『真夏日とセーラー服(仮)』熱帯夜1

表TOP 裏TOP 裏NOV BBS / 九駅目後編<熱帯夜1>熱帯夜2

 大きな紙の袋を手にしたまま帰宅後すぐに浴室へ向かった香澄は、浴槽の湯を張りながらシャワーのノズルを最大に開いた。壁にかけられたままのシャワーヘッドから勢いよく迸る湯を頭から浴びながら、帰宅してから一度も強張りが取れていなかった全身が急に震え出し、少女の裸身は浴室の床にぺたりと崩れ落ちた。
 頭上から湯を受けて俯く顎を、夥しい湯が伝い顎から滴る中に涙が紛れていく。音の篭る浴室ではあるが家全体に防音加工が施されている為、防音の利いた浴室で例え歌を歌ったとしても窓を開けない限りは外に漏れる事はない、そう判っていても香澄の嗚咽は声を殺したものになっていた。
 何度も精液を浴びせられ、何度も拭われた肌は湯を浴びている間に少女の肌に染み込んだ精液の臭いを広い浴室に篭らせていく。慌ててボディソープのボトルを手に取りせわしなく身体に塗りつけようとし、香澄は元の肌もぬめっている事に気付いて息を詰まらせる。
 ――ぬちゃぬちゃと擦り込まれる精液の臭いと感触。車内のトイレで代わる代わる『奉仕』させられた口内の陵辱と、同時に谷間を直接擦り続ける男の性器…順番制だった。広いトイレに篭るのは香澄とカメラ係と二人の男の四人。洋式便座に腰を下ろしたその膝に香澄は乗せられ、背後から直接性器を所謂素股という方法で擦り付けられながら身体中を弄ばれ、そして口は前に立つ男のものに奉仕する。香澄の口を犯しながら撮影をする男も、精液を浴びせた顔や身体を撮影しながらまだ萎え切らない物を顔に擦りつけながら撮影する男も多かった。
 何度もポンプを押して掌に貯まったボディソープを見た瞬間、香澄はちいさな悲鳴をあげてそれを振り払う。記憶で重なった掌に溜まる白濁の粘液は少女の口内から命令で出したものか、それとも掌に射精された後に啜らされたものだったのか。
 ――何度目かの乗り換えの後、始発から終点までずっと香澄はその方法で責めたてられ続けた。男達が精を放つと今度はトイレの外で待つ他の男達が入ってきて同じ様な方法で香澄をまた辱める。意図的に混雑した電車に乗せられた時、それまでと比べて中途半端な悪戯を執拗に続ける陵辱相手に香澄はしがみついてしまっていた。そして香澄の不安と疼きが頂点を迎える頃、再び電車を乗り換えさせられ、大勢に群がられ一気に翻弄された香澄は突き付けられた男の傘を何も考える事も出来ないまま吸いつき、そして精液を喉奥に放出され嚥下する。そんな香澄を終始カメラは撮影し、男達は薄ら笑いで見下ろしていた。
 ボトルに半分以上残っていたボディシャンプーが空になった頃、香澄は濃いジャスミンのにおいの中、浅くせわしない呼吸を繰り返しながら自分の身体を抱きしめた。瞳は床に向けられていたが、その光景は頭の中には伝わってこない。
 ――香澄の口戯が男を満足させられない時は、五分ごとに画像が一つサイトに投下されていった。フェラチオ中のものだけではない。どのタイミングで撮影されたものか、静止画か動画か、すべて香澄の口を犯している当の本人の指示になる。画像掲示板らしき場所に投下されたものにはそれを見たらしい返信が寄せられていた。容赦のない下卑た言葉や撮影場所への推測…ようやく射精を終えて交代する時には返信が寄せられていると言う事は、香澄の画像を待っている人間がいるのか、それともそれ程大勢の閲覧者がいる掲示板なのか…。人の性的な悪意はこうも残酷かと打ちのめされる香澄の口も喉奥も男達の放った精液で穢され、唇と舌は男の傘や鰓を擦り強要される淫語を口にする為のものと化していた。
 破滅そのものの記憶に、香澄の唇と顎が、全身ががくがくと震える。警察にそのまま行くべきだっただろうか…だが最後に駅のトイレで私服に着替えさせられ、入場時間を考えれば怪しまれるべきだった切符も新たな物を用意されており、自宅の数軒手前で車を降ろされる間に、香澄のわずかな勇気と決断は奪われていく。通常のサイズならばまだしもタブロイド判で現像された香澄自身と判るものだけを選んだ淫らな写真の束は両手にずしりと重く、そして昼間の暑さがまだ残る車外へと後部座席と助手席の窓を開け、いつでも写真を撒ける様な素振りをする男達は更に厚い束を手にしていた。昔からの閑静な高級住宅地は住民の移動も少なく、下町の様な親しさはないものの近隣住人の顔は皆知っている。
 ぷるると唐突に浴室内に電子音が鳴り響いた。
 携帯電話を浴室にまで持ち込む依存は香澄にはなく、そして香澄の携帯とは違う着信音である。男達に命令されて小さなビニールポーチを常に持ち歩く様に命令されていたそれは、浴室の棚の上に置いていた。一瞬凍りついた後、香澄は手のボディーソープを流してポーチを手に取り、開ける。中には女性向けデザインの携帯電話と数本の小瓶と小振りなチューブとプラスチックの小箱と小さな鈴のアクセサリーが三つ入っている。もしかして誰かの私物を間違えて渡されたのかと考えるが、確かに男は手渡す時に内容を確認していたのを思い出し、香澄は何度か躊躇いながら携帯電話を取り出して耳に当てた。
「はい……」
《お風呂は気持ちいいかい?香澄ちゃん》
「――!」
 誰かがまだ監視しているのかと慌てて周囲を見回したが、浴室の窓は閉ざされたまま、そして脱衣場への扉も締まっている。避けているが流したままのシャワーの音の為だと遅れて理解した香澄は安堵した。
《盗聴器だよ。ポーチの中に入ってるだろ。これから香澄ちゃんの行動は俺達に全て筒抜けになる》
「そん…な……っ」
 一人暮らしならば息を潜めて耐えればいいのかもしれないが、香澄の家族は極力朝食も夕食も共にとる。専業主婦の母親とはすぐに話し合えるが、仕事で忙しい父親がどれだけ苦労して朝と夜に時間を作るかを考えれば家族にとっては当たり前の様でいて宝物の様な時間だった。それを見ず知らずの、いや悪意を持つ存在に聞かれる生理的嫌悪感に香澄は言葉を失う。
《そうだな、香澄ちゃんでもトイレと食事くらいは放っておいて欲しい?》
「は、はいっ」
《それなら代わりに、それ以外の時間はその分だけ香澄ちゃんは命令に従えるよね?》
「……」
《朝食の朝七時から三十分、夕食の夜七時半から三十分。トイレは三分。それ以上手放したと判る状態なら、すぐにこの携帯で呼び出すよ。それに出ない時は…判るよね?》
「はい……」
 夜も蒸し暑い中、湯気で外気より湿度が増している筈だが心地よい浴室で香澄の全身が血の気を失い、平衡感覚が崩れていく感覚に、香澄は両手で構えている携帯電話に縋り付く様な体勢になっていた。住み慣れた家の中で現実感が崩れ落ちていくのを感じながら、青ざめた少女の瞳はどこかとろんとしたぬめりを帯び、そして直接床に座り込むその裸身の膣奥から白濁液がとろとろと溢れていく。
「――まずは最初の指示をしようか」

 ちりんちりんと可憐な鈴の音が静まり返った廊下に鳴っていた。
 ぎくしゃくとどこかぎこちない動きで歩く香澄はバスローブ姿の胸元に紙袋を抱えて階段を昇りきり、自室へと歩を進めたが、その表情は喘ぎを堪えている様な切なくもどかしげなものになっている。一歩進むごとに鈴の音が鳴った。膝下までのバスローブの中で腰は昼の連絡階段を昇る時の様に淫らにくねり、よく耳をすませば鈴に紛れてかすかな粘液音も聞こえてくる。
 小刻みに震える手で自室の扉を開け、ようやく個人的空間にたどり着いた香澄は閉めたばかりの扉に崩れる様に背中を預けた。紙袋を抱えた腕のその手に握られているのは盗聴器の黒い小箱と、男達から与えられた携帯電話である。香澄が歩くたびに鳴る鈴の音は盗聴器に拾われ男達に届いているだろう。
 はぁっと濡れた息をこぼしながら香澄はアンティーク調で揃えられている室内をよろめきながら歩き、机の上に紙袋を置いた。その中から部屋に似つかわしくない十センチ四方の銀色の機械を取り出し、不安と切なさに視線を彷徨わせ、何度も深呼吸を繰り返した後、香澄はコンセントに機械を繋いだ。小さなライトが点滅した後、不意に機械の上部がかすかなモーター音を立てて首を振り、そしてカメラ部分が上下に自動的に、いいやリモートコントロールで動き、高性能カメラが香澄の顔へと向けられた。
《おかえり、香澄ちゃん》
「……」
 インターネットはおろか最新の携帯電話にすら疎い香澄は目の前の無線ネットワークカメラの機能が信じられず、大きく瞳を見張った。――だがカメラ付属のスピーカーから流れた声は浴室で自分に指示した男のものであり、カメラが無効であると確認する術は香澄にはない。押さえられたボリュームは室外に漏れるものではなく少女を安心させたが、親しい間柄以外は訪れた事のない自室に土足で踏み込まれた様な抵抗感に香澄は泣きそうな顔になる。
《さぁあと3分でライブ放送だよ。ネットにも接続して待ってるお客様の書き込みを早くチェックしようか》
 もうこの部屋では一人落ち込む事すら出来ない…自分のこの先への不安に泣く間も思案に暮れる間も観察され続けるのだ。そう感じながら香澄はタブレット型コンピュータの電源を入れた。数秒の間の後、起動画面に代わりそしてプログラムによって直接動画画面へと切り替わったそこはサイト名の表示も出なければ、香澄が画面に触れて他のプログラムを起動させる事も適わない。香澄がサイトを確認させられる為だけに設定されたコンピュータだった。
【あと3分】
【マジでライブ来るの?】
【自宅で中継ってどんな淫乱だよ】
【いいおっぱいwktk】
【剃毛動画再うp希望】
 様々な文字が画面の右から左に流れていくその背景は電車内と思しき車窓を背景に、乳首を捏ね回されている乳房のアップであり、それがいつ撮影されたものか正確な時間は判らないものの、誰の乳房なのかは香澄は疑うまでもない。
《現在、番組はオフラインです/開始まで0時間02分06秒/現在のアクセス数449》
 公の番組でない筈のそのアクセス数が多いのか少ないのか香澄には判らない。電車内の男達が全員視聴しているのであっても三十は越えないだろう、だとすれば、誰が見ているのか、その中に今朝までは友達だと信じていた少女が含まれているのか…それを想像した香澄の瞳が悲しみに潤んで揺れた。
 開始時間一分を切ったのを見、香澄は携帯用インカムを耳につける。緊張に強張り肩で呼吸を繰り返す自分の顔へと向けられてたカメラがかすかな音を立てて下へ角度を変えるのを見、香澄はわずかに仰のく。顔だけは映さないという約束を信じるしかなかった。――信じる、という事自体が間違いだと判っていても。
 机の上に設置したカメラに向かい、香澄はアンティークの肘付き椅子に腰を下ろした。
 モーター音をたて、カメラが香澄の顎下から爪先までを撮影確認する為か上下する。
《香澄ちゃん、一時間たっぷり愉しもうね》
 幼い頃から使い慣れているクッションの利いた天鵞絨の座面の上で香澄は何度も深呼吸を繰り返す。全身の血の気が引いている筈だと言うのまるで背筋を執拗に上下に舐め回される様な妖しい感覚が香澄の吐息を上擦らせる。ちりちりちりと小刻みに鈴の音が鳴り響き、格調高い椅子に腰かける湯上がりのバスローブ姿の少女の柔肌が白熱灯の下、かすかに揺れる。
 金色の置き時計の長針が頂点を指した瞬間かちんと小気味良い金属音が鳴り、それと同時に液晶画面の中の静止画像が柔らかな白熱灯に照らされた部屋を、その中央で椅子に腰かける少女の胸元を大きく映した動画へと変わった。
【キター!】
【マジかよ】
【淫乱娘キター!】
 無音の悪意が液晶の中で文字列となって怒濤の様に押し流され、画像が見えなくなる程の文字列が止むのを待ち、香澄の耳に男の指示が届く。
 香澄の瞳から溢れた涙が仰のく顎へと伝い、首筋へと流れていく。高画質撮影された動画は再生環境がよければその涙もはっきりと見る事が出来たかもしれない。何度も躊躇い、止まりかけては進んだ手がバスローブの帯へと進み、そして解いていく間もどこかで鈴の音はちりちりと鳴り続け、そのたびに少女の肢体はびくびくと跳ねる。小刻みに震える指ははっきりとカメラに映り、少女の指が動くたびに文字列がそれを急きたてる。
「ぁ……ぁぁ……」
 方向修正時以外は音をたてないカメラの無機質なレンズを何百人もの異性の目の様に感じ、引き攣った嗚咽を漏らす香澄の瞳が破滅の予感と異常な昂ぶりに追い詰められた虚ろなものになる。インカムからの指示と読み取りを命令されている文字列が無数の悪意の手になり陵辱の様に這い回る錯覚に柔肌がざわめき、夜まで繰り返した恥辱の記憶と感覚を蘇らせる。電車内で、通路で、ホームで、トイレで、大勢の男に乳房を荒々しく揉みしだかれ、膣内に指を突き立てられ、精液を浴びせられ、喉奥まで突き立てられ…恐らく三十人前後が自分を弄んだ。いや途中で入れ代わったとすればその倍かもしれない。それが、今は四百人以上に増えている。直接陵辱されるわけではないが、いつ自分が画像の主と知るか判らない人々だった。もしかしたら父親の会社の人間かもしれないライバル会社の人間かもしれない。会社のパーティは基本的に両親が参加するのだが、パーティの性質によっては香澄も参加しており、その時に自分の顔を憶えた人間の存在は否定出来なかった。
 命令には逆らえない。意に反した行動を取れば、即座にカメラのレンズは香澄の顔を撮影する為にほんの少しだけ角度を上に変えるだろう。それだけで香澄は、いや香澄の両親は社会的立場を失ってしまう。
 躊躇う香澄の耳に、男の指示が届いた。
「ぃゃ……っ…いやぁ……っ……」
 びくりと震えた香澄の指先で遂に帯が解け、椅子の上に落ちる。
 緩むバスローブの合わせが香澄の豊かな胸の下まで開き、そして先刻から歪な形で布を突き上げていた乳房の先端の突起がかすかな身動ぎのたびに擦れ、少女を喘がせ、複数の涼やかな鈴の音が一層はっきりと部屋に鳴り響く。バスローブの下でとろとろと溢れる愛液に腰の居心地が悪くなり無意識に身体をくねらせてしまった香澄の華奢な肩から、不意に布が落ちた。
【これかよ!】
【なるほど鈴キタコレー!】
【いやいや言ってるけど調教済み?】
【うわぁどスケベ】
 一気に盛り上がり怒濤の勢いで流れる文字列に隠された画面の中、身悶えながら反射的に露になった胸を隠そうと動きぷるんと揺れる乳房の先端で、入浴後から強い力で左右から鴇色の乳首を挟み続けている可憐なピンクゴールドのニップルリングが白熱灯の光を柔らかに反射し、リングに連なる真珠程の大きさの鈴が軽やかな音をたてて弾んでいた。

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(修正済)20110523

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