔も小さい。揺れる瞳に自分が映っている…不甲斐ない男か、惨めな男か、どう見えているのか自分は。
 面倒臭い。
 ぐいと少女を深く引き寄せ男は小さな唇に自分の唇を重ねた。柔らかな感触を堪能する間もなく呆然としている相手をそのままに、軽く頭を傾け唇を深く重ね口を開き舌で少女の唇をこじ開ける。微かな甘い呻きを零し弛む歯と歯の間に更に舌を捻じ込むと、腕の中で華奢な肢体がびくっと揺れた。シャワーの水音の中、口内粘膜をぐちゅぐちゅと貪る音が体内から直接脳に届き、腕の中の柔肌を黒髪を湯が滑っていくのを感じる。舌を差し出させて舐る時よりも濃密な唾液を音を立てて啜るだけで軽く達してしまいそうな甘い鳴き声を小鼻から漏らし、脚の間でびくびくと白い腿と腰が震えているのが伝わってくる…処女の分際で酷く淫らなその反応ににやりと嗤いながら、男は手を伸ばしボディソープの瓶を取る。
 口吻に慣れていない少女が上手に息継ぎが出来ていないのを補い時折唇を離す度に唾液が糸を伸ばし、やや苦しげな呼吸が落ち着くか否かよりも若干早くまた男が重ねて貪る。
 少女の背から膝立ちの下半身までを洗い流していくシャワーを止めもせず、手に取ったボディシャンプーを少女の乳房に塗り込めた瞬間、その冷たさに腕の中の身体がびくりと強張る。抱き締めたまま密着している身体を離しもしないまま豊かな乳房を揉めば、ボディシャンプーで手が滑り豊かな乳房指が沈み込む程に力を込めても上手い具合に分散していく。
「あ…っ……あぁぁっ」
 もどかしげな喘ぎを微かに漏らす少女の唇を舌先でじっくりと舐りながら時折口内側に舌を差し入れるだけでびくんびくんと華奢な身体が腕の中で淫らにくねる。
「いやらしい小娘め」
「……、――も…申し訳…ありません……」
 消えたいのであろう程に恥じらい涙を浮かべる少女に、男は唇の端を歪めそのまま深く唇を重ね舌を捩じ込む。歯が当たるのも構わず舌を深く差し入れ暴力的に少女の口内を蹂躙し、唾液も喘ぎも奪い取り、そして唾液を逆に注ぎ込む。胃も肺も己で染めてやる。誰の所有物かいつも絡め取られて逃れられない身体にしてしまえ。ぬるぬると滑る指で乳首を執拗に摘まもうとすれば抓られないもどかしさに白い身体が切なげによがり、男は背を抱いていた片手を尻肉へ、それから膣口へと滑らせる。薬液とも愛液とも取れないどろどろの粘液を手全体でなすりつけると少女が懸命に首を振ろうとするのを、軽く舌を噛んで封じる。んっんんーっと口内から喘ぎ声を僅かに溢れさせながら鳴く瑞穂の膣口がぐびりぐびりと指先を締め付けてくる。いやらしい蜜壺はまるで犯され慣れた熟れた牝の様に指を美味そうに喰い締める。
 この娘は上手に男を銜えるのだろう…誰も犯してはならない様な清らかな妖精の様な儚げな容姿と空気を纏いながら、肉槍から脳髄までを灼く淫蕩な被虐の痴態で牡を狂わせる、極上の牝。仕留めずにはいられない処女。二本の指を挿入して膣口をくちくちと軽く広げる動きをするだけで、甲高く鳴いて絶頂を迎えてしまう膣奥から熱い愛液が溢れる。この奥に、精液を放ちたい。たっぷりと最奥で射精して動かずに栓をして可愛いこの女の膣と子宮に精子を泳がせる。幾億の精子が漂う中でも、きっとこの少女は抵抗をしない。じっくりと染める。膣内射精を教えた後は、もうそれしか行わない。避妊などしない。――他の男を慕う少女を、逃がさない。
 気味が悪い。落ち着かない。異常な高揚感。
 いっそ消してやりたい。
 面倒臭い。
 小さな舌を軽く噛んで舌先で舐り回しながら乳房を捏ねる…腕の中に容易く収まる華奢な身体に似つかわしくない淫らがましい豊満な半球は垂らしたボディソープでぬらぬらと滑り、男の手から逃れようとするかの様に形を変える。もどかしげな喘ぎが口内の蒸れた空気を揺らし、行為の最中に男の身体に指一本満足に触れられない慎ましい少女が堪え切れずに甘く啜る息が医師の息を吸う。肺の奥まで、男のものを迎え入れる。まるでそれがなければ生きていけない様に、涙を零しながら。
 ぎちぎちと膣口が指を締め付ける。腕の中で白い華奢な腕は胸板へと折り込まれているが、繊細な手は握られており掌底が微かに触れているだけだった。睦み事の間に手を当てる事すら恥ずかしいのか、それとも。
 男の身体が少女を浴室の床に組み伏す。頭上から降り注ぐシャワーの飛沫を浴びながら見下ろす男の影の中で、少女が見上げてくる…大きな瞳から涙を溢れさせながら。泣き止まない。
「何故、泣く」
 人体は簡単には壊れない。だが呆気なく損なわれる。生命も同じく。手を少し動かせば触れられる少女の儚さに、息が詰まる。流れる湯の中で漆黒の髪が揺らぐ。嬰児の様な青みがかった白目が僅かに充血しているのが涙のせいだと思うと、自分の未熟さに吐き気すら覚える。
「……。く……くちづけ…を……」
 意識のない間に散々奪ってはいるが漸く判った接吻に動揺しているのは、やはり捧げたかった相手とは異なるからだろう。どれだけ可愛らしい飯事の様なファーストキスを夢見ていたのだろうか。おずおずと、神聖な儀式の様に…馬鹿らしい。
「面倒臭くなった」
 偽るのが。
「安心しろ処女だけは奪わない」
 自分だけが求める惨めさに狂いそうになる。襲って犯したい。無理強いだろうが構わない。美しい瞳を真っ赤にさせて涙も涸れ果てるまで犯してしまえ。汗も愛液も出尽くした熱い身体に激しく腰を打ち付けて膣奥で射精したい。声も出せない白い喉が震え、はくはくと唇が頼りなく揺れてももう言葉すら紡げない、それはどれだけ愛しい姿だろうか。
 まるで獣だ。理性など欠片もない。見苦しい。
 騙せば、いや何か媚びる必要すらなくこの少女を犯せるのは判っている。だが、他の男を慕い思いながら泣く少女を犯して何の意味がある。
 それならば、いっその事、この細い首を絞めた方がいい。
 狂っている。
 ああそうだ。この感情は、間違っている。

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