2019余所自作55『最愛の人に愛され過ぎ』

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 ぬちゃっぬちゃっと結合部でいやらしい音が鳴り続けていた。
「公孝……だめぇ…っ、もう……もう……っ」
 時折お尻がシーツの上に落ちると濡れた音が鳴る。水分が抜けきってしまう様なセックスをずっと続けていて、時折口移しで飲ませて貰っているスポーツ飲料のボトルがサイドテーブルの上で汗を掻いていて、こんな事態なのに少し笑えてしまう。皆汗塗れ。ホテルの一室はいやらしい臭いが籠もっていた。朝早くに起きてから朝食もなしで抱かれ続けているけれど、公孝のモノはまだ萎える気配はない…たっぷりと私の膣内に射精しているのに、シーツの上に溢れた精液溜まりが出来てしまうくらいなのに。とりあえず二日前は安全日だとうろ覚えの知識で判ったけれど今日もまだ安全日だったのかは自信がなくて少し心配、だろうか。
 日差しの中の公孝の身体。引き締まった筋肉質。割れた腹筋。私のウエストを抱え込んでいる少し節張った指。攪拌され過ぎてクリーム状になっている潤滑液に塗れた剛毛の感触。太い。とっても太くて逞しい、猛々しいモノ。処女を捧げられたのがこの人でよかったと思うのに、今こうして貫かれていてとても気持ちいいのに……、
「も、もう許して…死んじゃう……」
 何度も内腿が攣ってる。その度に公孝はとても心配してくれて一休みさせてくれてスポーツ飲料を飲ませてくれたりするけれど、でも攣るのが収まるとまた貫かれる。この二日、お互い処女と童貞だったのが嘘の様にセックスに耽っている、いやセックスを憶えたてだから熱中してしまっているのかもしれない。公孝は私の生活の援助をしてくれるつもりらしく、つまりは愛人契約をしてくれるつもりらしい。愛人は愛する人で、つまり少なからず好いてはくれているのだろう。それ以上を求めるのは贅沢。それなのに、もっと求めたくなるのは何故だろう。自分が嫌になる。
 汗を掻いている公孝が微笑む。精悍な男らしい顔立ちでとても穏やかな優しげな、でも肉食獣みたいな笑み。
「彩音の中は、まだ咥えたがってる」
「やだぁ……っ、変な事言っちゃ嫌っ」
 明るい部屋の中で膣奥まで公孝を迎え入れてよがってしまう姿を見下ろされ、私は何度も首を振りたくる。公孝はカーテンを閉ざしてくれない。ホテルのスイートルームは周囲のビルよりは高い位置にあるから覗き込まれる事は殆どないけれど、それでも隠す努力なしで窓際で全裸でそういう事をしてしまうのはとても恥ずかしいし、それにいやらしく乱れる姿を公孝に備に見られるのはそれ以上に恥ずかしかった。
 くすっと笑いながら公孝が貫いたまま私の身体を引き起こし、ベッドの上で向き合う形に変えられて私は思わず彼の身体にしがみつく。異性の汗のにおい。時折入浴しているから汗臭くはないけれど、それは確かに異性のにおいで、戸惑いながら私は逃げる様に至近距離にある公孝の頬に口付ける。引き締まった肌を湿らせる汗がセックスに汗を流しているのは私だけじゃないと不思議と安心させてくれる…けれど、そんな私の唇に公孝が唇を重ねる。ずっと接吻も繰り返しているから、公孝が舌を口内に差し入れて来ても驚かずに、それが当たり前の様に私は舌を絡めた。私の体重がかかった膣肉はみっちりと公孝を最奥まで迎え入れていて、でも本来根元まで受け入れさせようとすると長大過ぎる公孝のモノは私には少しキツいのだと判ってくれているせいか、軽く膝を立ててくれているお陰で気持ちの良い深さで収まっている。
 汗塗れの身体で、公孝の腕の中で蕩ける。ぐびりぐびりと膣肉が波立って大き過ぎる公孝のモノに絡み付こうとしているのが判って恥ずかしい。でも無駄。公孝のモノはとっても太いから私の膣肉は最初から引き伸ばされたゴム管みたいになっていて…それでも締め付けて蠢くのが不思議で少し往生際が悪くて格好悪いと思うのに、そんな私の具合に、とても幸せそうに公孝は微笑む。濡れて塊の様になっている髪を指で梳いてくれて、長いながい口付けの後ゆっくりと唇を離すと互いの唾液がとろりと糸を引く。
 幸せって、こういうものなのかもしれない。
 激しい抽挿で頭の中だけでなく全身に火花が散って呼吸すら出来ていない感じの砕けそうな感覚は確かに気持ちいい筈なのに、無人島すら見えない大海原で翻弄されているみたいな怖さがあるけれど、こうして公孝に貫かれているままなのにゆっくりと愛撫されていると、まだ処女喪失から二日しか経っていないのに、何十年もこうしていて、ずっとずっと穏やかに愛されている気がしてくる。
 くう、と唐突におなかが鳴いた。
「……」
 しばしの沈黙の後、公孝が笑いだす。よりによってこんな状況でおなかが鳴って顔が真っ赤に染まる私の頭を優しく撫でて、公孝がベッドサイドの電話を手に取る。
「ルームサービスお願いします。まだ間に合うならスペシャルティブレックファストを二つ。ジュースは…グレープフルーツで」
 メニューを暗記しているのかすらすらと注文を続ける公孝に、何となく、以前他の誰かと宿泊しているのかな?と考えて胸がちくんとした。童貞と言う話でも恋愛はそれ以前にあって当然かもしれない、いや、当然だろう。でも童貞だと嘘をつく人ではないとは思うので…そこまで考えて自分が嫌な人間になりそうな感覚に私は通話中の人の胸板に身体を預けて瞳を閉じた。

 前と同じく足腰が立たない私を残して公孝はルームサービスを迎える為にシャワーを浴びている。水音も聞こえてこない静寂の中うとうとと眠りかけていた私は、不意に聞き慣れている電子音に瞳を開く。そう言えばスマホの存在を忘れていた。両親には友達と旅行だと嘘をついている後ろめたさもあるけれど、今回の呼び出し音はメールであり機械音痴の両親からのものではないだろう。のろのろと椅子にかけてあったバスローブに袖を通して数歩歩くと、膣内から溢れた粘液がどろっと大量に溢れて顔が真っ赤になるのが判る。疚しくない。愛人なのだとしたら、これは当然の事であって、そして、公孝の精液ならば私にとってそれは……、
 大学の友達からのメールの文面を見た瞬間、私は凍りついていた。
《結納おめでとう♪彩音からそういう話まったく聞いてなかったけど密かに進めてたの?今度きっちり説明して貰うからね♪》
 結納など聞いていない。大体今回援助交際を思い立ったのも父親の経営している企業が倒産するからであって…確かに昔ながらの話ならば援助目当ての政略結婚などもあったであろう、だが、そんな話は一切聞いていなくて。すうっと血の気が引いていく。没落した側の娘が嫁入りするとなればその娘が傷物など言語道断で、でも両親は私の援助交際は一切知らなくて。でももし私が生娘のまま嫁入り出来れば企業は倒産を免れるのだろうか?私が母親の入院治療費だけを考えずに企業への責任を考えていれば……。
 気が付くと、膝が崩れてぺたんと床にへたり込んでスマホを抱き締めて私は震えていた。
 それより、何より、公孝を過ちだと思いたくない。
「彩音……?」
 少し心配そうな声に、私はその声の主を見上げた。声のまま、心配そうな表情の公孝が私を見下ろしていて、そして私と目が合った瞬間、酷く苦しげな表情に変わって私を抱き上げてベッドに横たわらせてくれる。
 そうだ。気付くべきだった。
 愛人をもつ男性は、妻ももつのだ。――私は、公孝の一番大切な女性にはなれない。

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