『誘惑〜Deduction〜 STAGE-2』

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 壊したい。犯したい。傷付けたい。苦しめたい。閉じ込めたい。奪いたい。苛めたい。手に入れたい。貶めたい。辱めたい。――その果てにあるのは、愚かな独占欲の成れの果て。
 薄い羽の妖精を閉じ込める方法。
 そこに紛れ込む、無駄な感傷。
 ――守りたい。

 遂に犯した。
 その見苦しい万能感に男は薄く息を漏らす。
 肉槍の根本をギチギチと締め付けている窄まりの圧迫感は快楽を貪れる限界に近い窮屈さで、これを無理に引き抜けば少女は裂けてしまうと思われる…挿入時もかなり厳しく肉体的に不可能な可能性も高かった。何日もかけ更に拡張を続ければ楽に受け入れられる様になったかもしれないが男はこれ以上待てはしなかった。手に入れたかった。クリスマスツリーの前で微笑む静かな、穏やかな笑みを見た瞬間、限度を超えていた。
 腕の中の身体が温かい。小鳥の雛の様だ。そっと扱わなければ壊れてしまう。ぬろりとゆっくりと舌を動かし、傷を舐める様に、背中を撫でる様に少女をあやす。あれ程アナルセックスへの禁忌感が強かったのだから嘸や衝撃を受けているであろう。ぞくりと腰から背筋へと堪らない快感が這い上る。これから馴染ませて落ち着かせてからでないと肉体的にも精神的にも少女にはキツいだろうと思いながら、いっその事滅茶苦茶に突き入れて壊してしまいたくなる。腕の中の瑞穂を見ようとそっと抱き締めている力を抜き僅かに身を起こした医師は、華奢な少女が苦しげなのに気付く。――サイズが合わない肉槍を無理矢理捩じ込まれた痛みもある筈だが、目の前の少女の苦しみ方はそれではない。
 過呼吸。思春期の子供には有りがちな症状であり命に別状はないが、僅かに医師の息が詰まる。カルテでは少女にはその傾向はなかった。主な原因、ストレス。
 口でも態度でも示せずに自分を拒むか。それ程あの餓鬼が恋しいか。臓腑が煮える。見苦しく苦い独占欲。この少女が欲しい。何もかも、髪の一筋すら残さず。一切誰にもくれてやるものか。恋とは、こうも醜い感情なのか。気持ちが悪い。面倒臭い。
「落ち着け。ゆっくりと息を吐け」
 引きつけに似た忙しない乱れた呼吸を繰り返す少女の頬を撫でながら語りかける男に、小さな口がはくはくと頼りなげに揺れる。だが上手に息をつく事が出来ないのか乱れた呼吸はそのまま続く…初めての過呼吸かもしれない状態で落ち着いて対処を求めるのは酷であろう。――この状況で自分は異常者なのだろうか、それとも護謨で根本を締め付けられているのに似た圧力のせいか、勃起したモノはそのままでびくびくと震える少女に性的な快楽すら憶えている。死にはしない、だが確かに苦しんでいると言うのに。苦痛は当然取り除かなければならない。だが、己がストレスであるならば、自分は。
 どうすれば、良いのだろうか?
 しんと世界が凍る。いや、深い雪の夜に放り込まれた様に音が消える。少女を穿ちながら、独りになる。精神的な情景は、白い闇。雪で覆われた地と、深夜、月の見えぬ視界は肺を凍らせる夜気の峻厳…星もなく灯火一つない世界。冷えるな、と音もなく呟く。それを冷えると感じた自分に医師は驚く。何だろうかこの違いは。判らない。何が判らないかも、判らない。異常な空白。気味が悪い。慣れ親しんだ世界の筈の無音。静寂。何もいらない。仕事も、眠りも、酔いも、何も、そのままこなせる。だが、何かがおかしい。息が、出来ない。
「――ぁ……」
 微かな声が聞こえた瞬間、どくりと胸が鳴った。
 見下ろす位置に、少女がいる。
 薄暗い部屋の男と女の褥の明るさの中、苦しげな息遣いと愛らしい顔。豊かな黒髪が波打つその上の白い柔肌。首筋に、華奢な肩に鎖骨に、幾つもの吸い痕…自分がつけた独占欲の証。零れる涙に伝う汗。
 唇を深く重ねる。ひくひくと震える身体が無力な雛に似、だが肉槍の根本を締め付ける堪らないキツさと腸内の熱さは女の身体そのものだった。身体を抱き締めながらまだ接吻に慣れていない呼吸を操る。過呼吸ならば血中の炭酸ガス濃度を上昇させればいい。時折唇を離し、再び塞ぐ。くちゅくちゅと少女の舌を貪りながらそっと頭を撫でる…華奢だ、腕の中にすっぽりと収まってしまう身体はとても脆弱で壊すのは容易い。だが心は更に軽く壊せてしまうだろう。じゅるりと唾液を吸い、嚥下する。腰を動かしたいがまだ早い。早鐘を打つ胸。重ねる身体に胸板で潰れる豊かな乳房だけがアンバランスに煽情的であり、だからこそ儚げな肢体は背徳的ですらある。清楚な、無垢な女の口と窄まりを舌と牡肉で犯している堪らない愉悦。まだ苦しげな小さな口の中で、舌を吸い、絡め、舐り、弄る。びくびくと震える身体の中、薄い腹部と内腿だけが質の異なる痙攣を繰り返し、腕の中で緊張と弛緩が目まぐるしく入れ替わる。
 微かに、ほんの僅かに、結合部が馴染んでくる。だが乱暴に犯せば裂けてしまうであろう。まだ時間がかかる…だがそんな時間すら愉しめている感覚がある、いや、これは愉しさなのか?異なる気がする。大勢の女と寝るまでの駆け引きは労なく済ませ嗜虐心と肉欲を発散したあの愉しみとは何かが違う。
 舌を絡める。ぐちゅりと混ぜる唾液の軽いとろみがいやらしい。少女が苦しんでいても収まらない勃起をどう思うのだろうか、あの青年ならば必死に彼女を看護するのだろうか…まるで宝物の様にそっと優しく抱き締め愛の言葉を囁きながら、いやそもそもストレスなどなく過呼吸など起こさないのであろう。愛ではない。――恋でもないのかもしれない。異常な妄執。酷く惨めで無駄に思える。意味はあるのか?自分が氷の彫像の様に罅割れ崩れていく感覚に男は鳥肌立つ。
 不意に、触れた指に指を絡める。小さな手と華奢な指。メスも鉗子も持たないこの手は何が出来るのだろう、だが、この手は恐らく世界で一番大切な何かに触れるのだろう。この少女に望まれるのは世界に祝福されているのに近い気がする。自分には無縁な、透明な世界がそこにはある。色付いて、明るく、穏やかな多幸感で満たされた世界。そんな世界が、何処かにある。
 自分とは無縁な何処かに。

 はぁ……と息を漏らした少女に男は髪を撫でる。
 貫いたままずっと呼吸を整えさせ抱き締めていた身体の形が酷く己に馴染んでいる気がした。抱える腕の角度も、重なる腰の位置も、根元を締め付け続ける窄まりの窮屈さも、鼓動の速さも何もかも。汗ばむ小さな額に貼り付く髪を指先で整え、男はサイドテーブルに置いていた蜂蜜酒の瓶の栓を片手で開け、含んだそれを少女の口へとゆっくり流し込む。発酵よりも甘味を優先している液体は男にとっては酒精と言うより蜂蜜を溶かし込んだだけの水に近いが、少女に嚥下させたそれの僅かな残りは自ら飲んでみれば確かに仄かな酒気を帯びてはいる。
「私……」
「過呼吸を起こしかけていた」
「申し訳…ありません……」
 小さな声は頼りなく震えていた。迷惑をかけたと反省しているのであろう、その原因のストレスは自分の存在だと気付きもせずに。愚かな娘である。シーツの上に広がり緩やかな渦を巻く漆黒の髪とほんのりと上気してなお透き通る様な柔肌が艶めかしく、潤んだ大きな瞳が美しい。穢す事に躊躇いを覚え、その何十倍も辱めたくなる清らかな身体にそっと手を這わせると少女が淫らに息を詰まらせる。ああ鏡の前でこのいやらしい姿を確かめさせたい。無数についた吸い痕と噛み痕。ずっぷりと根元まで咥え込まさせている窄まり。
「心配するな」
 たかが過呼吸でこの少女を逃しなどしない。
 蜂蜜酒を含まずに唇を重ね、ゆっくりと少女の舌を舐る。呼吸を整えさせている間も貪っていたが接吻に不慣れな少女の舌遣いはそう簡単には上達はしない。いやそもそも慣れて応じるつもりはないのかもしれない。恋しい青年以外との接吻など喜びも何もないであろう。ねっとりと絡ませる舌に、唇で撫でる唇に、呼吸を詰まらせ鳴く少女の窄まりが僅かにひくひくと震える。限界寸前まで張り詰めていた孔に生じた僅かな余裕は、男の肉槍の衰えでなく少女の順応によるものだった。女の身体など所詮そんなものだとつまらなく思う一方、その身体を染めるのが自分なのだと執着する自分の馬鹿らしさに嗤いたくなる。
 常は甘く柔らかな声音の少女から零れる苦しげな低い呻きに、男はそっと頭を撫でる。尻孔を押し広げられる苦しさはまだ続いているのであろう硬い表情を男は見下ろす。
「辛いか」
 何を無駄な事を自分は言っているのだろうか。辛いに決まっている。男の幹の根元を締め付ける少女の窄まりは若干馴染みかけてはいても限界まで広げられ、そして異物は存在し続けているのだから苦悶は続く。
 頬に貼り付く髪を整える男に、少女の瞳が揺れる。何処かで日本人以外の血が混ざっているのであろうか緑の混ざった瞳に、黄色味より薄桃色の方が勝る白い肌。非常に脆い完成品。恥ずかしがり瞳を逸らす余裕もないのか男を見上げる顔の美しさにぞくりと腰が粟立ち肉棒が滾る。無防備な少女への己の感情が愛しさと言うものだと嫌になる程実感させられる…いや愛ではない、酷く強欲で凶暴な衝動が手に負えない。腕の中の嫋やかな身体に、呼吸が詰まる。どろどろとした支配欲が腹腔に溜まり捌け口を求める。
 柔らかな頬をそっと撫でる手は力が入っていない様に感じるかもしれないが、皮膚一枚下に籠もった行き場のない激情が渦巻いていた。憧れる青年以外の肉槍で排泄孔を犯された、この時点で少女はもう合わせる顔がなくなる…だがまだ足りない。
「瑞穂」
 漏れた声は男の知らぬ音を帯びていた。冷たいと女達が評した平坦な声に密かに、だが確かに籠もる声の熱に男は不快なものを覚える。ただ相手に掛けるだけの音ではない。求める響き。知らぬ。胸を焦がすこの焦燥も、腹の底から、犯す肉槍の付け根…牡の器官骨肉全てが煮溶ける様な甘く苦い喜悦も、気味が悪い。ただ犯せばいい喰らえばいい、何故それが出来ない。
「先生……」
 腕の中に簡単に閉じ込めてしまえる華奢な少女が小さく呼ぶ。
 その響きの甘さと儚さに男は固まる。聞き取れない。いや聞いてはいる。だがその声に含まれた音が理解出来ない。囁きに近いそれは末期の一言に近い重みが確かにありながら脆すぎ、掌に乗った初雪の一欠片か掠めた梅の香の様に余韻すら与えずに溶けてしまう。
 たかが二十センチ足らずの牡槍で貫かれた程度で身動きの取れなくなった白い身体に無数に付いた噛み痕と吸い痕、まだ落ち着かぬ呼吸と早鐘を打つ胸、涙を零し続けている美しい瞳…我を失っているのであろうそれに映る自分。子供ではない。十分にとはいかないものの男を受け入れられる身体ではあるが、肉付きがまるで違う。不摂生の自覚もありジムで多少体力を維持している男と違い、少女の身体はとても細く嫋やかである。無理強いや搾取と言う言葉が掠める程に男と少女の差は痛々しい。膣でなく排泄器官を犯されている無惨な凌辱被害者の姿が、加害者を猛らせる。傷付け。二度と顔を上げられない程に心に傷を負い世界の全ての男に怯えるといい。全てを拒め。――穢らわしい行為でこれから快楽を刻み付ける。尻孔で悦ぶ淫乱だと、自分だけがお前の穢らわしい姿を知っていると、そうさせたのだと呪えばいい。最も不似合いな感情を植え付けてしまおう。憎悪は、簡単に染まれるものらしい。それすら共感出来ない自分は欠陥品なのだろう。疎ましさと無関心と便利さ程度しか判らない。
 腰の下に枕を差し込んである身体は肩と頭以外は浮いた状態にあり抱き締めるのは容易い。汗ばんだ背筋に指を這わせ、ぐいと抱き締めた瞬間、嫋やかな身体が腕の中で震える。汗に濡れた肌が軽く滑る摩擦が酷くいやらしい。
「ぁ……あああああっ」
 揺れた腰に結合部が微かに脈打つ。ぎっちりと咥え込ませたままの窄まりに引き摺られながら男の肉槍がほんの僅かに抜け、たった二〜三センチと言った所か護謨で搾られているかの様な淫猥な締め付けが根元で動く快楽に男の口元がにやりと歪み、少女の唇から鳴き声が溢れる。苦しいのであろう、だが被虐の淫らな快感を過分に含むそれに、男は少女の白く細い顎を噛む。
 誰にも触れさせず絹や真綿で包む様に大切に扱いたいと言うのに、歯を立て爪を立て、傷付けずにいられない。抱き締めている手を緩やかに這わせ、片方の腿をぐいと上げさせ枕の上の白い腰が浮く程少女の背を丸めさせた男は指輪のある少女の左手を取り腰へと導く。
「――!」
 華奢な指先が窄まりと肉槍の結合部に当てた瞬間、びくりと身体が強張る。細い指を手の甲側から絡め取り張り詰めた窄まりと硬い幹をゆっくりと撫でさせる男に、少女が微かに首を振った。
「判るか?」
 根元に絡み付いているワセリンとローションの滑りの良く固さもある混合油と、混ざりきらない異なるぬるぬるとした粘液が混沌の泥濘を作り出している。穢れのない指を牡と牝の結合部に這わせながら男は僅かに口の端で嗤う。ただ犯されるだけでも容量いっぱいだろう少女が羞恥に泣くのを眺めながら、男は絡めている指を指でなぞる。僅かに腰を引けば少女の窄まりは潤滑油があるにも関わらずねっちりと幹を締め付けたままそれに引き摺られ吸い付く形で引き伸ばされる。あ……!と悲痛な羞恥の声を漏らす少女の窄まりが一瞬緩み、そしてぐびぐびぐびと淫猥な蠢きを繰り返す。その動きが判るのであろう、真っ赤に頬を染め身を縮込まらせる少女の指を捕らえ男は執拗に撫で回させる。
 憶えろ、刻み込まれろ、忘れるな。何を言っても足りない屈辱は語彙の貧弱故でなく、関係の希薄さ故だった。欺瞞しかない。気味の悪いこの衝動を吐き出したい。吐き出す相手は世界に一人しかいない…だがぶつける相手は自分を見てはいない。滑稽さに反吐が出る。
 結合部を撫でさせている指に指を這わせる。華奢で綺麗な指に指輪を嵌めた時の驚きから困惑と、そして仄かな幸せそうな表情をそのまま永遠に留めておきたい。馬鹿らしい。変わらないものなどない。いつか人は死ぬ。老いる。変わる。それが生きると言う事だ。
 ぐいと腰を押し込む男に、少女の全身が強張り跳ね上がる。涙が、散る。
 捕らえたい。抱き締めたい。奪いたい。守りたい。可愛がりたい。包みたい。犯したい。傷付けたい。泣かせたい。独り占めしたい。優しくしたい。染めたい。壊したい。――無数の衝動が、溢れる。
 今更、初めて認識したものがもしも恋であっても。
 それが正しく意味を成さなければ、自分の内の錯覚に過ぎない。
 そう。
 この感情は、実を結ばない。

 浴びせる様に唇を重ね貪り、柔肌を舐めあげる。華奢な身体に不似合いな豊かな乳房を鷲掴みにし無理矢理捏ね回すと少女の甘く悲痛な鳴き声が寝室を裂く。果汁をたっぷりと含んだ水蜜桃の様な乳房は歯を立てれば甘い汁を迸らせそうな程卑猥に牡の欲望を煽り立て、可憐な鴇色の乳首が男を吸い付かせる。滑らかな乳房と異なり小さく突き出した乳首は芽の様にしこりそれを舌の上で転がし捏ね回す。至近距離で、少女が喘ぐ。唇で乳首を挟み、吸い付き乳房ごと引き伸ばす…吸引の音が恥ずかしいのか微かに振る首だけでなく腕の中の身体の全てが揺らぎ、窄まりが、うねる。貫いているからこそ判る痛々しい淫蕩な反応。罪など何一つない清らかな顔をしながら、この少女は、ぐびぐびと排泄孔を蠢かせ、肉槍を扱く。全身が性感帯の様な淫らな身体は甘噛み一つでも軽く達しかけてしまう…いや身体も敏感だが、この少女は精神がどうしようもない淫乱なのだ。男に貪られる事を恥じながら、それ以上に犯される事に被虐に溺れている。位置を合わせる為に細腰の下に差し込んだ枕もその下のシーツもたっぷりと溢れ返っている濃い愛液でぬらぬらと艶を放っていた。全身が汗に濡れ、何度も蜂蜜酒を口移しで飲ませていても水分不足が心配になる程である。
 少しずつ腰が馴染んでいく。ぎちぎちに強張っていた窄まりに咥え込まれている肉茎がぬちりと僅かに前後に動かせるのは、流し入れ塗り込んだローション配合のワセリンによるものだけではない。
 まだ抽挿とは呼べない細やかな動き。だが確かに男と女は穢らわしい排泄孔での肉の交わりに踏み込んでいた。まだ苦しんでいる顔が執拗な愛撫に流され牝の歓喜に溶けては苦悶に引き戻される。細過ぎるウエストの下、柔毛が汗と愛液でぺったりと貼り付く白い腰は、とても華奢だった。両手で抱えて揺さぶるのが容易い骨盤自体が小振りな腰から伸びるしなやかな脚は、男を受け入れさせる為に惨めな程左右に大きく割り開かれている。優美な姿に似合わない無様な体勢…しかも犯されているのは子を成す為の神聖な処女地ではなく穢らわしい排泄器官。今少女に精神的外傷を植え付けている実感に背筋がぞくぞくとざわめく。愉悦と言って良いだろう。
 指で摘まんだ乳首を軽く抓った瞬間、びくりと少女の身体が跳ねた。
 肉槍を絞り上げる窄まりの圧が不意に緩み、そして激しく高まり、また緩みまた搾る。ぐびぐびとうねる排泄器官に男は僅かに腰を揺らす。ワセリンのぬめりだけでなく無様な少女の愛液で濡れている男と女の腰や腿が卑猥に滑り、根元まで貫いている肉槍を僅かに引き戻し、また捩じ込む。苦しげな悲痛ないやらしい喘ぎが少女の唇を割り、白い肌に一気に汗が滲む。二の腕を掴みベッドに押し付け上半身を起こした男は、少女を見下ろす。
 乳首を抓られ達してしまった身体が、淫らに揺れる。恐らく意識出来ずにいるのだろうびくびくと震えよがる身体から立ちのぼる汗の匂いは甘い…この少女は全身が蜜で出来ているのだろう。抑え込んだ手に、重なる下半身に、犯す肉槍に、白い身体が持て余した牝の拙い悦び具合が伝わってくる。びくんと、跳ねる。くねる。鳴き喘ぐ顔が、羞恥と恍惚と苦痛に染まっている。楔を打たれた腰を中心に、華奢な身体が、淫らに踊り乳房が大きく弾む。
 男の寝室に、甘い嬌声が籠る。
 はしたない窄まりの脈動を叱りつける様にぬちっぬちっと肉槍を揺する男の前で、足掻く様に少女の身体が揺れる。一度達してしまうと長くよがるのは判っていたが、思った以上に少女の腰は貪婪に吸い付いてくる。
「だらしのない女だ」
 ぽつりと罵り、男はぐいと腰を引き戻し、突き入れた。
 たった数センチの動きに、少女が甲高く鳴く。達した身体には刺激が強かったのだろうか、びくんと全身が跳ね背筋を仰け反らせ身を縮込まらせる少女が堪える様に瞼を強く閉じる。ゆっくりと更に引き戻す腰に、熱い腸内にあった肉茎が露出する。ごつごつとした幹の反りで、表面の血管や凹凸で、卑猥に絞り上げてくる短い護謨管の様な少女の窄まりを味わう。身も世もない、だが余りにも無力で可憐な喘ぎは、細い。ずろりと引き戻した肉茎が少女の窄まりの内側で鰓が引っかかり止まる。肉茎ですらどうにか抽挿するだけのキツい窄まりは、挿入時には貫くに適した鏃の形状故に迎え入れさせられても、返しの鰓の段差は無理に引き抜けば裂いて傷を負わせてしまうであろう。
 あぐっと、濁った声が漏れる。押し広げられる苦悶を細眉を顰めて堪える優美な顔が、男の視線を感じてびくりと強張る。
「お願い…します……、見ない…で……」涙と唾液を零しながら哀願するその必死な愛らしさに男のモノが少女の中で更に仰のく。「――ぁ……ぁぁあ……っ」
 両の二の腕をベッドに押し付けられ抑え込まれている少女の腰が小さく、だがはっきりとびくんびくんと淫らに跳ね窄まりが肉茎を美味しそうに締め付けては緩み咀嚼する…だが緩むと言ってもそれは酷くキツいままには変わらない。壊さない様に細心の注意を払っている男の下で淫らによがる少女の無茶な動きに口の端が歪む。貞淑過ぎる位でありながら見られてより乱れる様は被虐的であり、そちらの方がより罪深いのかもしれない。前から感じてはいたが、貫かれ苦悶しながらも喘ぐ少女は男の攻めを、より激しく執拗な攻めを望んでいるとしか思えない。シーツの上に波打つ豊かな黒髪も白い肌もびっしょりと濡れ、閨の照明に照らされる牝の身体の淫らな陰影が暴力的な程にいやらしい。
 手首が折れそうなのは判っているが、二の腕も男の手で簡単に掴めてしまえる程に細く、誰にも何にも抵抗出来ないであろうそれは不安になる程である。人間の新生児の方がまだ肉付き的に安心感があり、それでいて酷く男好きのする身体が…いや従順な少女を手に入れたくなる者は多い気がした。
 今更。いや、だからこそこうして犯しているのだ。
 腸内の最奥でも入口でもない奥まった場所の腹部側を傘で軽く撫でる様に小刻みに突き上げ続けると、白い身体が仰け反り淫らな声が溢れる。腸に神経はないが、周囲の臓器はそうではない。ああああああぁ…と細く鳴く少女の顔はまるで救いや許しを乞う様な頼り無げで、男に縋る無防備極まりないものになる。子宮を揺さぶれるのは膣だけとは限らない。汗塗れの華奢な身体が卑猥に蠢く。可哀想にまだ慕う男に処女を捧げる前に子宮を刺激される快楽に翻弄される少女に、男の口の端が歪む。酷く細い身体が自らひくひくと跳ね、豊かな乳房が男の胸板をいやらしく撫で回す。
「せん…せ……」
 少女が呼ぶ。
 恐らく意味のない声だが、この場で恋しい青年の名前を呼ばれるよりはマシだろう。いやこうも苦しげに悲しげに青年を呼びはしないであろう。そして…。
 その顔は、何だ。
 苦痛と恍惚に溶けた牝の顔だが、瞳が訴えている。初めての淫らな交わりを、いや汚らしい器官を犯される恥辱の中で全幅の信頼を寄せられているのが嫌でも判ってしまう深い色を湛えた瞳に、男の肺が軋む。まるで毒を吸った様だ。少女がお綺麗な心なのは判っている…誰にでもそんな顔をするのか、いや青年一人でも許し難い、いや家族以外に笑むのも許せない。
「ひ……あ!」
 腰を勢いよく打ちつけた男に少女の身体が激しく跳ねる。付け根まで突き入れた幹を喰い締める窄まりが怯える様にぐびぐびと震えながら搾ってくる。ベッドの上に広がったしなやかな黒髪が少女の痙攣に艶を放つ。身体の撥条に任せて腰を激しく引いては突き戻す抽挿を数度繰り返す男に寝室にあからさまな結合の打擲音が鳴り響く。ぎちぎちと締まる窄まりに幹の先から根元までを万遍なく絞らせる快楽に睾丸から腰骨、背筋へと焚き火が爆ぜる様な感覚が幾つも奔る…このまま続ければいい射精が出来る予兆に男は無意識に嗤う。いい。激しい抽挿に苦しみながら子宮を刺激され続けていた余韻から抜け出せずに達している少女の声にならない悲鳴が、悩ましい。
「尻の穴でイく感覚はどうだ」
 答える余裕などない少女が鳴く。いやらしい。言葉の辱めは確かに頭には届いているのではあろう、激しい抽挿に痙攣している白い内腿のその付け根で、とぷっと熱い液体が膣奥から絞り出される。
 激しい抽挿を続けながら覆い被さった男は少女の首筋に歯を立てた。食い破らないぎりぎりの加減で噛む男の耳元で、少女の悲痛な甘い叫びが迸る。達している。まだ男に貫かれた事のない膣が薄い肉壁一枚隔てた場所で貪婪にぐびぐびと波打ち、窄まりが緩み、そして締め付ける。何処も彼処もすぐに壊れてしまいそうな少女の首筋に歯を立てたまま男は強く柔肌を吸う。数日はまず消えない噛み跡と吸い跡…首元を隠せる寝衣は確かあった筈だが、何着か後で届けさせればいいであろう。ベッドの上で激しく打ち付ける腰に音もなくマットレスが揺れる。汗が、滲む。結合部の辺りがむわりと濃厚な蒸れた空気を重く絡ませているのが判る。片手で少女の脚を抱え、もう一方が指を絡め取る。細い、簡単に折れてしまいそうな指と、その一つに填まった指輪。握り込むと握力程度で軋んでしまう指が愛おしい。
 微かに、指が動いた気がした。
 いや、指が、握っている。握り返して、いた。
 それは意識してではないかもしれない。気のせいかと思いそうな程慎ましい仕草だった。少女がシーツを握る様なただの縋る仕草であり男に何かを期待しての行為ではないであろう。それでもそんな小さな動きに一瞬気を取られ、男は顔を上げて少女を覗き込む。
 無防備な瞳と視線が交わった。
 理解不能な表情を浮かべている少女に、男の意識の表層が削がれる。綺麗な、女だ。弱くて、脆くて、穏やかな風でなければ折れてしまいそうな草花の様な。
 脚を掲げていた手を解き、そっと頬や額をなぞる。忙しない浅い呼吸を繰り返す少女の腰は男を奥まで迎え入れたままぐびぐびと脈打ち続けていた。はぁ…と息が漏れる。言葉が出ない。絡み付いたままの視線が離せられない。いつもの様に恥ずかしげに瞳を逸らされないのが異常な為か、酷く精神が凪いで、そして身体が熱く疼く。少女の窄まりがサイズの合わない護謨管の様に牡槍を搾っている為か、限界まで血液が集中しずきずきと疼く感覚が堪らなくもどかしい。
 ゆっくりと顔を寄せ、唇を重ねる。
 最初は唇を重ねているだけのそれが擦り合わせるものになり徐々に熱を帯びる。んっ…んふ……っと甘い声を微かに漏らす少女の唇を舌で割り、甘い口内を舐り回す。身体が熱い。何もかもが甘い少女に、溺れる。髪の匂いも肌の匂いも控え目であるにも拘らず鼻腔を占めると頭の芯と腰にくるほど甘い。存在が欲情させる。唾液を啜り、嚥下した。肉棒に串刺しにされている華奢な身体が微かに切なげにくねると、男の胸板に重なる豊かな乳房を自ら捏ねてしまった結果に少女の喘ぎが口内に蕩ける。
 腰をそっと動かす。緩やかではあるが根本から鰓の淵までの幹をじっくりと絞らせる抽挿に、白い身体ががくがくと跳ねる。男の身体の下で背が撓り、細い腿が震える。徐々に熱を帯びる抽挿だが直前の荒々しいものとは何処かが異なる。身体が重なる。少女が自ら意図する腰の動きはないが、男の身体に、身体が応えてくる。唇を重ねながら貪る動きがベッドの上で絡み付く。一旦落ち着きかけたと思っていた少女が乱れ、男がそれを緩やかに突き上げる。労る様に、だが自らの昂ぶりを少女に向ける男の手が柔肌をなぞり、そっと身体を抱き締めた。
 ぬちゅりと窄まりが幹を扱く。狭い入口と比べ温かく包み込む腸内は刺激としては薄いが少女の中に肉槍を深く収めている感覚が酷く心地良く息を漏らす男に、腕の中で細い身体が淫らに撓っていた。枕を腰の下に差し入れしなやかな脚を開かせている不似合いの体勢で突き上げられる度に淑やかな少女が乱れる。苦しげに、辛そうに、だが恍惚として蕩けた顔に男は口付けて舌を差し入れ絡め取る。舌をいやらしく舐りながら動かす腰に、腸側から子宮を刺激されている膣から溢れる愛液がぬちゃぬちゃと音を立てる。
「――て……」
 唇を貪られている少女の微かな声に、唾液の糸を引かせながら男は僅かに顔を引く。ぐびりぐびりと牡槍を窄まりで扱きながら、少女の顔は何処までも脆く壊れてしまいそうな気がし、男は指先でその頬をなぞる。
「わたしでは…ものたりませんか……?」
「?」
「せんせいに…、ごまんぞく…していただけませんか……?」
 欲情に蕩けきっている、窄まりの苦しさに上擦っている、問いかける事を酷く恥じている。そんな少女の問いは何処までも悲痛であり、そして男の征服心を刺激する。――理解出来ないのであろう。どれ程己が男にとって特別な存在なのかを。判らなくても当然かもしれない…持て余す衝動を男自身把握出来ていないのだから。
 己の愚かさに嗤いそうになりながら、男は少女の頬をなぞる。
「そう簡単に終わると思うな」腕の中の身体が、牡槍を包み込む場所が温かい。物理的ならば何百何千と味わってきたそれが、堪らなく甘く優しく精神に触れてくる。「寝物語にはまだ早過ぎる」
 男の言葉に少女が不思議そうに見上げてきた後、頬を羞恥に赤らめる。初めてのアナルセックスの上に男が満足するまで続ければ体力的にも精神的にも限界を越えてしまい、恐らく事後に男女の甘い会話など適わないであろう。ほんの僅かに責めを弛めただけで終わったと誤解された事よりも、男が達していない事を不満に感じる少女の意外な浅ましさが嗤える。この少女にとって男が射精するかしないかで何の違いがあるというのだろうか。――まあいい。面倒臭い。
 赤面したまま戸惑い恥じている様子の少女を、男は腰の大きな一振りで仰け反らせる。子宮を刺激するのではなく牡槍の長さを味わわせる突き挿れと引き戻しで少女の細い身体をがくんがくんと激しく揺さぶる男の耳に、少女の悲鳴に似た喘ぎ声が届く。酷く無力で、甘く、頼りなく、聞き逃してしまいそうな程細いそれは妙なる音色の様に男の意識を浚う。
「強請ったお前が悪い」
 身体を強張らせ、少女が鳴く。力を抜けと何度命じても従えない愚鈍さが、愛しい。潤滑剤のワセリンをこそぎ落とす狭い窄まりを捻じ伏せる様に勢いよく貫く肉槍の表面の軽い起伏を、反り返りを、少女が絞る。男を愉しませようと意識出来てはいないのであろう、だが少女の身体は牡を悦ばせる為に生まれてきたのではないかと思える程にいやらしく出来ていた。突き上げの度に弾む豊かな乳房、腕の収まりの良い華奢な身体、無理な体位でもしなやかに受け入れる柔らかさ、体格差は元よりだが持て余されがちな牡槍を包み込む窄まり。――犯したい衝動が煮える。確かにこれもいい、だが生殖行為ではない。
 少女が鳴く。汗に濡れた身体が寝室の照明を淫らに弾く。全身でよがり鳴き、恥じながら達し続けてしまう己を懸命に堪えようとしているのであろうが、激しい喰い締めと弛緩を繰り返す窄まりも全身の落ち着きない乱れ方もどれだけ少女が感じているのかを如実に物語っていた。震える声が甘くそして苦しげで男を更に興奮させる。貫き、大きく抽挿を繰り返す牡肉が少女の中でびきびきと跳ねながら更に反り返る。執拗に肉槍を刻み付ける抽挿を繰り返す男の背に微かに汗が伝い、絡み付かせた指が汗に滑る。時にはゆっくりと、時には暴力的な程に速く激しく突き上げる男に、徐々に少女の声が痛々しく嗄れていく。まるで泣き過ぎた幼子の様に熱の籠もった身体を男は片腕で抱き締める。
 精巣が精嚢がぐいと迫り上がってくる感覚に男の眉間に皺が寄った。混み上げてくる射精の予兆は堪らない快楽ではあるが、まだ抑えようとすれば抑えられる。もっとじっくりと少女を味わいたいが、一度射精を済ませて安心させてやると言う妙な生温い感情が行動を支配している。これで満足するのだろうか?排泄器官を精液で穢されて?男の精液などここが相応しいと? ――いや、違う。この少女は、そうではない。
 致命傷を、くれてやる。
「出すぞ」
 男の声が微かに上擦る。
 短い射精の宣言一つで、少女が感極まった、いや絶望だろうか、甲高い声で鳴く。薄い腹部と内腿と尻肉がびくびくと激しく脈打ち、愛液が膣奥から絞り出されとぷりと溢れた。途切れない甘い鳴き声を口で塞ぎ舌を貪る男に、藻掻く様に少女の小さな舌が絡み付く。口内で喘ぎ声が反響し、指が、絡み付く。ベッドの上で激しく達する少女に男は腰を打ち付ける。熱く蒸れた空気が揺れ動き、腰を重ねる打擲音と結合部から溢れる攪拌音が鳴り響く…だが一番卑猥なのは口内の少女の言葉にならない声だった。熱に浮かされた様に途絶え途絶えに男を呼んでいる…貫いて苦しめている相手に縋る声が、酷く甘い。全身でよがり鳴き、細い指先が男の手の甲に触れる。
 どぷりと、精液が爆ぜた。
 輸精管を経た精子が温かな牝の肉の中で暴れ跳ねる牡槍を抜け、少女の中に撒き散らされる。尻肉が腰が太腿が射精をする為の土台の様に硬く引き締まり脈動する。人の精液量など大した事はない…だがその上で獣欲を少女に叩きつける様に大量の精液が迸る。受け止めろ、染まれ、これがお前を初めて犯すものだと低速化する思考の男の感覚が牡肉と袋に集中し、白熱する。
 少女の身体が、腕の中で撓り、固まっていた。
 口内で絶頂の嬌声が反響する。
 いやらしい小娘だ…尻孔で射精されて達している。
 びくっびくっと激しく震え出す前の少女の身体の強張りの中、腸のすぐ隣にある牝肉がぐびぐびとうねる。
 欲しいなら、強請れ。何時でもくれてやる。だが、安く思うな。
 お前の全てを捧げないのならば、叶えない。

 三度目の射精の終わった頃には既に少女は限界を越えていた。
 晩秋の深夜に漸く落ち着いた男は失神した少女の身体を一旦清めつつ、ベッドのシーツ等を全て取り替える。防音の完璧さに定評のある住宅任せに時間も考えず洗濯機に汚れ物を放り込み、そしてシャワーを浴びる。
 火膨れが出来そうな程熱い湯を頭から浴びながら、息をつく。身体が満足すれば落ち着くと思われた精神の雑音が酷い。少女の身体中にたっぷりと付けた男の残滓…派手な赤黒い噛み跡と吸い跡を隠せる寝衣を数着注文と、優雅な夫人への連絡と、切り上げた仕事の確認と、思い浮かぶ雑事の処理を組み立てながら絡み付いてくるのはたった十七才の少女の存在だった。羞恥の、絶頂の、苦悶の、はにかむ笑みの、穏やかな、悲しげな、切なげな、声が、顔が、仕草が、腕の細さが、匂いが、甘さが、温かさが、何もかもが男の身体に幾重にも絡み付き空気の様に離れない。まるで呪いである。
 今も腕の中にある気がするのは、浴室にある試供品の石鹸の香りのせいだろうか、いや、熱い湯でも流せていない温もりの為であろう。
 至福の筈であった。だが、男は眉間に皺を寄せる。
 壊される。
 細やかな話である。少女は男を訴えはしない。ただ一晩愉しめた、それだけが事実である。だが深い場所に楔を打ち込まれた感覚が男を不快にさせた。少女を好ましく思う。それは犯して更に強まった…ここまで身体の相性がいい女はいなかった、それはいい。だが……、
 募ったのはそれだけではない。
 苛立ち。苦々しさ。決して好感とは呼べない其れ等が膨れ上がる。
 ――その対処方法を、男は知らない。

 まだ夜明けには早い。カーテンの隙間から差し込む淡い青に染まった部屋のベッドの中で眠っていた男は、腕の中の温もりに気付き、息を詰まらせる。
 広いベッドであり身を寄せ合う必要なく人間二人ならば自由に眠れる筈なのだが、何故か男の腕の中で少女が眠っていた。
 失神後身体を拭き清めはしたが洗髪までは出来ていない長い豊かな波打つ髪、男のシャツを着せておくか迷った結果全裸のままの柔肌…失神した時から変わらず静かな顔で眠っている少女の唇にそっと指を寄せ、その呼吸を確かめて男は息をつく。無理をさせた自覚はある。裂けはしなかったものの、恐らくは足腰は立たないであろう。虚弱ではないが脆弱なこの身体で毎夜男の求めに応じるとすれば相当に無理をさせるに違いない。そんな愚かな仮定を夢想しながら、男は指先で少女の存在を確認する様にそっと頬をなぞる。意識があればこそばゆいと思われるかもしれない触れるか触れないかの加減で、白い顔の微かな産毛を擦る。
 確かに辱めて犯した少女は、まるで妖精の様に嫋やかで、綺麗であり、あの交わりが嘘の様だった。
 男の口が微かに動き、少女の名を紡ぐ。音にはしないまま。
 静寂が深い。
 これが幸福なのか、虚無なのか、判らない男は目を閉じた。
 少なくとも、物心が付いてから誰かが傍にいて無防備に熟睡してしまったのは初めてであり、だが、それは不快ではなかった。

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改訂版202305042218

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